※本記事は、澤藤電機株式会社の有価証券報告書(第129期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 澤藤電機ってどんな会社?
トラック・バス用電装品や発電機、冷蔵庫を製造するメーカーで、日野自動車の関連会社かつ重要パートナーです。
■(1) 会社概要
1919年に澤藤電機工業所として創業し、自動車用電装品の修理を開始しました。1934年に現社名へ改称し、マグネト(磁石発電機)の製造を開始。1949年に東京証券取引所へ上場しました。1962年には小型電気冷蔵庫「エンゲル」の製造販売を開始し、事業を多角化しています。2022年の市場区分見直しに伴い、東証スタンダード市場へ移行しました。
連結従業員数は850名、単体では719名です。筆頭株主は事業パートナーである日野自動車で、第2位は自動車部品大手のデンソー、第3位は本田技研工業です。主要な取引先がそのまま大株主となっており、強固な協力関係を築いています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日野自動車 | 30.29% |
| デンソー | 9.27% |
| 本田技研工業 | 6.03% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は井上雅央氏が務めています。社外取締役比率は27.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 井上 雅央 | 取締役社長(代表取締役) | トヨタ自動車製品原価企画部長、日野自動車執行職等を経て、2021年6月より現職。 |
| 久野 陽二 | 取締役 | 日野自動車監査室長、同社経理部関連事業室主査等を経て、2022年6月より現職。 |
| 下山 泰樹 | 取締役 | デンソーデバイス品質保証部長、アスモ常務取締役等を経て、2022年6月より現職。 |
| 尾澤 伸夫 | 取締役 | 同社入社後、調達部長、サワフジ エレクトリック タイランド社長等を経て、2022年6月より現職。 |
| 櫻井 恒久 | 取締役 | 同社入社後、品質保証部長、執行役員等を経て、2022年6月より現職。 |
社外取締役は、大畑光一(日野自動車技術統括部執行職)、志賀聖一(群馬大学名誉教授)、鈴木宏子(共和産業代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電装品」「発電機」「冷蔵庫」の3つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。
■(1) 電装品事業
トラック・バス用のスタータ(始動電動機)、オルタネータ(充電機)のほか、ハイブリッド車・電気自動車用のモータやECU(電子制御ユニット)等の開発・製造・販売を行っています。商用車の電動化に対応した製品開発に注力しています。
収益は、製品の納入による対価を得ており、主要な顧客は日野自動車です。運営は主に澤藤電機が行い、海外ではサワフジ エレクトリック タイランドが製造拠点として機能しています。
■(2) 発電機事業
可搬式発動発電機および同製品用の発電体の開発・製造・販売を行っています。受託生産(OEM)に加え、自社ブランド発電機「ELEMAX」を世界各国で展開し、工事現場や災害時の非常用電源として利用されています。
収益は、OEM供給先や代理店への製品販売から得ています。主要な顧客には本田技研工業が含まれます。運営は主に澤藤電機が行い、一部の製造を海外子会社が担っています。
■(3) 冷蔵庫事業
各種車両用および船舶用の電気冷蔵庫の開発・製造・販売を行っています。独自のスイングモータ技術を活用した自社ブランド「ENGEL(エンゲル)」を展開し、オーストラリアや国内、北米、欧州などで販売されています。
収益は、製品の販売により得ており、特にアウトドアや車中泊、医療輸送などのニッチな需要に対応しています。運営は澤藤電機および販売子会社のエンゲル・ディストリビューション社(オーストラリア)などが行っています。
■(4) その他
上記セグメントに含まれない事業として、製品の運送事業などを行っています。
収益は、運送サービスの提供などにより得ています。運営は、子会社の株式会社エス・テー・エスなどが主に行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は260億〜290億円前後で推移していましたが、当期は236億円へと減少しました。利益面では、経常利益が数億円規模で推移していますが、当期は前期の7.9億円から2.1億円へと大きく低下しています。当期純利益も減少しており、全体として減収減益の傾向が見られます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 267億円 | 288億円 | 293億円 | 267億円 | 236億円 |
| 経常利益 | 3.5億円 | 6.0億円 | 4.7億円 | 7.9億円 | 2.1億円 |
| 利益率(%) | 1.3% | 2.1% | 1.6% | 3.0% | 0.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.0億円 | 1.9億円 | 3.3億円 | 3.7億円 | 5.1億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少に伴い、売上総利益も前期の38億円から35億円へ減少しました。一方、販売費及び一般管理費は増加しており、結果として営業利益は前期の5.6億円から0.8億円へと大幅に縮小しています。営業利益率は0.3%となり、収益性の低下が見られます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 267億円 | 236億円 |
| 売上総利益 | 38億円 | 35億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.4% | 14.7% |
