※本記事は、株式会社サンコーの有価証券報告書(第63期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. サンコーってどんな会社?
自動車や住宅設備向けの精密部品製造及びユニット加工事業を展開し、高い金型技術力を特徴としています。
■(1) 会社概要
同社は1963年に設立され、各種精密プレス金型や治工具製作を開始しました。1981年に合併を経て実質上の存続会社となり、1999年には東証第二部に上場を果たしています。2011年にタイ王国に連結子会社を設立して海外展開を進め、2024年に田村商事が親会社となりました。
現在の従業員数は連結で484名、単体で289名です。筆頭株主は親会社の田村商事で、第2位は創業・経営陣の田村正則氏、第3位はINTERACTIVE BROKERS LLCとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 田村商事 | 51.22% |
| 田村正則 | 5.64% |
| INTERACTIVE BROKERS LLC | 4.67% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長は田村正則氏、代表取締役社長は竹村潔氏が務めています。社外取締役比率は33.3%(6名中2名)です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 田村正則 | 代表取締役会長 | 1995年同社入社。企画室長、管理本部長などを経て、2001年代表取締役社長に就任。2015年より現職。田村商事取締役も兼務。 |
| 竹村潔 | 代表取締役社長 | 1983年同社入社。各工場長やプレス事業部長などを歴任し、2010年常務取締役生産本部長に就任。2011年より現職。 |
| 鈴木和彦 | 取締役生産本部長 | 1989年同社入社。金型技術開発部長やタイプロジェクト室長を経て、2018年執行役員生産副本部長に就任。2023年より現職。 |
| 佐藤匡弘 | 取締役(監査等委員) | 1992年同社入社。各工場長や執行役員生産本部長を歴任し、2023年生産技術部統括部長に就任。2025年より現職。 |
社外取締役は、赤羽啓(弁護士・赤羽総合法律事務所開業)、志水達也(税理士・志水達也税理士事務所開業)です。
2. 事業内容
同社グループは、「精密部品製造及びユニット加工事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
精密部品製造及びユニット加工事業では、高い金型技術力を活かし、自動車関連製品(電装品や安全走行製品など)、住宅設備関連製品(スマートメーターなど)、デジタル家電関連製品等のプレス製品、メカトロ製品、プラスチック製品の製造を行っています。
各種メーカーから製品・金型の受注を受け、これらを製造・販売することで収益を得ています。運営は同社およびタイ王国の連結子会社THAI SANKOが共同で行い、同社は日本国内、子会社は海外における製造・販売体制を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、主力である自動車関連製品の堅調な需要を背景に、売上高は概ね拡大傾向で推移しています。経常利益は一時的な事業環境の変動を受けた期もありましたが、収益力強化策の推進により安定した利益水準を維持し、直近では増収増益を達成しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 141億円 | 157億円 | 169億円 | 168億円 | 183億円 |
| 経常利益 | 7億円 | 6億円 | 10億円 | 8億円 | 9億円 |
| 利益率(%) | 5.1% | 3.6% | 5.8% | 4.8% | 5.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 1億円 | 4億円 | 5億円 | 5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の拡大に伴い、売上総利益および営業利益ともに堅調に増加しています。製造現場でのロボット導入による自動化や内製化等の原価低減活動により、利益率の改善が進んでいます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 168億円 | 183億円 |
| 売上総利益 | 21億円 | 23億円 |
| 売上総利益率(%) | 12.2% | 12.5% |
| 営業利益 | 5億円 | 8億円 |
| 営業利益率(%) | 3.2% | 4.2% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃が6億円(構成比42%)、給料及び手当が2億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は「精密部品製造及びユニット加工事業」の単一セグメントであるため、全社の売上高推移を示しています。自動車関連の新製品向け生産設備や金型の販売が順調に進捗し、前年を上回る売上を記録しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 精密部品製造及びユニット加工事業 | 168億円 | 183億円 |
| 連結(合計) | 168億円 | 183億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業で十分なキャッシュを創出し、その資金で設備投資と借入金の返済を進める、健全型のキャッシュ・フローを描いています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3億円 | 11億円 |
| 投資CF | -9億円 | -10億円 |
| 財務CF | -2億円 | -2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「我々会社の目的は社会の要請に応じ優秀な製品を最も廉価で生産し供給する事によってお互の福利を増進するにある」という経営理念を掲げています。社会と調和を保ちながら顧客ニーズに応える製品を提供し、持続的な発展と相互の幸福を追求しています。
■(2) 企業文化
「地球にやさしいものづくり」という環境基本理念のもと、事業活動を通じて循環型社会の構築に貢献する文化があります。また、「極・省・短」を行動指針とし、製造現場の単純作業や事務処理の自動化を図り、社員のワークライフバランス向上やモノづくりの喜びを共有する姿勢を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
「SPACE2030」という中期経営計画を策定しています。具体的な数値として、2030年にCO2排出量を2015年度比で45%削減する目標を掲げており、省エネ設備への更新や再生可能エネルギーの利用を促進し、持続可能な事業運営を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社の強みである金型や生産技術力に磨きをかけ、自動車の電装製品、安全走行製品、EV関連製品等の受注拡大を狙います。また、ロボット導入による自動化や材料歩留改善などの原価低減による収益力強化、タイの子会社における生産体制強化と人材教育を通じたグローバル対応の推進を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材ポートフォリオの最適化、ロボティクス・AI活用による省人化、人材採用・育成体制の強化に取り組んでいます。一人ひとりの生産性向上を通じた少数精鋭化や多能工化、多様な人材の登用により機動的な組織体制を構築するとともに、プロジェクトリーダー制度を活用して次世代リーダーを計画的に育成しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.5歳 | 21.2年 | 5,620,601円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 72.4% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 70.7% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自動車産業への依存と市場変動
同社売上の多くは自動車関連部品であり、グローバルな自動車生産量の減少や他国の関税政策の変更、EVシフトの進展など、自動車業界の事業環境の急激な変化が同社の業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 受注価格の下落と原材料価格の上昇
市場での競争激化に伴う受注価格のさらなる下落や、生産に不可欠な原材料等の価格が上昇し、利益率や価格競争力が低下した場合、収益性を圧迫し同社の業績および財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 為替変動とカントリーリスク
タイに海外生産拠点を有しているため、大幅な円高が進行した場合に為替差損が発生するリスクがあります。また、現地での政治経済等による社会情勢の変動や地政学リスクにより、生産活動に支障をきたす懸念があります。



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