※本記事は、株式会社エノモト の有価証券報告書(第59期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. エノモトってどんな会社?
パワー半導体用リードフレーム、オプト用リードフレーム、コネクタ用部品等の精密プレス加工技術を核とした電子部品製造を行う企業です。
■(1) 会社概要
1967年に神奈川県で精密金型の製作及びプレス部品加工業として株式会社榎本製作所を設立しました。1990年に日本証券業協会へ店頭登録を行い、2004年にはジャスダック証券取引所に株式を上場しました。その後、2018年に東京証券取引所市場第一部銘柄に指定され、2022年4月の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。
連結従業員数は1,285名、単体では537名です。筆頭株主は有限会社エノモト興産で、第2位は有限会社エムエヌ企画となっており、創業家関連の資産管理会社等が上位を占めています。第3位には資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社エノモト興産 | 7.27% |
| 有限会社エムエヌ企画 | 4.85% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 4.22% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長上席執行役員は白鳥誉氏です。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 白鳥 誉 | 代表取締役社長上席執行役員 | 1988年同社入社。管理本部総務部長、取締役塩山工場長、常務取締役上席執行役員国内統括などを歴任し、2024年6月より現職。 |
| 武内 延公 | 取締役会長 | 1983年同社入社。リードフレーム事業部営業部長、ENOMOTO HONG KONG Co.,Ltd.董事長、代表取締役社長などを歴任し、2024年6月より現職。 |
| 櫻井 宣男 | 取締役上席執行役員本社製造グループ担当 | 1990年同社入社。リードフレーム事業部長、取締役製造本部長、ENOMOTO PHILIPPINE MANUFACTURING Inc.取締役社長などを歴任し、2020年10月より現職。 |
| 小川 秀雄 | 取締役上席執行役員 | 1982年同社入社。執行役員、ZHONGSHAN ENOMOTO Co.,Ltd.董事長、取締役上席執行役員海外統括などを歴任し、2024年4月より現職。 |
社外取締役は、加藤正(元山梨中央銀行常務取締役)、八巻佐知子(弁護士)、氏家美千代(公認会計士・税理士)、武藤比良志(元全日空商事常務取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「パワー半導体用リードフレーム」「オプト用リードフレーム」「コネクタ用部品」および「その他」事業を展開しています。
■(1) パワー半導体用リードフレーム
民生用機器・産業用機器・自動車部品などに広く使用されるパワー半導体向けのリードフレームやヒートシンク等を製造しています。金属プレス・カシメの各工程を一貫して大量かつ安定的に生産・供給できる体制を構築し、各種部品メーカーへ提供しています。
主に部品メーカーへの製品販売により収益を得ています。運営は主に同社およびENOMOTO PHILIPPINE MANUFACTURING Inc.、ZHONGSHAN ENOMOTO Co.,Ltd.などの海外子会社が行っています。
■(2) オプト用リードフレーム
LED製品の形状を決定するLED用リードフレームを製造しています。自動車部品メーカーや照明機器メーカーと協働し、LEDディスプレイ、液晶バックライト、自動車各種ランプ、産業用・民生用LED等に使用される製品を提供しています。
自動車部品メーカーや照明機器メーカーへの製品販売により収益を得ています。運営は主に同社およびENOMOTO PHILIPPINE MANUFACTURING Inc.が行っています。
■(3) コネクタ用部品
電子回路や光通信の配線接続に用いられるコネクタ用部品を製造しています。特にスマートフォンやウェアラブル端末向けの極小化が必要な部品に強みを持ち、金属プレス加工と樹脂成形加工を融合させた技術で製品を提供しています。
部品メーカーへの製品販売により収益を得ています。運営は同社およびENOMOTO PHILIPPINE MANUFACTURING Inc.、ZHONGSHAN ENOMOTO Co.,Ltd.などが行っています。
■(4) その他
上記製品群の製造に使用する精密金型や周辺装置の製造・販売を行っています。また、事業系統図によると不動産賃貸事業も含まれます。
金型・装置の販売および不動産賃貸料により収益を得ています。金型・装置は同社グループ各社が、不動産賃貸はENOMOTO LAND CORPORATIONが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は2023年3月期まで増加傾向でしたが、2024年3月期に減少しました。2025年3月期は再び増加に転じています。経常利益も同様の傾向で、2024年3月期に大きく落ち込みましたが、直近では回復基調にあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 230億円 | 273億円 | 293億円 | 252億円 | 269億円 |
| 経常利益 | 16億円 | 21億円 | 18億円 | 3億円 | 7億円 |
| 利益率(%) | 6.8% | 7.5% | 6.2% | 1.2% | 2.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 11億円 | 9億円 | 4億円 | -2.0億円 | 0.7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に加え、原価率の改善等により売上総利益が増加しました。販売費及び一般管理費は微増にとどまり、営業利益は前期比で大幅に増加し、利益率も改善しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 252億円 | 269億円 |
