※本記事は、三相電機株式会社の有価証券報告書(第69期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 三相電機ってどんな会社?
モータとポンプ、およびその応用製品の開発・製造・販売を一貫して行う技術提案型のメーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1957年に小型モータと家庭用電気井戸ポンプの製造・販売を目的として設立されました。1980年代には産業機器用モータに参入し事業を拡大、1995年に株式を店頭登録し、現在は東京証券取引所スタンダード市場に上場しています。2021年には岩谷電機製作所を吸収合併するなど、継続的に事業基盤の強化を図っています。
従業員数は連結588名、単体299名です。筆頭株主は事業会社のケイアールディーで、第2位は取引先を中心とする三相電機取引先持株会、第3位も事業会社の石野製作所となっており、事業に関わりの深い法人が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ケイアールディー | 25.79% |
| 三相電機取引先持株会 | 13.46% |
| 石野製作所 | 8.76% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は黒田直樹氏が務めています。社外取締役は3名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 黒田直樹 | 代表取締役社長 | 1989年入社。品質管理部長や情報システム部担当などを経て、2006年より上海三相電機有限公司董事長および代表取締役社長に就任。 |
| 小林秀嗣 | 専務取締役営業部・生産管理部・製造部担当 | 1977年入社。研究開発部長や営業部長などを歴任し、2016年に専務取締役就任。2017年より営業部・生産管理部・製造部を担当。 |
| 曹銀春 | 取締役資材部・海外関連会社担当・技術フェロー | 2001年入社。研究開発部長、技術部長を経て2021年に取締役フェローに就任。2023年より資材部・海外関連会社担当・技術フェロー。 |
| 小畑直人 | 取締役生産管理部長 | 1993年入社。営業部長などを経て、2021年に取締役営業部長に就任。2024年より取締役生産管理部長。 |
| 榮永悟 | 取締役統括管理部長・情報システム部担当 | 1992年入社。統括管理部長を経て2023年に取締役就任。2026年より加西三相電機の代表取締役社長も兼任。 |
| 松田一郎 | 取締役上海三相電機有限公司総経理 | 1988年入社。生産管理部長、資材部長を歴任。2017年より上海三相電機有限公司総経理を務め、2024年に取締役に就任。 |
| 長野浩忠 | 取締役技術部長 | 2000年入社。技術部副部長などを経て、2021年に執行役員技術部長に就任。2024年より取締役技術部長。 |
社外取締役は、足立安孝(元日本電子材料専務取締役)、井上美智代(井上鉄工所代表取締役専務)、安山寿祥(なぎさ監査法人代表社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「モータ・ポンプ事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) モータ・ポンプ事業
家庭用から産業機器、医療機器向けまで幅広い用途のモータ・ポンプ、およびその応用製品を開発・製造しています。特に半導体製造装置向けの特殊ポンプなどを展開し、低消費電力化などの顧客ニーズに応える環境適合製品の提供に注力しています。
収益源は、荏原製作所やSMCなどの主要顧客をはじめとする国内外のメーカーへの製品販売代金です。事業の運営は、同社を中心に、部品加工や組立を担う岡山三相電機や新宮三相電機などの国内子会社、および中国の上海三相電機有限公司が連携して行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、一時的な市場の減速による減収減益の局面を経て、当期は半導体製造装置関連の需要拡大などにより大幅な増収増益を達成しました。収益性の向上と安定した利益水準の維持に努めています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 171.0億円 | 186.2億円 | 176.7億円 | 160.3億円 | 182.9億円 |
| 経常利益 | 9.4億円 | 10.6億円 | 8.0億円 | 1.4億円 | 8.6億円 |
| 利益率(%) | 5.5% | 5.7% | 4.5% | 0.9% | 4.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8.8億円 | 8.2億円 | 4.9億円 | 1.2億円 | 5.7億円 |
■(2) 損益計算書
当期は売上高の増加に加え、原材料や部材の安定調達、コストダウンの推進により生産性が維持され、売上総利益と営業利益がともに大きく改善しました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 160.3億円 | 182.9億円 |
| 売上総利益 | 25.9億円 | 33.6億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.2% | 18.4% |
| 営業利益 | 0.7億円 | 7.9億円 |
| 営業利益率(%) | 0.4% | 4.3% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が8.3億円(構成比32%)、研究開発費が4.7億円(同18%)を占めています。
■(3) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.0億円 | 17.1億円 |
| 投資CF | -18.7億円 | -6.9億円 |
| 財務CF | -9.4億円 | -2.3億円 |
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
社是「愛と感謝と積極性」の経営理念のもと、広く社会の繁栄に貢献することを掲げています。さらに、地球環境を考え、世界の平和と豊かさに企業活動を通して貢献することを使命としています。
■(2) 企業文化
同社の特長である「技術提案型」「顧客指向型」をさらに伸ばし、新しい時代に適応できる経営基盤の強化に努めています。株主、取引先、関係業界、地域社会の皆様から信頼と尊敬される会社づくりを基本方針としています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、企業の経営活動をより明確に表す「売上高経常利益率」を新たな指標として設定しています。高付加価値製品の開発および販売を進め、企業の収益性を示す指標である売上高経常利益率の継続的な向上を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
基幹事業であるモータとポンプにおいて、低消費電力化への市場ニーズに応える製品開発を強化するとともに、応用製品(ユニット製品)での事業拡大を図ります。また、提案力や案件対応力の強化による既存顧客との取引深耕、海外展開の強化による新規市場の開拓を進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
従業員が能力を最大限発揮できるよう人材育成に努めるとともに、安全・健康な職場環境を実現することを基本方針としています。階層別教育や全従業員参加の業務改善活動を通じて、人種や性別に関係なく多様な人材が活躍できる組織作りを目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.1歳 | 16.5年 | 5,802,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.5% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 75.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 87.3% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の販売先への依存
同社グループの販売において、一部の主要取引先への依存度が高い傾向があります。これらの販売先との取引が縮小された場合、売上の減少に伴いグループ全体の業績が悪化するリスクがあります。そのため、顧客満足度を高めるとともに新規市場の開拓に努めています。
■(2) 中国市場における活動リスク
同社グループは、中国において生産活動および販売活動を行っています。経済的、社会的、または政治的な要因により、中国での事業活動に支障をきたすようなトラブルが生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 原材料価格の変動と調達
製品の原材料である鉄鋼や非鉄金属等の市況が乱高下するリスクや、地政学要因による部材調達コストの高騰リスクがあります。コスト変動を販売価格に適正に転嫁できなければ、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 為替レートの変動
海外での事業活動において、現地通貨建ての売上や費用等の項目を円換算するため、為替レートの変動が業績に影響を与える可能性があります。同社は現地通貨による取引を行うことで、為替変動リスクの緩和を図っています。



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