高見沢サイバネティックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

高見沢サイバネティックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、鉄道駅の自動券売機やホームドア、紙幣処理装置などの電子制御機器の設計・製造・販売を行っています。直近の業績は、交通システム機器や特機システム機器の受注が好調に推移したことなどから、売上高、各利益ともに前期を上回り、増収増益となりました。


※本記事は、株式会社高見沢サイバネティックス の有価証券報告書(第56期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 高見沢サイバネティックスってどんな会社?


鉄道駅務機器や紙幣処理技術を核とした電子制御機器メーカーで、交通インフラや防災システム等を支えています。

(1) 会社概要


同社は1969年、髙見澤電機製作所の自販機事業部の一部が独立して設立され、自動券売機等の販売を開始しました。1996年に日本証券業協会へ株式を店頭登録し、2004年にはジャスダック証券取引所へ上場しました。その後、大阪証券取引所ヘラクレス市場などを経て、2022年の東京証券取引所の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しました。2025年には情報セキュリティの国際規格ISO27001の認証を取得しています。

2025年3月31日現在、グループ全体の従業員数は556名(単体403名)です。筆頭株主は、製品の販売や供給で協力関係にある富士電機で、第2位は同社の大株主でもある富士通です。第3位は退職給付信託受託者の日本カストディ銀行です。同社は電機メーカー大手と資本・業務面で密接な関係を持っています。

氏名 持株比率
富士電機 14.06%
富士通 9.47%
みずほ信託銀行株式会社退職給付信託富士電機口再信託受託者株式会社日本カストディ銀行 6.51%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性1名の計15名で構成され、女性役員比率は6.7%です。代表取締役社長社長執行役員は髙見澤和夫氏です。社外取締役比率は13.3%です。

氏名 役職 主な経歴
髙見澤 和夫 代表取締役社長社長執行役員 1987年同社入社。高見沢サービス社長、同社取締役副社長等を経て2000年6月より現職。
竹田 一雄 専務取締役専務執行役員 1979年同社入社。社会システム本部長、テクニカル本部長、ニュービジネス推進室長等を経て2024年6月より現職。
髙橋 利明 取締役執行役員管理本部長 1979年同社入社。経営管理本部企画室長、管理本部長兼経営企画室長、事業統括室長等を経て2024年6月より現職。
下里 雄二 取締役常務執行役員営業本部長 1984年同社入社。社会・産業システム本部メカトロ事業部長、社会-産業システム本部長等を経て2024年6月より現職。
藤曲 宏弥 取締役常務執行役員テクニカル本部長 1983年同社入社。テクニカル本部メカコン設計センター長、テクニカル本部長等を経て2024年6月より現職。
上原 良房 取締役執行役員TPP本部長 1982年同社入社。テクニカル本部テクニカルセンター長、テクニカル本部副本部長等を経て2024年6月より現職。
土屋 浩治 取締役執行役員ものづくり本部長 1986年同社入社。品質保証本部品質保証センター長、ものづくり本部長兼生産センター長等を経て2024年6月より現職。
荒井 元 取締役執行役員品質保証本部長 1983年同社入社。ものづくり本部品質保証センター第一品質保証部長、品質保証本部品質保証センター長等を経て2024年6月より現職。


社外取締役は、髙橋康宏(元富士電機執行役員常務)、野口真一郎(元富士通フロンテック執行役員常務)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電子制御機器」事業を展開しています。

(1) 交通システム機器


自動券売機をはじめとした出改札機器、ホームドアシステム等を設計・製造し、鉄道事業者を中心に販売しています。駅務の自動化や安全対策に寄与する製品群を提供しています。

各種機器の設置・調整および保守サービスについては、主に連結子会社の高見沢サービスが行っています。鉄道事業者からの製品販売代金や保守サービス料などが収益源となります。

(2) メカトロ機器


紙幣・硬貨などの処理ユニットや各種メカトロニクス機器を設計・製造し、装置メーカー等に販売しています。富士電機とは一部製品の相互供給を行っています。

製品の一部製造については関連会社の高見沢メックスに委託しています。装置メーカー等へのユニット販売が主な収益源となります。

(3) 特機システム機器


セキュリティシステム、防災計測システム、パーキングシステムなどを設計・製造・販売しています。駐輪場の運営管理業務も展開しており、社会インフラの安全・安心に関わる分野を担っています。

