図研 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

図研 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

図研は東京証券取引所プライム市場に上場し、エレクトロニクスや自動車関連製造業向けに設計・製造プロセスを効率化するITソリューション等を提供しています。業績は好調で、主力の電気設計システムの拡販等が寄与し、当期は売上高431億円、経常利益71億円と5期連続で増収増益を達成、過去最高を更新しました。


※本記事は、図研の有価証券報告書(第50期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 図研ってどんな会社?


エレクトロニクスや自動車関連製造業を中心に、設計から製造までのプロセスにかかわるソリューションを提供しています。

(1) 会社概要


1976年に図形処理技術研究所として設立され、1985年に図研へ商号変更しました。1994年に東証第一部へ上場し、同年レーカル・リダックグループを買収、2006年にはシム・チーム(現ズケンE3)を買収するなど海外展開を加速させました。2022年に東証プライム市場へ移行し、事業基盤の拡大を続けています。

現在の従業員数は連結で1,656名、単体で451名です。筆頭株主は創業者の金子真人氏の資産管理会社とみられる金子真人ホールディングスで、第2位は金子真人氏本人、第3位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行となっています。

氏名 持株比率
金子真人ホールディングス 13.47%
金子真人 10.56%
日本マスタートラスト信託銀行 9.44%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は勝部迅也氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
勝部迅也 代表取締役社長 1982年1月同社入社。営業部長、取締役営業本部長、代表取締役副社長などを経て、2020年4月より現職。
金子真人 代表取締役会長 1976年12月図形処理技術研究所(現図研)設立、代表取締役社長。2020年4月より現職。
相馬粛一 代表取締役副社長 1991年3月同社入社。総務人事部長、取締役管理本部長、取締役副社長などを経て、2024年4月より現職。


社外取締役は、佐野高志(佐野公認会計士事務所所長)、高原わかな(荒井総合法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「欧州」「米国」「アジア」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


図研および国内子会社が、基板設計や回路設計ソリューション、ITソリューションの開発・販売とクライアントサービスを提供しています。ネットワーク関連製品や組込みソフトの開発も行い、モノづくり企業の課題解決を支援しています。

収益源は、ソフトウェアの販売ライセンス収入や保守などのクライアントサービス収入です。運営は主に図研のほか、図研テック、図研ネットウエイブ、図研エルミックなどの子会社が行っています。

(2) 欧州


英国、ドイツ、フランスなどで、基板設計および回路設計ソリューションの開発・販売・サポートを提供しています。特にワイヤハーネスの設計システム「E3.series」を中心に事業を展開しています。

収益源はソフトウェアの販売や保守サービス等による収入です。運営は英国における事業を統括するズケン・グループのもと、ズケンLtd.やズケンGmbHなどの子会社が行っています。

(3) 米国


米国において、基板・回路設計ソリューションやITソリューションの販売、およびクライアントサービスを提供しています。製造業の設計・製造プロセスの効率化と生産性向上を支援しています。

収益源は製品ライセンスの販売やサポートサービス提供に伴う収入です。運営は主にズケン・ユーエスエーInc.やズケン・バイテックInc.が行っています。

(4) アジア


韓国、シンガポール、台湾、中国、インドなどにおいて、基板・回路設計ソリューションの販売やコンサルティング、クライアントサービスを提供しています。韓国では主力の電気設計システムを中心に展開しています。

