※本記事は、岡谷電機産業の有価証券報告書(第103期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 岡谷電機産業ってどんな会社?
電子機器を電磁ノイズや誘導雷サージから守る対策製品を主力とする電子部品メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1939年に昭和電機製作所として発足しました。1946年に岡谷無線へ改称して長野県岡谷市に移転し、一般受信用真空管の製造を開始しました。1967年に現在の岡谷電機産業へと社名を変更し、1970年に東京証券取引所へ上場しました。その後、香港や米国、シンガポール、スリランカなどに販売・製造子会社を設立し、グローバルに事業を拡大しています。
現在の従業員数はグループ全体で1,101名、単体で157名です。筆頭株主は信託銀行を通じて株式を保有する沖電気工業であり、第2位は保険事業を展開する明治安田生命保険相互会社、第3位は自動車部品等の事業会社であるTPRとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| みずほ信託銀行 退職給付信託沖電気工業口 | 15.86% |
| 明治安田生命保険相互会社 | 9.10% |
| TPR | 6.34% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は高屋舗明氏が務めており、社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 高屋舗明 | 代表取締役社長執行役員 | 1985年入社。シンガポール法人社長や営業本部長等を経て、2022年より現職。 |
| 山田尚人 | 取締役会長執行役員 | 1980年入社。シンガポール法人社長や社長執行役員等を経て、2025年より現職。 |
| 本間勤 | 取締役上席執行役員 | 1983年富士銀行入社。みずほコーポレート銀行等を経て2013年入社。2022年より現職。 |
社外取締役は、房前芳一(元日機装インダストリアル事業本部副本部長)、寺本進(元オリジンエレクトロニクス事業部品質統括)です。
2. 事業内容
同社グループは、「コンデンサ製品」「ノイズ・サージ対策製品」「表示・照明製品」「センサ製品」の4つの事業を展開しています。
■コンデンサ製品
商用電源を通して流入・流出する電磁雑音(ノイズ)による誤作動や故障から電子機器を守るコンデンサ製品を製造・販売しています。空調機器や産業機器向けを中心に展開しており、耐高温・高湿製品などのラインナップ拡充も進めています。
収益源は、電子機器メーカーなどの顧客企業への製品販売による代金です。同社が製品の仕入・販売を行い、国内子会社の東北オカヤやOSD、海外子会社の東莞岡谷電子やOKAYA LANKA等が製品を製造し、全量を同社に納入する体制をとっています。
■ノイズ・サージ対策製品
電磁ノイズに加えて、送配電線や通信回線などを通して流入する誘導雷サージによる誤作動・故障から機器を守る対策製品を提供しています。機器のデジタル化や高速伝送化に伴い、電子回路の安定性を確保するためのノイズフィルタやサージプロテクタを扱っています。
収益源は、空調機器や産業機器メーカー等の顧客への製品販売代金です。コンデンサ製品と同様に、同社および各国の販売子会社が製品を販売し、国内外のグループ製造子会社が生産を担う一貫体制で事業を運営しています。
■表示・照明製品
LEDに代表される表示・照明製品の開発および製造・販売を行っています。エスカレーター等のビル設備向け欄干照明や進行表示用ドットマトリックスなど、特定顧客を対象としたカスタム品を主軸に事業を展開しています。
収益源は、ビル設備メーカーなどの特定顧客からの製品購入代金です。運営は同社と東莞岡谷電子などのグループ製造拠点、および各国の販売子会社が連携して行っています。
■センサ製品
物体検出用および監視システム用の赤外LED光源などのセンサ関連製品を製造・販売しています。産業機器向けエンコーダ用や時計指針補正用といった特定分野向けに、顧客のニーズに合わせたカスタム仕様の製品を展開しています。
収益源は、産業機器メーカーや時計メーカー等の顧客への製品販売代金です。主に同社の長野事業所などで開発が行われ、国内および各地域のグループ拠点が連携して製品を提供しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は需要の変動等により増減を繰り返していますが、経常利益および当期利益は継続してマイナス基調にあります。原材料価格の高騰やコスト増の影響が大きく、収益性の改善が課題となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 134億円 | 171億円 | 143億円 | 96億円 | 102億円 |
| 経常利益 | -4億円 | 8億円 | 4億円 | -17億円 | -18億円 |
| 利益率(%) | -2.7% | 4.9% | 3.0% | -17.7% | -17.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -3億円 | 3億円 | -0.5億円 | -8億円 | -18億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、主力分野の需要回復により売上高および売上総利益は増加しましたが、新製品立ち上げに伴う一時的な費用増加等の影響により、営業利益は依然として大幅な赤字水準で推移しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 96億円 | 102億円 |
