電気興業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

電気興業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する電気通信インフラおよび高周波応用設備のメーカーです。携帯電話基地局アンテナや鉄塔などを手掛ける電気通信関連事業と、自動車部品の焼き入れ装置などを扱う高周波関連事業を展開しています。2025年3月期は、両事業ともに回復傾向にあり、増収および営業黒字転換を果たしました。


#記事タイトル:電気興業転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、電気興業株式会社 の有価証券報告書(第99期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 電気興業ってどんな会社?


電気通信インフラと高周波応用技術を核に、アンテナや鉄塔、誘導加熱装置などを提供するメーカーです。

(1) 会社概要


1950年に設立され、通信施設の設計・建設・賃貸を開始しました。1961年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1990年に同第一部へ指定替えとなりました。主力事業である電気通信関連事業に加え、1952年より高周波応用機器の製造を開始し、現在の2大事業体制を構築しています。近年では、2024年に高周波熱処理研究施設を新設するなど、技術開発体制の強化を進めています。

同社の連結従業員数は1,067名、単体では605名です。筆頭株主は信託銀行であり、第2位は資産管理業務を行う外国法人の常任代理人、第3位も同様に証券会社の常任代理人となっています。株主構成には国内外の機関投資家が含まれています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.75%
CGML PB CLIENT ACCOUNT/COLLATERAL 4.84%
MSIP CLIENT SECURITIES 4.44%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長は近藤忠登史氏です。取締役9名のうち社外取締役は4名で、社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
近藤 忠登史 代表取締役社長 1995年同社入社。海外事業推進統括部北米推進部長、執行役員機器統括部長、ワイヤレス研究所長などを歴任。2021年4月より現職。
浅井 貴史 取締役常務執行役員経理部長 1995年同社入社。支店統括部長、管理統括部長、秘書室長、安全品質管理本部長、社長室長などを経て、2025年4月より現職。
下田 剛 取締役執行役員防衛事業推進室長 1988年同社入社。機器統括部長、海外事業統括部長、管理統括部統括次長、危機管理室長などを経て、2024年4月より現職。
河原 敏朗 取締役執行役員R&D統括センター長 1991年日本電信電話入社。NTTドコモ無線アクセス開発部担当部長を経て、2019年同社入社。ワイヤレス研究所長を経て、2022年4月より現職。
冨居 博治 取締役執行役員高周波統括部長 1991年同社入社。高周波統括部設計部長兼開発部長、同統括部長兼営業部長兼設計部長などを経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、塚野英博(NTTイノベーティブデバイス社長)、ジャン=フランソワ ミニエ(レ・ロワ・マージュ・ジャポン社長)、武田涼子(弁護士)、髙橋篤史(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電気通信関連事業」、「高周波関連事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 電気通信関連事業


各種アンテナ、反射板、鉄塔、鉄構等の製作・建設に加え、通信機器の製造・建設、各種ソリューションシステムの製作・販売を行っています。移動通信基地局、防災行政無線、防衛関連通信設備、放送設備などが主な対象です。

製品の販売および工事の請負代金が主な収益源です。運営は主に電気興業が行い、株式会社デンコーが鉄塔等の製作・鍍金加工、株式会社電興製作所がアンテナ等の製作加工、フコク電興株式会社が通信設備の設計・施工を担当するなど、グループ各社が連携しています。

(2) 高周波関連事業


高周波誘導加熱装置の製造・販売および高周波熱処理受託加工を行っています。自動車部品の焼き入れなどに使用される設備や加工サービスを提供しており、近年では新領域への応用も進めています。

装置の販売代金および受託加工料が主な収益源です。運営は電気興業のほか、デンコーテクノヒート株式会社やDTHM,S.A. DE C.V.(メキシコ)などが熱処理受託加工を、韓国電気興業株式会社などが装置製造や部品販売を担当しています。

