指月電機製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

指月電機製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場のコンデンサメーカー。フィルムコンデンサを中核に、電力機器システムなどの製造販売を行っています。直近の業績は、産業機器用や電力機器システムが好調で、売上高273億円、経常利益18億円と増収増益を達成しました。中期経営計画では、コンデンサと電力機器の融合によるシナジー創出を掲げています。


※本記事は、株式会社指月電機製作所 の有価証券報告書(第97期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 指月電機製作所ってどんな会社?


同社は、電子機器や電力設備に不可欠な「コンデンサ」および関連する電力機器システムの開発・製造・販売を行うメーカーです。

(1) 会社概要


1939年に指月製作所として創業し、1947年に再発足しました。1961年に大阪証券取引所市場第二部、1963年に東京証券取引所市場第二部へ上場を果たしています。2003年には委員会等設置会社(現 指名委員会等設置会社)へ移行し、ガバナンス体制を強化しました。2016年には村田製作所との合弁会社を設立するなど、技術連携も進めています。

現在の従業員数は連結1,209名、単体281名です。筆頭株主は同社製品の主要な販売先でもある事業会社の三菱電機で、第2位は資本業務提携を結んでいる村田製作所、第3位はりそな銀行となっています。

氏名 持株比率
三菱電機 27.64%
村田製作所 17.70%
りそな銀行 4.13%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性0名で構成され、女性役員比率は0.0%です。取締役・代表執行役社長は足達信章氏が務めています。取締役6名のうち3名が社外取締役であり、社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
足達 信章 取締役
代表執行役社長
1983年同社入社。技術統括や秋田指月社長を経て、2019年より現職。
大槻 正教 取締役 元三菱電機役員理事。同社常務執行役経営企画担当等を経て、2025年より現職。
小山 義雄 取締役 元りそな銀行天六エリア営業部長。同社総務部長、執行役人事部長を経て2020年より現職。


社外取締役は、谷和義(元バンドー化学社長)、松尾誠人(元りそな銀行専務執行役員)、奥西啓祐(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コンデンサ・モジュール」および「電力機器システム」事業を展開しています。

(1) コンデンサ・モジュール


産業機器用、自動車用(xEV向け)、民生機器用などの各種フィルムコンデンサおよび関連モジュール製品を製造・販売しています。脱炭素社会の実現に向けた電動化ニーズに対応する主要製品群です。

収益は主に製品の販売対価として顧客から受領します。運営は同社が仕入れ販売を行うほか、製造は連結子会社の秋田指月、九州指月、岡山指月、および米国・タイの海外子会社等が担当しています。

(2) 電力機器システム


省エネルギーや電力品質の改善に寄与する力率改善装置、高調波抑制装置、瞬時電圧低下補償装置などの電力機器システム製品を製造・販売しています。安定操業や省エネニーズに応えるソリューションを提供します。

収益は製品およびシステムの販売対価として顧客から受領します。運営は同社が製造販売を行うほか、連結子会社の九州指月やタイの海外子会社等が製造・販売を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあります。特に当期は売上高273億円となり、過去最高を更新しました。経常利益も前期の落ち込みから回復し、18億円と大幅な増益を達成しています。利益率は6%台まで改善しており、収益性が向上しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 218億円 239億円 261億円 263億円 273億円
経常利益 11億円 14億円 12億円 11億円 18億円
利益率(%) 5.1% 5.7% 4.7% 4.3% 6.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 12億円 9億円 6億円 7億円 13億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に加え、売上総利益率が改善したことで営業利益が大きく伸長しました。前期は営業利益率が4%台でしたが、当期は7%台へと上昇しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 263億円 273億円
売上総利益 59億円 70億円
売上総利益率(%) 22.5% 25.7%
営業利益 11億円 20億円
営業利益率(%) 4.2% 7.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賃金が13億円(構成比26%)、開発費が6億円(同11%)を占めています。売上原価においては、材料費などが主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


コンデンサ・モジュール事業はxEV向けの調整局面があり微減収でしたが、利益は確保しています。一方、電力機器システム事業は国内需要の増加により大幅な増収増益となり、全社の業績拡大を牽引しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
コンデンサ・モジュール 184億円 181億円 9億円 12億円 6.8%
電力機器システム 79億円 92億円 20億円 27億円 28.8%
調整額 - - -18億円 -19億円 -
連結(合計) 263億円 273億円 11億円 20億円 7.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で得た資金と、新たな資金調達を組み合わせて積極的な投資を行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -3億円 36億円
投資CF -21億円 -26億円
財務CF -25億円 3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.2%で市場平均(7.2%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.0%で市場平均(57.5%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「人間性を尊重し、環境を大切にする無駄のない物づくりにより、お客様に満足を提供し、社業の発展を通して社会に貢献します」という基本方針を掲げています。企業倫理を基盤とし、ステークホルダーへの責任を果たすとともに、「安心安全で快適な社会の実現」や「持続可能な地球環境の実現」を目指しています。

(2) 企業文化


NPS(New Production System)を源流とする独自の統合マネジメントシステム「∫IΣS(シムス)」を活動の基軸としています。これは生産面の最大効率を追求するだけでなく、開発・営業・物流など全社的な業務効率化へと展開されており、いかなる環境変化にも機敏に適応しうる企業体質の構築を目指す文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


2028年度を最終年度とする長期経営ビジョンに基づき、中期経営計画を推進しています。第Ⅲ期(2025~2028年度)では、「企業価値向上に向け 融合からシナジーへ」をテーマとしています。

* 売上高:380億円
* 営業利益率:8%
* ROE:8%
* 配当性向:30%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「知の融合」を拡大し、組織間連携によるシナジー創出と競争力強化を図ります。コンデンサ製品を軸に、xEV事業と産業機器事業を統合して効率化を進めるほか、電力機器システムではコンデンサとの機能統合により、エネルギーマネジメントにおける革新的なソリューションビジネスの確立を目指します。

* 事業ポートフォリオ戦略の見直しと最適資源配分
* 持続的成長のための人材確保・能力向上と生産体制の強化
* ROE経営の推進(収益性改善、資産効率向上、株主還元の充実)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人的資本の強化」を掲げ、「挑戦」をキーワードとした個人の能力向上と組織間連携の強化を推進しています。単なる人員確保にとどまらず、部門を超えたノウハウの展開や「知の融合」を促進するため、挑戦する人材を評価する人事処遇制度の導入や、階層別研修の充実を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.1歳 12.0年 6,027,888円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.7%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 75.0%
男女賃金差異(正規雇用) 74.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 75.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職候補層における女性比率(14.6%)、従業員意識調査の肯定評価(55.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 主要顧客の生産動向への依存


顧客の大部分はメーカーであり、同社グループの業績は顧客の設備投資や生産計画の影響を大きく受けます。市場動向の把握や顧客情報の収集・蓄積に努め、顧客満足度の高い商品をタイムリーに提供することでリスク軽減を図っています。

(2) 製品品質と製造物責任


多種多様な製品を製造していますが、商品に欠陥等の問題が生じた場合、顧客への損害賠償責任が発生し、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。品質管理体制を整備し対応していますが、潜在的なリスクとして認識されています。

(3) 為替変動および原材料価格の高騰


事業には輸出入が含まれるため、為替相場の変動や関税政策の影響を受ける可能性があります。また、主要製品の原材料やエネルギー価格の高騰は業績に影響を与える要因となります。生産性改善や原価低減、販売価格の適正化等により対応を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。