電気興業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

電気興業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

電気興業は東京証券取引所プライム市場に上場し、各種アンテナなどの電気通信関連事業と誘導加熱装置などの高周波関連事業を展開する企業です。直近の連結業績では、防衛関連や通信設備の需要が堅調に推移したことなどにより売上高・各種利益ともに前年を上回り、増収増益を達成して成長を続けています。


※本記事は、電気興業の有価証券報告書(第100期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 電気興業ってどんな会社?


各種アンテナなどの電気通信関連事業と、誘導加熱装置などの高周波関連事業を主軸に展開する企業です。

(1) 会社概要


1950年6月に電気興業として設立され、1961年10月に東京証券取引所市場第二部に上場後、1990年11月に市場第一部へ指定替えされました。2004年に米国、2012年にタイおよび中国、2017年にメキシコ、2018年に韓国に子会社を設立するなど、通信や熱処理技術を活かしてグローバルに事業を拡大しています。

従業員数は連結で1,024名、単体で574名です。大株主については、筆頭株主が信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位にCGML PB CLIENT ACCOUNT/COLLATERAL、第3位に三井住友銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 19.28%
CGML PB CLIENT ACCOUNT/COLLATERAL 5.10%
三井住友銀行 4.00%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長は近藤忠登史氏が務めており、取締役の社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
近藤忠登史 代表取締役社長 1995年同社入社。海外事業推進統括部北米推進部長、執行役員海外事業統括部統括専任次長、ワイヤレス研究所長などを経て、2021年4月より現職。
浅井貴史 取締役専務執行役員 1995年同社入社。支店統括部中央営業部長兼海外営業部長、管理統括部長兼秘書室長、社長室長などを経て、2026年4月より現職。
下田剛 取締役常務執行役員 1988年同社入社。機器統括部長、海外事業統括部長、管理統括部統括次長、危機管理室長、防衛事業推進室長などを経て、2026年4月より現職。
河原敏朗 取締役執行役員R&D統括センター長 1991年日本電信電話入社。エヌ・ティ・ティ・ドコモ無線アクセス開発部担当部長などを経て2019年同社入社。ワイヤレス研究所長などを経て、2022年4月より現職。
冨居博治 取締役執行役員基幹システム改革推進室長 1991年同社入社。高周波統括部設計部長兼開発部長、執行役員高周波統括部長などを経て、2026年4月より現職。


社外取締役は、塚野英博(元富士通代表取締役副社長CFO)、ジャン=フランソワミニエ(レ・ロワ・マージュ・ジャポン代表取締役)、髙橋篤史(有限責任パートナーズ綜合監査法人最高経営責任者パートナー)、細川昭子(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、電気通信関連事業、高周波関連事業およびその他事業を展開しています。

電気通信関連事業


各種アンテナ、反射板、鉄塔、鉄構などの製作・建設のほか、各種電気通信施設や通信機器の製造・建設、ソリューションシステムの製作・販売などを提供しています。主な顧客は移動通信関連事業者や官公庁、防衛・放送事業者などです。

顧客から製品の販売代金や施設の建設・設置工事などの対価を収益として受け取ります。事業の運営は主に電気興業が担い、デンコーや電興製作所、サイバーコアなどの子会社が製作や加工、販売等で連携して事業を推進しています。

高周波関連事業


自動車関連業界などを主な顧客として、高周波誘導加熱装置の製造・販売や、高周波熱処理の受託加工サービスを提供しています。自動車部品向けの加熱装置や熱処理技術が事業の主力となっています。

顧客に対して高周波誘導加熱装置を販売するほか、熱処理受託加工のサービス利用料や機器のメンテナンス代金などを収益源としています。電気興業を中心に、デンコーテクノヒートなどの子会社が事業を展開しています。

