松尾電機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

松尾電機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スタンダード市場に上場するコンデンサ及び回路保護素子メーカー。自動車電装向け製品が主力。直近の業績は、車載向け回路保護素子の需要増や原価低減効果により、売上高は46億円(前期比8.0%増)、経常利益は4.6億円(同108.2%増)の増収増益となりました。(133文字)


※本記事は、松尾電機株式会社 の有価証券報告書(第76期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 松尾電機ってどんな会社?


同社はタンタルコンデンサおよび回路保護素子を主力とする電子部品メーカーであり、特に車載向け製品に強みを持っています。

(1) 会社概要


1949年に設立され、チューブラ形ペーパーコンデンサの製造販売を開始しました。1959年にはタンタル電解コンデンサの製造販売を開始し、1974年に大阪証券取引所市場第二部へ上場しました。1996年には回路保護素子分野へ参入し事業を拡大しています。2022年の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しました。

2025年3月31日現在の単体従業員数は227名です。筆頭株主は電子部品製造を行う釜屋電機で、第2位は取引先企業で構成される持株会、第3位は個人株主となっています。

氏名 持株比率
釜屋電機 27.32%
松尾電機投資会 6.00%
松尾 浩和 4.29%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名、計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長執行役員は陳 怡光氏です。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
陳 怡光 代表取締役社長執行役員 2002年DUPONT TAIWAN入社。釜屋電機社長、双信電機社長等を経て2024年6月より現職。
網谷 嘉寛 常務取締役執行役員経理部門長 1982年入社。執行役員総務部門長兼経理部門長、常務取締役執行役員総務経理部門長を経て2024年11月より現職。
岸下 学 取締役執行役員生産部門長 1985年入社。執行役員福知山生産部門長、執行役員生産部門長等を経て2024年6月より現職。


社外取締役は、陳 培真(Inpaq Technology Co.,Ltd. 董事長)、杉山 雅彦(日通工エレクトロニクス代表取締役会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「タンタルコンデンサ事業」「回路保護素子事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) タンタルコンデンサ事業

タンタル電解コンデンサの製造販売を行っています。電子機器の小型・高性能化に対応した製品を提供しており、カーエレクトロニクスや産業用電子機器などの分野で使用されています。

収益は、製品の販売により顧客から対価を受け取ります。運営は主に松尾電機が行っています。

(2) 回路保護素子事業

マイクロヒューズやサージアブソーバ等の回路保護素子の製造販売を行っています。過電流や過電圧から電子回路を保護するための重要な部品であり、自動車の電子化に伴い需要が拡大しています。

収益は、製品の販売により顧客から対価を受け取ります。運営は主に松尾電機が行っています。

(3) その他

報告セグメントに含まれない事業として、フィルムコンデンサの製造販売を行っています。

収益は、製品の販売により顧客から対価を受け取ります。運営は主に松尾電機が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は38億円から47億円の範囲で推移しています。2022年3月期以降は売上高40億円台を維持しており、2025年3月期は前期比増収となりました。利益面では、2022年3月期に当期純損失を計上しましたが、それ以外の期は黒字を確保しており、直近の2025年3月期は経常利益、当期純利益ともに前期から大幅に増加し、高い利益率を記録しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 38.0億円 47.1億円 46.5億円 42.1億円 45.5億円
経常利益 2.3億円 5.7億円 5.3億円 2.2億円 4.6億円
利益率(%) 6.2% 12.1% 11.4% 5.2% 10.1%
当期純利益 1.3億円 -2.2億円 3.1億円 0.3億円 4.5億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。売上原価率は改善傾向にあり、利益率の向上に寄与しています。販売費及び一般管理費は微減しており、これらの要因により営業利益は前期比で大きく増加し、営業利益率は大幅に改善しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 42.1億円 45.5億円
売上総利益 12.0億円 14.3億円
売上総利益率(%) 28.6% 31.5%
営業利益 2.5億円 4.9億円
営業利益率(%) 6.1% 10.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料が3.4億円(構成比37%)、研究開発費が0.9億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


