新コスモス電機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

新コスモス電機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、家庭用から工業用まで幅広いガス警報器・検知器の開発・製造・販売を主要事業としています。直近の業績は、海外市場での販売好調や国内市場の堅調な推移により、売上高は422億円で増収、経常利益は55億円で増益となりました。


※本記事は、新コスモス電機株式会社 の有価証券報告書(第66期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 新コスモス電機ってどんな会社?


同社は、独自のガスセンサ技術を核として、家庭用ガス警報器から工業用検知システムまでを手掛ける総合メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1960年6月に設立され、1964年に家庭用可燃性ガス警報器を発売しました。1969年には岩谷産業と販売権契約を締結し、事業基盤を強化しています。2004年12月にJASDAQ市場へ上場し、2022年4月の東京証券取引所の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しました。

現在の従業員数は連結で987名、単体で473名です。大株主構成を見ると、筆頭株主は同社製品の主要な販売先でもある岩谷産業、第2位は資産管理会社とみられる有限会社アール・ケイ、第3位は取引先持株会となっており、事業パートナーや関係者による保有比率が高いのが特徴です。

氏名 持株比率
岩谷産業 27.93%
有限会社アール・ケイ 4.63%
新コスモス電機取引先持株会 4.36%

(2) 経営陣


同社の役員は男性16名、女性1名の計17名で構成され、女性役員比率は5.9%です。代表取締役社長は髙橋良典氏です。社外取締役比率は約17.6%です。

氏名 役職 主な経歴
髙橋 良典 代表取締役社長 1977年同社入社。技術開発本部長、取締役副社長執行役員などを経て2017年4月より現職。
西上 佳典 取締役専務執行役員 1994年同社入社。品質管理本部リビング品質管理部長、技術開発本部長などを経て2024年6月より現職。
金井 隆生 取締役常務執行役員 1979年同社入社。インダストリ事業部長兼東日本支社長などを経て2020年7月より現職。
前川 正利 取締役上席執行役員 1986年同社入社。リビング営業本部長などを経て2023年6月より現職。
小栁章 取締役上席執行役員 1988年東京ガス入社。根岸LNG基地所長などを経て、2022年同社入社。2023年6月より現職。
佐久間 啓一 取締役上席執行役員 1993年同社入社。海外本部長兼海外事業部長などを経て2024年6月より現職。
山田 芳穂 取締役上席執行役員 1997年同社入社。経営企画室長、管理本部長などを経て2024年6月より現職。
中村 直人 取締役上席執行役員 1986年大阪ガス入社。エネルギー事業部部長などを経て、2023年同社顧問。2024年6月より現職。
松原 義幸 取締役 1982年同社入社。取締役副社長執行役員などを経て2025年6月より現職。
宇高 利浩 取締役 1984年フィガロ技研入社。同社代表取締役社長(現任)。2022年6月より現職。


社外取締役は、手島肇(元タクマ社長)、柳澤有廣(元KPMG FASマネージングディレクター)、篠原祥哲(篠原経営経済研究所代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ガス警報器事業」の単一セグメントですが、製品・市場特性により以下の区分で事業を展開しています。

家庭用ガス警報器関連


家庭におけるガス漏れや不完全燃焼、火災などを検知する警報器を提供しています。主な顧客は都市ガス事業者やLPガス事業者、住宅設備機器メーカーなどです。

収益は、ガス事業者等への製品販売から得ています。また、海外においては現地代理店を通じた販売も行っています。運営は主に新コスモス電機が行い、一部の製造はイスズ電機や海外子会社が担っています。

