※本記事は、株式会社サンコー の有価証券報告書(第62期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. サンコーってどんな会社?
サンコーは、長野県に本社を置く精密部品メーカーです。自動車、家電、住宅設備向け等の部品製造を主力としています。
■(1) 会社概要
1963年に長野県岡谷市で設立され、テープレコーダー部品等の製造を開始しました。1980年代にはOA機器分野へ進出し、1999年に東京証券取引所市場第二部に上場しました。2011年にはタイ王国に連結子会社を設立し、グローバル展開を加速させました。2022年の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しています。
同グループの従業員数は連結498名、単体304名です。筆頭株主は親会社の田村商事で、第2位は代表取締役会長の田村正則氏、第3位は証券代行業務を行う外国法人等となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 田村商事 | 51.22% |
| 田村 正則 | 5.64% |
| INTERACTIVE BROKERS LLC | 4.34% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は竹村潔氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 田村 正則 | 代表取締役会長 | 1995年入社。企画室長、総務人事部長、管理本部長等を経て2001年代表取締役社長に就任。2015年より現職。 |
| 竹村 潔 | 代表取締役社長 | 1983年入社。各工場長、プレス事業部長、九州事業部長、生産本部長等を歴任。2011年より現職。 |
| 鈴木 和彦 | 取締役生産本部長 | 1989年入社。金型技術開発部長、本社工場長、タイプロジェクト室長、技術部長等を歴任。2023年より現職。 |
| 佐藤 匡弘 | 取締役(監査等委員) | 1992年入社。梓川工場長、三田工場長、生産本部長、生産技術部統括部長等を歴任。2025年より現職。 |
社外取締役は、赤羽啓(弁護士)、志水達也(税理士・行政書士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「精密部品製造及びユニット加工事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
同社グループは、自動車関連製品、住宅設備関連製品、事務機関連製品、デジタル家電関連製品などに関するプレス製品、メカトロ製品、プラスチック製品の製造販売を行っています。主な顧客には株式会社デンソーや住友電装株式会社などが挙げられます。
収益は、顧客への製品販売および金型販売から得ています。製品販売においては出荷時点で収益を認識し、金型販売については顧客の検収をもって売上を計上しています。運営は主にサンコーおよび連結子会社のTHAI SANKO CO.,LTD.が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2024年3月期まで増加傾向にありましたが、当期は横ばいとなりました。経常利益は変動があり、当期は前期比で減少しています。当期利益は前期と比較して減少しました。全体として、売上規模は拡大基調から安定期に入りつつあり、利益面では原材料価格や市場動向の影響を受けている様子がうかがえます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 133億円 | 141億円 | 157億円 | 169億円 | 168億円 |
| 経常利益 | 8億円 | 7億円 | 6億円 | 10億円 | 8億円 |
| 利益率(%) | 6.1% | 5.1% | 3.6% | 5.8% | 4.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | 4億円 | 1億円 | 4億円 | 5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期とほぼ同水準を維持しましたが、売上原価の増加等により売上総利益は減少しました。これに伴い、営業利益および営業利益率は低下しています。コスト増が利益を圧迫している状況が見て取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 169億円 | 168億円 |
| 売上総利益 | 22億円 | 21億円 |
| 売上総利益率(%) | 13.1% | 12.2% |
| 営業利益 | 8億円 | 5億円 |
| 営業利益率(%) | 4.6% | 3.2% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃が7億円(構成比47%)、その他費用が3億円(同22%)、給料及び手当が2億円(同14%)を占めています。売上原価は売上高に対して88%を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、製品別の売上構成を確認すると、主力の自動車関連製品と住宅設備関連製品が微減となりました。一方でデジタル家電関連製品は増加しています。全体として自動車産業の影響を大きく受ける構造となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 自動車関連製品 | 128億円 | 125億円 |
| 住宅設備関連製品 | 18億円 | 18億円 |
| デジタル家電関連製品 | 16億円 | 18億円 |
| 事務機関連製品 | 3億円 | 3億円 |
| その他 | 4億円 | 4億円 |
| 連結(合計) | 169億円 | 168億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
サンコーのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税金等調整前当期純利益や棚卸資産の増減、法人税等の支払いによって資金が増減しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の取得・償還や有形固定資産の取得・売却などにより、資金が大きく減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、主に配当金の支払いにより資金が支出されました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 13億円 | 3億円 |
| 投資CF | -2億円 | -9億円 |
| 財務CF | -1億円 | -2億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「我々会社の目的は社会の要請に応じ優秀な製品を最も廉価で生産し供給する事によってお互の福利を増進するにある」という経営理念を掲げています。社会からのニーズに応え、高品質かつ低価格な製品を提供することを通じて、相互の利益と幸福の向上を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「地球環境の保全を企業の使命の1つと自覚し、地球社会と調和を保ちながら『地球にやさしいものづくり』に対して常に努力し、『持続可能な発展』の国際理念に基づいた、循環型社会の構築に貢献していく」という環境基本理念を持っています。また、法令遵守や社会倫理の遵守を企業活動の前提とする「企業倫理憲章」を制定し、コンプライアンス意識の徹底を図る文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期経営計画(WIN2025)を推進しており、CO2排出削減などの環境目標も掲げています。2030年にはCO2排出量を2015年度比で45%削減することを目標としており、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用を進めています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、強みである金型技術や生産技術力をさらに磨き、高まる顧客要求に応えることで売上拡大を目指しています。特に自動車分野では電装製品、安全走行製品、EV関連製品の受注拡大を狙い、内需産業ではスマートメーター等のインフラ関連製品の強化を図ります。
* 売上の拡大:自動車関連の電装・安全・EV製品やインフラ関連製品の受注強化。
* 収益力強化:ロボット導入による自動化、歩留まり改善、内製化による原価低減。
* グローバル化:タイ子会社の設備投資による生産体制強化と現地社員の育成。
* 技術力強化:大型化や絞り加工、プレス・プラスチック複合加工技術の向上による差別化。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は持続的な成長のために人的資本への投資を重視し、積極的な女性社員の登用と幅広い職場への配置を推進しています。5カ年の行動計画に基づき、設計等の職種で女性技術者の採用・育成を行い、役職者への登用も進めています。多様な人材が活躍できる環境整備を通じて、会社と社員の成長の好循環を生み出し、企業価値向上を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.1歳 | 22.1年 | 5,198,658円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.4% |
| 男女賃金差異(正規) | 72.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | 68.2% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済状況および自動車産業への依存
同社グループの売上の多くは自動車関連部品であり、グローバルな自動車生産量の変動が業績に大きく影響します。また、最終製品の需要は国や地域の経済状況に左右され、取引先の生産動向の変化が同社の受注に直結するため、需要減少が業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 受注価格競争と業界動向
主力である自動車業界では技術変革やグローバル化に伴い市場競争が激化しています。同社はEV関連製品などへの参入を進めていますが、国際競争による受注価格の下落や、自動車業界の好不況の動向によっては、業績や財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
■(3) 原材料価格の変動
生産活動に不可欠な原材料等の価格が上昇し、製品への価格転嫁が困難で利益率や価格競争力が低下した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、為替変動リスクもあり、海外生産拠点を有するため、大幅な円高等は為替差損の発生要因となり得ます。
■(4) カントリーリスク
同社はタイ王国に製造・販売拠点を展開しています。現地の政治経済情勢の変動、地域紛争、テロなどの地政学リスクにより生産活動に支障が生じた場合、グループ全体の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。



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