(3) その他


主に設備貸付事業および売電事業を行っています。同社が所有する不動産の有効活用や再生可能エネルギー分野での事業が含まれます。

土地・建物等の賃貸料および太陽光発電による売電収入が収益源です。運営は主に電気興業が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2024年3月期までは減収や赤字計上が見られましたが、2025年3月期には増収となり、各利益段階で黒字転換を果たしました。特に直近では売上高が回復し、利益率も改善傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 415億円 340億円 318億円 289億円 326億円
経常利益 18億円 4億円 -12億円 -15億円 10億円
利益率(%) 4.3% 1.3% -3.8% -5.3% 3.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 10億円 -3億円 -20億円 8億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益が拡大し、営業損益が大幅に改善しています。原価率の改善も見られ、収益性が向上しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 289億円 326億円
売上総利益 9億円 23億円
売上総利益率(%) 3.1% 7.1%
営業利益 -18億円 9億円
営業利益率(%) -6.2% 2.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が25億円(構成比41%)、研究開発費が9億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


電気通信関連事業は、防衛関連や固定無線関連の需要回復などにより増収増益となりました。高周波関連事業も、自動車関連分野の設備投資需要回復などにより増収増益となり、全セグメントで業績が改善しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
電気通信関連事業 191億円 221億円 -1億円 19億円 8.7%
高周波関連事業 96億円 104億円 10億円 17億円 16.7%
その他 1億円 1億円 1億円 1億円 122.3%
調整額 - - -29億円 -29億円 -
連結(合計) 289億円 326億円 -18億円 9億円 2.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.8%で市場平均を上回っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -8億円 -18億円
投資CF 39億円 4億円
財務CF -8億円 -21億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「優れた製品を社会に提供し、社会に貢献する」こと、および「時代のニーズを先取りし、失敗を恐れぬチャレンジ精神の溢れた前向きの企業たることを期す」ことを経営理念として掲げています。技術開発の推進と品質性能の向上を通じて企業価値を高め、ステークホルダーの期待に応えることを基本方針としています。

(2) 企業文化


「一社一家、グループ一家の和の精神をもって発展成長し、社員の生活向上に務める」という理念のもと、チームワークと社員の幸福を重視する文化があります。また、絶えず生産性の向上に努め、適正な利益を確保することを重視しています。失敗を恐れずチャレンジする精神を尊ぶ風土も特徴です。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「DKK-Plan2028」を策定し、2028年3月期を達成年度とした経営指標を設定しています。収益創出体制の確立による成長の実現を基本方針とし、ROEやPBRの向上を目指しています。また、サステナビリティ経営の推進に向けたKPI(重要業績評価指標)の達成にも取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


「収益創出体制の確立による成長の実現」を目指し、「事業構造改革」「経営資源の最適化」「サステナビリティ経営の発展」を重点施策としています。防衛関連や誘導加熱装置などを成長事業と位置づけ、新規事業の創出やM&A、成長投資にキャッシュを活用する方針です。また、人的資本経営や環境経営も推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「考動できる人財の育成と事業戦略に沿った最適配置」を掲げています。人財管理、スキルアップ支援、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)や健康経営に関する施策を実行し、従業員エンゲージメントの向上を目指しています。また、多様な人財の活躍推進や働き方改革による業務効率化にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 47.0歳 16.0年 5,868,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.2%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 76.9%
男女賃金差異(正規雇用) 73.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 87.5%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 大規模自然災害等


地震や台風などの大規模な自然災害等により、製造ラインの稼働停止など事業遂行に混乱が生じた場合、業績や財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。同社グループでは、BCP(事業継続計画)の整備等により被害の最小化と事業継続に努めています。

(2) 情報セキュリティ


顧客情報や技術情報を保有しており、サイバー攻撃や不正アクセス等によるシステム障害や情報漏洩が発生した場合、社会的信用の失墜等により業績に影響を及ぼす可能性があります。情報セキュリティ対策の拡充や教育訓練等を実施し、リスク回避に努めています。

(3) 事業選択


新規事業の失敗やポートフォリオの見誤りにより、開発コストが無駄になったり業績が悪化したりする可能性があります。同社グループでは、景気変動に左右されない事業基盤の構築を目指し、事業の選択と集中を進める方針です。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。