指月電機製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

指月電機製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

指月電機製作所は、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、フィルムコンデンサを中核としたコンデンサ・モジュールや電力機器システムを製造・販売する企業です。直近の業績では、国内設備投資の拡大により力率改善用機器などの売上が伸長し、売上高、各利益項目ともに過去最高を更新する増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社指月電機製作所の有価証券報告書(第98期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 指月電機製作所ってどんな会社?


フィルムコンデンサを中核としたコンデンサ・モジュールや電力機器システムを展開するメーカーです。

(1) 会社概要


1939年に創業し、1947年に再発足しました。1961年に大阪証券取引所市場第二部、1963年に東京証券取引所市場第二部へ上場しました。その後、岡山、秋田、九州に国内製造拠点を設立し、米国、中国、タイへと海外進出も果たしています。

従業員数は連結で1,166名、単体で275名です。筆頭株主は事業会社の三菱電機で、第2位は資本業務提携関係にある事業会社の村田製作所です。

氏名 持株比率
三菱電機 22.85%
村田製作所 17.70%
りそな銀行 3.96%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性0名の計12名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は稲垣裕一氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
稲垣裕一 取締役代表執行役社長 1990年同社入社。常務執行役産業機器事業部長などを経て2026年4月より現職。
三野克也 取締役常務執行役企画本部長兼コンプライアンス担当 1990年三菱電機入社。同社財務部長等を経て、2026年4月より現職。
足達信章 取締役 1983年同社入社。専務執行役や代表執行役社長等を経て、2020年6月より現職。
小山義雄 取締役 1982年協和銀行入行。りそな銀行支店長や同社総務部長等を経て2020年6月より現職。


社外取締役は、松尾誠人(元埼玉りそな銀行代表取締役)、松尾聡(元バンドー化学常務執行役員)、御厨忠章(御厨忠章公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コンデンサ・モジュール」および「電力機器システム」事業を展開しています。

(1) コンデンサ・モジュール


フィルムコンデンサを中核とし、自動車(xEV)、産業機器、民生機器などに向けた各種コンデンサやモジュールを製造・販売しています。国内外のメーカーが主な顧客となっています。

製品の販売を通じて顧客から対価を得る収益モデルです。運営は同社のほか、九州指月、秋田指月、岡山指月、アメリカンシヅキ、タイ指月電機などの連結子会社が行っています。

(2) 電力機器システム


コンデンサ開発で培った技術を活用し、力率改善用機器や高調波抑制装置、回生電力再利用システムなどの電力機器システム商品を製造・販売しています。

製品の販売を通じて顧客から対価を得る収益モデルです。同社が製造販売を行うほか、九州指月やタイ指月電機が製造を担い、同社や中国の販売子会社等を通じて展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の売上高は一貫して増加傾向にあり、順調に事業を拡大しています。経常利益は一時的に落ち込んだものの、直近2期間で大幅な増益を達成し、利益率も10.6%まで改善しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 239億円 261億円 263億円 273億円 280億円
経常利益 14億円 12億円 11億円 18億円 30億円
利益率(%) 5.7% 4.7% 4.3% 6.6% 10.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 6億円 7億円 13億円 13億円

(2) 損益計算書


売上高の増加にともない、売上総利益も順調に拡大しています。生産性改善の取り組みや原価低減活動が奏功し、営業利益も大幅な増益を記録して収益力が強化されています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 273億円 280億円
売上総利益 70億円 79億円
売上総利益率(%) 25.7% 28.1%
営業利益 20億円 25億円
営業利益率(%) 7.3% 9.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賃金が9億円(構成比17%)、開発費が5億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


コンデンサ・モジュール事業はxEV市場の需要変動などの影響を受け減収となった一方、電力機器システム事業は国内設備投資の拡大により大幅な増収となり、全体の業績を牽引しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
コンデンサ・モジュール 181億円 178億円
電力機器システム 92億円 102億円
連結(合計) 273億円 280億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型の優良企業といえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 36億円 52億円
投資CF -26億円 -18億円
財務CF 3億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.2%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.0%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「我々は人間性を尊重し、環境を大切にする無駄のない物づくりにより、お客様に満足を提供し、社業の発展を通して社会に貢献します」という社是を掲げています。企業倫理を基盤とし、ステークホルダーへの経済的責任を果たすとともに、「安心安全で快適な社会の実現」「持続可能な地球環境の実現」を目指しています。

(2) 企業文化


長年受け継いできた独自の統合マネジメントシステム「∫IΣS(シムス)」を基軸に据え、生産面のみならず開発、営業、物流へと広げた最大効率を追求しています。また、「知」の融合の拡大展開を掲げ、従業員一人ひとりが主体的かつ創造的に挑戦を重ね、ワンチームとなって全員主役の横断型組織を形づくる文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


長期経営ビジョンの実現に向け、第Ⅲ期中期経営計画(2025年度〜2028年度)を推進しています。「企業価値向上に向け 融合からシナジーへ」をテーマに掲げ、競争力強化と企業価値向上を図っています。

* 2028年度 売上高:380億円
* 2028年度 営業利益率:8%
* 2028年度 当期純利益率:6%
* 2028年度 ROE:8%以上
* 2028年度 PBR:1倍以上
* 2028年度 配当性向:30%以上

(4) 成長戦略と重点施策


従来のシェア拡大を主軸とした成長戦略から転換し、事業ポートフォリオの最適化、収益力の強化、生産性改革および資本効率の向上を一体的に推進しています。コンデンサ技術とパワーエレクトロニクス技術を融合させたシステム・ソリューション提供への転換を図り、エネルギーマネジメントに貢献する新たな価値創出に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人間性尊重」と「知の融合」の観点から人的資本強化の取り組みを展開しています。「挑戦」をキーワードに、従来の枠にとらわれない発想と行動を促すための人事処遇制度の刷新や階層別研修の定着化を進めています。また、DXの推進やAIの活用により、従業員が付加価値の高い業務に時間を割ける環境づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.4歳 12.2年 6,407,907円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.7%
男性育児休業取得率 28.6%
男女賃金差異(全労働者) 75.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 75.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 70.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、CO2排出量削減(31.6%)、従業員意識調査の肯定評価割合(53.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 顧客の生産活動の動向による影響


同社グループの顧客の大部分はメーカーであり、顧客の設備投資や生産計画によって業績が大きな影響を受ける可能性があります。このリスクを最小限にするため、市場動向を見極め、顧客情報の収集と蓄積によりタイムリーな製品提供に努めています。

(2) 製品の品質と責任による影響


同社グループは多種多様な製品を製造していますが、製品に欠陥などの問題が生じた場合、顧客が被った損害に対する賠償責任が発生し、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。品質管理体制を整え、品質リスクへの対応に注力しています。

(3) 為替相場変動及び関税による影響


事業活動において直接・間接的に各国の輸出入取引が含まれているため、国内外の経済情勢の変化に起因する為替相場の変動や、各国の経済政策等に伴う関税率の新設・改定が行われた場合、業績および財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 海外進出に潜在するリスク


米国、中国、タイなどで製品の現地生産や販売などの海外展開を行っていますが、予期しない法律や税制の変更、不利な政治的・経済的要因、社会的混乱などのリスクが内在しており、これらが発生した場合は事業遂行に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。