※本記事は、三相電機株式会社 の有価証券報告書(第68期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 三相電機ってどんな会社?
モータとポンプ及びその応用製品を主力とし、「技術提案型」「顧客指向型」を強みとするメーカーです。
■(1) 会社概要
1957年に小型モータと家庭用電気井戸ポンプの製造販売を目的に設立されました。1993年には上海に合弁会社(現・上海三相電機有限公司)を設立し海外展開を開始。2004年にジャスダック証券取引所へ上場を果たしました。2016年には岩谷電機製作所を完全子会社化し(後に吸収合併)、2022年の東証市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しています。
連結従業員数は587名、単体では299名です。筆頭株主は法人株主のケイアールディーで、第2位は従業員持株会、第3位は取引先である石野製作所となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ケイアールディー | 25.87% |
| 三相電機取引先持株会 | 13.36% |
| 石野製作所 | 8.79% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名、計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は黒田直樹氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 黒田 直樹 | 代表取締役社長 | 1989年入社。品質管理部長、常務取締役等を経て、2006年より現職。上海三相電機有限公司董事長を兼任。 |
| 小林 秀嗣 | 専務取締役営業部・生産管理部・製造部担当 | 1977年入社。技術本部研究部長、取締役営業部長、常務取締役等を経て、2017年より現職。 |
| 曹 銀春 | 取締役資材部・海外関連会社担当・技術フェロー | 2001年入社。研究開発部長、技術部長、執行役員等を経て、2023年より現職。 |
| 小畑 直人 | 取締役生産管理部長 | 1993年入社。技術部副部長、営業部長、執行役員等を経て、2024年より現職。 |
| 榮永 悟 | 取締役統括管理部長 | 1992年入社。統括管理部副部長、統括管理部長、執行役員を経て、2023年より現職。 |
| 松田 一郎 | 取締役上海三相電機有限公司総経理 | 1988年入社。生産管理部長、資材部長、上海三相電機有限公司総経理、執行役員を経て、2024年より現職。 |
| 長野 浩忠 | 取締役技術部長 | 2000年入社。技術部担当部長、技術部副部長、執行役員技術部長を経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、足立安孝(元日本電子材料専務取締役)、井上美智代(井上鉄工所代表取締役専務)、安山寿祥(なぎさ監査法人代表社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「モータ」「ポンプ」事業を展開しています。
■(1) モータ事業
産業機器用モータを中心に、各種モータの製造・販売を行っています。顧客は産業機器メーカーなどが中心で、国内外の市場に製品を供給しています。
収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は、主に三相電機が製造・販売を行い、部品加工等を岡山三相電機などの子会社が担当するほか、上海三相電機有限公司も製造・販売を行っています。
■(2) ポンプ事業
家庭用から産業用、半導体製造装置向けまで幅広い用途のポンプを製造・販売しています。特に半導体製造装置用ポンプや、インフラ機器、医療機器に組み込まれる製品を展開しています。
収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は三相電機が主体となり、中国市場向けなどは上海三相電機有限公司が製造・販売を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2023年3月期をピークに減少傾向にあります。特に当期は半導体市場の回復遅れや在庫調整の影響を受け、大幅な減収減益となりました。利益面では、原材料価格の高止まりなどが響き、利益率が低下しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 129億円 | 171億円 | 186億円 | 177億円 | 160億円 |
| 経常利益 | 5.8億円 | 9.4億円 | 10.6億円 | 8.0億円 | 1.4億円 |
| 利益率(%) | 4.5% | 5.5% | 5.7% | 4.5% | 0.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4.8億円 | 8.7億円 | 8.1億円 | 6.0億円 | 0.9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少に伴い、売上総利益および営業利益が大きく縮小しました。売上総利益率は18.3%から16.2%へ低下し、営業利益率は3.8%から0.4%へと大幅に悪化しており、収益性の低下が顕著です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 177億円 | 160億円 |
| 売上総利益 | 32億円 | 26億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.3% | 16.2% |
| 営業利益 | 6.8億円 | 0.7億円 |
