※本記事は、ミナトホールディングス株式会社の有価証券報告書(第70期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ミナトホールディングスってどんな会社?
デジタル分野において、半導体メモリーやデバイスの製造販売、システム開発等を提供する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1956年に港通信機として設立され、各種電子計測器の受託開発から事業を開始しました。1972年にミナトエレクトロニクスへ社名変更し、2004年にジャスダック証券取引所へ株式上場を果たしました。2015年に現在のミナトホールディングスに社名変更し、2018年には持株会社体制へ移行しています。近年はM&Aを積極的に推進しており、2025年にはダイキサウンド、ブレーンを、2026年にはブレイン等を子会社化し、事業領域を拡大しています。
現在、同社グループの従業員数は連結で339名、単体で25名となっています。筆頭株主は資産管理業務等を行う信託銀行であり、第2位は創業時の経営参画や代表取締役会長兼グループCEOを務める若山健彦氏、第3位は金融機関となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.76% |
| 若山健彦 | 5.82% |
| 上田八木短資 | 3.08% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.0%です。代表取締役会長兼グループCEOは若山健彦氏、代表取締役社長兼COOは相澤均氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 若山健彦 | 代表取締役会長兼グループCEO | 1989年日本長期信用銀行入行、イーバンク銀行創業時の代表取締役副社長等を経て、2012年同社代表取締役社長に就任。2023年より現職。 |
| 相澤均 | 代表取締役社長兼COO | 2001年サンマックス・テクノロジーズ設立し専務取締役就任。同社代表取締役社長や同社常務執行役員等を経て、2023年より現職。 |
| 三宅哲史 | 常務取締役CFO | 1996年日本長期信用銀行入行。2018年同社入社、執行役員経営企画部門長。2021年取締役経営企画部門長等を経て、2023年より現職。 |
| 杉山敏美 | 取締役 | 1981年資生堂徳山販売入社。日本ジョイントソリューションズ代表取締役社長、女性創業応援やまぐち代表取締役社長等を経て、2019年より現職。 |
| 矢吹尚秀 | 取締役 | 1999年パルテック入社、同社代表取締役社長を経て、2012年エクスプローラ代表取締役社長に就任。2023年より現職。 |
| 門井豊 | 取締役常勤監査等委員 | 1986年マミーマート入社。2013年同社管理部副部長、2015年取締役管理部門長、2019年常勤監査役等を経て、2023年より現職。 |
社外取締役は、児玉純一(元JNアライアンス合同会社代表執行役社長)、川和まり(Belvedere Advisors LLC共同創業者)、金澤恭子(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「デジタルデバイス」「デジタルエンジニアリング」「ICTプロダクツ」および「その他」事業を展開しています。
■デジタルデバイス
主にDIMMなどの産業機器用途向けコンピュータ記憶装置の製造・販売や、eMMCやeMCPの提供、モバイルアクセサリの販売を行っています。顧客は大手電機メーカーなどが中心です。
収益源は製品の販売による代金です。運営は主にサンマックス・テクノロジーズおよび港御(香港)有限公司が行っています。
■デジタルエンジニアリング
デバイスプログラマ製品やタッチパネル製品の製造販売、ROM書込みサービス、ハードウェア設計やODM/EMSなどを行っています。顧客は半導体関連や電子機器メーカーです。
収益源は製品販売や書込み等のサービス提供の対価です。運営はミナト・アドバンスト・テクノロジーズ、エクスプローラ、港御(上海)信息技術有限公司が行っています。
■ICTプロダクツ
テレビ・Web会議等のデジタル会議システム関連機器の販売・保守、eスポーツ関連製品、PC周辺機器等の販売やエンタープライズ・モビリティ事業を行っています。
収益源はデジタル機器等の販売代金および保守サービス料です。運営はプリンストンおよびブレインが行っています。
■その他
システム開発、Webサイト構築、広告制作、音楽イベント企画やライブ・エンターテインメント事業などを展開しています。
収益源はシステム開発やマーケティング支援、コンテンツサービスの提供による手数料や代金です。運営はブレイン、日本ジョイントソリューションズ、リバースなどのグループ各社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は増減を伴いながらも直近で大きく拡大しています。経常利益も直近で大幅に増加し利益率も向上していますが、当期利益はマイナスとなっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 246億円 | 226億円 | 190億円 | 245億円 | 366億円 |
| 経常利益 | 8億円 | 9億円 | 12億円 | 6億円 | 40億円 |
| 利益率(%) | 3.2% | 4.0% | 6.4% | 2.4% | 11.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | 1億円 | 13億円 | 2億円 | -2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も倍増しています。利益率も大きく改善し、営業利益および営業利益率ともに大きく向上していることが確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 245億円 | 366億円 |
