日本アビオニクス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本アビオニクス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本アビオニクスは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、防衛・宇宙用等の情報システムや接合機器・赤外線機器などの電子機器を展開しています。直近の業績は売上高292億円、営業利益55億円と大幅な増収増益を達成し、防衛予算の高水準や設備需要の回復を背景に事業を拡大する注目のメーカーです。


※本記事は、日本アビオニクスの有価証券報告書(第76期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本アビオニクスってどんな会社?


同社は防衛・宇宙向けの情報システムと、接合機器や赤外線機器といった電子機器の製造・販売を手掛けています。

(1) 会社概要


1960年4月に日本電気と米国企業の合弁会社として日本アビオトロニクスとして設立され、1980年に現在の日本アビオニクスへ社名変更しました。1988年に東証二部へ上場を果たし、2020年にはNAJホールディングスの公開買付けにより同社が親会社となりました。その後、2022年に東証スタンダード市場へ移行しています。

現在の従業員数は連結で763名、単体で667名です。株主構成については、筆頭株主が親会社のNAJホールディングスであり、第2位および第3位には資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
NAJホールディングス 52.61%
日本カストディ銀行(信託口) 6.22%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 1.74%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役執行役員社長は竹内正人氏が務めており、社外取締役の比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
竹内正人 代表取締役執行役員社長 1986年同社入社。接合機器事業部長や電子機器事業本部長などを経て、2019年6月より現職。
山後宏幸 取締役執行役員経営企画本部長 1987年同社入社。経営企画本部経理部長や執行役員CFOなどを経て、2022年10月より現職。


社外取締役は、加藤精彦(元セイコープレシジョン社長)、森誠一(元東芝セミコンダクター&ストレージ社社長)、海野忍(元エヌ・ティ・ティ・コムウェア社長)、青山薫(片岡総合法律事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報システム」および「電子機器」事業を展開しています。

情報システム


防衛用システム製品、宇宙用電子部品、産業用電子機器の製造および販売を行っています。同社の強みであるエレクトロニクス技術とシステム技術を活かし、耐環境性と信頼性に優れた防衛装備品などを官公庁や大手防衛メーカー向けに提供し、日本の防衛に貢献しています。

主な収益源は、顧客が要求する仕様に基づいた製品の請負製造による販売代金です。当事業は、同社および子会社の福島アビオニクスによって運営されています。

電子機器


抵抗溶接装置やシーム溶接装置などの接合機器、赤外線サーモグラフィカメラや監視システムなどの赤外線機器の製造・販売、修理サービスを提供しています。一般企業を顧客とし、電子機器や自動車のモノづくり現場、インフラ設備などの保守点検市場向けにソリューションを展開しています。

製品の販売代金やそれに付随する修理サービスの提供による対価が主な収益源となります。当事業も、同社および子会社の福島アビオニクスによって運営されています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は一時横ばい圏で推移したものの、直近の期で大幅に拡大しています。それに伴い経常利益や当期利益も急拡大しており、利益率も着実に向上を続けていることがわかります。防衛予算の高水準維持などが業績の強力な追い風となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 192億円 178億円 181億円 201億円 292億円
経常利益 18億円 19億円 22億円 27億円 54億円
利益率(%) 9.4% 10.8% 11.9% 13.5% 18.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 16億円 18億円 21億円 20億円 38億円

