図研 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

図研 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

図研は、エレクトロニクスや自動車関連などのモノづくり企業向けに、設計から製造までのソリューションをグループ各社とともに展開するエンジニアリングITカンパニーです。連結従業員数は1,656名で、直近の業績は売上高、利益ともに増加傾向が続いています。


目次

※本記事は、株式会社図研 の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。

2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?


同社グループは、ITを活用してモノづくり企業のエンジニアリング・プロセスを効率化する事業を展開しています。この専門性の高い事業内容から、従業員の専門性や長期的なキャリア形成を重視する傾向が見られます。働き方については、育児支援制度の充実や柔軟な働き方の推進により、従業員が長く活躍できる環境づくりに注力していることがうかがえます。

■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢


同社では、平均勤続年数が長く、平均年齢も比較的高めであることから、従業員が長期的にキャリアを築いている傾向がうかがえます。安定した環境で専門性を深めながら働ける職場であると考えられます。

項目 数値
平均年間給与 8,659,154円
平均勤続年数 17.9年
平均年齢 44.3歳
単体従業員数 451人
連結従業員数 1,656人
単体のグループ内比率 27.2%


同社及び一部の連結子会社は、従業員の退職給付に充てるため、確定給付型(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる)と確定拠出型(会社が拠出した資金を従業員が運用する)の制度を設けています。退職一時金制度があり、退職給付として給与と勤務期間に基づいた一時金が支給されます。

なお、退職給付債務は32.8億円となっています。

■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方


同社グループは、ソフトウェア事業の源泉である人的資本を最大化することが不可欠であると認識しており、ソフトウェア開発力、技術提案力、プロジェクトマネジメント力を発揮できる人材の確保、育成、定着を人材戦略の柱としています。人材の確保においては、将来の経営人材や中核人材の育成を見据えた計画的な新卒採用に加え、技術革新や顧客ニーズの高度化に対応するため、高度IT人材を中心とした中途採用を強化しています。

人材育成では、従業員の育成段階に応じた最適な研修を実施し、専門性の向上、プロジェクトマネジメント力、顧客価値創出力の強化、人間力の向上を図り、将来を担う人材の育成に注力しています。給与等の決定にあたっては、職能的要素を基盤としつつ、職務および専門性を重視しており、特に高度IT人材の確保のため、IT人材市場の動向を踏まえた競争力のある報酬水準の確保に努めています。

従業員の給与等は、基本給、賞与、各種手当、成果連動報酬、福利厚生等で構成され、職能、職務、専門性、成果、企業業績、外部労働市場における報酬水準、人材戦略との整合性を総合的に勘案して決定されます。また、賞与および成果連動報酬は従業員の貢献を適切に反映し、職種を問わず個人成果および企業業績に応じた成果連動報酬制度や、決算期末の業績連動型一時金制度を設けています。人材の定着に向けては、子育て支援制度の充実やリモートワーク制度の活用による柔軟な働き方の推進など、長期にわたり活躍できる職場環境の整備を進めています。

■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標


有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。

法定開示


提出会社単体の数値は本記事では取得できていません。男女間において同一労働の賃金の額に差はなく、男女の賃金の額の差異の要因は主に職群および等級の人員構成によるものです。

指標 数値
男性労働者の育児休業取得率 70.0%
労働者の男女の賃金の額の差異(全従業員) 69.7%
労働者の男女の賃金の額の差異(正社員) 68.7%
労働者の男女の賃金の額の差異(パート・有期社員) 80.2%

連結子会社の法定開示


主要事業会社3社の数値のみ掲載します。

▼ 図研テック(株)
男女間において同一労働の賃金の額に差はなく、男女の賃金の額の差異の要因は主に職群および等級の人員構成によるものです。

指標 数値
男性労働者の育児休業取得率 83.3%
労働者の男女の賃金の額の差異(全従業員) 89.2%
労働者の男女の賃金の額の差異(正社員) 91.7%
労働者の男女の賃金の額の差異(パート・有期社員) 59.6%

多様性・登用


提出会社単体の任意開示データです。

指標 数値
女性採用比率 34.5%

3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?


