パルステック工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

パルステック工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する企業です。X線残留応力測定装置やヘルスケア関連機器の受託開発、光応用機器の製造販売を主力事業としています。直近の決算では、光応用事業が伸長したものの、他セグメントの調整により減収となりました。利益面では経常利益は減益でしたが、税効果会計の影響等により最終利益は増益となっています。


※本記事は、株式会社パルステック工業 の有価証券報告書(第56期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. パルステック工業ってどんな会社?


光技術を核に、X線残留応力測定装置や医療・ヘルスケア機器の開発製造を手掛ける研究開発主導型企業です。

(1) 会社概要


1969年に電子応用機器の製造を目的に設立され、1996年には米国現地法人を設立しました。2000年に東京証券取引所市場第二部に上場し、2012年には主力のポータブル型X線残留応力測定装置の開発・販売を開始しています。2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行し、2024年には熱処理硬化層深さ測定装置を市場投入するなど、独自技術による製品開発を続けています。

2025年3月31日時点の従業員数は連結124名、単体123名です。主要株主の状況を見ると、筆頭株主は個人の坪井邦夫氏であり、第2位、第3位も個人株主が続いています。特定の親会社や強い支配権を持つ法人株主は見当たらず、個人株主が上位を占める構成となっています。

氏名 持株比率
坪井 邦夫 9.26%
伊藤 克己 8.41%
後藤 修二 3.03%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は青野嘉幸氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
青野 嘉幸 代表取締役社長 1998年同社入社。光ディスクカテゴリーオーナー、技術部長、取締役営業部長などを経て、2024年4月より現職。Pulstec USA,Inc.代表取締役社長を兼務。
西島 直樹 取締役技術本部長 1992年同社入社。事業推進室長、第2技術部長、取締役技術部長などを歴任。2025年4月より現職。
工藤 孝史 取締役管理部長及びIR担当 1997年同社入社。経営管理部長、管理部長を経て、2017年6月より現職。


社外取締役は、岡本英次(弁護士・はままつ共同法律事務所)です。

2. 事業内容


同社グループは、「X線残留応力測定装置関連」「ヘルスケア装置関連」および「光応用・特殊機器装置関連」事業を展開しています。

X線残留応力測定装置関連


金属部品等の残留応力を測定するポータブル型X線残留応力測定装置などを、輸送機器メーカーや研究機関等に提供しています。同社のコア技術である光応用技術とX線計測技術を融合させた製品群を展開しています。

収益は、主に顧客への製品販売による対価として得ています。また、これらに付随する保守サービスや受託計測サービスも収益源となっています。運営は、国内ではパルステック工業が、米国市場では主に子会社のPulstec USA,Inc.が行っています。

ヘルスケア装置関連


医療機器メーカー等を顧客とし、医療機器関連の受託開発装置を提供しています。長年培った光ディスク技術や精密制御技術を応用し、顧客の要望に応じた装置の開発・製造を行っています。

収益は、顧客からの受託開発費や受託製造による製品売上として計上されます。運営はパルステック工業が行っており、受託開発完了後の量産体制への移行や品質管理体制の強化に取り組んでいます。

光応用・特殊機器装置関連


顧客仕様に基づく専用機器・装置や3Dスキャナ、各種計測・制御・データ処理装置等の電子応用機器を提供しています。半導体製造装置関連業界などを主な販売先としています。

収益は、顧客仕様に基づく専用機器や装置の販売代金から得ています。また、保守サービスや装置レンタルも行っています。運営は主にパルステック工業が担っていますが、米国市場における保守サービス等はPulstec USA,Inc.も関与しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は20億円台前半から中盤で推移しており、安定した事業基盤を有していることがわかります。利益面では、高い利益率を維持しており、特に経常利益率は10%台半ばで推移するなど高収益体質を示しています。当期純利益も安定的に確保しており、堅実な経営状況が見て取れます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 21億円 24億円 24億円 26億円 25億円
経常利益 1.9億円 3.5億円 3.3億円 3.9億円 3.5億円
利益率(%) 9.2% 14.4% 13.6% 14.8% 14.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.6億円 3.4億円 2.4億円 3.2億円 3.6億円

(2) 損益計算書


直近2期間の傾向を見ると、売上高は減少したものの、売上総利益率は38.0%と高い水準を維持しています。営業利益率も13%台後半から半ばで推移しており、本業での収益力は底堅いと言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 26億円 25億円
売上総利益 10億円 9億円
売上総利益率(%) 39.3% 38.0%
営業利益 3.6億円 3.4億円
営業利益率(%) 13.7% 13.5%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が1.8億円(構成比30%)、役員報酬が0.9億円(同15%)を占めています。研究開発費は0.3億円程度が含まれています。売上原価に関しては、製品製造にかかる材料費や労務費などが計上されています。

