※本記事は、新電元工業株式会社の有価証券報告書(第103期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 新電元工業ってどんな会社?
半導体製品、電装製品、電源製品などのパワーエレクトロニクス製品の製造・販売を主力とする企業です。
■(1) 会社概要
1949年8月に設立され、1961年10月に東京証券取引所市場第二部へ上場し、1968年11月に同第一部へ指定替えとなりました。近年では、2026年1月に京セラのパワーデバイス事業を承継した新設会社(現在の秦野新電元)の全株式を取得し子会社化するなど、事業拡大を進めています。
現在、同社グループの従業員数は連結で5,091名、単体で1,043名です。筆頭株主は事業会社の本田技研工業で、第2位および第3位は資産管理業務などを行う信託銀行や金融機関などが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 本田技研工業 | 11.65% |
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 9.83% |
| 中央日本土地建物 | 4.94% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役社長は田中信吉氏が務めており、社外取締役比率は22.2%(9名中2名)となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 田中信吉 | 代表取締役社長 | 1985年4月同社入社。シンガポール営業部長、電子デバイス事業本部長、営業本部長等を経て、2023年4月より代表取締役社長。2025年6月より現職。 |
| 受川修 | 取締役兼専務執行役員 | 1984年4月第一勧業銀行入行。みずほコーポレート銀行アジア業務管理部長等を経て、2016年4月同社入社。2025年4月より現職。 |
| 佐々木正博 | 取締役兼常務執行役員 | 1987年4月同社入社。パワーシステム事業本部長、技術開発センター長、経営企画室長等を経て、2026年4月より現職。 |
| 羽鳥敏 | 取締役兼上席執行役員 | 1988年4月同社入社。電装事業部長、経営企画室長等を経て、2026年4月より現職。 |
社外取締役は、西山佳宏(元JX日鉱日石金属金属事業本部長)、北代八重子(元シチズン時計社外監査役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「パワーデバイス事業」「パワーユニット事業」「パワーシステム事業」および「その他」事業を展開しています。
■パワーデバイス事業
車載向け、産業機器向け、家電向けのダイオードやパワーMOSFET、パワーモジュールなどの半導体製品を製造・販売しています。
顧客への製品販売により収益を得ています。製造は秋田新電元、東根新電元、秦野新電元などの子会社が担い、販売は同社や国内外の販売子会社が一括して行っています。
■パワーユニット事業
二輪車用電装品、四輪車用電装品、発電機用インバータ、EV・PHEV用充電器などの電装製品を製造・販売しています。
顧客への製品販売によって収益を上げています。製造は岡部新電元や新電元スリーイーのほか、インドやタイ、インドネシアなどの海外子会社が担当し、一部子会社は直接販売も行っています。
■パワーシステム事業
整流装置をはじめとした通信インフラ市場向けなどの通信機器用電源装置を製造・販売しています。
通信事業者などの顧客に製品を販売することで収益を得ています。製品の製造は主に子会社の新電元スリーイーが担い、販売は同社および国内外の販売子会社を通じて行われています。
■その他
報告セグメントに含まれないソレノイド事業などを展開しています。
製品の販売から収益を得ており、製造・販売は関連会社である新電元メカトロニクスが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は直近5年間で増加傾向にあり、堅調なトップラインの拡大が続いています。一方、利益面では一時的に赤字を計上する厳しい局面もありましたが、当期は構造改革等の奏功により、経常利益および当期利益ともに大幅な黒字回復を達成しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 922億円 | 1010億円 | 1023億円 | 1058億円 | 1138億円 |
| 経常利益 | 58億円 | 43億円 | 17億円 | -5億円 | 46億円 |
| 利益率(%) | 6.3% | 4.3% | 1.6% | -0.5% | 4.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 43億円 | 3億円 | -12億円 | -33億円 | 56億円 |
■(2) 損益計算書
当期は増収効果に加えて構造改革による収益性の改善が寄与し、売上総利益率が向上しました。さらに営業利益率も大幅に改善し、本業での稼ぐ力が回復しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1058億円 | 1138億円 |
| 売上総利益 | 144億円 | 177億円 |
| 売上総利益率(%) | 13.6% | 15.5% |
| 営業利益 | 1億円 | 38億円 |