図研は、エレクトロニクス、自動車関連、産業機器製造業向けに、設計から製造までのプロセスを支援するソリューションを提供するエンジニアリングITカンパニーです。同社グループは、主力製品の拡販と新機能開発に注力し、顧客のDX推進を支援しています。

■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか


同社グループの事業は、主にソリューションの研究開発・製造・販売と、これらに付帯するクライアントサービスで構成されています。顧客のDXへの取り組みが加速する中、エレクトロニクス製造業や自動車関連・産業機器製造業におけるIT投資は引き続き活発な状況です。同社グループは、主力である電気設計システム「CR-8000 Design Force」やワイヤハーネスの設計システム「E3.series」の拡販に注力しています。

また、設計データ管理システム「DSシリーズ」やMBSEモデリングツール「GENESYS」の提案活動も強化しています。収益は、顧客との契約に基づくソリューション提供と、継続的なクライアントサービスから得られています。特にクライアントサービスでは、顧客から受け取った前受金がサービス期間の経過とともに収益に振り替えられるモデルとなっています。同社グループは海外市場でも事業を展開しており、海外情勢が経営に影響を与える可能性もあります。

セグメント 売上高(2025年3月期) 売上高(2026年3月期)
日本 283億円 297億円
欧州 75.3億円 81.5億円
米国 29.5億円 31.5億円
アジア 19.6億円 21.4億円

日本

ネットワークセキュリティ関連製品を中心としたITソリューションの売上が順調に推移し、販売ライセンス数等の増加によりクライアントサービスが伸長しました。収益は、ソリューション販売とクライアントサービスから得ています。

欧州

ワイヤハーネスの設計システム「E3.series」を中心とした回路設計ソリューションの売上が増加しました。収益は、ソリューション販売とクライアントサービスから得ています。

米国

基板設計ソリューションおよび回路設計ソリューションの売上が増加しました。収益は、ソリューション販売とクライアントサービスから得ています。

アジア

韓国で電気設計システム「CR-8000」シリーズを中心に回路設計ソリューションの売上が増加しました。収益は、ソリューション販売とクライアントサービスから得ています。

■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移


同社グループの業績は、過去5期にわたり売上高、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益のいずれも増加傾向で推移しています。特に売上高、営業利益、経常利益は5期連続で過去最高を更新しており、親会社株主に帰属する当期純利益も2期連続で過去最高となりました。開発費の増加があったものの、売上高の伸長が利益を押し上げています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 315億円 351億円 385億円 407億円 431億円
経常利益 41.8億円 47.4億円 54.4億円 59.4億円 71.3億円
経常利益率 13.3% 13.5% 14.1% 14.6% 16.5%
親会社株主に帰属する当期純利益 30.0億円 32.0億円 38.7億円 52.3億円 54.0億円
1株当たり当期純利益(円) 129.16 137.48 171.37 236.99 253.15

■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る


同社グループの従業員1人あたりの売上高および営業利益は、前期と比較して増加しています。これは、同社グループ全体の生産性が向上している傾向を示しています。組織全体の効率化が進んでいることがうかがえる結果となっています。

指標 2025年3月期(前期) 2026年3月期(当期)
従業員1人あたり売上高(連結) 25.3百万円 26.0百万円
従業員1人あたり営業利益(連結) 3.3百万円 3.5百万円

4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?


同社グループは、本業で安定した資金を生み出し、財務基盤を堅固にしています。将来に向けた投資も行いながら、手元資金も厚く保たれている状況です。

■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み


同社グループの財務基盤は、自己資本比率とROE(自己資本利益率)から安定していることがうかがえます。自己資本比率はプライム市場の製造業平均と比較して高い水準にあり、手元資金も潤沢に確保されています。この堅実な財務状況は、事業の継続性や雇用・給与の安定性につながる要素と言えます。

指標 2025年3月期(前期) 2026年3月期(当期)
純資産 399億円 413億円
自己資本比率 63.1% 61.0%
ROE(自己資本利益率) 13.0% 13.3%
現金及び預金 282億円 294億円

■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ


同社グループのキャッシュフローは、本業で安定的に資金を稼ぎ出し、その資金を事業活動や投資に充てている状況を示しています。営業活動によるキャッシュフローは増加しており、本業の収益力が堅調であることがうかがえます。投資活動によるキャッシュフローは、主に固定資産の取得による支出があり、将来に向けた事業基盤の強化が行われています。

財務活動によるキャッシュフローは、自己株式の取得や配当金の支払いにより資金が減少しています。これは株主還元を積極的に行っていることを示しています。本業で稼いだ資金で投資を行い、かつ手元資金も確保できていることから、同社グループは安定した経営基盤を持ち、今後の成長も期待できる状況にあると言えます。

項目 2025年3月期(前期) 2026年3月期(当期)
営業CF 48.6億円 61.3億円
投資CF 10.8億円 △7.6億円
財務CF △59.6億円 △52.1億円
フリーCF(営業CF+投資CF) 59.4億円 53.7億円

■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント

① 継続企業の前提に関するリスク

継続企業の前提に関する特記事項はありません。

② 事業構造・収益性に関するリスク

同社グループは、エレクトロニクス製造業、自動車関連・産業機器製造業の分野に事業が依存しています。これらの製造業における景気の動向や設備投資の動向が、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、欧米やアジア各国に事業を展開しており、海外市場における政治・経済環境の急激な変動や為替レートの変動などのリスクを内包しています。これらの要因が顕在化した場合、同社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

③ 人材・組織に関するリスク

同社グループは海外展開を進めており、海外市場における人材確保の困難がリスクとして挙げられています。これは、事業拡大における人材戦略の重要性を示しています。

④ 雇用安定性・リストラ

解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。

5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?