| 売上総利益 | 9億円 | 9億円 |
| 売上総利益率(%) | 9.4% | 9.1% |
| 営業利益 | -17億円 | -17億円 |
| 営業利益率(%) | -18.2% | -17.0% |
販売費及び一般管理費(27億円)のうち、給料手当が10.4億円(構成比38.9%)、荷造運搬費が1.8億円(同6.7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
コンデンサ製品およびノイズ・サージ対策製品は、海外の空調機器・産業機器向けの需要増により増収となりました。一方、表示・照明製品は前期の防衛産業向け特需の反動減により減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| コンデンサ製品 | 39億円 | 47億円 |
| ノイズ・サージ対策製品 | 32億円 | 35億円 |
| 表示・照明製品 | 22億円 | 18億円 |
| センサ製品 | 2億円 | 3億円 |
| 連結(合計) | 96億円 | 102億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業赤字を資産売却+借入で補填している状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -4億円 | -11億円 |
| 投資CF | -2億円 | 0.3億円 |
| 財務CF | -10億円 | 3億円 |
企業の財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.2%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「誠意」を社是とし、「ファイネストカンパニー(美しき良き会社)」、「ファイネストワーク(美しき良き仕事)」を経営理念として掲げています。コア事業であるEMC(電磁ノイズ)対策で蓄積してきた技術力を高め、デバイス単体での価値提供に留まらず、「ノイズ・サージ対策のパートナー」としての地位確立を目指しています。
■(2) 企業文化
社是である「誠意」を重んじ、互いの多様な文化的背景や価値観を認め合える自由闊達な組織環境の構築を重視しています。また、社員の伸ばすべき良いところは褒め、足りないところの改善を促していく風土づくりを目指し、人材の育成と能力開発を後押しする文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は事業の抜本的な見直しを図るため、第12次中期経営計画を推進しています。2026年度の目標とする経営指標は以下の通り設定されています。
* 連結売上高:115億円
* 営業損失:5.4億円
* 親会社株主に帰属する当期純損失:5.2億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「ノイズ・サージ対策のパートナー」に向け、稼ぐ力の強化とコーポレート機能の強化により強固な経営基盤の再構築を図ります。多様化するニーズに応える技術基盤の強化、生産工程の自動化推進、コスト構造改革や製品価格の改定を進め、競争力と収益性の改善に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
企業の発展の源泉は人材にあると考え、多様な価値観・発想をもつ人材の採用と、社員一人ひとりの能力開発に主眼を置いています。能力の発展段階と成果に応じた公正で納得感の高い処遇を実現し、ワーク・ライフ・バランスの推進や健康経営など、社員が生き生きと働ける環境整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.9歳 | 16.9年 | 5,369,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
同社および連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等による公表義務の対象ではないため、有報には本稿の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用に占める女性の割合(18%)、年次有給休暇取得の割合(76%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場動向による影響を受けるリスク
各国の通商政策や地政学リスク、中国経済の減速等の影響を受けやすく、先行き不透明な市場環境が業績を左右します。また、空調機器や産業機器向けなど、納入先業界における在庫調整の長期化が受注や売上に影響を及ぼす懸念があります。
■(2) 技術革新及び顧客ニーズに対応できないリスク
技術革新や顧客ニーズの変化への対応が遅れた場合、競合他社の新製品にシェアを奪われる可能性があります。特に、国際的な安全規格や製品規格の高度化に確実に対応できない場合、自社製品の競争力を大きく毀損するリスクがあります。
■(3) 材料等の調達に関するリスク
価格変動の激しい原材料を国内外から調達しているため、国際商品市況の高騰や輸送網の混乱が調達コストの上昇や出荷遅延につながる恐れがあります。複数調達先からの購買やコスト構造改革によってリスクの低減を図っています。
■(4) 生産コスト増加のリスク
製品需要の急激な上昇に対し、生産の自動化が定着するまでは人員増で対応せざるを得ず、原価率悪化の要因となります。とりわけ中国やスリランカの製造拠点における人件費の上昇圧力が顕著であり、より一層の自動化推進が課題となっています。



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