※本記事は、菊水ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第75期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 菊水ホールディングスってどんな会社?
同社は電気計測器や電源機器等の製造・販売を主力とし、電子機器の評価や試験を支える事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1951年に菊水電波として設立後、1962年に菊水電子工業へ商号を変更しました。1991年に店頭登録銘柄として株式を公開し、2022年の持株会社体制への移行に伴い現在の菊水ホールディングスへ商号変更しています。近年はドイツやインドに現地法人を設立し、グローバル展開を加速させています。
同社グループは、連結従業員数345名、単体従業員数19名の体制で事業を運営しています。大株主の状況を見ると、筆頭株主は菊水取引先持株会で、第2位は資産管理会社であるケーティーエムです。第3位には金融機関であるみずほ銀行が名を連ねており、取引先や役員の資産管理会社などが資本を支えています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 菊水取引先持株会 | 11.68% |
| ケーティーエム | 10.92% |
| みずほ銀行 | 4.32% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長内部監査室長は小林一夫氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小林一夫 | 代表取締役社長内部監査室長 | 1983年9月同社入社。1994年6月取締役。1997年6月常務、1999年6月専務を経て2001年6月代表取締役専務。2003年6月より代表取締役社長。2015年4月より現職。 |
| 小林剛 | 専務取締役経営企画室長 | 1982年ケル入社。2001年同社常勤監査役。2003年取締役、2006年常務、2007年専務を歴任。生産本部長などを経て2022年10月より現職。 |
| 齋藤士郎 | 常務取締役管理本部長 | 1982年3月同社入社。1995年4月経理部次長。2000年4月執行役員を経て、2006年6月取締役、2009年4月常務。2010年4月管理本部長などを歴任し、2021年4月より現職。 |
| 山﨑俊宣 | 取締役監査等委員 | 1978年旭通信社(現ADKマーケティング・ソリューションズ)入社。テレビラジオ本部長などを経て、2015年4月同社入社。同年6月常勤監査役。2023年6月より現職。 |
社外取締役は、阿瀬薫(元熊本国税不服審判所長)、内山進一(元森永製菓取締役)、新谷逸男(元金沢国税局長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電気計測器等」の単一セグメントで事業を展開しています。
■電子計測器群
同社は、電気・電子機器の研究開発や生産ラインにおける安全性や性能を評価するための電子計測器を製造・販売しています。電気自動車(EV)用バッテリ向けの耐電圧・絶縁抵抗試験器や、航空・防衛関連向けの測定器などを提供しており、国内外の多様な産業の品質保証を支えています。
収益は、計測器本体の販売によって顧客から対価を受け取るモデルです。開発および販売を菊水電子工業が担当し、製造を菊水エムズが担うなど、グループ各社が連携して事業を運営しています。海外市場向けには、米国、中国、欧州、インドの各現地法人が販売活動を展開しています。
■電源機器群
同社は、電子機器の評価試験や製造設備用の電源として、直流電源、交流電源、電子負荷装置を製造・販売しています。宇宙産業、車載関連、次世代エネルギー、半導体、データセンターなど、幅広い先端分野の市場に対して製品を供給し、パワーエレクトロニクス分野の評価・測定ニーズに応えています。
収益源は、顧客への電源装置や電子負荷装置の販売代金です。本事業においても菊水電子工業が研究開発および販売を行い、菊水エムズが製造を担っています。物流業務や製品の組立・配線についてはフジテックが担当し、グループ一体となった製品供給体制を構築して事業を推進しています。
■修理・校正サービス等
同社グループは、顧客に販売した電子計測器や電源機器の保守・メンテナンスを目的として、製品の修理や精度の維持・確認を行う校正サービスを提供しています。これにより、計測機器の長期的な信頼性と安全性を担保し、顧客の継続的な研究開発や生産活動を技術面からサポートしています。
収益は、有償で提供する修理代金や校正サービス料として顧客から受け取っています。このサービス業務は主に菊水電子工業が国内で担っているほか、海外拠点である菊水貿易(上海)や米国のKIKUSUI AMERICA,INC.、欧州等の各子会社においてもそれぞれの地域で修理サービスを提供しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
同社の業績は、直近5年間において売上高が継続して増加しており、順調な事業拡大が見て取れます。利益面でも経常利益が毎期増益を達成しており、利益率も10%台後半の高い水準を維持しています。主力市場の旺盛な設備投資需要を取り込んだことで、安定した成長傾向が続いています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 101億円 | 121億円 | 125億円 | 134億円 | 147億円 |
| 経常利益 | 11億円 | 15億円 | 19億円 | 21億円 | 23億円 |
| 利益率(%) | 10.8% | 12.7% | 15.4% | 15.8% | 15.5% |
| 当期利益 | 8億円 | 26億円 | 7億円 | 6億円 | 6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに前期を上回って推移しています。原価低減などの取り組みにより、売上総利益率は50%以上の高水準を確保しており、安定した収益基盤を構築していることがわかります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 134億円 | 147億円 |
| 売上総利益 | 70億円 | 75億円 |