| 営業利益率(%) | 0.1% | 3.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が37億円(構成比26.6%)、運搬費が24億円(同17.1%)、研究開発費が10億円(同7.4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全ての報告セグメントで前期から増収を達成しています。特にパワーユニット事業が売上構成比の大部分を占めており、二輪向け製品の堅調な需要を背景に同社グループのトップラインを牽引しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| パワーデバイス事業 | 311億円 | 335億円 |
| パワーユニット事業 | 677億円 | 728億円 |
| パワーシステム事業 | 69億円 | 74億円 |
| その他 | 2億円 | 1億円 |
| 連結(合計) | 1058億円 | 1138億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -22億円 | 63億円 |
| 投資CF | -45億円 | -21億円 |
| 財務CF | -2億円 | 19億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、経営理念として「社会と共に、顧客と共に、従業員と共に、成長する企業」を掲げています。また、「エネルギーの変換効率を極限まで追求することにより、人類と社会に貢献する」という企業ミッションのもと、半導体技術や回路技術、実装技術を融合・発展させ、脱炭素社会の実現に寄与する製品の創造を目指しています。
■(2) 企業文化
持続可能な社会の実現に貢献し、長期的な視点での企業価値向上に努めることを基本方針としています。また、「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現を目指す環境ビジョンを掲げ、人権と多様性の尊重、安心・安全で働きがいのある職場づくり、公正かつ透明性の高い経営を推進する文化が醸成されています。
■(3) 経営計画・目標
同社は第17次中期経営計画を策定し、2027年度に向けて以下の経営目標を掲げています。
* 売上高 1,300億円
* 営業利益率 5.0%
* ROE 6.0%
* 設備投資額(3ヶ年累計) 300億円
* 研究開発費(3ヶ年累計) 145億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「稼ぐ体質づくり」「成長分野へのリソース集中投下」「ターゲット市場の開拓」「サステナビリティ経営の推進」の4項目を重点施策としています。特に、インド市場の開拓に向けた優先的なリソース配分や、将来核となる事業への集中的な投資を行い、強固な事業基盤の確立と資本効率の向上による成長ステージへの移行を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「個人の成長と組織の活性化」を人材戦略の目標に掲げ、「つながり」をテーマとした施策を展開しています。第二新卒などの採用の多様化や、キャリア研修・リスキリングによる能力発揮支援を行うほか、女性・シニア・障がい者・外国籍従業員の活躍推進、在宅勤務やフレックスタイム制度を活用した柔軟な働き方の拡充に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.8歳 | 17.0年 | 7,458,078円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.5% |
| 男性育児休業取得率 | 65.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 74.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 72.9% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、20代の従業員における女性比率(21.6%)、障がい者雇用率(2.54%)、1人あたりキャリア研修時間(27.6時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特注品および特定市場への依存
同社グループの営業収入の過半は特定顧客による特注品が占めており、二輪車を含む自動車市場への依存度が高くなっています。そのため、景気動向や顧客企業の需要変動による影響を強く受けるリスクがあり、同社は多様な市場への製品提供によるリスクの分散化を図っています。
■(2) 特定のグループ外供給元への依存
電源回路製品の主要部品や半導体の原材料において、複数のグループ外企業の供給に依存しています。需給の急激な変動や価格高騰が生じた場合、必要な部材の入手に支障を来し、原価上昇などにより業績へ悪影響を及ぼす可能性があるため、複数購買の促進等で供給リスクを低減しています。
■(3) 為替レートの変動
海外での生産および販売活動を展開しており、円貨以外に米ドル、ユーロ、アジア通貨などで取引を行っています。為替レートの変動は業績に影響を与え、一般に円高は悪影響、円安は好影響を及ぼすため、為替予約の活用や現地での資材調達促進によりリスクの最小化に努めています。



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