タンタルコンデンサ事業は産業用電子機器向けの需要増により増収増益、回路保護素子事業は車載向け等の需要増により大幅な増収増益となりました。全社費用等の調整額が利益を押し下げていますが、主力2事業ともに黒字を確保しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
タンタルコンデンサ事業 29.1億円 29.8億円 2.5億円 2.8億円 9.5%
回路保護素子事業 11.7億円 14.2億円 4.4億円 5.8億円 41.2%
その他 1.3億円 1.5億円 -0.2億円 0.3億円 18.2%
調整額 - - -4.2億円 -4.0億円 -
連結(合計) 42.1億円 45.5億円 2.5億円 4.9億円 10.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

松尾電機は、回路保護素子事業におけるカーエレクトロニクスやリチウムイオン電池向け製品の需要増により、売上高・利益ともに伸長しました。営業活動によるキャッシュ・フローは、棚卸資産の増加が影響し、支出となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資の増加により、支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済により、支出となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 3.8億円 -0.9億円
投資CF -4.1億円 -3.0億円
財務CF -2.4億円 -2.5億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「企業の存在を許容するのは、お客様である」ことを原点とし、世界中の顧客の信頼を得られる価値ある技術商品の開発・製造・販売を軸とする「技術立社」であり続けることを経営の基本理念としています。この理念に基づき、市場ニーズに適応した質の高い物作りに取り組み、社会の信頼と期待に応えることを基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は経営原則を整備し、価値基準、倫理基準、「考動」指針、事業活動基本方針を策定して全社員の行動規範としています。また、人権基本方針や人権行動指針を策定し、事業活動における人権への配慮や健全な人間関係の構築、自主性と創造性の発揮できる豊かな個性の尊重などを重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、10年後に売上高100億円達成を目指し、その基盤固めとして中期経営計画(2025年3月期から2027年3月期)を策定しています。2027年3月期の数値目標として以下を掲げています。

* 営業利益:8億円
* 売上高営業利益率:13%
* 売上高:60億円
* 自己資本利益率(ROE):12%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は収益基盤の強化及び経営基盤の安定化を図るため、回路保護素子事業では車載用製品の販売網拡大による売上・利益の増加、タンタルコンデンサ事業では新製品開発等による売上・利益の確保を目指しています。また、株主への復配やESGへの取り組みも推進します。2026年3月期の目標達成に向けては以下の施策に取り組みます。

* 売上高50億円、営業利益6.2億円の達成
* 回路保護素子の海外・車載市場への拡販
* 導電性高分子タンタルコンデンサの拡販
* 生産高比製造原価率の低減(外観検査自動化、光熱費削減等)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、経営理念に基づき会社の発展に必要な能力開発を行うことを人材育成方針としています。また、性別や雇用区分に関係なく、健康増進のための禁煙手当支給、資格取得の奨励、役割給の業績連動化などを実施し、社内環境の整備を進めています。既存人材の活用および国際化に対応できる新規人材の採用を通じて、社内組織の活性化を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 50.3歳 28.1年 4,951,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、男女の平均勤続年数(男性28.7年、女性26.6年)、有給休暇取得率(58.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境の変化について

日本、アジア、欧州、米州等に製品を供給しているため、各国の経済状況や市場での製品需要の変化が経営成績等に影響を与える可能性があります。

(2) 原材料の安定調達について

主力製品であるタンタルコンデンサの主要原材料タンタル粉末は希少金属であり、生産が寡占企業に掌握されています。市場価格が下がりにくい特性があり、他のコンデンサとの価格競争や損益に影響する可能性があります。その他の原材料についても供給停止や価格上昇のリスクがあります。

(3) 在庫リスクについて

受注生産を行っていますが、顧客の生産計画変更等により見込生産品が不動在庫化する可能性があります。また、激しい価格競争により正味売却価額が製造原価を下回り、棚卸資産の評価損が発生することで営業損益に影響を与える可能性があります。

(4) カーエレクトロニクス分野への依存について

売上高の4割以上がカーエレクトロニクス向けであり、中でもデンソーグループに対する売上高が約38%を占めています。同社の経営戦略の動向が松尾電機の経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。