工業用定置式ガス検知警報器関連


工場やプラントなどで可燃性ガスや毒性ガスの漏洩を監視する定置式の検知警報システムを提供しています。主な顧客は半導体工場、製鉄所、石油化学プラントなどです。

収益は、製品の販売および設置後のメンテナンスサービスから得ています。運営は新コスモス電機が行い、メンテナンス業務は新コスモス電機サービスなどが担当しています。

業務用携帯型ガス検知器関連


作業員の安全確保などのために使用される携帯型のガス検知器を提供しています。主な顧客はガス事業者、電力会社、工事現場などです。

収益は、製品の販売および修理・校正などのサービスから得ています。運営は主に新コスモス電機が行っています。

その他


上記に含まれない製品群として、ニオイセンサや空気質測定器などを展開しています。また、ガスセンサ単体の外販も行っています。

収益は、製品やセンサデバイスの販売から得ています。センサの研究開発・製造・販売は、新コスモス電機および子会社のフィガロ技研が中心となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に右肩上がりの成長を続けています。特に直近では422億円に達し、過去最高水準となっています。利益面でも、経常利益は50億円前後で推移しており、売上高経常利益率は12%〜17%台と高い収益性を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 296億円 343億円 372億円 385億円 422億円
経常利益 37億円 60億円 63億円 48億円 55億円
利益率(%) 12.6% 17.6% 16.9% 12.5% 12.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 16億円 19億円 28億円 23億円 21億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は45%〜46%程度で安定しており、製造業として高い付加価値を維持していることがわかります。営業利益率も10%を超えており、本業の収益力は堅調です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 385億円 422億円
売上総利益 175億円 195億円
売上総利益率(%) 45.4% 46.4%
営業利益 41億円 52億円
営業利益率(%) 10.6% 12.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が44億円(構成比31%)、試験研究費が25億円(同17%)を占めています。研究開発への積極的な投資姿勢が見て取れます。

(3) セグメント収益


全てのセグメントで増収となっています。特に家庭用ガス警報器関連は、北米や中国での販売強化が寄与し、2桁の増収となりました。工業用定置式ガス検知警報器関連も、半導体業界向けの需要を取り込み堅調に推移しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
家庭用ガス警報器関連 193億円 217億円
工業用定置式ガス検知警報器関連 113億円 120億円
業務用携帯型ガス検知器関連 63億円 64億円
その他 17億円 20億円
連結(合計) 385億円 422億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業活動で得たキャッシュを、設備投資等の投資活動や借入金の返済等の財務活動に充当しており、健全型のキャッシュ・フロー状態と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 25億円 49億円
投資CF -23億円 -47億円
財務CF 43億円 -17億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.3%でスタンダード市場平均(7.2%)とほぼ同水準であり、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.8%で市場平均(製造業57.5%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「私たちは、センシング技術とサービスで、世界中の安全・安心・快適な環境創りに挑戦します」を使命として掲げています。防災・安全分野に加え、環境、ヘルスケア、省エネ関連などの分野へ活動領域を広げ、家庭用から工業用までをカバーするガス警報器・ガスセンサの総合メーカーとして事業の発展を目指しています。

(2) 企業文化


同社は経営理念に基づき、未知の可能性への挑戦、人的資源の成長、ステークホルダーの尊重とコミュニケーションの充実に取り組む文化を持っています。また、法令や社会規範を遵守するコンプライアンスの徹底を掲げ、高い評価と信頼につなげることを重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は『中期経営計画2025-2027』を策定し、持続可能な社会の実現と企業価値向上を目指しています。また、サステナビリティ目標として以下の具体的な数値目標を掲げています。

* 2037年までにScope1,2のCO2排出量をゼロ
* 2050年までにScope3を含むカーボンニュートラル達成

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「世界中からガス事故を無くす」という目標に向け、グローバル展開を推進しています。北米・中国での販売強化に加え、東南アジア等での拡販を進め、現地企業の深耕や代理店網の整備に取り組んでいます。また、MEMS技術を活用したガスセンサ開発や、AI・IoT等の先進技術導入による高付加価値製品の開発にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、性別・国籍・年齢等によらない積極的な採用活動を継続し、多様な人材が活躍できる土壌づくりを推進しています。中途採用を含め優秀な人材を管理職へ積極的に登用することを基本としており、特に女性管理職の登用については、現在の人員数より増員することを目標としています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.5歳 17.1年 726万円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.2%
男性育児休業取得率 38.8%
男女賃金差異(全労働者) 60.6%
男女賃金差異(正規雇用) 79.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 72.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 家庭用ガス警報器の需要変動リスク


主力商品である家庭用都市ガス警報器は、過去の有効期限延長により交換需要のない期間が発生するサイクルを抱えています。このサイクルにより需要が減少する時期や、同業他社との競争激化、主要販売先の保安政策変更などが、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 工業用製品の設備投資依存リスク


工業用定置式ガス検知警報器は、景気動向に伴う顧客企業の設備投資需要に左右されやすい特性があります。また、プラントや工場等でのリプレース頻度が低く、新規ユーザー獲得も容易ではないため、物件の計画変更や競争激化が業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 海外展開に伴う地政学的リスク


同社は北米、中国、台湾、韓国などを中心に海外事業を拡大しています。これらの地域における政治・経済・社会情勢の変化、法規制の動向、為替変動が事業活動を制約する可能性があります。特に地政学的リスクによる原材料不足や価格高騰は、生産体制や業績に影響を与える恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。