※本記事は、新コスモス電機株式会社の有価証券報告書(第67期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 新コスモス電機ってどんな会社?
同社グループは、独自のガスセンサ技術を中核に、安全・安心な環境を創り出すガス警報器を提供する企業です。
■(1) 会社概要
1960年に設立され、1964年に家庭用可燃性ガス警報器を発売しました。1992年にメンテナンス子会社を設立して事業領域を広げ、2004年にジャスダック市場に上場しています。2016年にはフィガロ技研を子会社化してセンサ技術を強化し、近年は北米やアジアへ展開を進め、2022年にスタンダード市場へ移行しました。
同社グループの従業員数は連結で1,038名、単体で498名です。筆頭株主は事業提携先で卸売業を展開する岩谷産業で、第2位は有限会社アール・ケイ、第3位は新コスモス電機取引先持株会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 岩谷産業 | 28.37% |
| 有限会社アール・ケイ | 4.70% |
| 新コスモス電機取引先持株会 | 4.13% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性18名、女性1名の計19名で構成され、女性役員比率は5.3%です。代表取締役社長は髙橋良典氏が務めています。社外取締役比率は21.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 髙橋良典 | 代表取締役社長 | 1977年同社入社。インダストリ事業部副事業部長、技術開発本部長などを経て、2014年取締役副社長執行役員に就任。2017年より現職。 |
| 西上佳典 | 取締役専務執行役員品質管理本部担当兼技術開発本部担当兼営業統括本部長 | 1994年同社入社。技術開発本部長、取締役常務執行役員などを歴任し、2024年より現職。 |
| 金井隆生 | 取締役常務執行役員メンテナンス担当 | 1979年同社入社。インダストリ事業部長兼東日本支社長などを経て、2020年より現職。 |
| 前川正利 | 取締役上席執行役員リビング営業本部担当兼生産本部長 | 1986年同社入社。リビング営業本部長などを歴任し、2023年より現職。 |
| 小栁章 | 取締役上席執行役員業務センター担当兼営業統括本部東日本支社長兼DX推進室長 | 東京ガスに入社し需要開拓部部長などを歴任。同社に出向して東日本支社長を務め、2023年より現職。 |
| 佐久間啓一 | 取締役上席執行役員営業統括本部海外本部長 | 1993年同社入社。海外営業本部海外第三営業部長、海外事業部長などを経て、2024年より現職。 |
| 山田芳穂 | 取締役上席執行役員内部統制担当兼管理本部長兼経営企画室長 | 1997年同社入社。広報室長、情報システム部長などを歴任し、2024年より現職。 |
| 中村直人 | 取締役上席執行役員インダストリ営業本部担当 | 大阪瓦斯に入社しカスタマーファシリティ部長などを歴任。同社インダストリ営業本部副本部長を経て、2024年より現職。 |
| 西功忠 | 取締役上席執行役員センサ本部長 | 1993年同社入社。品質管理本部長などを歴任し、2022年に執行役員センサ本部長に就任。2026年より現職。 |
| 松原義幸 | 取締役グローバル担当 | 1982年同社入社。研究開発本部商品開発第三部長、取締役副社長執行役員などを歴任し、2025年より現職。 |
| 宇高利浩 | 取締役 | フィガロ技研に入社し営業部門長などを経て、2020年に同社代表取締役社長に就任。2022年より現職。 |
社外取締役は、手島肇(元タクマ社長)、柳澤有廣(元KPMG FAS執行役員パートナー)、篠原祥哲(元あずさ監査法人副理事長)、近藤賢二(日本特許情報機構理事長)です。
2. 事業内容
同社グループは、ガス警報器事業の単一セグメントで事業を展開しており、主に以下の領域に分かれます。
■(1) 家庭用ガス警報器関連
家庭や住宅に設置される都市ガスやLPガス、一酸化炭素、火災などを検知する警報器を提供しています。一般の生活空間における安全を守る製品であり、国内市場のほか、北米向けには電池式メタン警報器などを広く普及させて事業を拡大しています。
製品の販売収益を主な収益源とし、ガス事業者等を通じて一般家庭へ提供されます。センサの研究開発から商品の製造・販売までを同社およびフィガロ技研を中心に行い、北米等の海外展開はNew Cosmos USA,Inc.などの子会社が担っています。
■(2) 工業用定置式ガス検知警報器・業務用携帯型ガス検知器関連
化学・電力・半導体工場などの産業インフラ向けに、定置式ガス検知警報器や業務用携帯型ガス検知器を提供しています。ガスや石油プラントでの可燃性・毒性ガスの検知による保安のほか、アルコール検知器などの関連製品も扱っています。
製品の販売による収益に加え、導入後の保守点検や工事などの役務提供によるメンテナンス収益も得ています。機器の製造や販売は同社およびイスズ電機等の子会社が行い、保守点検は主に新コスモス電機サービスなどの関係会社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一貫して増加傾向にあり、直近では501億円へと大幅な増収を達成しています。経常利益も一時的な踊り場を経て力強い成長を見せており、直近では79億円と過去最高の水準を記録するなど、成長軌道に乗っています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 343億円 | 372億円 | 385億円 | 422億円 | 501億円 |
| 経常利益 | 60億円 | 63億円 | 48億円 | 55億円 | 79億円 |
