FDK 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

FDK 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

FDKは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、アルカリ乾電池やニッケル水素電池などの電池事業と、スイッチング電源等の電子事業を展開しています。直近の業績トレンドは、電池事業でリチウム電池が国内向けに増加した一方、設備関連ビジネスの減少で減収となりましたが、コストダウンにより増益を達成しました。


※本記事は、FDK株式会社の有価証券報告書(第97期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. FDKってどんな会社?


電池およびエレクトロニクス関連素材・部品の製造販売を手掛け、安全な電気エネルギーを提供する企業です。

(1) 会社概要


1950年に東京電気化学工業として発足し、乾電池の生産を開始しました。1958年に富士電気化学へ社名変更し、1969年に東京証券取引所市場第二部へ上場を果たしました。2001年に現在のFDKへ社名変更しています。2025年には公開買付けを経てSILITECH TECHNOLOGY CORPORATIONが筆頭株主となりました。

現在の同社グループは、連結従業員数2,420名、単体1,506名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は事業会社であるSILITECH TECHNOLOGY CORPORATIONで、第2位はかつての親会社である富士通です。

氏名 持株比率
SILITECH TECHNOLOGY CORPORATION(常任代理人 釜屋電機) 45.00%
富士通 17.60%
BNP PARIBAS LONDON BRANCH FOR PRIME BROKERAGE CLEARANCE ACC FOR THIRD PARTY(常任代理人 香港上海銀行東京支店) 0.96%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役執行役員社長は長野良が務めており、社外取締役比率は71.4%となっています。

氏名 役職 主な経歴
長野良 代表取締役執行役員社長 1985年富士通へ入社。同社財務経理部本部VP等を歴任。2019年同社執行役員常務等を経て、2019年より現職。
平野芳晴 取締役執行役員 1990年同社へ入社。同社総務部長兼広報・IR室長等を歴任。2020年同社取締役、コーポレート本部長を経て、2024年より現職。


社外取締役は、酒向潤一郎(富士通ビジネスマネジメント本部エグゼディレクター)、徐幼珍(SILITECH TECHNOLOGY CORPORATION President)、粟津瑞恵(カラフルな旅路代表取締役)、陳怡光(双信電機代表取締役社長)、山﨑頼良(山﨑公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電池事業」および「電子事業」の2つの報告セグメントで事業を展開しています。

電池事業


アルカリ乾電池、ニッケル水素電池、リチウム電池、マンガン乾電池、蓄電システム、各種強力ライト、電池製造設備の製造および販売を行っています。顧客は国内外のセキュリティ機器やスマートメータ、住宅用警報器メーカー、一般消費者など多岐にわたります。

収益源は、これら電池製品や関連設備の販売代金です。運営は主に同社が行うほか、子会社のFDKエンジニアリングが電池製造設備の製作を行い、海外の製造・販売拠点としてXIAMEN FDK CORPORATIONやBAOTOU FDK CO., LTD.などが担っています。

電子事業


スイッチング電源、トナー、各種モジュールなどのエレクトロニクス関連分野の素材・部品の製造および販売を行っています。主な顧客は、半導体製造装置メーカーやモビリティ・タブレット関連のセットメーカーなどのエレクトロニクス関連企業です。

収益源は、これら電子部品やモジュール製品の販売代金です。運営は主に同社が担うほか、子会社のFDKパートナーズが電子製品の外注加工等を行い、海外ではFUCHI ELECTRONICS CO.,LTD.などが製造および販売を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は600億円前後で概ね横ばい傾向が続いていましたが、当期はやや減少しています。一方、経常利益は原材料価格の変動への対応や徹底的な経費削減等の効果もあり、直近2期連続で増益を達成しており、利益率は改善傾向にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 615億円 628億円 627億円 632億円 596億円
経常利益 20億円 9億円 7億円 13億円 14億円
利益率(%) 3.2% 1.4% 1.1% 2.0% 2.4%
当期利益(親会社所有者帰属) -2億円 -6億円 -6億円 4億円 10億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益を比較すると、当期は売上高が減少したものの、売上原価の低減が進んだことで売上総利益率は上昇しています。さらに、販売費及び一般管理費を圧縮したことで、営業利益は前期を上回り、営業利益率も改善を見せています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 632億円 596億円
売上総利益 114億円 113億円
売上総利益率(%) 18.0% 19.0%
営業利益 14億円 17億円
営業利益率(%) 2.2% 2.8%


