ティアック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ティアック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ティアックは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、記録と再生をコア技術として音響機器事業と情報機器事業を展開しています。音響機器ではプレミアムオーディオや業務用機器、情報機器では医用画像記録再生機器などを手掛けます。直近の業績は、主力事業が牽引して増収となり、営業利益や当期利益も増益となりました。


※本記事は、ティアック株式会社の有価証券報告書(第78期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. ティアックってどんな会社?


音響機器および情報機器の開発・製造販売を展開する企業です。

(1) 会社概要


1953年に東京テレビ音響として創立し、録音・再生電気音響機器の製造販売を開始しました。1956年に東京電気音響が設立され、1964年に両社が合併して現在のティアックに商号を統一しました。1970年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、その後国内外に生産・販売拠点を設立してグローバルに事業を拡大してきました。

従業員数は連結で524名、単体で225名です。筆頭株主は個人の山下良久氏で、第2位は松尾博氏、第3位は力丸米雄氏となっており、それぞれ個人株主が上位を占めています。

氏名 持株比率
山下 良久 3.25%
松尾 博 2.91%
力丸 米雄 2.47%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長CEOは英裕治氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
英 裕 治 代表取締役社長CEO 1985年同社入社。タスカム部長、タスカムビジネスユニットマネジャーなどを経て、2006年に代表取締役社長に就任。2013年より現職。
倉 原 良 弘 取締役CFO 2006年同社入社。財務部長、財務企画部長、執行役員財務企画部長などを経て、2024年より現職。


社外取締役は、金子靖代(元シーボン社長)、原琢己(安井・原法律事務所所長)、坂口洋二(坂口洋二公認会計士・税理士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「音響機器事業」「情報機器事業」および「その他」事業を展開しています。

音響機器事業


プレミアムオーディオ機器、ハイエンドオーディオ機器、および音楽制作・業務用オーディオ機器などの製造販売を行っています。音楽制作者やオーディオ愛好家、放送局などのプロフェッショナルまで幅広い顧客に向けて、高品質な録音・再生機器を提供しています。

収益源は、製品の販売代金です。運営は主に同社が主体となり、海外における販売はティアックアメリカやティアックヨーロッパなどの子会社が、製造は東莞ティアックエレクトロニクスなどが担っています。

情報機器事業


航空機向けの機内エンターテインメント機器、医療分野向けの医用画像記録再生機器、各種計測機器などの製造販売を行っています。航空会社や医療機関、各種産業の製造現場など、高度な記録・再生技術を必要とする法人顧客向けに製品やソリューションを提供しています。

収益源は、機器の販売代金やソリューションビジネスにおけるネットワーク等の保守サービス料です。運営は同社を中心に、ティアックシステムソリューションズなどの子会社が連携して行っています。

その他


報告セグメントに含まれない事業として、生産子会社によるEMS(電子機器受託製造サービス)事業および海外販売子会社による光ディスクドライブの販売事業を展開しています。

収益源は、受託製造に係る手数料や製品の販売代金です。EMS事業はティアックマニュファクチャリングソリューションズが、光ドライブ販売はティアックアメリカなどの子会社が運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上収益は150億円台から160億円前後で安定して推移しています。利益面では一時的に赤字となった期間もありましたが、直近の期では増収とともに税引前利益が大きく改善し、収益力が回復傾向にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 160億円 157億円 157億円 157億円 159億円
税引前利益 4.8億円 3.4億円 0.1億円 0.6億円 6.1億円
利益率(%) 3.0% 2.2% 0.0% 0.4% 3.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 3.9億円 3.1億円 -0.5億円 0.8億円 5.8億円