収益源はソフトウェアの販売、コンサルティング、およびサポートサービス収入です。運営はズケン・コリアInc.、ズケン・シンガポールPte.Ltd.、台湾図研などが各地域で行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は右肩上がりで推移しており、5期連続で増収を達成しています。経常利益も毎年増加しており、利益率も13%台から16%台へと継続的な向上を見せています。主力の設計システム等の拡販が順調に推移し、着実な成長を実現しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 315億円 351億円 385億円 407億円 431億円
経常利益 42億円 47億円 54億円 59億円 71億円
利益率(%) 13.3% 13.5% 14.1% 14.6% 16.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 20億円 23億円 12億円 39億円 41億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しており、売上総利益率は約69%と高い水準を維持しています。営業利益率も安定的に推移しており、収益力の高さが伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 407億円 431億円
売上総利益 279億円 296億円
売上総利益率(%) 68.5% 68.6%
営業利益 54億円 59億円
営業利益率(%) 13.2% 13.6%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が88億円(構成比37%)、研究開発費が54億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本や欧州をはじめ、全てのセグメントで増収を達成しています。日本ではネットワークセキュリティ関連やクライアントサービスが伸長し、欧州やアジアでは設計システムの販売が好調に推移しました。米国でもソリューションの売上が増加しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
日本 283億円 297億円
欧州 75億円 82億円
米国 30億円 32億円
アジア 20億円 21億円
連結(合計) 407億円 431億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期は営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなる「健全型」です。営業利益で借入等の返済を進め、投資も手元資金で賄う優良な状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 49億円 61億円
投資CF 11億円 -8億円
財務CF -60億円 -52億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.3%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.0%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


エレクトロニクス製造業や自動車関連・産業機器製造業を中心とした幅広いモノづくり企業の設計・製造の効率化と生産性向上を図り、製品の開発・製造を支えることで、モノづくり産業の発展に貢献することを基本方針としています。

(2) 企業文化


企業理念として「健全で活気と品格にあふれる企業文化の確立」を掲げ、全ての活動の規範としています。多様な価値観が企業の成長につながるという考えのもと、男女や国籍を問わず適材適所の人材配置を行い、多様な人材がいきいきと働き、能力を最大限引き出せる職場環境づくりを重視しています。

(3) 経営計画・目標


新たな市場や技術領域への積極的な展開により事業拡大を図りつつ、株主の長期的な利益を確保する観点から、1株当たり当期純利益の持続的な伸長を指標として推進しています。配当については、強固な財務基盤を維持しつつ継続的な還元を行うため、以下の目標を設定しています。

- 株主資本配当率(DOE)5.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


世界のモノづくり企業を全面的に支援するため、主力製品の拡販と機能拡充に取り組みます。AIを活用した自動配置配線機能などの開発に注力するとともに、構想段階の設計情報をデジタル化するMBSEモデリングツール「GENESYS」を提案し、顧客のDXを支援します。次世代半導体の実装プロセスの支援など、新たな領域での事業拡大も目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


ソフトウェア事業の源泉である人的資本の最大化が持続的成長に不可欠との認識のもと、開発力や技術提案力を発揮できる人材の確保・育成・定着を推進しています。高度IT人材の中途採用強化や次世代リーダー向けの研修を実施し、柔軟な働き方の推進や子育て支援制度の充実を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.3歳 17.9年 8,659,154円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 70.0%
男女賃金差異(全労働者) 69.7%
男女賃金差異(正規労働者) 68.7%
男女賃金差異(非正規労働者) 80.2%


※女性管理職比率については、有報に記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の市場への依存について

エレクトロニクス製造業や自動車関連・産業機器製造業などを主要市場としているため、これらの業界における景気動向や設備投資の停滞が継続した場合、同社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。新たな市場への取り組みで事業拡大に努めています。

(2) ソリューションの開発について

顧客ニーズに応じた新製品の開発や機能強化に努めていますが、計画通りに開発が進まなかった場合の営業機会の喪失や、製品に重大な不具合が発生した際の修補対応、信用の低下などが生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 知的財産権について

ソフトウェア事業において知的財産権の確保は極めて重要ですが、第三者の知的財産権を侵害しないよう配慮しているものの、全てを把握することは困難です。万一、第三者の権利を侵害し、使用差止や損害賠償を請求された場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。

(4) 有力パートナー企業との提携関係について

製品開発や販売面で多数の有力パートナー企業と長期的な提携関係を築いていますが、パートナー企業の倒産や買収、戦略変更等により提携関係が解消されるおそれがあり、重要な提携関係が解消された場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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