販売費及び一般管理費(96億円)のうち、従業員給料・諸手当が40億円(構成比41%)、運送費・梱包費が9億円(同9%)、研究開発費が8億円(同8%)を占めています。売上原価(483億円)についても、材料使用量の低減や技術VE(価値工学)を通じたコストダウンに取り組んでいます。

(3) セグメント収益


セグメント別の収益を見ると、主力の電池事業はリチウム電池が増加したものの、ニッケル水素電池や設備関連ビジネスが減少して全体として減収となりました。しかし、原材料価格の変動や技術VEによるコストダウン効果で増益となっています。電子事業はトナーが増加したものの、モジュール等の減少により減収減益(営業損失)となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
電池事業 490億円 482億円 11億円 17億円 3.5%
電子事業 142億円 113億円 3億円 -0.4億円 -0.3%
連結(合計) 632億円 596億円 14億円 17億円 2.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う「積極型」の状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 38億円 11億円
投資CF -28億円 -23億円
財務CF 0.2億円 13億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も40.2%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「FDKグループは、Smart Energy Partnerとして、先進技術を結集し、お客様に電気エネルギーを安心して効率的に活用いただき、持続可能な社会の実現と発展に貢献します」をVision(経営理念)として掲げています。クリーンかつ安全な電気エネルギーを安定的に活用できるソリューションを提供し、持続可能な社会に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、経営理念である「進化に挑戦 輝く未来と笑顔のために」のもと、中期事業計画の柱の一つとして「失敗に学び、成長を実感できる文化の醸成」を掲げています。挑戦と失敗を次の成長に繋げる企業文化の醸成を推進し、多様な人材が互いの価値観を尊重し合いながら、自律的に学び成長できる組織づくりを重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、FDK戦略Framework「10年の計」に基づき、2029年度のあるべき姿として以下の数値目標を掲げています。また、次期中期事業計画「R3」(2026年度〜2028年度)の期間累計目標も設定しています。

・2029年度目標:売上高800億円(うち新事業30%)、営業利益率7.5%
・「R3」期間累計目標:売上高2,000億円、営業利益70億円、ROIC5.5%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は次期中期事業計画「R3」において、「現行ビジネスの多角的拡大」「事業ポートフォリオの多様化」「失敗に学び、成長を実感できる文化の醸成」を柱としています。顧客ポートフォリオの拡大や製造体制の最適化で成長市場の開拓と付加価値の増大を図るほか、次世代電池ならびに革新型電池の開発加速による新規ビジネスの創出を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、人材を企業価値向上の源泉となる重要な経営資本と位置付け、「人材価値の強化」「働きがい改革」「働く環境改革」を重点領域としています。従業員一人ひとりが自律的に学び、挑戦し、能力を最大限に発揮できる組織づくりを推進し、多様な人材の活躍推進やエンゲージメントの持続的な向上に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 47.2歳 22.3年 5,966,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.3%
男性育児休業取得率 45.5%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 78.3%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 79.5%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 88.4%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.50%)、コンプライアンス教育Eラーニング受講者数(1,720名)、道場への参加者数(154名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 投資判断に関するリスク


電池およびエレクトロニクス分野において、競争力維持のために多額の研究開発投資や設備投資などが必要です。有望と考えた市場や技術が想定ほど成長しない場合や、需要変動・価格下落が予想以上に早くおきる場合、同社の業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 人材に関するリスク


同社の成長と利益は人材に大きく依存しています。経営者や優秀な技術者などの必要な人材を採用・育成できない場合や、優秀な人材の流出を防止できない場合、事業展開に支障をきたし、同社の成長や利益に悪影響を及ぼすリスクがあります。また、労務問題による社会的な企業評価の毀損につながる可能性も存在します。

(3) 環境に関するリスク


同社グループは環境保全への取り組みを経営の重点課題に位置付けていますが、事業活動を通じて環境汚染が発生しないという保証はありません。工場跡地の土壌および地下水の浄化活動等を行っており、今後新たな汚染が判明した場合には、社会的な信用低下や浄化処理などの対策費用発生により損益に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 情報セキュリティに関するリスク


お客様や取引先、同社グループの秘密情報や個人情報の保護のため、社内規程の制定や教育、情報インフラ整備等の対策を実施しています。しかし、サイバー攻撃などの不正アクセスによる情報漏洩やシステムの運用困難が発生した場合、同社の信用低下や法的責任が生じ、事業に悪影響を及ぼすおそれがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。