※本記事は、森尾電機株式会社 の有価証券報告書(第93期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 森尾電機ってどんな会社?
鉄道車両や自動車・船舶向けの電気機器を製造・販売するメーカーで、交通インフラを支える製品を提供しています。
■(1) 会社概要
同社は1911年5月に森尾商会として創業し、1936年12月に株式会社森尾商会製作所を設立しました。1962年9月に東京証券取引所市場第二部に上場し、2022年4月の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行しました。2013年8月には米国事業展開のため、子会社Morio USA Corporationを設立しています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は229名、単体では207名です。筆頭株主は資産管理業務を行う株式会社SMBC信託銀行で、第2位は創業家資産管理会社と思われる有限会社森尾商会、第3位は主要取引先である鉄道車両メーカーの川崎車両株式会社です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| SMBC信託銀行 | 9.92% |
| 有限会社森尾商会 | 8.98% |
| 川崎車両 | 6.66% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は菊地裕之氏が務めています。取締役6名のうち社外取締役は1名で、社外取締役比率は16.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 菊 地 裕 之 | 代表取締役社長 | 1987年4月同社入社。資材部長、人事総務部長を経て、2014年取締役就任。2017年常務取締役人事総務部長兼資材部門統括を経て、2018年6月より現職。 |
| 北 澤 公 夫 | 常務取締役竜ヶ崎工場工場長 | 1977年4月同社入社。技術本部長、執行役員等を経て2010年取締役就任。2014年より常務取締役竜ヶ崎工場工場長を務め、2021年10月より現職。 |
| 大 橋 貢 | 常務取締役営業兼資材担当 | 1986年4月同社入社。営業第一部長、資材部長等を歴任し、2014年取締役就任。営業部門統括を経て2018年常務取締役就任。2023年4月より現職。 |
| 平 野 了 士 | 取締役海外支援室室長 | 1977年4月川崎重工業入社。同社車両カンパニー営業本部長、川重車両テクノ代表取締役社長を経て、2017年4月同社顧問。同年6月より現職。 |
| 清 水 毅 | 取締役経営管理部部長兼内部統制監査担当 | 1988年4月東京都民銀行(現きらぼし銀行)入行。支店長、人事部部付部長等を経て2021年同社入社。2022年6月取締役就任、同年11月より現職。 |
社外取締役は、鎌田伸一郎(元セントラル警備保障取締役会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電気機器製造販売事業」および「不動産関連事業」事業を展開しています。
■電気機器製造販売事業
鉄道関連事業では配電箱、行先表示器、LED照明器具等を鉄道事業者や車両メーカーへ提供しています。自動車関連事業では高速道路会社等へ標識車や情報装置を、船舶等関連事業では防衛省等へLED照明灯や艦艇用器具等を製造販売しています。
収益は、鉄道事業者、鉄道車両メーカー、高速道路会社、防衛省等の顧客に対する製品の販売によって得ています。運営は主に森尾電機が行っており、米国においては連結子会社であるMorio USA Corporationが鉄道車両用電気機器の製造販売を行っています。
■不動産関連事業
東京都葛飾区および千葉県松戸市において、賃貸マンション計5棟の不動産賃貸事業を運営しています。安定的な収益源として、地域の住環境を提供しています。
収益は、賃貸マンションの入居者からの賃貸料収入によって得ています。運営は森尾電機が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 96億円 | 85億円 | 79億円 | 74億円 | 92億円 |
| 経常利益 | 3.4億円 | 4.6億円 | 2.8億円 | 3.4億円 | 7.4億円 |
| 利益率(%) | 3.5% | 5.4% | 3.6% | 4.6% | 8.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.6億円 | 3.8億円 | 2.1億円 | 2.3億円 | 4.3億円 |
直近5期間の業績を見ると、売上高は一時減少傾向にありましたが、2025年3月期に大きく回復し90億円台に乗せました。利益面でも2025年3月期は大幅な増益となり、利益率は8.1%まで向上しています。
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績推移を見ると、売上高は前期比で大幅に増加し、それに伴い売上総利益も拡大しています。利益率も改善傾向にあり、営業利益は倍増以上の伸びを示しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 74億円 | 92億円 |
| 売上総利益 | 14億円 | 19億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.6% | 20.2% |
| 営業利益 | 3.4億円 | 7.4億円 |
| 営業利益率(%) | 4.6% | 8.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給与が3.4億円(構成比30%)、荷造運搬費が1.1億円(同9%)を占めています。売上原価においては、材料費や外注加工費等が主要な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
電気機器製造販売事業は、鉄道関連や船舶等関連の需要増により大幅な増収増益となりました。不動産関連事業は、安定的に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 電気機器製造販売事業 | 73億円 | 91億円 | 4.1億円 | 7.9億円 | 8.7% |
| 不動産関連事業 | 1.5億円 | 1.5億円 | 0.7億円 | 0.8億円 | 53.4% |
| 調整額 | - | - | -1.4億円 | -1.3億円 | - |
| 連結(合計) | 74億円 | 92億円 | 3.4億円 | 7.4億円 | 8.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
**勝負型**(営業CF -、投資CF -、財務CF +)
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6.0億円 | -0.9億円 |
| 投資CF | -2.3億円 | -1.0億円 |
| 財務CF | -3.1億円 | 1.4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は創業以来、「電気機器を通じて交通インフラの発展に寄与する」ことを使命として事業を展開しています。今後も電気機器製造販売事業を主力とし、環境変化の激しい時代においても社是に立ち返り、足下を固めて着実な成長を目指すことで、企業価値を継続的に向上させることを方針としています。
■(2) 企業文化
同社は社是として、「電機事業を通じて社会の繁栄に貢献する」「積極果敢な商品開発と市場創造に努力する」「三者共栄(社会、顧客、従業員)の精神で繁栄に努力する」の3つを掲げています。多品種少量生産の環境下で顧客第一主義を貫き、新技術開発に挑戦し続けることで、信頼される企業となることを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、積極的な営業活動と生産性向上、コストダウンによる利益目標の達成を目指しています。また、株主の期待に応えるため、自己資本当期純利益率(ROE)を主要な経営指標として位置づけています。
■(4) 成長戦略と重点施策
持続的成長の実現に向け、経営人材を含む多様な人材の育成・確保や、既存事業の強化として少量多品種生産の効率化と品質向上を図ります。また、竜ヶ崎事業所の設備更新による生産性向上、新製品開発による高付加価値化、デジタル技術の活用などを推進します。海外向けには、米国法人を中心に鉄道車両案件へ積極的に取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、持続的成長を牽引できる経営人材をはじめとした多様な人材の育成・確保に取り組んでいます。デジタル技術を活用できる人材の育成や、長年培ってきたものづくりの技術・技能を次世代へ伝承することに注力し、多様な人材が活躍できる環境整備を推進しています。また、通信教育の受講料全額負担など、社員の学びを支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.7歳 | 18.1年 | 5,132,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(78.3%)、労働者一月当たりの平均残業時間(16.2時間)、健康診断受診率(96.12%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定業界への高い依存度
同社グループの主力である鉄道車両産業は成熟化しており、国内外の車両代替需要や新線建設等の需要変動の影響を受けます。海外子会社も受注が鉄道関連事業に限定されているため、同業界の動向がグループ全体の業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 受注・納期等の変動
鉄道車両事業において、代替需要の規模や海外案件の発生などにより、受注や納期が時期的に集中することがあります。これらの変動に対して生産・出荷体制を機敏に対応させることが求められ、その対応いかんによっては経営成績や財政状態に大きな影響を与える可能性があります。



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