※本記事は、パルステック工業株式会社の有価証券報告書(第57期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. パルステック工業ってどんな会社?
同社は光波センシング技術を中核とし、各種計測・検査装置などの開発・製造を手掛ける企業です。
■(1) 会社概要
1968年に創業し、1969年にパルステック工業を設立しました。1996年には米国に現地法人Pulstec USA,Inc.を設立して海外展開を推進しています。2000年に東京証券取引所市場第二部に上場し、その後ポータブル型X線残留応力測定装置の開発などを通じて事業を拡大してきました。
現在の従業員数は連結で123名、単体で122名です。大株主については、筆頭株主が坪井邦夫氏で、第2位は伊藤克己氏、第3位は坪井啓明氏となっており、個人株主が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 坪井 邦夫 | 9.26% |
| 伊藤 克己 | 8.41% |
| 坪井 啓明 | 2.70% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は青野嘉幸氏が務めており、社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 青野 嘉幸 | 代表取締役社長 | 1998年8月同社入社。光ディスクカテゴリーオーナー、技術部長、取締役第1技術部長等を経て、2024年4月より現職。 |
| 工藤 孝史 | 取締役管理部長及びIR担当 | 1997年4月同社入社。経営管理部長、管理部長を経て、2017年6月より現職。 |
| 西島 直樹 | 取締役技術本部長 | 1992年9月同社入社。事業推進室長、第2技術部長、取締役技術部長等を経て、2025年4月より現職。 |
社外取締役は、岡本英次(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「X線残留応力測定装置関連」、「ヘルスケア装置関連」、「光応用・特殊機器装置関連」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。
■X線残留応力測定装置関連
ポータブル型X線残留応力測定装置などの製造・販売を行っています。自動車メーカや機械メーカなどの研究開発部門、品質管理部門、生産部門で使用される検査装置等を主に提供しています。
顧客への製品販売や保守サービス等から収益を得ています。運営は主にパルステック工業および米国の連結子会社Pulstec USA,Inc.が行っています。
■ヘルスケア装置関連
主に医療機器関連の受託開発および受託製造を行っています。顧客との強固な信頼関係のもと、医療分野における品質マネジメントシステム等の認証を背景に事業を展開しています。
主要顧客等からの医療機器等の受託開発・受託生産の対価として収益を得ています。運営は主にパルステック工業が行っています。
■光応用・特殊機器装置関連
顧客仕様に基づく専用機器・装置、3Dスキャナ、各種計測・制御・データ処理装置等の製造および販売に加え、それに付随する受託計測サービスや装置レンタルを行っています。
輸送機器、半導体製造装置などの関連業界等の顧客への製品販売や保守メンテナンスから収益を得ています。運営はパルステック工業およびPulstec USA,Inc.が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
全体として売上高は24億円から26億円前後で安定的に推移しており、経常利益も堅調な水準を維持しています。当期は売上高が微増し経常利益率が15.5%に改善した一方で、最終利益は減益となりました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 24.5億円 | 24.5億円 | 26.1億円 | 24.9億円 | 25.5億円 |
| 経常利益 | 3.5億円 | 3.3億円 | 3.9億円 | 3.5億円 | 4.0億円 |
| 利益率(%) | 14.4% | 13.6% | 14.8% | 14.2% | 15.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3.4億円 | 2.4億円 | 3.3億円 | 3.6億円 | 2.9億円 |
■(2) 損益計算書
売上総利益率は38.0%から41.5%へと改善し、これに伴い営業利益率も13.5%から14.0%へと上昇しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 24.9億円 | 25.5億円 |
| 売上総利益 | 9.4億円 | 10.6億円 |
| 売上総利益率(%) | 38.0% | 41.5% |
| 営業利益 | 3.4億円 | 3.6億円 |
| 営業利益率(%) | 13.5% | 14.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が2.3億円(構成比33.0%)、役員報酬が0.8億円(同12.0%)を占めています。
■(3) セグメント収益
光応用・特殊機器装置関連およびX線残留応力測定装置関連が増収を牽引しました。一方で、ヘルスケア装置関連は受託開発の一部中止などにより減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| X線残留応力測定装置関連 | 8.4億円 | 8.9億円 |
| ヘルスケア装置関連 | 7.1億円 | 6.3億円 |
| 光応用・特殊機器装置関連 | 9.4億円 | 10.3億円 |
| 連結(合計) | 24.9億円 | 25.5億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFは5.8億円、投資CFは-6.0億円、財務CFは-1.5億円となっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1.5億円 | 5.8億円 |
| 投資CF | -3.7億円 | -6.0億円 |
| 財務CF | -1.6億円 | -1.5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.3%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も79.9%と、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「地域社会や産業社会の発展に役立つ会社として、様々なステークホルダーと誠意をもって接するとともに、信念を持って積極果敢に挑戦すること」を企業理念に掲げています。具体的には、創意工夫による新しい価値の創造や、英知と信念を持った可能性への挑戦などを定めています。
■(2) 企業文化
パーパスとして「トコトン光を操り 共に『測る』に挑み 未来の『見える』を創る」を制定しています。光の技術をコアコンピタンスとし、見えないものを見える化して社会に貢献する価値観や、実直・誠実に顧客の期待に応え最後までやり切る「トコトン」の精神を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画において、売上高並びに売上高営業利益率に加えて、ROE(自己資本利益率)を重要な経営指標とし、資本効率の改善と持続的成長の両立を目指しています。
* 売上高27億円以上
* 売上高営業利益率10%以上
* 自己資本利益率9%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
どのような経営環境下でも安定した収益を確保できる経営体制の確立を目指し、同社の強みを生かせる製品やノウハウを複数の市場に提供する盤石な経営基盤の構築を戦略としています。
* μ-X360Jを中心とした装置販売の強化
* 光計測技術を活用した高付加価値自社製品の開発
* 光波センシング技術を中核にした新製品・新規事業の早期創出
* 人材の採用と育成、年齢構成バランスの最適化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
企業の持続的成長に不可欠な人材の確保として、新規学卒者を中心に積極的な採用活動を行うとともに、即戦力となる中途技術者の採用や定年退職者の再雇用を進めています。また、スキルマップ表に基づく事業年度ごとの教育計画や階層別教育を通じ、多様な人材が働き甲斐を持って活躍できる環境を整備しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.8歳 | 22.3年 | 6,238,019円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.7% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 72.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 58.3% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(99.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 景気・設備投資動向の影響と競合の台頭
主力製品は研究開発部門や生産部門で使用する検査装置等であり、顧客企業の設備投資動向が悪化した場合や、競合から類似製品・低価格製品が市場投入された場合に、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 新規事業及び新市場への展開に関するリスク
事業拡大に向けた新規事業の創出には一定の開発投資や期間を要します。新市場での認知度不足や商習慣の違いにより、当初計画と乖離が生じ、投下資本の回収が困難となる可能性があります。
■(3) 部品の調達遅延と価格高騰
製品に使用する電子部品や精密機構部品等は主に商社やメーカから調達しており、原材料不足や労働力不足により安定供給が滞った場合、生産遅延や納入遅延が発生し、顧客の信頼を損ねる懸念があります。
■(4) 人材の確保・高齢化に関する課題
社員全体の平均年齢が上昇傾向にある中、即戦力となる人材の採用競争が激化しています。人材確保が計画通りに進まず、定年退職による労働力不足が生じた場合、事業活動に支障をきたすリスクがあります。



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