ティアック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ティアック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。音響機器と情報機器事業を両輪とする「記録と再生」のリーディングカンパニー。第77期の売上収益は157億円で前期比横ばいでしたが、為替差損の縮小などにより、当期利益は0.8億円と黒字転換を果たしました。高付加価値製品へのシフトとニッチトップ戦略を推進しています。


※本記事は、ティアック株式会社 の有価証券報告書(第77期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. ティアックってどんな会社?


「記録と再生」技術を核に、高品位な音響機器や産業用・医療用情報機器を展開する精密機器メーカーです。

(1) 会社概要


1953年に東京テレビ音響として創立し、1964年にティアックへ商号を統一しました。2013年に米ギブソン社の子会社となりましたが、2020年に独立性を回復。2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しました。2024年には完全子会社のエソテリックを吸収合併し、経営資源の統合を図っています。

連結従業員数は547名、単体従業員数は237名です。筆頭株主は山下良久氏で、第2位は松尾博氏、第3位は力丸米雄氏となっており、個人株主が上位を占めています。

氏名 持株比率
山下 良久 3.91%
松尾 博 2.56%
力丸 米雄 2.47%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長CEOは英裕治氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
英 裕 治 代表取締役社長CEO 1985年同社入社。タスカム部長、執行役員エンタテイメント・カンパニープレジデント等を経て、2006年代表取締役社長に就任。2013年より現職。
倉 原 良 弘 取締役CFO 2006年同社入社。財務部長、財務企画部長、執行役員等を経て、2024年より現職。
林 健 二 取締役(監査等委員) 1983年同社入社。法務部長、知的財産法務部長、執行役員総務人事・知的財産法務担当を経て、2022年より現職。


社外取締役は、金子靖代(株式会社ZERO代表取締役社長)、原琢己(安井・原法律事務所所長)、坂口洋二(坂口洋二公認会計士・税理士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「音響機器事業」「情報機器事業」および「その他」事業を展開しています。

音響機器事業

ハイエンドオーディオ「ESOTERIC」、プレミアムオーディオ「TEAC」、音楽制作・業務用音響機器「TASCAM」ブランド等の製品を、オーディオファンやクリエイター、放送局等の設備市場向けに提供しています。
収益は、製品の販売対価として顧客から受け取る売上が主となります。運営は主に同社が行っているほか、海外においてはティアック アメリカ,INC.やティアック ヨーロッパ GmbHなどの販売子会社、製造面では東莞ティアック エレクトロニクス CO., LTD.などが担っています。

情報機器事業

航空機内エンターテインメント機器、医用画像記録再生機器、計測用データレコーダーやトランスデューサーなどを、航空会社、医療機関、研究機関や製造業向けに提供しています。
収益は、機器の販売対価およびソリューション提供による対価が主となります。運営は同社に加え、ティアック システム ソリューションズ等が担い、海外販売・製造拠点とも連携して事業を展開しています。

その他

EMS(電子機器受託製造)事業や産業用光ドライブの製造販売を行っています。
収益は、製造受託費や製品販売対価となります。運営は主にティアック マニュファクチャリング ソリューションズや海外子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は150億円台後半で安定的に推移しています。第76期は利益率が低下し最終赤字となりましたが、第77期は黒字回復しました。全体として利益率は低水準ながらも、安定的・堅調な推移を見せています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 146億円 160億円 157億円 157億円 157億円
税引前利益 3億円 5億円 3億円 0.1億円 0.6億円
利益率(%) 2.3% 3.0% 2.2% 0.0% 0.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 4億円 3億円 -0.5億円 0.8億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期と同水準を維持しましたが、売上総利益が増加し、売上総利益率が改善しました。営業利益は減少しましたが、営業利益率は2%台を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 157億円 157億円
売上総利益 41億円 49億円
売上総利益率(%) 25.9% 31.0%
営業利益 4億円 3億円
営業利益率(%) 2.8% 2.2%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が17億円(構成比26%)、諸手数料が6億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