(2) 損益計算書


直近2期の損益構成を見ると、売上高の急増に伴い売上総利益および営業利益が大きく伸びています。売上総利益率は安定して推移する一方で、増収効果により販管費率が低下した結果、営業利益率は大きく改善し、高収益体質へと移行していることがわかります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 201億円 292億円
売上総利益 66億円 95億円
売上総利益率(%) 33.0% 32.6%
営業利益 28億円 55億円
営業利益率(%) 13.9% 18.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が9億円(構成比22%)、技術研究費が5億円(同11%)、賞与引当金繰入額が4億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の状況を見ると、主力の情報システム事業は高水準の防衛予算を背景に受注および売上が大幅に拡大し、利益を大きく伸ばしています。電子機器事業も監視による未然防止への関心の高まり等から設備需要が増加し、増収ならびに大幅な利益改善を果たしました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
情報システム 160億円 239億円 30億円 51億円 21.4%
電子機器 41億円 53億円 -3億円 4億円 7.9%
連結(合計) 201億円 292億円 28億円 55億円 18.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFと投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなる「勝負型」の傾向を示しています。将来の成長に向けた投資や事業拡大に必要な資金を外部調達で賄っている状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 22億円 -36億円
投資CF -5億円 -9億円
財務CF -21億円 36億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は25.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


私たちの強みを磨き、さらに高めて、お客様のために新しい価値を創造し、安全・安心で豊かな社会を実現することを経営の基本理念として掲げています。この理念を実現するため、顧客価値経営を推進し、健全な体質で競争力があり、エンゲージメントが高く、継続して営業利益の額を増加させる会社となることを方針としています。

(2) 企業文化


同社は「5+1C」による行動指針と、役割および成果責任に基づき発揮された成果を重視する文化があります。また、グループ企業行動憲章において「従業員一人ひとりの個性を尊重するとともに、能力を十分に発揮し、情熱をもって働ける環境を整備する」ことを掲げ、主体的かつ自律的で多様性のある人材の形成を促進しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、持続的な成長と企業価値の向上を目指し、具体的な数値目標を設定して事業計画を推進しています。2027年3月期の業績予想として以下の目標を掲げています。

・売上高 320億円
・営業利益 61億円

(4) 成長戦略と重点施策


各事業領域で競争力強化と事業計画の確実な遂行を推進します。情報システムではこれまでの受注残に基づく生産を着実にこなしつつQCD改善で競争力を高め、積極的な提案で事業領域を拡大します。電子機器では、接合4工法の強みを活かしたソリューション提供や海外展開の強化、監視市場向けの提案を通じて受注と売上の拡大を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人的資本を最重要課題と位置づけ、経営戦略に合致した人材の採用や育成、適材適所での活用を強化しています。従業員一人ひとりが主体的かつ自律的に行動できる多様性のある人材の形成を推進するとともに、健康経営やオフィス環境の改善、組織風土改革に取り組み、社員のパフォーマンスとエンゲージメントを最大化する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 47.4歳 16.3年 7,124,000円


※平均年間給与は時間外手当等諸手当及び賞与が含まれております。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.5%
男性育児休業取得率 71.4%
男女賃金差異(全労働者) 69.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 75.5%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 60.7%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、該当製品によるCO2排出削減量(359,000 t-CO2)、エンゲージメント・サーベイ総合スコア目標(B)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 顧客の需要動向等による影響


情報システムは官公庁の需要動向や大手防衛メーカーの事業方針、電子機器は国内外の一般企業の設備投資需要に影響されます。防衛予算の規模や海外市場の動向等に想定を超える変化が生じた場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 電子機器等の価格競争


エレクトロニクス業界では競争が激しく、特に電子機器製品は激しい価格競争にさらされています。コストダウンや高付加価値製品の投入により市場競争力の維持・向上に努めていますが、競争のさらなる激化や長期化が生じた場合、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

(3) サプライチェーンの変動リスク


部品や原材料等の安定調達に努めていますが、価格の高騰や自然災害、国際情勢の悪化等により調達可能性の変動や物流の混乱が生じた場合、納入・納期の遅延や原価上昇を引き起こし、業績や社会的評価に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 人財の確保・育成の遅れ


競争力ある製品を開発・製造・販売するためには優秀な人材の確保と育成が不可欠であり、積極的な採用活動を行っています。しかし、必要な人材を十分に確保・育成できなかった場合、同社の事業運営や業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。