| 利益率(%) | 17.6% | 16.9% | 12.5% | 12.9% | 15.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 19億円 | 28億円 | 23億円 | 21億円 | 24億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期の売上高は422億円から501億円へと大きく拡大し、売上総利益も増加しています。営業利益率も12.2%から14.7%へと向上しており、高い収益性を維持しながら利益規模を拡大させていることがわかります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 422億円 | 501億円 |
| 売上総利益 | 195億円 | 228億円 |
| 売上総利益率(%) | 46.4% | 45.6% |
| 営業利益 | 52億円 | 74億円 |
| 営業利益率(%) | 12.2% | 14.7% |
販売費及び一般管理費のうち、その他が65億円(構成比42%)、給料及び手当が48億円(同31%)、試験研究費が27億円(同18%)を占めています。売上原価では材料費が111億円(構成比74%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の家庭用ガス警報器関連は、北米向けの電池式メタン警報器などが好調に推移し大幅な増収となりました。業務用携帯型ガス検知器関連も伸長していますが、工業用定置式ガス検知警報器関連は半導体業界向けが低調で微減となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 家庭用ガス警報器関連 | 217億円 | 296億円 |
| 工業用定置式ガス検知警報器関連 | 120億円 | 117億円 |
| 業務用携帯型ガス検知器関連 | 64億円 | 71億円 |
| その他 | 20億円 | 17億円 |
| 連結(合計) | 422億円 | 501億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 49億円 | 60億円 |
| 投資CF | -47億円 | -22億円 |
| 財務CF | -17億円 | -24億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「安全・安心・快適な環境創りに貢献する」を使命として掲げています。独自のガスセンサ技術とセンシング技術を通じて、世界中のガス事故をなくすという社会的意義を果たすとともに、カーボンニュートラル社会の実現に貢献し、持続可能な企業価値の向上を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、経営理念において「未知の可能性への挑戦」「人的資源の成長」「ステークホルダーの尊重とコミュニケーションの充実」を重視しています。多様な人材が活躍でき、多様なアイデアや経験を活かすことができる土壌づくりを進めており、コンプライアンスの徹底や社会規範の遵守により社会からの高い信頼を獲得する文化を育んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、2025年度から2027年度までの3年間を対象とする「中期経営計画2025-2027」を策定し、「MEMSガスセンサ技術を軸にグローバルに展開し、ガス事故ゼロとカーボンニュートラル社会の実現に貢献する」という定性目標を掲げて事業を推進しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
成長戦略として、エンジニアリングチェーン確立による技術強化、サプライチェーンの強化、DX推進や人的資本経営による組織体質強化などを基盤とし、北米を中心としたグローバル展開の推進や、次世代のMEMSガスセンサを搭載した新製品の開発、カーボンニュートラル市場における協業体制の構築に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、多様な人材の活躍と組織風土の醸成を通じた人的資本経営の強化を人材戦略の基本としています。性別や国籍、年齢等によらない積極的な採用活動を行い、優秀な人材の管理職への登用を進めています。また、職能資格等級制度やキャリアステージの自己選択制度を導入し、働きがいの向上と成長を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.8歳 | 15.4年 | 7,487,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.8% |
| 男性育児休業取得率 | 54.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 81.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 78.2% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 家庭用ガス警報器関連の事業環境
主力の家庭用都市ガス警報器は、過去に有効期限が延長された影響で交換需要のないサイクルが存在しており、損益が悪化する可能性があります。また、他社との価格・開発競争の激化や、主要販売先の保安政策の変更などが、同社グループの業績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 工業用定置式ガス検知警報器関連の事業環境
同製品は景気動向に伴う設備投資需要の変動を受けやすく、ガスや半導体工場などの既存ユーザーのリプレース頻度が低いため、新規顧客の獲得頻度が他業界より低くなる傾向があります。物件の計画変更や競合他社との激しい価格・開発競争の帰趨が業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 法規制と製品の品質問題
同社が取り扱う製品は、高圧ガス保安法や消防法など国内外の様々な法規制の適用を受けています。新たな法規制の導入や改廃が行われた場合の影響に加え、予期せぬ事情によるリコールや製造物責任等の品質問題が発生した場合、多額の費用負担や社会的信用の低下を招くリスクがあります。



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