| 売上総利益率(%) | 51.8% | 50.9% |
| 営業利益 | 20億円 | 21億円 |
| 営業利益率(%) | 14.9% | 14.5% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が14億円(構成比25.5%)、給与手当が12億円(同22.8%)を占めています。
■(3) キャッシュ・フローと財務指標
同社は営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ営業利益で借入金の返済等を行いながら、投資も手元資金で賄っている健全型の優良企業といえます。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.8%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は82.1%であり、いずれも市場平均を上回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 21億円 | 23億円 |
| 投資CF | -2億円 | -9億円 |
| 財務CF | -4億円 | -4億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「私たち菊水は自由で豊かな発想と行動力で“創発”し社会と共に進化します」という経営ビジョンを掲げています。技術開発力とマーケティング力の向上に努め、社会環境の変化に迅速に対応できる体制を構築することで、安定した永続的な発展を目指し、お客様に喜ばれる商品の提供を通じて社会の発展に貢献することを使命としています。
■(2) 企業文化
同社は、経営ビジョンに含まれる「創発(自由で豊かな発想と行動力)」を重視し、技術革新が加速する市場環境のなかで、多様化する顧客ニーズや課題に対して前向きに取り組む文化を持っています。品質の確保を第一とし、設計から部品調達、製造、販売、サービス、廃棄までのすべてのステージで環境影響を考慮し、ステークホルダーに安心・安全を提供する姿勢を徹底しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、持続的な事業戦略と資本政策の推進により、資本収益性を高めることを目指しています。重要な経営指標として連結売上高と連結営業利益の拡大を掲げているほか、資本効率の向上を重視し、中長期的な目標としてROE(自己資本利益率)11%の達成を掲げて経営に取り組んでいます。
・ROE 11%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、「パワーエレクトロニクス分野の評価および測定ソリューション」をテーマに掲げ、eモビリティ、次世代エネルギー、パワー半導体、データセンターの4つの市場を重点市場として事業を展開しています。国内外の顧客ニーズに合わせたソリューションビジネスの積極的な展開やWebマーケティングを活用したブランドプレゼンスの向上を図るとともに、営業のデジタルトランスフォーメーションを推進し、マーケティングとユーザーリレーションの強化に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、持続的な成長を確保するために多様な視点を取り入れることを重視し、性別や国籍、中途採用の有無を問わず多様な人材の活躍を推進しています。社会的に弱い立場にある人を含むすべてのステークホルダーの人権を尊重し、個人の能力を最大限に発揮できる機会を提供するとともに、従業員の健康と安全に配慮した公平で適切な労働環境の整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.8歳 | 15.2年 | 8,672,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 57.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 88.5% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 39.4% |
※男性の育児休業取得対象者がいなかったため、男性育児休業取得率は「-」となっています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員総数に対する女性比率(16.7%)、従業員総数に対する管理職比率(21.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の市場に依存しているリスク
同社の製品需要は、販売先の国や地域における設備投資動向や購買政策の影響を大きく受けます。特に主要市場における景気後退や需要縮小が発生した場合、同社の業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、重点4市場でのソリューションビジネスの展開やWebマーケティングを強化し、リスクの分散を図っています。
■(2) 変化の激しい技術力の保持
電気計測器業界は技術の進歩が急速であり、顧客ニーズの多様化に伴い新製品の開発プロセスが複雑化しています。同社が競争力のある新製品を提供するための技術力を持続的に維持できない場合、成長や業績に影響が及ぶ可能性があります。そのため、製品開発ロードマップに基づく先行技術開発や他社との共同開発を推進しています。
■(3) 海外事業における為替レートの変動
同社は海外売上高の拡大や海外生産委託の拡充を進めているため、大幅な為替変動が発生した場合、業績に影響を及ぼすリスクがあります。国際情勢の変化や各国の保護主義的な貿易政策などにより為替が変動する可能性があり、同社では外貨建てでの販売と仕入の双方を行うことで、為替変動による影響の軽減に努めています。
■(4) 優秀な人材の確保および育成
同社の将来の成長は、有能なエンジニアやキーマンの存在に大きく依存しています。労働人口の減少等による人材不足のなかで、高い技術力を持つ人材の確保や育成が計画通りに進まない場合、事業展開に支障をきたす恐れがあります。同社では、採用活動の強化や各種教育・研修の実施、給与水準の見直しによる待遇改善に取り組んでいます。



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