(3) セグメント収益


セグメント別に見ると、光応用・特殊機器装置関連は主要顧客からの引き合いが好調で増収となりましたが、X線残留応力測定装置関連は大型案件の期ズレにより減収、ヘルスケア装置関連も受託開発の一部先送りにより減収となりました。利益面では全セグメントで黒字を確保していますが、光応用セグメントは減価償却費の影響で微減益となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
X線残留応力測定装置関連 8.9億円 8.4億円 3.8億円 3.6億円 43.3%
ヘルスケア装置関連 9.0億円 7.1億円 0.4億円 0.4億円 5.7%
光応用・特殊機器装置関連 8.2億円 9.4億円 2.6億円 2.6億円 27.6%
その他 - - - - -
調整額 - - -3.4億円 -3.3億円 -
連結(合計) 26億円 25億円 3.6億円 3.4億円 13.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業活動で得た資金で借入金の返済や株主還元を行いつつ、設備投資にも資金を充当できる「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 4.0億円 1.5億円
投資CF 0.9億円 -3.7億円
財務CF -1.5億円 -1.6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も76.8%で市場平均を上回っています。いずれも市場平均を上回る良好な水準です。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、地域社会や産業社会の発展に役立つ会社として、ステークホルダーと誠意をもって接し、信念を持って積極果敢に挑戦することを掲げています。具体的には、「創意と工夫をもって新しい価値を創造し、社会の発展に貢献する」「会社を取り巻く全ての人々と誠意をもって協調し、会社の繁栄と全員の幸福との一致を追求する」ことなどを理念としています。

(2) 企業文化


同社は「パーパス」として「トコトン光を操り 共に「測る」に挑み 未来の「見える」を創る」を制定しています。「トコトン」は実直・誠実にやり切る姿勢、「光」はコアコンピタンス、「操る」はプロフェッショナルであることを意味します。また、「挑む」ことで困難にチャレンジし、見えないものを見える化することで社会に貢献する価値観を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、独創性の高い高付加価値製品による事業拡大と収益性増大を目指しています。重要な経営指標として売上高および売上高営業利益率を掲げており、中期的な数値目標を設定しています。

* 2026年3月期 売上高:26.5億円以上
* 2026年3月期 売上高営業利益率:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中長期的には、X線残留応力測定装置関連、ヘルスケア装置関連、光応用・特殊機器装置関連を中核事業とし、新規事業の創出にも取り組みます。X線関連では新製品の販売強化や海外販路の拡大、Web活用の強化を進めます。ヘルスケア関連では新規顧客開拓による安定基盤構築、光応用関連では半導体製造装置関連事業の拡大に注力します。また、高付加価値製品の開発と新規事業の早期創出、人材の採用と育成にも力を入れていく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


企業の持続的成長のため、新卒採用に加え、即戦力となる中途採用や定年退職者の再雇用など多様な人材確保を進めています。また、社員のスキルアップのため、全社員を対象としたスキルマップに基づく教育計画を作成し、階層別教育や専門教育を実施しています。多様な人材が活躍できる環境整備として、給与制度や教育制度の見直し、健康経営の推進にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.3歳 21.8年 6,040,063円


※平均年間給与は税込支払給与額であり、基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.8%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 67.4%
男女賃金差異(正規雇用) 73.2%
男女賃金差異(非正規) 56.5%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品の特色


同社グループの製品は、企業の設備投資動向に影響を受けやすい検査装置や評価装置が主体です。高付加価値である反面、業界の景気動向や顧客企業の設備投資が悪化する局面では、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、競合製品の登場や顧客の内製化方針への転換により市場規模が縮小するリスクもあります。

(2) 新規事業及び新市場への展開


新規事業の創出や新市場への参入には新たな投資が必要ですが、収益化までには時間を要し、一時的に利益率が低下する可能性があります。また、新市場での認知度不足や商習慣への不慣れさから、計画通りの実績があげられない場合、投下資本の回収が困難になり、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 自社製品開発及び受託開発


自社製品開発や受託開発は、開発工数の超過やスケジュールの遅延、仕様の不備による不具合発生などのリスクを伴います。市場環境の変化や顧客の方針転換により、事業規模の縮小や中止を余儀なくされた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 部品の調達


電子部品や精密機構部品などの調達において、原材料不足やサプライヤーの生産逼迫により安定供給が受けられなくなるリスクがあります。特に特注部材に関しては、加工外注先の稼働状況により調達が困難になる場合があり、生産や納入の遅延につながる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。