図研は、モノづくり産業の発展に貢献することを基本方針とし、サステナビリティを事業目的と密接に結びつけている企業です。変化の激しい事業環境に対応し、顧客の課題解決と企業価値向上を目指す姿勢が特徴となっています。

■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか


図研グループは、エレクトロニクス製造業や自動車関連・産業機器製造業をはじめとする幅広いモノづくり企業の設計・製造の効率化と生産性向上を支援しています。製品の開発・製造を支えることで、モノづくり産業の発展に貢献することを経営の基本方針としています。同社グループは、常に市場ニーズの変化に的確に対応し、最適なソリューションを提供することに努めています。

■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー


図研グループは、ITによってモノづくり企業のエンジニアリング・プロセスを効率化することを事業目的としており、この目的自体がサステナビリティに密接に関係していると認識しています。同社グループは「持続可能な社会の実現」という視点を経営戦略や成長戦略立案に明確に取り入れ、持続可能な未来に貢献する企業を目指しています。

変化の激しい事業環境に迅速かつ機動的に対応し、適法かつ適正で健全性の高い企業活動を行うガバナンス体制の構築を重視しています。また、多様な人材がいきいきと働き、長期にわたりキャリア形成ができる職場環境を目指し、社員の能力・可能性を最大限引き出す人材マネジメントを強化しています。

■(3) 経営課題と今後の重点テーマ


図研グループは、世界のモノづくりを取り巻く環境変化に対応し、顧客が抱える課題に真正面から取り組み、モノづくりプロセス全体の効率化を実現するソリューションの早期提供を重視しています。対処すべき課題として、主力製品の拡販と機能拡充、中長期的な成長へ向けた取り組みを挙げています。

特に、AIを活用した新しい回路設計ソリューションの開発や、生成AIなどの先端技術を取り込んだ革新的な機能・サービスの拡充に注力しています。また、エンジニアリングITによる持続可能なモノづくりへの貢献、人的資本の拡充、機動的かつ健全なガバナンスの確立を重要課題としています。

6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?


図研は監査役制度を採用しており、取締役会と監査役会を中心にコーポレート・ガバナンス体制を構築しています。取締役会の諮問機関として、社外取締役全員を構成員とする指名・報酬委員会を設置しています。

■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か


図研の株主構成を見ると、筆頭株主は金子真人ホールディングスであり、個人株主である金子真人氏も上位に名を連ねています。創業家とその関連会社が上位株主として存在し、同社の経営を支えていることがうかがえます。また、信託銀行も主要な株主として名を連ねています。

株主名 持株比率
金子真人ホールディングス 13.47%
金子 真人 10.56%
日本マスタートラスト信託銀行 9.44%
日本カストディ銀行 7.03%
JP MORGAN CHASE BANK 385839 4.12%

■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか


図研の役員は8名(男性6名・女性2名)で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は勝部迅也氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
金子 真人 代表取締役会長 1976年12月に株式会社図形処理技術研究所(現図研)を設立し、代表取締役社長に就任。2020年4月より代表取締役会長に現職。
勝部 迅也 代表取締役社長 1982年1月に同社に入社し営業部長。2004年6月代表取締役副社長を経て、2020年4月より代表取締役社長に現職。
相馬 粛一 代表取締役副社長 1991年3月に同社に入社。管理本部長などを経て、2005年6月取締役管理本部長に就任。2024年4月より代表取締役副社長に現職。


社外取締役は、佐野高志氏(佐野公認会計士事務所所長)、高原わかな氏(荒井総合法律事務所弁護士)です。

同社は監査役会設置会社であり、社外取締役および社外監査役が客観的かつ中立的な立場から経営の監督・監視を行っています。また、取締役会の諮問機関として指名・報酬委員会を設置し、決定プロセスの客観性と透明性を高めています。

■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計


図研の役員報酬は、企業価値の持続的な向上を促すインセンティブとして、株主利益と連動した報酬体系を基本方針としています。取締役の報酬は固定報酬と業績連動報酬で構成され、社外取締役の報酬は固定報酬のみです。業績連動報酬は、前事業年度の連結経常利益に応じて算出された額が賞与として支給されます。

区分 人数 総額 1人あたり平均
取締役(社外除く) 3名 2.3億円 76.9百万円
監査役(社外除く) 1名 12百万円 11.8百万円
社外役員 5名 19百万円 3.8百万円


※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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