アバールデータ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アバールデータ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の産業用電子機器メーカー。半導体製造装置関連等の受託製品と、組込みモジュール等の自社製品の開発・製造・販売を行う。2025年3月期は、FA分野の回復遅れや一部顧客の在庫調整が響き、売上高12.7%減、経常利益32.5%減の減収減益となった。


※本記事は、株式会社アバールデータの有価証券報告書(第66期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アバールデータってどんな会社?


半導体製造装置向けを中心とした産業用電子機器のメーカー。受託開発と自社製品の両輪で高付加価値を提供しています。

(1) 会社概要


1959年に東洋通信工業として設立され、1966年に初の自社製品を開発しました。1989年にアバールデータへ商号変更し、2004年にジャスダック(現スタンダード)へ上場しました。2024年6月には、新たな研究開発拠点として山梨R&Dセンターを開設するなど、技術開発体制の強化を継続しています。

単体従業員数は210名です。大株主の構成は、筆頭株主が資産管理を行う外国法人(STATE STREET BANK)で、第2位は同社の主要な得意先でもある事業会社のニコン、第3位は外国法人(NORTHERN TRUST)となっています。

氏名 持株比率
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505025 14.53%
ニコン 10.49%
NORTHERN TRUST CO. (AVFC) RE 009-0160 64-326 CLT 2.32%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名(女性比率11.1%)で構成され、代表取締役社長は菊地豊氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
菊地 豊 代表取締役社長 1983年入社。製造技術部、製造部ゼネラルマネジャー、生産管理部ゼネラルマネジャー、管理本部長などを歴任。2019年6月より現職。
岩本 直樹 常務取締役営業統括担当、IT統括担当 1996年入社。第一開発部、第二開発部のゼネラルマネジャーを経て、技術統括担当などを歴任。2025年6月より現職。
村田 英孝 取締役技術統括担当、第一開発部部長 1995年入社。第一開発部グループマネジャー、ゼネラルマネジャーなどを経て、2025年6月より現職。
加藤 弘達 取締役生産統括担当、生産管理部部長兼製造部部長 1997年入社。製造部生産技術グループマネジャー、製造部および生産管理部ゼネラルマネジャーを経て、2025年6月より現職。
三川 宏 取締役管理本部部長 1993年入社。品質保証部、製造部のゼネラルマネジャーを経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、金子健紀(公認会計士)、石塚陽子(弁護士)、岡田登志夫(元キーエンス・イプロス代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「受託製品」「自社製品」事業を展開しています。

(1) 受託製品


半導体製造装置関連、産業用制御機器、計測機器等の開発・製造・販売を行っています。顧客の要求仕様に基づき、半導体製造装置の制御部や各種産業用装置、社会インフラ関連の制御部などをカスタマイズ製品として提供しています。

収益は、製品の開発・製造・販売対価として顧客から受け取ります。主要な販売先はニコンや東京エレクトロン等です。運営はアバールデータが行っています。

(2) 自社製品


組込みモジュール、画像処理モジュール、計測通信機器等の開発・製造・販売を行っています。高速通信技術や画像処理技術を活かした製品群を展開し、周辺機器やソフトウェア等の関連商品も取り扱っています。

収益は、製品の販売対価として国内外の顧客から受け取ります。運営はアバールデータが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績推移は以下の通りです。売上高は2023年3月期をピークに減少傾向にあります。利益面でも、2025年3月期は前期比で減益となり、利益率は低下しました。当期利益は、前期にあった投資有価証券売却益の反動もあり大きく減少しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 85億円 98億円 144億円 126億円 110億円
経常利益 18億円 20億円 25億円 23億円 15億円
利益率 21.5% 20.6% 17.3% 18.1% 14.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 14億円 15億円 43億円 53億円 11億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を見ると、売上高の減少に伴い、売上総利益、営業利益ともに縮小しています。売上原価率は上昇し、営業利益率は低下しました。減収の影響が利益面にも波及している状況が見て取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 126億円 110億円
売上総利益 41億円 33億円
売上総利益率(%) 32.5% 30.3%
営業利益 21億円 14億円
営業利益率(%) 16.7% 12.9%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が9.0億円(構成比47%)、給料手当・賞与が3.1億円(同16%)を占めています。売上原価においては、材料費が49億円(構成比59%)、外注加工費が14億円(同17%)となっています。

(3) セグメント収益


当期は両セグメントともに減収減益となりました。受託製品は、部材供給難の解消が進んだものの、一部顧客の在庫調整長期化により減収となりました。自社製品も同様に、顧客の在庫調整の影響を受け、特に計測通信機器等が減少しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
受託製品 81億円 72億円 14億円 11億円 15.8%
自社製品 45億円 38億円 14億円 10億円 25.4%
調整額 - - -7億円 -7億円 -
連結(合計) 126億円 110億円 21億円 14億円 12.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CF、投資CF、財務CFがいずれもマイナスとなる「末期型」に該当します。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -24億円 -5億円
投資CF 39億円 -5億円
財務CF -15億円 -19億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は90.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「お客様に“価値”を提供し“信頼”を獲得する(A’VALue)」を企業理念としています。この理念のもと、サステナビリティを推進し、社会の持続可能な発展に貢献することや、市場の潜在ニーズを先取りし、顧客の装置の進化に貢献することなどを経営方針としています。

(2) 企業文化


「シンプル&スピード」を基本方針とし、全社すべてのレベルにおいてシンプル化を目指し、業務にはスピード感を持つことを重視しています。また、フラットな組織と適材適所で、より強い企業への変革を目指す風土があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、株主価値の最大化を経営の最重要課題とし、以下の経営指標を目標として掲げています。
* 売上高経常利益率:20.5%以上
* 自己資本比率:80%以上
* 自己資本当期純利益率(ROE):9%以上

(4) 成長戦略と重点施策


市場の多角化、製品開発の差別化、生産体制の充実に注力しています。特に医療、食品、社会インフラ等の新規市場開拓を推進し、半導体市場の変動リスクを回避します。また、非可視光カメラ等の新製品開発や、研究開発拠点の稼働による生産体制の進化を進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材育成と社内環境整備を重視し、個々の専門性を発揮できる環境づくりを推進しています。公平な処遇、ダイバーシティ&インクルージョン、ワークライフバランスの確保に取り組み、フラットな組織づくりと適材適所により、従業員の自立・協調・成長を両立させることを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.7歳 16.2年 7,351,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.8%
男性育児休業取得率 -%
男女賃金差異(全労働者) -%
男女賃金差異(正規雇用) -%
男女賃金差異(非正規雇用) -%


※同社は常時雇用する労働者が300人以下等のため、一部指標については公表義務の対象外となっており、有報への記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(78.4%)、平均所定外労働時間(19.9時間)、障がい者雇用率(3.35%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 半導体市況変動による影響


半導体製造装置関連は重要な事業分野であり、半導体市況の急激な変動が業績に最も大きな影響を与えます。予期せぬ市場規模の大幅な減少による受注減や在庫増加などが、業績およびキャッシュ・フローに悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合他社との競争


自社製品において、複合技術による差別化やマーケットシェア拡大に取り組んでいますが、年々価格競争が激化しています。この競争環境が続く場合、中期的には同社の業績に影響を与える可能性があります。

(3) 研究開発による影響


コア技術を用いた最先端技術の創造や新製品開発を推進していますが、要素技術に関しては新規開発の要素も多くあります。これにより新製品投入時期の遅れが生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 部材調達による影響


製品には半導体などの高性能な部材が使用されており、代替が困難な調達先も存在します。調達先との良好な関係維持に努めていますが、一時的な供給遅延や品質問題等が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。