| 営業利益率(%) | 3.8% | 0.4% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が8億円(構成比31%)、研究開発費が5億円(同19%)を占めています。また、売上原価においては、材料費や外注加工費などが主な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
当期の販売実績を見ると、モータ部門は前年比で増加しましたが、主力のポンプ部門が大きく減少しました。ポンプ部門は半導体製造装置用ポンプの需要減退が響き、全体の減収要因となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| モータ | 73億円 | 73億円 |
| ポンプ | 107億円 | 88億円 |
| 連結(合計) | 177億円 | 160億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
**パターン判定: 健全型**
営業活動で得た資金の範囲内で借入金の返済や投資を行っており、財務体質は健全といえます。ただし、当期の営業キャッシュ・フローは前期に比べ大幅に縮小しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 20億円 | 3億円 |
| 投資CF | -3億円 | -19億円 |
| 財務CF | -11億円 | -9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.0%で市場平均(スタンダード市場7.2%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.3%で市場平均(スタンダード市場製造業57.5%)を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、社是「愛と感謝と積極性」のもと、広く社会の繁栄に貢献することを経営理念としています。さらに、地球環境を考慮し、企業活動を通じて世界の平和と豊かさに貢献することを目指しています。株主、取引先、地域社会から信頼と尊敬をされる会社づくりを基本方針として掲げています。
■(2) 企業文化
同社の特長である「技術提案型」「顧客指向型」をさらに伸ばし、新しい時代に適応できる経営基盤の強化に努める文化があります。従業員の能力を最大限発揮できるよう人材育成に注力するとともに、安全で働きやすい職場環境の確保や、経営の透明性・公正な業務執行を重視する姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、経営指標として売上高営業利益率を重視しています。高付加価値商品の開発および販売を進めることで、収益性を示す指標である売上高営業利益率の向上を目指しています。具体的な数値目標としては、中長期的な発展と収益力の高い事業構造への転換を掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向けて、基幹事業であるモータとポンプにおいて、低消費電力化などの市場ニーズに応えた製品開発を強化するとともに、応用製品での事業拡大を図ります。また、グローバルな市場マーケティングによるシェア拡大、生産拠点の最適化によるコスト削減、サプライチェーンの強化に取り組んでいます。
* 既存製品への付加機能搭載による新製品開発
* ユニット製品の市場拡大と新規顧客開拓
* グローバル調達と複数社購買による原材料の安定調達
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
従業員が能力を最大限発揮できるよう人材育成に努めるとともに、安全・健康な職場環境を実現することを基本方針としています。階層別教育や業務改善活動、目標管理などを通じて、誰もが活躍できる組織作りを目指しています。また、多様性や個性を尊重し、健康経営やワークライフバランスの推進にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.4歳 | 16.6年 | 5,686,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.2% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 77.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 78.8% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の販売先への依存度リスク
同社グループの販売において、特定の取引先への依存度が10%を超える場合があります。これらの主要取引先との取引が縮小された場合、売上の減少に伴い業績が悪化する可能性があります。これに対し、顧客満足度の向上や新規顧客・新市場の開拓により、顧客基盤の拡大に努めています。
■(2) 中国市場での活動リスク
中国において生産および販売活動を行っているため、現地の経済的、社会的、政治的な要因によるトラブルが発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。このリスクを軽減するため、原材料調達のグローバル化などを進めています。
■(3) 原材料価格変動の影響リスク
製品には鉄鋼や非鉄金属などが使用されており、これら素材の市況変動が業績に影響を与える可能性があります。価格高騰時に適正な販売価格への転嫁が困難な場合、収益を圧迫する恐れがあります。市況の注視、最適価格での調達、必要に応じた先行手配などでリスク緩和を図っています。
■(4) 為替レートの変動リスク
海外での事業活動に伴い、現地通貨建ての取引や連結財務諸表作成時の円換算において、為替レートの変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。現地通貨による取引を行うことで、為替変動リスクの影響緩和に努めています。



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