FDK 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

FDK 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場のFDKは、ニッケル水素電池やリチウム電池などの電池事業と、電子部品を扱う電子事業を展開するメーカーです。2025年3月期の連結業績は、売上高632億円で前期比増収となり、経常利益も13億円と大幅な増益を達成しました。主力製品の販売増や円安効果等が寄与しています。


※本記事は、FDK株式会社 の有価証券報告書(第96期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. FDKってどんな会社?


ニッケル水素電池やリチウム電池などの電池製品と、電子部品の開発・製造・販売を行う古河グループ由来のメーカーです。

(1) 会社概要


同社は1950年に東京電気化学工業として発足し、乾電池の生産を開始しました。1958年に富士電気化学へ社名を変更し、1972年には富士通の資本参加により同社グループ入り。2001年に現社名のFDKへ変更しています。2025年3月にはSILITECH TECHNOLOGY CORPORATIONが筆頭株主となり、新たな資本構成のもとで事業を展開しています。

同社の従業員数は連結で2,405名、単体で1,556名です。筆頭株主は台湾の電子部品メーカーであるSILITECH TECHNOLOGY CORPORATIONで、第2位はかつての親会社である富士通です。第3位は資産管理業務を行う信託銀行の決済口座となっています。

氏名 持株比率
SILITECH TECHNOLOGY CORPORATION 45.00%
富士通 17.60%
BNY GCM CLIENT ACCOUNT JPRD AC ISG (FE-AC) 1.09%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役執行役員社長は長野良氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
長野 良 代表取締役執行役員社長 1985年富士通入社。同社海外拠点の要職を経て2019年4月にFDK入社。同年6月より現職。
平野 芳晴 取締役執行役員 1990年FDK入社。総務人事統括部長、FDKパートナーズ代表取締役社長等を経て2020年6月より現職。
酒向 潤一郎 取締役 2004年富士通入社。同社関連事業本部長等を経て、2024年6月より現職。
渡辺 伸之 取締役(監査等委員) 1990年富士通入社。同社物流部門の要職やFDK執行役員を経て2023年6月より現職。


社外取締役は、村嶋純一(元富士通ゼネラル代表取締役会長)、藤原正洋(元富士電機取締役)、粟津瑞恵(Honu Aloha設立者)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電池事業」および「電子事業」を展開しています。

(1) 電池事業


日本、米州、欧州およびアジアの顧客に対して、アルカリ乾電池、ニッケル水素電池、リチウム電池、マンガン乾電池などの各種電池や、蓄電システム、各種強力ライト、電池製造設備等の製造販売を行っています。

収益は、これらの製品を顧客に引き渡すことで得られる対価からなります。また、設備関連ビジネスの一部では工事の進捗度に基づき収益を認識しています。運営は主にFDKが行い、製造設備の製作は株式会社FDKエンジニアリング、海外製造はBAOTOU FDK CO., LTD.やXIAMEN FDK CORPORATION等の子会社が担当しています。

(2) 電子事業


日本およびアジアの顧客に対して、スイッチング電源、トナー、各種モジュールなど、エレクトロニクス関連分野の素材・部品等の製造販売を行っています。

収益は、製品を顧客に引き渡すことで得られる販売対価からなります。運営は主にFDKが行い、一部製品の製造・加工等をFDKパートナーズ株式会社や海外子会社のFUCHI ELECTRONICS CO., LTD.、XIAMEN FDK CORPORATION等が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高は610億円から630億円前後で安定的に推移しています。利益面では、2021年3月期は高い水準にありましたが、その後低下し、2024年3月期には当期利益が1億円台まで縮小しました。しかし、直近の2025年3月期には経常利益、当期利益ともに回復傾向を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 615億円 615億円 628億円 627億円 632億円
経常利益 13億円 20億円 9億円 7億円 13億円
利益率(%) 2.1% 3.2% 1.4% 1.1% 2.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 23億円 7億円 3億円 1億円 5億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は微増ながら、売上総利益が大きく改善しており、利益率も向上しています。営業利益は前期の約2.5倍に増加しました。これは売上原価の低減や円安効果などが寄与した結果と考えられます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 627億円 632億円
売上総利益 99億円 114億円
売上総利益率(%) 15.8% 18.0%
営業利益 6億円 14億円
営業利益率(%) 0.9% 2.2%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料・諸手当が40億円(構成比40%)、運送費・梱包費が8億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


