遠藤照明 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

遠藤照明 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

遠藤照明は、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、各種照明器具の開発・製造や環境関連機器の販売・レンタルなどを展開する企業です。2026年3月期は国内外で需要を的確に捉え、売上高が前期比3.2%増、営業利益が同16.5%増と増収増益を達成し、安定した成長を継続しています。


※本記事は、遠藤照明の有価証券報告書(第55期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 遠藤照明ってどんな会社?


各種照明器具の開発・製造から、省エネ機器のレンタルや家具の販売までを手がける照明の総合メーカーです。

(1) 会社概要


1967年に創業、照明器具の製造を開始し、1972年に遠藤照明を設立しました。1990年の株式上場を経て、2010年にはLED照明器具の本格販売を開始しました。その後、タイや中国に加えて、英国やインド、シンガポールなどに拠点を設立して海外市場への展開を加速させています。

従業員数は連結で1,648名、単体で508名です。筆頭株主は事業会社のアーバンで、第2位は資産管理業務を行う日本カストディ銀行、第3位は生命保険会社の日本生命保険相互会社となっています。

氏名 持株比率
アーバン 33.40%
日本カストディ銀行(信託口) 4.41%
日本生命保険相互会社 2.46%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は遠藤邦彦氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
遠藤邦彦 代表取締役社長 富士銀行を経て2001年に同社へ入社。経営戦略室長や常務取締役などを歴任し、2014年より現職。
菱谷清 取締役常務執行役員 松下冷機を経て2016年に同社へ入社。同年に取締役に就任し、2022年より現職。
奥村昌之 取締役上席執行役員 1988年に同社へ入社。執行役員などを歴任し、2025年より現職。


社外取締役は、土屋郁子(元アスクル執行役員本部長)、山葉隆久(元ローム常務取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「照明器具関連事業」「環境関連事業」「インテリア家具事業」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

照明器具関連事業


主に日本、アジア、欧州の顧客に対して、LED照明をはじめとする各種照明器具の製造および販売を行っています。オフィスや商業施設向けの制御ソリューションなど、多様な空間に応じた製品を提供しています。

顧客への製品販売から収益を得ています。運営は同社のほか、タイ、中国、英国などの海外子会社が行っており、各地域のニーズに合わせた製造・販売体制を構築しています。

環境関連事業


主に国内の顧客に向けて、省エネ機器の販売や、照明器具および省エネ機器のレンタルサービスを展開しています。また、照明設備の設置や電気配線工事などの請負工事も手がけています。

顧客への機器の販売代金やレンタル料、および請負工事の代金から収益を得ています。運営は主に子会社のイーシームズが担当し、企業の省エネ推進を支援するソリューションを提供しています。

インテリア家具事業


主に国内の顧客を対象として、インテリア家具や関連用品の販売を行っています。海外ブランドの日本国内における独占販売なども手がけ、オフィスやホテルなどの空間演出を提案しています。

顧客からの家具やインテリア用品の販売代金から収益を得ています。運営は同社が行っており、照明事業の販売網を活用しながら新規顧客の開拓を進めています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。経常利益も一時的な落ち込みがあったものの、その後は回復して高水準を維持しており、10%前後の安定した利益率を確保しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 406億円 457億円 517億円 537億円 555億円
経常利益 42億円 36億円 57億円 54億円 59億円
利益率(%) 10.5% 7.9% 11.1% 10.1% 10.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 16億円 15億円 27億円 25億円 26億円

(2) 損益計算書


収益性の推移を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しており、売上総利益率も改善しています。これにともない営業利益も増加し、営業利益率は10%を超える水準に向上しており、本業における収益力が強化されていることが分かります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 537億円 555億円
売上総利益 208億円 228億円
売上総利益率(%) 38.7% 41.0%
営業利益 49億円 57億円
営業利益率(%) 9.2% 10.4%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が51億円(構成比30%)、諸手数料が21億円(同12%)、発送配達費が14億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上を見ると、主力の照明器具関連事業が国内外での堅調な需要を背景に売上を伸ばし、全体を牽引しています。環境関連事業も節約意識の高まりから照明更新やレンタル提案が奏功して増収となりました。一方でインテリア家具事業は減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
照明器具関連事業 422億円 431億円
環境関連事業 101億円 112億円
インテリア家具事業 14億円 12億円
連結(合計) 537億円 555億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も65.3%で市場平均を上回っています。キャッシュ・フローの状況は、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う「積極型」の傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 29億円 103億円
投資CF -43億円 -43億円
財務CF -0.1億円 11億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、経営理念として「企業は公器」を掲げています。企業の社会的存在価値を高めることに経営資源を集中し、人間や組織の持つ能力を最大限に発揮させる仕組みづくりと社会に貢献する経営を優先しています。これを基盤に、人と地球に優しい高付加価値空間を創造する「エシカルソリューションカンパニー」を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、経営目的として「個と組織の調和と永続」および「ありがとう創造企業に」を掲げています。一人ひとりが自ら考え行動し、生き生きと成長する組織づくりを重視するとともに、顧客や周囲の人々から多くの感謝を集める個人と会社であり続けるという価値観を大切にし、社会課題の解決に向けて挑戦を続ける文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、長期ビジョン「エシカルソリューションNo.1リーディングカンパニーへ」の実現に向けた中期経営計画のもと、継続的な成長と高収益を生み出す企業体質の構築を目指しています。

* 2027年度営業利益:70億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は今後の成長に向けて、国内照明事業における制御やネットワークソリューション製品の拡充、およびオフィスなどの新規市場開拓を進めます。海外ではアジアや英国へ経営資源を集中し、地域に合わせた戦略を展開します。また、環境関連事業の提案力強化やインテリア家具事業の利益確保を進めるとともに、DX関連投資や人材育成による強固な経営基盤の構築に取り組んでいきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、経営目的「個と組織の調和と永続」に基づき、社員と組織が共に成長できる環境づくりを推進しています。新たな照明ソリューションを創造する人材を育成するため、自律的なスキルアップを支援する教育基盤を整備するとともに、多様なバックグラウンドを持つ社員が能力を発揮し、やりがいを持って働ける人事制度や柔軟な働き方の導入を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.6歳 12.8年 6,729,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.5%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 72.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 74.7%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 48.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の育児休職後の復職率(100%)、エンゲージメントサーベイの良好回答割合(62.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済情勢と需要変動


同社の主要製品であるLED照明器具は建築物等の照明設備であるため、国内外の建築需要や企業の設備投資動向に強く影響を受けます。景気後退や不確実な経済情勢によって設備投資意欲が減退した場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 製品ライフサイクルと在庫の陳腐化


LED照明器具は技術革新のスピードが速く、新しいLED素子の開発による性能向上の影響を直接受けます。急激な環境変化により想定していた販売数量が確保できず、在庫が陳腐化して棚卸資産処分損が発生した場合、財務状態に影響を与えるリスクがあります。

(3) 為替変動による影響


同社はLED素子や電源などの輸入比率が高く、さらにタイや中国で製造した製品を日本で販売する事業体制のため、為替相場の変動による影響を受けやすい構造です。為替予約等でリスク軽減を図っているものの、急激な変動があった場合には業績に影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。