| 売上総利益 | 27億円 | 31億円 |
| 売上総利益率(%) | 10.5% | 11.7% |
| 営業利益 | 1.6億円 | 6.2億円 |
| 営業利益率(%) | 0.6% | 2.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が7億円(構成比26%)、運賃搬送費が3億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
パワー半導体用リードフレームは在庫調整等の影響で減収となりましたが、オプト用リードフレームやコネクタ用部品は需要回復や新規受注により増収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| パワー半導体用リードフレーム | 111億円 | 108億円 |
| オプト用リードフレーム | 26億円 | 34億円 |
| コネクタ用部品 | 110億円 | 121億円 |
| その他 | 5億円 | 7億円 |
| 連結(合計) | 252億円 | 269億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は「健全型」です(営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業)。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 31億円 | 7億円 |
| 投資CF | -18億円 | -16億円 |
| 財務CF | -5億円 | -1.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「経営の中心は人であり、健全なものづくりを通じて、豊かな社会の実現に貢献する。」を経営理念としています。これを礎に、顧客に信頼される製品の提供と新製品開発を行い、会社の繁栄と社会の発展の一致を目指しています。
■(2) 企業文化
「品質第一」を経営重点テーマに掲げ、企業価値向上の基礎は製品及び業務の品質であるという考えを再確認しています。また、ありたい姿として「失敗を恐れずチャレンジする職場環境づくりを通じてイノベーションを生み出す」を掲げ、協力的気風の醸成を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2024年度から2026年度までの中期経営計画を策定しています。経営重点指標として連結ベースでの営業利益率とROEを設定しており、以下の数値を目標として掲げています。
* 営業利益率:8%以上
* ROE:9%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
長期経営ビジョン「金型の技術で未来を創る」のもと、成長分野への投資と収益力強化を推進しています。具体的には、金属と樹脂の精密複合加工技術を生かした新分野への進出、職人技のデジタルデータ化による技術伝承と工程自動化、スマートファクトリーによる経営資源の最適化などに注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「経営の中心は人」という理念のもと、技術力の継承と発展を担う人材の確保と育成を重視しています。国内外を問わず幅広い人材確保を図るとともに、中長期的視点に基づいた教育を実施しています。また、従業員の能力や要望を把握し、最善のワークライフバランス実現と能力を最大限発揮できる職場づくりに努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.5歳 | 17.1年 | 5,066,797円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 150.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 63.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、定着率(98.4%)、ES調査偏差値(49.9)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 電子部品市場の経済変動リスク
同社グループはパワー半導体用リードフレーム等の電子部品の製造販売をグローバルに展開していますが、製品需要は販売地域の経済変動の影響を受けます。電子部品業界は景気の影響を受けやすく、世界的な景気後退が発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、専用性の高い製品から汎用性の高い製品まで対応する技術力と設備を保持し、幅広い分野に対応することでリスク軽減を図っています。
■(2) 海外生産拠点のカントリーリスク
顧客ニーズに対応するため中国やフィリピンに生産拠点を展開していますが、進出国における予期しない法規制変更、政治的・経済的事象、テロや戦争による社会的混乱等が発生した場合、事業遂行に深刻な影響を与える可能性があります。国内外拠点での技術交流や相互支援を積極的に行い、有事の際には相互にバックアップできる体制構築を推進しています。
■(3) 技術革新と価格競争の激化
電子部品業界は価格と技術の両面で激しい競争環境にあります。急速な技術革新への対応遅れや、顧客ニーズに合わせた新製品導入ができない場合の受注機会損失、販売価格の急激な下落等の不測の事態が発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。高度な技術を要する製品の受注や設備投資を積極的に行い、外部機関との交流を通じて最先端の加工技術保持を目指しています。



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