電池事業はニッケル水素電池や設備関連ビジネスの好調により増収となり、利益も大幅に増加しました。一方、電子事業はスイッチング電源やトナーの減少により減収減益となっています。全社的には電池事業の好調が業績を牽引しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
電池事業 477億円 490億円 3億円 11億円 2.3%
電子事業 149億円 142億円 3億円 3億円 1.8%
調整額 - - - - -
連結(合計) 627億円 632億円 6億円 14億円 2.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のCF状況は、営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスであることから「積極型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 16億円 38億円
投資CF -25億円 -28億円
財務CF 18億円 0.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.4%でスタンダード市場平均(7.2%)を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も35.2%でスタンダード市場製造業平均(57.5%)を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「Smart Energy Partnerとして、先進技術を結集し、お客様に電気エネルギーを安心して、効率的に活用いただき、持続可能な社会の実現と発展に貢献する」というVisionを掲げています。クリーンかつ安全な電気エネルギーを安定的に活用できる製品を提供することで、ステークホルダーの期待に応えることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、中期事業計画において「認め合い・高め合う文化の醸成」に努めるとしています。ステークホルダーすべてに応えるため、従業員各自が能力を発揮できる仕組みの構築や、ガバナンスを含む経営の質の向上を重視する姿勢を持っています。また、多様な人材を受け入れ活かすダイバーシティの推進にも取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は「10年の計」および中期事業計画「R2」を推進しており、最終年度である2026年3月期の目標として以下の数値を掲げています。

* 売上高:680億円
* 営業利益率:4.1%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「Smart Energy Partner」としてのミッションを果たすべく、ニッケル水素電池、リチウム電池、電子事業の3事業の強化により事業のレジリエンスを高める方針です。

* 主力ビジネスの利益ある成長の加速:伸びる市場・付加価値の高い市場への注力。
* 新規ビジネスの始動と開拓:次世代電池ビジネス(ニッケル亜鉛電池、全固体電池等)およびソリューションビジネスの本格稼働と要素開発。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「地球と社会に貢献する人材の育成」を目標に、次世代ビジネスリーダーやプロフェッショナル人材、グローバル人材の育成に注力しています。タレントマネジメントの実施や昇格前研修の充実を図るとともに、シニア社員制度や一般職人事制度の改定による社内環境整備を進めています。また、従業員が自律的に学ぶ「道場」制度等を通じて組織力の強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.8歳 21.8年 5,669,000円


※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.8%
男性育児休業取得率 16.0%
男女賃金差異(全労働者) 77.4%
男女賃金差異(正規雇用) 78.3%
男女賃金差異(非正規) 89.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.54%)、道場参加人数(160名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 価格競争の激化


同社が属する電池およびエレクトロニクス分野では価格競争が厳しく、競争の激化に直面する可能性があります。コストダウンが価格下落や調達価格の変動に追いつかない場合や、価格圧力による顧客離れが生じた場合、業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替レートの変動


同社は海外展開を進めており、外貨建て取引を行っています。米ドル等の為替の急激な変動は海外ビジネスの売上・損益や製品の価格競争力に影響します。また、連結財務諸表作成時の円換算においても、為替レートにより資産・負債等の価値が変動し、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 新製品開発力と技術革新


エレクトロニクス分野は技術進歩が早く、製品の陳腐化が急速に進みます。市場変化を予測できず魅力ある新製品を開発できない場合や、他社による画期的な新技術の登場により同社製品の価値が低下した場合、将来の成長と収益性が低下し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 原材料調達とサプライヤー


原材料の調達について複数購買等で安定化を図っていますが、材料価格の高騰、供給不足、災害、品質問題等が発生した場合、生産活動に支障をきたし、業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。特にニッケル、亜鉛、リチウム等の主要材料は市況変動の影響を受けやすくなっています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。