岡谷電機産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

岡谷電機産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、ノイズ・サージ対策製品やコンデンサ製品、表示・照明製品などを製造・販売する電子部品メーカーです。直近の決算では、主要市場である産業機器向けの在庫調整長期化や中国市場の減速などが響き、売上高が減少するとともに、大幅な減益(赤字転落)となりました。


※本記事は、岡谷電機産業株式会社 の有価証券報告書(第102期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 岡谷電機産業ってどんな会社?


同社は、電子機器を電磁ノイズやサージから守る「ノイズ・サージ対策製品」や「コンデンサ製品」を主力とする電子部品メーカーです。

(1) 会社概要


1939年に昭和電機製作所として設立され、1946年に岡谷無線へ改称し真空管製造を開始しました。1967年に現在の社名へ変更し、1970年に東証二部へ上場しました。1980年代後半から1990年代にかけてはアメリカ、香港、シンガポールなどに拠点を設立し海外展開を加速させました。2006年に東証一部指定替えを経て、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しています。

2025年3月31日時点で、連結従業員数は1,057名、単体では163名体制です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行(退職給付信託口)で、第2位は生命保険会社、第3位は自動車部品メーカーです。

氏名 持株比率
みずほ信託銀行株式会社退職給付信託沖電気工業口 15.86%
明治安田生命保険相互会社 9.10%
TPR 6.34%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は高屋舗明氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
高屋舗 明 代表取締役社長執行役員 1985年入社。シンガポール法人社長、営業本部長などを経て、2022年より現職。
山田 尚人 取締役会長執行役員 1980年入社。シンガポール法人社長、営業本部長などを経て、2016年代表取締役社長執行役員に就任。2025年より現職。
本間 勤 取締役上席執行役員 1983年富士銀行入社。みずほコーポレート銀行欧州業務管理部長などを経て、2013年同社入社。生産本部長として製造部門を統括。2022年より現職。


社外取締役は、房前芳一(元日機装執行役員)、寺本進(元オリジン執行役員・埼玉大学大学院教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コンデンサ製品」「ノイズ・サージ対策製品」「表示・照明製品」「センサ製品」の各報告セグメントにより事業を展開しています。

(1) コンデンサ製品

商用電源を通して流入・流出する電磁雑音(ノイズ)による誤作動や故障から機器を守る製品を、産業機器や空調機器、車載関連などの顧客に提供しています。
収益は、顧客である機器メーカー等からの製品販売代金により得ています。運営は主に同社および製造子会社(東北オカヤ、OSD、東莞岡谷電子、OKAYA LANKA)、各販売子会社が行っています。

(2) ノイズ・サージ対策製品

電磁雑音に加え、送配電線や通信回線を通して流入する誘導雷サージから機器を守る製品を提供しています。機器のデジタル化・高周波化に伴い、高度なノイズ対策技術が求められています。
収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は同社および製造子会社、各販売子会社が担い、コンデンサ製品事業とのシナジーを活かした展開を行っています。

(3) 表示・照明製品

LEDを使用した表示・照明製品などを扱っており、特定顧客向けのカスタム品が主軸です。エスカレーター等のビル設備向け照明や進行表示なども開発・提供しています。
収益は、顧客への製品納入による販売代金です。運営は同社および製造子会社、各販売子会社が行っています。

(4) センサ製品

物体検出用や監視システム用赤外LED光源などのセンサ製品を提供しています。産業機器向けエンコーダ用や時計指針補正用といった特定分野で評価されています。
収益は、製品販売による対価です。運営は同社および製造子会社、各販売子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、2023年3月期までは売上高が増加傾向にありましたが、その後は減少に転じています。特に当期は売上高が100億円を割り込み、大幅な減収となりました。利益面でも、経常損益および当期純損益が赤字となっており、厳しい業績状況が続いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 105億円 134億円 171億円 143億円 96億円
経常利益 0.7億円 -3.5億円 8.3億円 4.3億円 -17.0億円
利益率(%) 0.6% -2.7% 4.9% 3.0% -17.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.0億円 -2.5億円 2.8億円 -0.5億円 -8.5億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な減少に伴い、売上総利益が大きく縮小しています。売上総利益率は前期の22.2%から当期は9.4%へと悪化しました。この結果、営業損益は赤字に転落しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 143億円 96億円
売上総利益 32億円 9億円
売上総利益率(%) 22.2% 9.4%
営業利益 4億円 -17億円
営業利益率(%) 2.8% -18.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が11億円(構成比41%)、荷造運搬費が2億円(同6%)を占めています。売上原価率は前期の77.8%から当期は90.6%へと悪化しました。