| 営業利益 | 6億円 | 0.8億円 |
| 営業利益率(%) | 2.1% | 0.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が9億円(構成比26%)、荷造運搬費が5億円(同16%)を占めています。売上原価では、製品評価損等が計上されています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで売上高が減少しました。主力の電装品事業は国内・海外向け販売が減少し減益となりました。発電機事業は受託生産および自社ブランド販売の減少により赤字転落しました。冷蔵庫事業もオーストラリア向けの販売減により減収減益となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 電装品 | 157億円 | 149億円 | 19億円 | 14億円 | 9.7% |
| 発電機 | 62億円 | 39億円 | -1億円 | -1億円 | -2.6% |
| 冷蔵庫 | 48億円 | 47億円 | 8億円 | 5億円 | 10.3% |
| その他 | 2億円 | 2億円 | 0.1億円 | 0.1億円 | 7.8% |
| 連結(合計) | 267億円 | 236億円 | 6億円 | 0.8億円 | 0.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
澤藤電機は、営業活動によるキャッシュ・フローが減少したものの、これは主に売上債権の減少によるものです。投資活動では、有形固定資産の取得が主な要因となりました。財務活動では、短期借入金の増加がキャッシュ・フローを押し上げました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 11億円 | -3億円 |
| 投資CF | -12億円 | -13億円 |
| 財務CF | 5億円 | 7億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「澤藤電機は良い商品を造り、企業としての社会的責任を果たし、関係する全ての人に栄を与える」を経営理念として掲げています。この理念のもと、エネルギー変換技術等のコア技術を活かし、「電気をつくる・ためる・つかう」に関するソリューション企業を目指すことを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は、安心してチャレンジできる企業基盤(ガバナンス)を整え、多様な社員が健康で自己実現できる環境づくりを推進しています。風土改革を積極的に進めることで、人的資本とガバナンスを強化し、コンプライアンスを徹底することで、社員が安心でき、誇りに思える会社づくりを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2030年の目指す姿とその実現に向けた中長期経営計画~長期構想「チャレンジ2030」を策定しています。サステナビリティ経営を加速させ、環境戦略と財務戦略の二つの柱で事業ポートフォリオを変革することを目指しています。具体的な数値目標としては、2025年3月期の業績予想などを重要な経営指標と位置付けています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、経済・社会環境の変化に対応し、商用車や農建機の電動化、環境負荷低減に貢献する価値の提供を目指しています。電装品事業では商用電動車への部品供給やIoTを活用した生産性向上、発電機事業では自社ブランドの展開と生活環境への貢献、冷蔵庫事業では高機能化と省電力化に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、従業員エンゲージメントを高めることで業績向上と個人の能力向上を同時に図る方針です。能力を最大限発揮できる職場環境づくりを含めた「総合的人財育成システム」の構築を推進しています。また、多様な社員が健康で自己実現できる環境整備や風土改革にも積極的に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.9歳 | 18.5年 | 5,927,118円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.1% |
| 男性育児休業取得率 | 60.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.6% |
| 男女賃金差異(正規) | 72.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 87.8% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場動向の変化
主要な取引先である自動車産業や機械産業界の景気後退、需要減少、設備投資の抑制などが業績に影響を与える可能性があります。また、中国や東南アジア地域における政治・経済情勢の変化、法的規制、災害等が事業遂行に支障をきたすリスクがあります。
■(2) 資材等の調達リスク
製品には銅、電磁鋼板、半導体などの原材料や電子部品が多く使用されています。これらの資材の需給バランスが崩れ、価格高騰や必要量の確保が困難になった場合、生産活動や収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 為替変動の影響
製品を世界各国へ輸出しており、海外事業も展開しているため、為替レートの変動による影響を受けます。為替予約等でリスクヘッジを行っていますが、完全に回避することは難しく、円高進行などが業績の下押し要因となる可能性があります。



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