※本記事は、森尾電機株式会社 の有価証券報告書(第94期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 森尾電機ってどんな会社?
森尾電機は、鉄道や自動車、船舶向けの各種電気機器の製造販売を主力とし、不動産賃貸事業も展開する企業です。
■(1) 会社概要
1911年に前身の森尾商会として創業し、1936年に森尾商会製作所を設立しました。1942年に現在の森尾電機へ商号変更し、1962年には東京証券取引所市場第二部へ上場を果たしました。2013年に米国子会社を設立して海外展開を進め、2022年に東証スタンダード市場へ移行しています。
現在の従業員数は連結で218名、単体で197名です。筆頭株主はトーヨーコーポレーションで、第2位は森尾商会、第3位は川崎車両となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| トーヨーコーポレーション | 10.13% |
| 森尾商会 | 9.13% |
| 川崎車両 | 6.77% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は菊地裕之が務めています。社外取締役比率は16.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 菊地裕之 | 代表取締役社長 | 1987年入社。資材本部資材部長、東部営業部長、人事総務部長兼資材部門統括などを経て、2017年常務取締役人事総務部長兼資材部門統括に就任。2018年より現職。 |
| 北澤公夫 | 常務取締役竜ヶ崎工場工場長 | 1977年入社。鉄道事業部技術部長、技術本部長などを経て、2010年取締役技術・品質部門統括兼営業支援に就任。2014年常務取締役竜ヶ崎工場長を経て、2021年より現職。 |
| 大橋貢 | 常務取締役営業兼資材担当 | 1986年入社。営業本部営業第一部長、資材部長などを経て、2014年取締役営業部門統括兼東部営業部長に就任。2018年常務取締役を経て、2023年より現職。 |
| 平野了士 | 取締役海外支援室室長 | 1977年川崎重工業入社。同社車両カンパニー営業本部長、川重車両テクノ代表取締役社長などを歴任。2017年に同社非常勤顧問を経て、同年より現職。 |
| 清水毅 | 取締役経営管理部部長兼内部統制監査担当、IR担当 | 1988年東京都民銀行(現きらぼし銀行)入行。同社立川支店長などを経て、2021年同社入社。2022年取締役経営管理・内部統制監査担当を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、鎌田伸一郎(元東日本旅客鉄道常務取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電気機器製造販売事業」および「不動産関連事業」を展開しています。
■(1) 電気機器製造販売事業
鉄道事業者や鉄道車両メーカー、高速道路会社、防衛省向けに各種電気機器を製造販売しています。具体的には、鉄道用の配電箱や行先表示器、自動車用の自走式標識車、船舶用のLED照明灯や各種情報案内装置などを提供し、交通インフラを支えています。
顧客への製品納入を主たる収益源としています。鉄道関連事業、自動車関連事業、船舶等関連事業の各領域において、同社および米国子会社のMorio USA Corporationが事業を運営しています。
■(2) 不動産関連事業
東京都葛飾区に賃貸マンション4棟、千葉県松戸市に賃貸マンション1棟の計5棟を所有し、不動産賃貸事業を運営しています。安定した収益基盤として、地域に根ざした賃貸物件を提供しています。
入居者からの賃貸収入を主な収益源としています。同社が自社で物件の管理と運営を担い、堅調な売上を維持することで、グループ全体の事業ポートフォリオにおける安定的な収益確保に貢献しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
同社の売上高は、一時的な減少が見られたものの、直近では80億円台から90億円台で推移しています。経常利益についても、一時落ち込んだ時期を経て直近は大幅な改善を示しており、利益率も大きく向上する傾向にあります。鉄道関連事業などの堅調な受注が寄与し、収益性の向上が進んでいることが伺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 85億円 | 79億円 | 74億円 | 92億円 | 86億円 |
| 経常利益 | 5億円 | 3億円 | 3億円 | 7億円 | 9億円 |
| 利益率(%) | 5.4% | 3.6% | 4.6% | 8.1% | 10.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 2億円 | 2億円 | 4億円 | 4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少したものの、売上総利益および営業利益はともに増加しており、各利益率も向上しています。収益性の高い事業への注力やコストコントロールの効果により、利益体質が強化されていることがわかります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 92億円 | 86億円 |
| 売上総利益 | 19億円 | 20億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.2% | 23.3% |
| 営業利益 | 7億円 | 9億円 |
| 営業利益率(%) | 8.0% | 9.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給与が3.4億円(構成比30%)、荷造運搬費が1.0億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の電気機器製造販売事業では、自動車関連や船舶等関連事業での売上減少が響き、前年を下回りました。一方で不動産関連事業は安定した賃貸収入により前年と同水準を維持しており、全体としては減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 電気機器製造販売事業 | 91億円 | 85億円 |
| 不動産関連事業 | 1.5億円 | 1.5億円 |
| 連結(合計) | 92億円 | 86億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
当期のキャッシュ・フローは、営業活動で利益を確保しつつ、借入等の財務活動で資金を調達し、投資活動に充てる「積極型」の状況となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -0.9億円 | 0.5億円 |
| 投資CF | -1.0億円 | -2.3億円 |
| 財務CF | 1.4億円 | 1.5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.5%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「電気機器を通じて交通インフラの発展に寄与する」ことを使命としています。また、社是として「第一条 我々は電機事業を通じて社会の繁栄に貢献する。第二条 我々は積極果敢な商品開発と市場創造に努力する。第三条 我々は三者共栄(社会、顧客、従業員)の精神で繁栄に努力する。」を掲げています。
■(2) 企業文化
「環境変化が激しい時代だからこそ、常に社是に立ち返って、足下を固め、着実な成長を目指して努力する」という姿勢を重視しています。また、活発なコミュニケーションがとれる企業文化を醸成し、ビジョンや戦略の実現に向けて組織全体が一体となって取り組むことを行動様式としています。
■(3) 経営計画・目標
積極的な営業活動と生産性の向上に努め、コストダウンを実現することで利益目標の達成を目指しています。株主の期待に応えるため、「自己資本当期純利益率(ROE)」を主要な経営指標として位置づけ、企業価値の継続的な向上を図っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
既存事業である少量多品種生産の効率化と品質向上を図り、製品の付加価値向上を目指しています。また、成長する海外市場での評価を得るための体制づくりや、米国現地法人を中心とした海外向け鉄道車両案件への積極的な対応、さらには次世代のものづくりに向けたデジタル技術の活用と技能伝承を重点施策として推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を持続的成長を牽引する重要な資本と位置づけ、多様な人材の確保と育成に取り組んでいます。外国人実習生を含む全従業員が能力を発揮できる環境整備や、階層別教育、通信教育を通じたキャリア形成支援を実施し、ワーク・ライフ・バランスの充実による「働きやすさ」の向上にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.6歳 | 18.9年 | 5,553,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、入社5年目までの社員の通信教育受講率(100.0%)、有給休暇取得率(82.0%)、労働者一月当たりの平均残業時間(17.7時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定業界への高い依存度
同社の主力である鉄道車両産業は成熟しており、国内外の代替需要や新線建設などの需要変動に影響されやすい環境にあります。また、海外子会社も受注が鉄道関連事業に限定されているため、同業界の動向が業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 受注・納期等の変動
鉄道車両は、代替需要の規模や海外車両案件の発生などにより、受注や納期が特定の時期に集中する傾向があります。これに対して生産や出荷に機敏に対応できない場合、同社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。



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