(2) 損益計算書


売上高は前年からわずかに増加しましたが、売上総利益率は低下しています。一方で、販売費及び一般管理費等のコントロールにより営業利益は大きく伸びており、営業利益率も改善しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 157億円 159億円
売上総利益 49億円 46億円
売上総利益率(%) 31.0% 29.0%
営業利益 3.4億円 6.8億円
営業利益率(%) 2.2% 4.2%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が17億円(構成比26%)、諸手数料が6.5億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力となる音響機器事業は、業務用オーディオ機器のBtoB向け販売が好調に推移し、前年並みの売上と増益を確保しました。情報機器事業は医用画像記録再生機器やソリューションビジネスが堅調だったものの、一部案件の先送り等があり、売上は横ばいとなりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
音響機器事業 110億円 111億円 12億円 15億円 13.4%
情報機器事業 40億円 40億円 2.1億円 - -0.1%
その他 6.4億円 8.6億円 0.2億円 0.2億円 2.4%
調整額 - - -11億円 -8.3億円 -
連結(合計) 157億円 159億円 3.4億円 6.8億円 4.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業を示す「健全型」のキャッシュ・フロー状況にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 12億円 16億円
投資CF -1.2億円 -1.5億円
財務CF -7.1億円 -8.8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.2%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「記録と再生」をコアに据えて事業を展開しています。タグライン「Recording Tomorrow」のもと、レコーディング・ソリューション・カンパニーとして音響機器事業と情報機器事業を両輪とし、顧客の要請に応えて高品質な製品とサービスを提供し続けることで、人・社会・未来に貢献する企業となることを目指しています。

(2) 企業文化


創業以来、一貫して創意と誠実を尊ぶ企業文化のもと、「記録と再生」への探求心を原点としています。全てのステークホルダーに「品質」を約束するブランドとなり、人々の健康と安全、自然の営みを尊重しながら、事業活動を通じて環境負荷の低減に努め、持続可能な社会の実現を使命としています。

(3) 経営計画・目標


新中期経営計画「S-10」において、資本効率および収益性の向上に移行し、ROEを安定的に維持することを最重要目標に掲げています。また、目標とする重要な経営指標をROE、営業利益率、営業キャッシュフローとしており、最終年度には一定水準の営業利益の達成を前提に、継続的な株主還元を目指しています。

* ROE:10%以上を安定的に維持
* 営業利益(2029年3月期):8.5億円
* 配当性向:20%以上

(4) 成長戦略と重点施策


基本戦略として「ニッチトップ戦略」を継続し、特定領域における競争優位性を確立した上で、付加価値の最大化を図ります。事業ポートフォリオの最適化を進め、BtoB事業の拡大により収益性を向上させるとともに、高付加価値なBtoC事業を通じてブランド価値を高めます。また、DXおよびAIの活用により業務の生産性向上を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


全てのステークホルダーに「品質」を約束するブランドとなるため、その原動力は人材であるとの認識のもと人的資本経営を推進しています。個々の人材の思考と経営戦略との連動を図り、eラーニングの導入や階層別研修を展開しています。また、多様なライフスタイルに応じた柔軟な勤務制度や休暇制度を整備し、全従業員が能力を発揮できる環境づくりに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 48.7歳 19.8年 6,942,133円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.1%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 81.2%
男女賃金差異(正規雇用) 83.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 74.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員新規採用比率(22.2%)、女性社員比率(17.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況変動による需要縮小


同社は国内外で民生用および産業用製品を販売しているため、各地域の経済状況の変動が需要に直接影響を与えます。消費者の可処分所得や嗜好の変化による民生用製品の需要減や、顧客の設備投資抑制による産業用製品の需要縮小が生じた場合、同社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替相場変動による影響


同社グループは海外での生産・販売比率が高く、外貨建の取引や債権債務の割合が大きくなっています。特に米ドルは生産・仕入の割合が高いため円高が好影響を与えますが、ユーロやポンド等の販売主体通貨に対する円高は悪影響をもたらします。急激な為替変動は、営業損益や純資産などに影響を及ぼすリスクがあります。

(3) キーデバイス等の調達・供給リスク


同社はキーデバイスや部材を外部から購入し、一部の設計を他社に委託しています。予期せぬ事態によって部材の供給不足が発生し、生産需要を満たせなくなった場合や、新製品の市場投入が遅れた場合には、販売機会の喪失を招き、同社グループの経営成績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。