その他事業


同社が所有する土地や建物等をグループ各社などに賃貸する設備貸付事業のほか、太陽光発電システムを活用した売電事業を展開しています。

賃貸物件の利用者からの不動産賃貸料や、太陽光発電によって生み出された電力の販売代金を主な収益源としています。これらの事業は電気興業が主体となって運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一時期減少傾向にありましたが、直近2期では回復に転じて増加しています。利益面についても、一時期は赤字を計上していましたが、直近2期は安定して黒字を確保しており、継続的な収益性の改善が見られます。全体として、業績の立て直しから成長軌道への移行が進んでいる状況です。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 340億円 318億円 289億円 326億円 354億円
経常利益 4億円 -12億円 -15億円 10億円 12億円
利益率(%) 1.3% -3.8% -5.3% 3.1% 3.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 -12億円 -20億円 8億円 19億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに前年を上回っています。売上総利益率は若干低下したものの、販売費及び一般管理費を抑制したことで営業利益率の改善につながっており、本業の稼ぐ力が向上していることが窺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 326億円 354億円
売上総利益 70億円 72億円
売上総利益率(%) 21.5% 20.3%
営業利益 9億円 12億円
営業利益率(%) 2.9% 3.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が26億円(構成比43%)、研究開発費が9億円(同16%)を占めています。売上原価については、製品売上原価が170億円(構成比60%)、完成工事原価が112億円(同40%)となっています。

(3) セグメント収益


主力の電気通信関連事業は、防衛費予算の増額による需要増や通信品質改善に向けた設備投資需要の回復などを背景に売上高を伸ばしています。一方、高周波関連事業では自動車関連分野における設備投資需要の停滞による影響などで、売上高は前年を下回る結果となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
電気通信関連事業 221億円 254億円
高周波関連事業 104億円 100億円
その他 1億円 1億円
連結(合計) 326億円 354億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業が低迷し、事業の見直しが迫られる状況となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -18億円 -25億円
投資CF 4億円 20億円
財務CF -21億円 -22億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「時代のニーズを先取りし、失敗を恐れぬチャレンジ精神の溢れた前向きの企業たることを期す」ことや、「優れた製品を社会に提供し、社会に貢献する」ことを経営理念に掲げています。長年培ってきた電気通信技術や高周波応用技術に関する豊富な知識と経験に基づき、たゆまぬ技術開発の推進と品質向上に努めることで、企業価値を高め社会に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


「一社一家、グループ一家の和の精神をもって発展成長し、社員の生活向上に務める」という経営理念に表れるように、グループ全体が一体となって成長を目指す文化があります。また、「考動」により変革を成し遂げる人財の育成を重視しており、自ら考え行動するチャレンジ精神や多様な価値観を尊重し合う風通しの良い職場風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画(DKK-Plan2028)にて、2028年3月期を達成年度とした経営指標を定めています。また、2027年3月期を目標に株価純資産倍率(PBR)1.0倍超を目指す方針も掲げています。

* 連結営業利益:20億円
* 自己資本当期純利益率(ROE):5%

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画(DKK-Plan2028)では、「収益創出体制の確立による成長の実現」を基本方針に据え、重点施策として事業構造改革、経営資源の最適化、サステナビリティ経営の発展を推進しています。市場成長性と事業収益性を踏まえて事業ポートフォリオを再定義し、防衛関連分野や誘導加熱装置分野などを成長事業と位置づけてリソースを集中投下し、持続的な成長と企業価値の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「考動」により変革を成し遂げる人財の育成を重視し、経営戦略や事業戦略に基づいた計画的な育成と最適配置を推進しています。職務に応じた教育機会の提供による専門性の向上や、多様な人財が能力を発揮できる成長支援を実施しています。さらに、ダイバーシティ研修や働き方改革、健康経営などの社内環境整備に取り組み、働きやすさと働きがいを両立する職場づくりに注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与は東京証券取引所プライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 47.4歳 17.0年 6,492,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.2%
男性育児休業取得率 60.0%
男女賃金差異(全労働者) 77.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 74.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 76.1%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」や「従業員の状況」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(36%)、時間外労働の削減実績(2024年度比17.18%削減)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の取引先への依存


電気通信関連事業においては移動通信関連事業者や放送事業者、高周波関連事業においては自動車関連業界に対する売上への依存度が高い傾向にあります。各業界における顧客の設備投資動向や需要の変化によっては、同社グループの業績および財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 工事契約及び設備据付工事等における収益認識


工事契約等の一部では、履行義務の充足度合いに応じて一定の期間にわたり収益を認識しています。継続的に見積原価総額や予定期間の見直しを行っていますが、設計変更や天災等により当初の前提条件に変更が生じ、見直しが必要となった場合には、業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

(3) 技術部門における人財確保の難航


特に技術部門において、十分な知識と技術を有する人財を計画通りに確保できなかった場合、競争優位性や企業価値の向上が期待できなくなるリスクがあります。同社グループでは、離職理由の分析やモチベーション向上に向けた取り組みを通じて、必要な人財の確保と流出防止に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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