音響機器事業は売上が微増しましたが、利益は微減となりました。情報機器事業は売上が微増し、利益が大幅に増加しました。その他事業は減収減益となりました。全社費用等の調整額が大きく、連結営業利益を押し下げています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
音響機器事業 109億円 110億円 12億円 12億円 11.0%
情報機器事業 39億円 40億円 1億円 2億円 5.2%
その他 8億円 6億円 0.5億円 0.2億円 3.3%
調整額 - - -10億円 -11億円 -
連結(合計) 157億円 157億円 4億円 3億円 2.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラスで、投資CFと財務CFがマイナスであることから、本業で稼いだ現金を借入金の返済や投資に回す「健全型」のキャッシュ・フロー状態と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1億円 12億円
投資CF -1億円 -1億円
財務CF -0.7億円 -7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.4%で市場平均(スタンダード市場製造業平均57.5%)を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、企業理念を表現したタグライン「Recording Tomorrow」のもと、「記録と再生」をコア事業に据えています。音響機器事業と情報機器事業を両輪とし、魅力ある高品質な製品とサービスを提供し続けることで、人・社会・未来に貢献するレコーディング・ソリューション・カンパニーを目指しています。

(2) 企業文化


創業以来、一貫して「創意と誠実」を尊ぶ企業文化を持っています。この文化のもと、お客様の要請に応え、法令・規制を遵守し、ステークホルダーに満足される新しい価値を提供し続けることを重視しています。また、すべてのステークホルダーに「品質」を約束するブランドとなることを目指しています。

(3) 経営計画・目標


営業利益とフリーキャッシュ・フローを目標とする重要な経営指標とし、収益性およびキャッシュフローの改善を目指しています。中期経営計画「B-7030計画」の最終年度を迎えましたが、次期計画の公表は延期しています。自己資本比率25%超を目安とした配当実施など、株主還元も重視しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「ニッチトップ戦略」を基本とし、特定領域でトップシェアを獲得後、システム・ソリューションを展開して事業拡大を図ります。音響機器ではプレミアムオーディオのブランド価値向上や、TASCAMブランドでのクリエーター向け・業務用BtoB事業の育成を進めます。情報機器では、医用画像記録機器のシステム提案や機内エンターテインメント機器の海外展開を強化し、高付加価値化による収益力向上を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人的資本を最重要財産と位置づけ、eラーニングや階層別研修を通じて人材基盤を強化しています。多様なライフスタイルに応じた働き方を実現するため、フレックスタイムやテレワーク、積立休暇制度等を整備しています。また、女性比率の向上を課題とし、積極的な採用活動や女性管理職登用のための環境整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 49.0歳 20.1年 6,758,279円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.2%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 79.1%
男女賃金差異(正規) 79.4%
男女賃金差異(非正規) 72.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(17.7%)、採用における女性比率目標(20%以上)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況の変動による影響

民生用製品は一般消費者の可処分所得や嗜好の変化、産業用製品は顧客の設備投資状況の影響を受けます。日本、米大陸、欧州、アジア等の主要市場における景気悪化や需要縮小は、同社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

(2) 為替相場の変動による影響

海外での生産・販売比率が高く、外貨建取引が多いため、為替変動の影響を受けます。特に米ドルは生産・仕入の割合が高く、円高は営業損益に好影響を与える一方、ユーロやポンドは販売が主であるため、円高は悪影響を与えます。

(3) キーデバイスや部材調達の遅れ

他社からキーデバイスや部材を購入し、一部設計を委託しているため、供給不足や予想外の事態により新製品の市場投入が遅れたり、需要を満たせなくなったりした場合、業績に悪影響を与える可能性があります。

(4) 製品の品質とその責任

高度・複雑な技術を利用した製品が多く、外部調達部品もあるため、品質管理は複雑化しています。製品に欠陥が生じた場合、関連コストの発生やブランドへの信頼低下を招き、業績に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。