図研 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

図研 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場しており、エレクトロニクスや自動車関連製造業向けの設計・製造ソリューションを主要事業としています。直近の業績は、売上高407億円(前期比5.9%増)、経常利益59億円(同9.1%増)となり、4期連続で過去最高売上・利益を更新する増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社図研 の有価証券報告書(第49期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 図研ってどんな会社?


エレクトロニクスや自動車産業向けに、設計から製造までの工程を支援するITソリューションを提供する企業です。

(1) 会社概要


1976年に株式会社図形処理技術研究所として設立され、1985年に現社名へ変更しました。プリント基板設計CAD等の分野で成長し、1994年に東京証券取引所市場第一部に上場。2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。近年では2019年に米国のバイテック社を買収、2024年には図研エルミックを完全子会社化するなど、グローバル展開と事業領域の拡大を進めています。

連結従業員数は1,610名(単体438名)です。筆頭株主は創業者の資産管理会社で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は創業者で会長の金子真人氏となっています。

氏名 持株比率
金子真人ホールディングス 13.10%
日本マスタートラスト信託銀行 10.51%
金子 真人 10.27%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は勝部迅也氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
金子 真人 代表取締役会長 1976年同社設立、代表取締役社長を経て2020年より現職。
勝部 迅也 代表取締役社長 1982年入社。取締役営業本部長、専務取締役、代表取締役副社長等を経て2020年より現職。
相馬 粛一 代表取締役副社長 1991年入社。管理本部長、取締役副社長兼管理本部長等を経て2024年より現職。


社外取締役は、佐野高志(佐野公認会計士事務所所長)、高原わかな(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「欧州」「米国」「アジア」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


国内のエレクトロニクス、自動車関連、産業機器製造業向けに、基板・回路設計ソリューションやITソリューションを提供しています。主力の電気設計システム「CR-8000」やデータ管理システム「DS」シリーズの販売・保守が中心です。

収益は、ソフトウェアのライセンス販売、保守サービス料、コンサルティング料等から得ています。運営は主に図研が行い、図研テックが技術者派遣等のサービスを、図研ネットウエイブがネットワーク関連製品の販売を行っています。

(2) 欧州


欧州地域において、基板・回路設計ソリューションの開発・販売を行っています。特にワイヤハーネス設計システム「E3.series」やデータ管理システム「DS-E3」の販売が好調で、現地の自動車・産業機器メーカー等のニーズに対応しています。

収益は、現地顧客からのソフトウェア販売および保守サービス料等により構成されます。運営は、英国のズケンLtd.、ドイツのズケンGmbH、ズケンE3 GmbHなどが各国で事業を展開しています。

(3) 米国


北米市場において、ITソリューションおよびクライアントサービスを提供しています。MBSE(モデルベース・システムズエンジニアリング)分野での展開や、現地製造業向けの設計ソリューション販売を行っています。

収益は、現地顧客へのソリューション提供による対価等です。運営は、ズケン・ユーエスエーInc.やズケン・バイテックInc.などが担当しています。

(4) アジア


韓国、シンガポール、中国、台湾、インド等のアジア地域において、基板・回路設計ソリューション等の販売・サポートを行っています。日系企業の現地法人や現地メーカーに対し、製品およびサービスを提供しています。

収益は、製品販売およびサポートサービス料等から得ています。運営は、ズケン・コリアInc.、ズケン・シンガポールPte.Ltd.、台湾図研股份有限公司などが各国で行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は288億円から407億円へと右肩上がりで成長を続けています。経常利益も32億円から59億円へと順調に拡大し、利益率も10%台後半から14%台へと向上しています。当期純利益も増加基調にあり、特に直近期では政策保有株式の売却益なども寄与し、大幅な増益となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 288億円 315億円 351億円 385億円 407億円
経常利益 32億円 42億円 47億円 54億円 59億円
利益率(%) 10.9% 13.3% 13.5% 14.1% 14.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 22億円 30億円 32億円 39億円 52億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に伸長しています。売上総利益率は68%前後と高い水準を維持しており、高付加価値なソフトウェア事業の特徴が表れています。営業利益率も12〜13%台で推移しており、安定した収益性を確保しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 385億円 407億円
売上総利益 261億円 279億円
売上総利益率(%) 67.9% 68.5%
営業利益 48億円 54億円
営業利益率(%) 12.5% 13.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が85億円(構成比38%)、研究開発費が51億円(同23%)を占めています。人材と技術開発への投資が費用の中心となっています。

(3) セグメント収益


日本セグメントはITソリューションやクライアントサービスが伸長し増収となりました。欧州もワイヤハーネス設計システム等が好調で売上を伸ばしました。一方、米国は一部ソリューションの売上減により微減収、アジアはインド等での販売増により増収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
日本 265億円 283億円
欧州 71億円 75億円
米国 30億円 30億円
アジア 18億円 20億円
連結(合計) 385億円 407億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.1%で市場平均を上回っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 49億円 49億円
投資CF -16億円 11億円
財務CF -52億円 -60億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、エレクトロニクス製造業や自動車・産業機器製造業を中心に、幅広いモノづくり企業の設計・製造の効率化と生産性向上を図り、製品開発・製造を支えることで「モノづくり産業の発展に貢献する」ことを基本方針としています。市場ニーズの変化に対応し、常に最適なソリューションの提供に努めています。

(2) 企業文化


同社は「健全で活気と品格にあふれる企業文化の確立」を全ての活動の規範としています。変化の激しい事業環境に迅速かつ機動的に対応しつつ、適法かつ適正で健全性の高い企業活動を行うことを重視する文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、ソリューションビジネスの推進や新たな市場・技術領域への展開により事業の拡大を図りつつ、株主の長期的利益確保の観点から、「1株当たり当期純利益の持続的な伸長」を経営の重要な指標として位置づけています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向けて「主力製品の拡販」と「中長期的な成長へ向けた取り組みの加速」を掲げています。具体的には、電気設計システム「CR-8000」シリーズやワイヤハーネス設計システム「E3.series」のグローバル展開を強化します。また、MBSEモデリングツール「GENESYS」の活用やAI技術の導入により、構想設計のデジタル化やシステムズエンジニアリング市場でのビジネス拡大を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社はソフトウェア事業の源泉である人的資本の最大化を目指し、「多様な人材がいきいきと働き、長期にわたりキャリア形成ができる職場環境」の実現に取り組んでいます。次世代リーダー育成や新任管理職研修などの人材育成に加え、女性採用比率向上や基幹職への登用促進など、ダイバーシティの推進にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.6歳 17.9年 8,366,581円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 69.2%
男女賃金差異(正規雇用) 68.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 80.4%


※女性管理職比率は有価証券報告書に記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(約20.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の市場への依存


同社グループはエレクトロニクス、自動車関連、産業機器製造業等のモノづくり企業向けソリューションを主力としています。そのため、これらの製造業における景気動向や設備投資の停滞が継続した場合、同社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

(2) ソリューションの開発


最新技術を取り入れた新製品開発や品質向上に努めていますが、計画通りに開発が進まない場合は営業機会の喪失などが懸念されます。また、製品に重大な不具合が生じた場合、修補対応や信用の低下などにより、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 知的財産権のリスク


事業展開において知的財産権の確保は重要ですが、官公庁の審査結果によっては権利取得できない可能性があります。また、他社の知的財産権を侵害しないよう配慮していますが、万が一侵害が認められた場合、損害賠償請求や使用差止などにより業績に影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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