日本アビオニクス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本アビオニクス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。防衛用システムや産業用電子機器の製造販売を行う。当連結会計年度は防衛予算増額を追い風に情報システム事業が好調に推移し、売上高および経常利益は増加した。一方で、税金費用の増加により親会社株主に帰属する当期純利益は減益となった。


※本記事は、日本アビオニクス株式会社 の有価証券報告書(第75期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本アビオニクスってどんな会社?


防衛用システムや接合機器等のエレクトロニクス製品を展開し、社会の安全・安心に貢献する企業です。

(1) 会社概要


1960年に日本電気と米国ヒューズ・エアクラフト・カンパニーの合弁会社として設立され、1980年に現在の日本アビオニクスへ商号変更しました。1988年に東京証券取引所市場第二部に上場し、2020年にはNAJホールディングスが親会社となりました。現在は情報システムと電子機器を柱に事業を展開しています。

連結従業員数は701名、単体では612名です。筆頭株主は事業活動を支配・管理する業務を行うNAJホールディングスで、第2位は信託業務を行う日本カストディ銀行です。

氏名 持株比率
NAJホールディングス 54.47%
日本カストディ銀行(信託口) 7.59%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 4.85%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名、計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役執行役員社長は竹内正人氏で、社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
竹内 正人 代表取締役執行役員社長 1986年同社入社。接合機器事業部長、取締役執行役員常務、電子機器事業本部長などを歴任し、2019年6月より現職。
山後 宏幸 取締役執行役員経営企画本部長 1987年同社入社。経営企画本部経理部長などを経て、2015年執行役員CFOに就任。2020年6月より取締役。
近藤 将士 取締役(監査等委員)非常勤 富士銀行、マッキンゼーなどを経て日本産業パートナーズ入社。ビッグローブ執行役員CFOなどを歴任し、2024年6月より現職。


社外取締役は、呉文精(元ルネサスエレクトロニクス代表取締役社長CEO)、加藤精彦(元セイコープレシジョン代表取締役社長)、海野忍(元エヌ・ティ・ティ・コムウェア代表取締役社長)、青山薫(片岡総合法律事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報システム」「電子機器」事業を展開しています。

(1) 情報システム


防衛用システム製品、宇宙用電子部品、産業用電子機器の製造・販売を行っています。主な顧客は官公庁や大手防衛メーカーであり、各顧客の要求仕様に応じた個別性の高い製品を提供しています。

収益は主に製品の請負契約に基づき、履行義務の充足度合いに応じた対価を顧客から受け取ります。運営は日本アビオニクスおよび子会社の福島アビオニクスが行っています。

(2) 電子機器


抵抗溶接装置やパルスヒートなどの接合機器、赤外線サーモグラフィカメラや監視システムなどの赤外線機器を提供しています。一般企業を対象に、製品販売やソフトウェア販売、修理サービスなどを展開しています。

収益は主に製品の引き渡しやサービスの提供により、その対価を顧客から受け取ります。一部の装置やシステムは進捗度に応じた収益認識を行います。運営は日本アビオニクスおよび子会社の福島アビオニクスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5期間で緩やかな回復傾向にあり、特に当期は200億円台に乗せました。利益面でも経常利益率は改善傾向にあり、10%を超える水準を維持しています。当期純利益は高い水準を保ちつつも、当期は税負担の影響で若干の減益となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 202億円 192億円 178億円 181億円 201億円
経常利益 13億円 18億円 19億円 22億円 27億円
利益率(%) 6.4% 9.4% 10.8% 11.9% 13.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 16億円 19億円 19億円 18億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益が増加し、売上総利益率も改善しています。営業利益率も上昇しており、収益性の向上が見られます。増収効果と原価率の改善が利益拡大に寄与しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 181億円 201億円
売上総利益 57億円 66億円
売上総利益率(%) 31.7% 33.0%
営業利益 22億円 28億円
営業利益率(%) 12.1% 13.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が9億円(構成比22%)、研究開発費を含む技術研究費が6億円(同15%)を占めています。売上原価に関しては、製品製造にかかる材料費や労務費などが計上されています。

(3) セグメント収益


情報システム事業は防衛予算増額を背景に受注・売上が伸長し、増益となりました。電子機器事業は設備需要の回復が緩やかで、増収となるも営業損失を計上していますが、前年同期比では損益が改善しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
情報システム 147億円 160億円 26億円 30億円 19.0%
電子機器 34億円 41億円 -5億円 -3億円 -6.1%
連結(合計) 181億円 201億円 22億円 28億円 13.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.9%で市場平均を下回っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -2億円 22億円
投資CF -5億円 -5億円
財務CF 10億円 -21億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、独自のエレクトロニクス技術とシステム技術により、顧客のために新しい価値を創造し、安全で豊かな社会(人と地球にやさしい情報社会)の実現に貢献することを基本理念としています。顧客価値経営を推進し、継続して営業利益を増加させる筋肉質な会社となることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「グループ企業行動憲章」において、環境への配慮、社会との調和、人権の尊重などを規定し、これを行動規範・指針に落とし込んで事業活動を行っています。従業員一人ひとりの個性を尊重し、能力を発揮できる環境整備を掲げており、主体性と自律性を重んじる文化の醸成に努めています。

(3) 経営計画・目標


同社は中期経営計画(2027年3月期)において、以下の数値目標を掲げています。

* 売上高:300億円
* 営業利益:40億円
* ROE:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


情報システム事業ではものづくり力の強化や提案活動による領域拡大を進め、電子機器事業では新製品の市場投入や海外展開を強化します。また、人的資本経営の推進やDXによる組織活性化、ガバナンス強化により企業価値向上を図ります。

* 売上高:225億円(2026年3月期予想)
* 営業利益:32億円(2026年3月期予想)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、経営戦略に合致した人財の採用・育成と適材適所の活用を強化し、「主体的かつ自律的」で多様性のある人財形成を目指しています。健康経営や働き方改革、DX推進により組織を活性化させるとともに、女性リーダーの育成や新卒採用の促進を通じて多様性の確保に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 48.6歳 18.8年 7,015,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 5.3%
男性労働者の育児休業取得率 66.7%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 68.7%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 76.5%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 58.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 顧客の需要動向等による影響


情報システム事業は官公庁向けが主であり、防衛予算の規模や内容、直接契約する大手防衛メーカーの方針に影響を受けます。また、電子機器事業は一般企業の設備投資需要に左右され、特に海外市場の変化が業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 災害・感染症等の影響


大規模地震等の自然災害や感染症の拡大が発生した場合、生産拠点の被害やサプライチェーンの混乱により、操業中断や出荷遅延が生じる可能性があります。復旧費用の発生なども含め、業績に悪影響を与えるリスクがあります。

(3) サプライチェーンの影響


部品や原材料の価格高騰、自然災害や国際情勢の悪化による調達難、物流の混乱などが生じた場合、納期の遅延やコスト増加を招く可能性があります。これにより、業績や社会的評価に影響が及ぶリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。