アバールデータ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アバールデータ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。組込み・画像処理などの自社製品と、半導体製造装置等の受託製品を開発する産業用電子機器メーカーです。直近の業績は、半導体市況の変動や顧客の在庫調整の影響を受け減収減益となりましたが、高い自己資本比率を維持し、営業キャッシュ・フローもプラスを確保するなど健全な財務体質を誇ります。


※本記事は、株式会社アバールデータの有価証券報告書(第67期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アバールデータってどんな会社?


自社製品と受託製品の両輪で産業用電子機器を開発・製造するメーカーです。

(1) 会社概要


1959年に東洋通信工業として設立され、計測器や制御機器の製造を開始しました。1989年にトーヨーデータと合併し、現在のアバールデータへ社名変更しています。2004年にジャスダック市場に上場し、現在は東証スタンダード市場に属しています。近年は山梨R&Dセンターの開設など研究開発を強化しています。

従業員数は単体で199名です。筆頭株主は事業会社であり主要顧客でもあるニコンで、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行等の金融機関が名を連ねています。

氏名 持株比率
ニコン 11.12%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505025(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) 10.07%
MSIP CLIENT SECURITIES(常任代理人 モルガン・スタンレーMUFG証券) 3.67%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は菊地豊氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
菊地豊 代表取締役社長 アバールデータ入社。製造部ゼネラルマネジャー、管理本部長等を経て、2019年より現職。
岩本直樹 常務取締役営業統括担当、IT統括担当 アバールデータ入社。第一・第二開発部ゼネラルマネジャー等を経て、2025年より現職。
村田英孝 取締役技術統括担当、第一開発部部長 アバールデータ入社。第一開発部ゼネラルマネジャー等を経て、2025年より現職。
加藤弘達 取締役生産統括担当、生産管理部部長兼製造部部長 アバールデータ入社。生産管理部ゼネラルマネジャー等を経て、2025年より現職。
三川宏 取締役管理本部部長 アバールデータ入社。品質保証部ゼネラルマネジャー等を経て、2025年より現職。
熊澤陽一 取締役(常勤監査等委員) アバールデータ入社。経営企画部ゼネラルマネジャー等を経て、2025年より現職。


社外取締役は、金子健紀(金子公認会計士事務所所長)、石塚陽子(石塚・小平法律事務所設立)、岡田登志夫(元イプロス代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「受託製品」および「自社製品」の事業を展開しています。

受託製品


半導体製造装置関連、産業用制御機器、および計測機器の開発・製造・販売を行っています。東京エレクトロン関連会社やニコン等の大手装置メーカーを主要顧客とし、顧客の要求仕様に応じたカスタマイズ製品を提供しています。

収益は、開発受託費や製造した製品の販売代金として顧客から受け取ります。当該事業の運営はアバールデータが行っており、自社製品で培ったコア技術を活用した提案型営業により、付加価値の向上を図っています。

自社製品


組込みモジュール、画像処理モジュール、計測通信機器の開発・製造・販売を展開しています。FA(ファクトリーオートメーション)全般、各種検査装置、医療機器関連など、幅広い産業分野の顧客に向けて最先端の技術モジュールを提供しています。

収益は、独自開発したモジュール製品や関連ソフトウェア、周辺機器の販売代金として顧客から受け取ります。当該事業の運営もアバールデータが行っており、市場の潜在ニーズを先取りした製品展開を進めています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


64期以降、半導体関連の需要増などを背景に高水準の売上と利益を記録していましたが、直近2期は市況の変動や一部顧客の在庫調整の影響により減収減益傾向となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 98億円 144億円 126億円 110億円 88億円
経常利益 20億円 25億円 23億円 15億円 8億円
利益率(%) 20.6% 17.3% 18.1% 14.0% 8.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 43億円 53億円 11億円 6億円

(2) 損益計算書


全体的な売上減少に伴い、売上総利益および営業利益ともに減少しています。利益率も低下傾向にあり、固定費の最適化が課題となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 110億円 88億円
売上総利益 33億円 25億円
売上総利益率(%) 30.3% 28.5%
営業利益 14億円 7億円
営業利益率(%) 12.9% 7.8%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が9億円(構成比48%)、給料手当・賞与が3億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


受託製品は半導体製造装置関連の在庫調整により減少しました。自社製品も計測通信機器等の落ち込みにより、両セグメントで減収減益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
受託製品 72億円 57億円 11億円 6億円 10.5%
自社製品 38億円 31億円 10億円 7億円 23.4%
連結(合計) 110億円 88億円 21億円 13億円 15.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)のパターンを示しています。

企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は90.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「お客様に“価値”を提供し“信頼”を獲得する(A’VALue)」を企業理念として掲げています。また、「シンプル&スピード」を基本方針とし、全社すべてのレベルにおいて業務のシンプル化を目指し、スピード感を持った意思決定と業務遂行を重視して経営を行っています。

(2) 企業文化


サステナビリティ・コーポレートガバナンスを推進し、健全かつ公正な企業活動を通じて社会からの信頼を高めることを重視しています。組織面ではフラットな組織と適材適所によるマネジメントを掲げ、従業員の自立・協調・成長を両立させる働きやすい職場環境の創出に努める文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は2030年3月期に向けて、付加価値の高い製品開発と強固な財務体質の維持を目指し、以下の数値を経営指標として掲げています。

* 売上高:200億円以上
* 売上高営業利益率:20%以上
* 自己資本当期純利益率(ROE):11%以上

(4) 成長戦略と重点施策


半導体製造装置業界に依存する急激な需要変動を回避するため、医療や社会インフラ関連等への市場の多角化を進めています。また、製品開発の差別化や新ビジネスモデルに対応した生産体制の構築を通じて、自社製品を核とした安定的かつ持続的な成長の柱を構築することに注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


社員一人ひとりが高度な専門性を最大限に発揮し、組織としてお客様への価値提供を最大化することを目指しています。公平な処遇の実現、ダイバーシティ&インクルージョンの推進、ワークライフバランスの確保を通じて、持続可能な価値提供を担うプロフェッショナル集団の育成と定着を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.2歳 16.2年 6,328,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.9%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※男性育児休業取得率および男女賃金差異については、同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用者に占める女性比率(11.1%)、有給休暇取得率(83.2%)、障がい者雇用率(3.29%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 半導体市況変動による影響


同社の主力である半導体製造装置関連事業は、半導体市況の急激な変動から大きな影響を受けます。予期せぬ市場規模の大幅な減少が発生した場合、受注の減少や在庫の増加により、同社の業績およびキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合他社との競争激化


自社製品および受託製品において、開発の選択と集中による製品の差別化を図っています。しかし、年々価格競争が激化しており、市場シェアの確保や高収益の維持が困難になった場合、中期的には同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 新製品の研究開発遅延


組込み・画像処理などのコア技術を活用し、最先端の新製品開発や要素技術の研究を推進しています。しかし、要素技術の新規性が高く開発に困難が伴う場合、新製品の市場投入時期が遅れることで、同社の競争力や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 部材調達における供給遅延


同社の製品には半導体を中心とする高性能な部材が使用されており、代替が困難な調達先が存在します。これらの調達先において一時的な供給遅延や品質問題などが発生した場合、製品の安定供給に支障をきたし、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。