| 売上総利益 | 43億円 | 86億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.6% | 23.5% |
| 営業利益 | 8億円 | 42億円 |
| 営業利益率(%) | 3.1% | 11.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が11億円(構成比26%)、荷造運賃が4億円(同10%)、役員報酬が4億円(同8%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力であるデジタルデバイスが増収に大きく貢献したほか、デジタルエンジニアリングおよびICTプロダクツの各セグメントも堅調に推移し、全セグメントで前年を上回る売上高を記録しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| デジタルデバイス | 137億円 | 218億円 |
| デジタルエンジニアリング | 28億円 | 35億円 |
| ICTプロダクツ | 75億円 | 91億円 |
| その他 | 5億円 | 21億円 |
| 連結(合計) | 245億円 | 366億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業は赤字または資金流出となっていますが、将来の成長に向けた借入等の資金調達で投資を継続している勝負型の局面です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 0.9億円 | -61億円 |
| 投資CF | -16億円 | -0.4億円 |
| 財務CF | 11億円 | 64億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は30.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は25.2%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「常に新しい技術に挑戦し、社会に価値ある製品やサービスを展開することで、お客様、株主、従業員の満足を高める企業になる」ことを経営理念としています。デジタルの分野において、新しい市場を開拓することで人や社会に貢献し、持続可能な未来の社会を創造することを目指しています。
■(2) 企業文化
社会的責任を十分に認識し、経営の効率性、透明性を向上させることを基本方針とし、経営のスピード化、活性化を図る文化を重視しています。また、M&Aや提携を通じて多様な人材や知識を融合させ、グループ横断的なシナジー創出を追求する風土を持っています。
■(3) 経営計画・目標
「中期経営計画2027」において、2027年3月期を最終年度とする連結数値目標を設定しています。
* 売上高480億円
* 営業利益25億円
* ROE15%以上
* 自己資本比率30%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「デジタルコンソーシアム構想」を成長戦略とし、デジタル分野における企業が相互に連携し新たな製品やサービスを創出することを目指しています。技術力のある企業との提携やM&Aを積極的に推進し、既存事業の拡大、新規事業領域への投資、グローバル展開を重点テーマとして実行しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
専門人材の確保・育成、グループ横断的な人材活用および組織力の強化を基本方針としています。各事業領域で高度な技術力や専門知識を持つ人材を採用・育成するほか、M&A後のPMIを通じた人材交流や企業文化の融合を推進し、多様な人材が活躍できる組織づくりに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 46.2歳 | 4.7年 | 6,118,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.5% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 42.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 44.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 0.0% |
※同社は公表義務の対象ではないため、有報には男性育児休業取得率の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 価格競争と為替変動
デジタルデバイスやICTプロダクツの市場において、厳しい価格競争や顧客からの値下げ要請のリスクがあります。また、製品や原材料の輸入において為替変動の影響を受けやすく、想定を超える急激な変動が生じた場合、収益の確保が困難になる可能性があります。
■(2) M&A・業務提携の成果未達
事業規模拡大の成長戦略としてM&Aを推進していますが、対象企業で偶発債務が発生したり事業計画が想定通りに進まない場合、期待されるシナジー効果が得られず、のれんの減損損失が発生するなど業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) IT・クリエイティブ人材の確保
システム開発やデジタルコンテンツ制作などの分野において、高度な技術や専門知識を有する人材の確保が不可欠です。人材獲得競争の激化などにより人材の流出や採用不足が生じた場合、サービス品質の低下や受注機会の逸失を招き、業績に影響を与える可能性があります。



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