各種機器の設置・調整、保守サービス、駐輪場運営管理業務などを連結子会社の高見沢サービスが行っています。また、高見沢ソリューションズがシステム設計や開発プロセス管理を行っています。機器販売に加え、駐輪場運営による利用料収入なども収益源となります。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績推移を見ると、売上高は一時的な減少があったものの、直近では増加傾向にあり、特に当期は過去5年間で最高水準に達しています。利益面でも、売上高の伸長に伴い経常利益、当期純利益ともに回復・拡大基調にあり、利益率も向上しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 127億円 99億円 107億円 131億円 154億円
経常利益 9億円 2億円 6億円 9億円 13億円
利益率(%) 7.1% 2.2% 5.9% 7.2% 8.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 1億円 4億円 6億円 8億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに大きく伸長しています。原価率や販管費率のコントロールにより、各段階利益率も改善傾向にあります。増収効果が利益増に直結しており、本業の収益力が強化されていることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 131億円 154億円
売上総利益 37億円 43億円
売上総利益率(%) 28.2% 28.2%
営業利益 10億円 14億円
営業利益率(%) 7.5% 8.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料が10億円(構成比33%)、試験研究費が4億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントにおいて増収となっています。特に交通システム機器は、自動券売機等の出改札機器の新規・更新案件を受注し、大きく売上を伸ばしました。メカトロ機器は国内向け紙幣処理装置関連が堅調に推移し、特機システム機器も防災計測システムの複数受注により売上が増加しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
交通システム機器 70億円 89億円
メカトロ機器 24億円 26億円
特機システム機器 37億円 39億円
連結(合計) 131億円 154億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


* 健全型:営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 3億円 9億円
投資CF -2億円 -5億円
財務CF 2億円 -6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「世の中に必要不可欠な製品及びサービスを提供する」ことを経営の基本方針としています。社会インフラの分野を中心に、同社独自のコア技術であるチケット(T)、紙幣(B)、コイン(C)、カード(C)処理技術を応用した製品及びサービスを提供し続けることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「世の中に必要不可欠な会社を創造する」を社訓に掲げています。技術の発展や利用者の環境変化による顧客ニーズの変化に対応し、多角的な視点を持って製品開発を行う姿勢を重視しています。また、全てのステークホルダーから安心して取引される環境構築を目指し、情報セキュリティ意識の向上にも取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


企業価値の向上を目指すにあたり、売上高、売上利益率、営業利益率、経常利益率を重要な経営指標と位置付け、その向上に取り組んでいます。また、自己資本比率の向上にも取り組むとしています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「安全」と「決済」をキーワードに掲げ、組織体制を見直しました。「安全系ビジネスユニット」内にホームドア事業部と特機事業部を、「決済系ビジネスユニット」内に交通事業部とパーキング事業部を配置し、各分野の強化を図っています。また、メカトロおよびEMS事業強化のため「メカトロ・EMビジネスユニット」も新設しました。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、採用活動に特化した専門部署である人材開発部を設置し、新卒および専門スキルを持つ中途採用を積極的に推進して優秀な人材の確保に努めています。人材育成においては、社訓や行動規範に基づき、主に現場でのOJTを通じて行っています。また、社員の資格取得促進やコミュニケーション活性化イベントの開催、育児休暇取得しやすい環境整備などに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.4歳 21.7年 6,198,000円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.7%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 78.0%
男女賃金差異(正規) 80.1%
男女賃金差異(非正規) 93.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経営成績の季節変動リスク


同社グループの主要取引先業界では、製品の納入・設置時期が下半期、特に年度末に集中する傾向があります。そのため、納入時期の遅れなどが発生すると、売上が翌期にずれ込み、当該年度の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。過去の実績でも下半期の売上構成比が高くなっています。

(2) 新製品開発・技術革新におけるリスク


同社は市場ニーズに合った新製品開発に取り組んでいますが、開発期間の長期化や代替技術・商品の出現などにより、最適な時期に製品を供給できない可能性があります。この場合、業績や成長見通しに影響が及ぶ可能性があります。

(3) 価格競争に関するリスク


同社が展開する分野では、顧客からの納入価格引き下げ要求が強く、価格競争が激化しています。想定以上の価格下落が長期化した場合には、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。