※本記事は、サクサ株式会社 の有価証券報告書(第22期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. サクサってどんな会社?
中堅・中小企業のDX推進を支援する情報通信機器メーカーです。オフィスの通信・防犯環境を支えています。
■(1) 会社概要
同社のルーツは1938年設立の大興電機製作所と1946年設立の田村電機製作所にあります。2004年に両社が経営統合し、持株会社である田村大興ホールディングス(後のサクサホールディングス)を設立しました。2022年に東証プライム市場へ移行後、2023年にスタンダード市場へ移行しました。2024年7月には事業持株会社体制への移行に伴い、連結子会社のサクサを吸収合併し、商号をサクサへ変更しました。
連結従業員数は1,207名、単体では522名です。筆頭株主は情報通信機器メーカーの沖電気工業で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には電子部品商社のグローセルが名を連ねており、取引関係のある事業会社や金融機関が主要株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 沖電気工業 | 14.00% |
| THE HONGKONG AND SHANGHAI BANKING CORPORATION LTD - SINGAPORE BRANCH PRIVATE BANKING DIVISION CLIENTS A/C 8221-623793(常任代理人 香港上海銀行東京支店 カストディ業務部 Senior Manager,Operation 小松原 英太郎) | 12.30% |
| グローセル | 4.00% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表は代表取締役社長社長執行役員CEOの齋藤 政利氏です。社外取締役比率は36.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 齋 藤 政 利 | 代表取締役社長社長執行役員CEO | 1986年沖電気工業入社。同社常務執行役員等を経て、2023年サクサ顧問、同年代表取締役社長就任。2024年7月より現職。 |
| 猪 俣 貴 志 | 取締役副社長執行役員COO兼CDO | 1988年日本電信電話入社。西日本電信電話常務取締役、NTTフィールドテクノ社長等を経て、2024年サクサ取締役就任。同年7月より現職。 |
| 長 谷 川 正 治 | 取締役常務執行役員CFO管理統括本部長兼財務部長 | 1991年田村電機製作所入社。サクサホールディングス経理部長、サクサ常務執行役員等を歴任。2024年サクサ取締役就任。同年7月より現職。 |
社外取締役は、栗林 勉(弁護士)、大田原 就太郎(OKIクロステック常務執行役員)、山内 麻理(公立大学法人国際教養大学客員教授)、西條 光彦(オリックス債権回収執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ネットワークソリューション分野」および「セキュリティソリューション分野」を展開しています。
■ネットワークソリューション分野
主に中堅・中小企業向けに、キーテレホンシステム(ビジネスホン)やネットワーク機器などを提供しています。オフィスの通信環境を構築し、業務効率化やコミュニケーションの円滑化を支援する製品群です。
製品の販売代金が主な収益源です。運営は主にサクサが行っており、開発・製造の一部を連結子会社のサクサテクノなどが担っています。また、システム・ケイが手掛けるAI画像認識技術を用いた映像管理システムなどもこの分野に含まれます。
■セキュリティソリューション分野
オフィスや施設の安全を守るセキュリティシステムや、部品加工などを提供しています。UTM(統合脅威管理アプライアンス)などの情報セキュリティ製品や、警備会社向けの機械警備システムなどが主力です。
製品の販売および保守サービス料が収益源となります。運営はサクサを中心に、サクサテクノが製造を、ソアーが電子機器の開発・製造受託サービス(ODM、EMS)などを行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は第19期に一度減少しましたが、その後は増加傾向にあり、当期は440億円に達しています。利益面では、第18期に損失を計上して以降、V字回復を遂げており、当期の利益率は7.7%と高い水準を維持しています。当期純利益も順調に拡大しており、収益性が向上していることがうかがえます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 366億円 | 308億円 | 373億円 | 409億円 | 440億円 |
| 経常利益 | 23億円 | 4億円 | 24億円 | 34億円 | 34億円 |
| 利益率(%) | 6.2% | 1.2% | 6.4% | 8.3% | 7.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -14億円 | 3億円 | 2億円 | 6億円 | 69億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、売上総利益率は30%台を維持しています。営業利益は前期と比較して微減となりましたが、依然として30億円台を確保しており、安定した収益力を示しています。営業利益率は7%台後半から7%台前半へと推移しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 409億円 | 440億円 |
| 売上総利益 | 136億円 | 134億円 |
| 売上総利益率(%) | 33.2% | 30.5% |
| 営業利益 | 33億円 | 32億円 |