(3) セグメント収益


全セグメントにおいて減収となりました。特に主力のコンデンサ製品とノイズ・サージ対策製品は、産業機器向けや空調機器向けの需要減により大幅な減収となり、セグメント損失を計上しています。表示・照明製品は増収となり黒字を確保しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
コンデンサ製品 61億円 39億円 6億円 -4億円 -11.5%
ノイズ・サージ対策製品 56億円 32億円 7億円 -7億円 -20.9%
表示・照明製品 21億円 22億円 1億円 4億円 18.0%
センサ製品 5億円 2億円 0.4億円 -0.6億円 -27.2%
連結(合計) 143億円 96億円 4億円 -17億円 -18.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 21億円 -4億円
投資CF -4億円 -2億円
財務CF -5億円 -10億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のためマイナスとなり市場平均(スタンダード市場7.2%)を大きく下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.3%で市場平均(同製造業57.5%)をやや下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「誠意」を社是とし、「ファイネストカンパニー(美しき良き会社)」、「ファイネストワーク(美しき良き仕事)」を経営理念として掲げています。コア事業であるEMC(電磁両立性)対策の技術力・ノウハウを高め、「ノイズ・サージ対策のパートナー」としての地位確立を目指しています。

(2) 企業文化


多様な価値観・発想をもつ人材の採用を行い、互いの人格や個性を認め合う自由闊達な組織環境を築くことを重視しています。従業員一人ひとりの能力開発と発揮に主眼を置き、成果に応じた公正で納得感の高い処遇を行うことで、社員と会社がともに成長し続ける組織風土を目指しています。

(3) 経営計画・目標


第11次中期経営計画の目標未達と足元の厳しい業績を踏まえ、2025年度を構造改革徹底の1年と位置付け、第12次中期経営計画のスタートを2026年4月としています。2025年度の数値目標として以下を掲げています。

* 連結売上高:120億円
* 営業利益:1.4億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:1.25億円

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向けて、国内外工場における生産ラインの再編による生産性向上や、コア事業(コンデンサ製品、ノイズ・サージ対策製品)での新製品供給を着実に進める方針です。また、サプライチェーンの見直しや原価改善などのコスト構造改革を加速させ、成長分野での安定的な収益基盤の再構築を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


企業の発展成長の源泉は人材にあると考え、多様な人材の採用・起用を推進しています。メリハリのある評価処遇制度によりモチベーション向上を図るとともに、能力・キャリア開発の場を提供し自己実現を支援する方針です。また、ワーク・ライフ・バランスを重視し、安全で快適な職場環境の維持改善に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.2歳 16.5年 5,713,000円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与が含まれています。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用に占める女性の割合(20%)、年次有給休暇取得の割合(73%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場動向による影響


顧客業界やサプライチェーン全体の動向の影響を受けます。特に産業機器向けや空調機器向け市場における顧客の在庫調整や、地政学リスク、各国の通商政策などが業績に影響を与える可能性があります。これに対し、最新情報の収集や顧客・購入先の多様化、生産体制の機動的な対応に努めています。

(2) 技術革新・顧客ニーズへの対応


技術革新や顧客ニーズの変化への対応遅れ、競合他社による競争優位性のある新製品の投入などが生じた場合、売上高への影響が懸念されます。また、国際的な安全規格等の高度化への対応も必須です。新技術の開発や産学連携を進めるとともに、製品ラインナップの拡充と提案力の強化を図っています。

(3) 製品品質・製造物責任


提供する製品に契約不適合や欠陥が生じた場合、多額の賠償責任や社会的信用の失墜を招く可能性があります。品質保証部門と各工場の品質管理部門が連携し、ISO9001や各種製品安全規格に準拠した生産・管理を行うことで、全社的な品質向上とリスク低減に取り組んでいます。

(4) 原材料調達・コスト変動


原材料の価格変動や調達難、輸送コストの高騰などが業績に影響を与える可能性があります。グローバルなサプライチェーンの問題点の洗い出しや、調達先の見直し、複数購買、コスト構造改革などを通じて、調達リスクの低減とコストダウンを推進しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。