| 営業利益率(%) | 8.2% | 7.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料賃金が29億円(構成比28%)、賞与引当金繰入額が9億円(同9%)を占めています。売上原価については、製品や部品の仕入・製造コストが中心となっています。
■(3) セグメント収益
各分野の売上高を見ると、ネットワークソリューション分野、セキュリティソリューション分野ともに前期比で増収となりました。特にセキュリティソリューション分野の伸びが大きく、全体的な売上拡大に寄与しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| ネットワークソリューション分野 | 261億円 | 275億円 |
| セキュリティソリューション分野 | 148億円 | 165億円 |
| 連結(合計) | 409億円 | 440億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
サクサのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
同社は、営業活動によりキャッシュ・フローを生み出し、主に棚卸資産の減少や税金等調整前当期純利益の計上によって収入を得ています。投資活動では、子会社株式の取得による支出がありましたが、投資有価証券の売却による収入もありました。財務活動では、資金調達による収入があり、配当金の支払いによる支出を上回る結果となりました。これらの活動の結果、現金及び現金同等物は増加しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 37億円 | 33億円 |
| 投資CF | -6億円 | -28億円 |
| 財務CF | -20億円 | 5億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「独創的な技術を核に、新しい価値を創造し、活力とゆとりある社会の発展に貢献します。」という経営理念を掲げています。また、「つなげる技術の、その先へ。」をビジョン(目指す姿)とし、技術を通じて社会の発展に寄与することを目指しています。
■(2) 企業文化
社員一人ひとりが課題認識と対策を自ら持ち、推進していくための4つの行動指針を定めています。「誠実に正しく、迅速に行動する」「自ら考え行動する」「変革を恐れず挑戦する」「チームサクサとして活動する」という指針のもと、自律的かつ協力的な組織風土の醸成を図っています。
■(3) 経営計画・目標
2030年のありたい姿として「中堅・中小企業のDX推進サポーター」を掲げ、中期経営計画「共に創る未来」を推進しています。お客様・パートナーとの共創を通じて、「モノづくり as a Service」による新たな価値提供を進めています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「成長戦略」として、バリューチェーン変革とオープンイノベーションを推進しています。具体的には、「米沢アドバンスドファクトリー構想」によるモノづくり拠点の整備、他社との資本業務提携による情報セキュリティ強化、DX・AIツールを持つパートナーとの共創などを進めています。また、経営基盤の強化として、DXによる経営の見える化や人財の多様化、資本効率の向上にも取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人財で支える」を経営基盤の一つとし、人財の多様化を高めるための積極的なキャリア採用や、女性比率を高めた採用活動を強化しています。また、経営人財の育成、DX人財育成に関する教育体系の構築、スキルアップ支援制度の整備などを進め、「自ら学ぶ」文化の醸成を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.2歳 | 16.0年 | 7,539,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.1% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 68.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 63.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(22.5%)、女性係長比率(14.2%)、女性管理職比率(3.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済動向について
国内売上比率が高く、国内の情報通信ネットワーク関連市場等の経済状況の影響を受けます。また、中国や東南アジア等からの調達・製造委託を行っており、これらの地域の情勢悪化が業績に影響する可能性があります。
■(2) 市場環境について
情報通信ネットワーク関連市場は技術革新や競争が激しく、新商品のタイムリーな提供が求められます。競合との価格競争や需要の変動により、棚卸資産の評価損が発生するなど、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 生産活動について
資材、部品等のタイムリーな調達が不可欠であり、供給の遅延や中断があった場合、生産活動に支障をきたし、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 特定の取引先への販売依存
一部の取引先への売上依存度が高くなっており、当該取引先の事業上の問題や調達方針の変更などにより取引額が減少した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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