リーダー電子 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

リーダー電子 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の電子計測器専門メーカーです。映像関連機器や電波関連機器等の開発・製造・販売を主力事業としています。当期の業績は、北米市場を中心とした放送関連機器の販売好調により増収となり、経常損益は前期の赤字から黒字へ転換を果たしました。


※本記事は、リーダー電子株式会社 の有価証券報告書(第70期、自 2023年4月1日 至 2024年3月31日、2024年6月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. リーダー電子ってどんな会社?


放送・映像通信分野に特化した電子計測器メーカーです。デジタル放送や4K・8K等の先端技術に対応した製品をグローバルに展開しています。

(1) 会社概要


1954年に大松電気として設立され、1966年にリーダー電子へ商号変更しました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2019年には英国のPhabrix Limitedを買収して子会社化するなどグローバル展開を進めています。2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東証スタンダード市場に上場しています。

同社グループの従業員数は連結で124名、単体で69名です。筆頭株主は金融・短資業を営む上田八木短資で、第2位は取引先持株会、第3位はネット証券大手のSBI証券となっています。

氏名 持株比率
上田八木短資 5.93%
リーダー電子取引先持株会 5.07%
SBI証券 3.99%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は長尾行造氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
長尾 行造 代表取締役社長 通商産業省(現経済産業省)入省を経て、コンサルティング会社パートナー等を歴任。2014年同社顧問となり、2017年より現職。
松林 弘光 取締役 1994年同社入社。香港や米国の現地法人社長、海外営業部長、企画室長などを経て、2023年より現職。
松尾 元喜 取締役 日商岩井、コナミ、サトー、日立造船、インテージホールディングスを経て、2022年同社入社。経営管理室長を務め、2024年より現職。
梶川 元靖 取締役(監査等委員) 1989年同社入社。海外営業部、米国現地法人社長、シェアードサービスカンパニー長などを歴任し、2024年より現職。


社外取締役は、黒田徹(元日本放送協会放送技術研究所所長)、小川克己(アクティベーションストラテジー代表取締役会長)、楠田喜彦(リジェネス取締役)、小野塚格(アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電子計測器」の単一セグメントですが、製品品目として「ビデオ関連機器」「電波関連機器」「その他」を展開しています。

ビデオ関連機器


映像信号に関連した業務用および民生用ビデオ機器向けの計測器を提供しています。主要製品には映像信号発生器、波形モニター、ベクトルスコープ、カメラテストシステムなどがあり、放送事業者や動画制作事業者などを主な顧客としています。

収益は、これらの電子計測器製品の販売代金から得ています。運営は主に同社および英国の連結子会社であるPhabrix Limitedなどが行っており、両ブランドの特性を活かしたグローバルな販売体制を構築しています。

電波関連機器


高周波信号発生器やテレビ電界強度計、デジタル放送関連機器などを提供しています。主要製品にはテレビ電界強度計、地上デジタル放送用変調器・受信器などがあり、放送局や関連機器メーカー等の需要に対応しています。

収益は、電波関連の計測機器および放送用変調器などの製品販売から得ています。運営は主に同社が行っており、デジタル放送市場や電波関連市場に特化した製品開発と販売を手掛けています。

その他


汎用計測器の販売や、同社製品の修理サービス、部品販売などを行っています。既存顧客に対するアフターサービスやメンテナンス需要に応える事業です。

収益は、修理サービス料や部品代金、汎用計測器の販売代金から得ています。運営は同社グループ全体で行っており、顧客満足度の向上と製品の長期利用を支援しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は33億円から45億円へと増加傾向にあります。利益面では、2023年3月期に赤字を計上しましたが、直近の2024年3月期には経常利益が黒字に回復しています。

項目 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期
売上高 40.3億円 33.1億円 37.9億円 40.6億円 45.4億円
経常利益 4.4億円 0.8億円 1.5億円 -2.1億円 3.0億円
利益率(%) 10.9% 2.5% 4.1% -5.3% 6.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 4.4億円 2.1億円 0.4億円 -6.4億円 -0.6億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。営業利益についても、前期の赤字から当期は黒字転換を果たしており、本業の収益性が改善していることが読み取れます。

項目 2023年3月期 2024年3月期
売上高 40.6億円 45.4億円
売上総利益 25.9億円 29.4億円
売上総利益率(%) 63.7% 64.7%
営業利益 -3.1億円 2.2億円
営業利益率(%) -7.7% 4.8%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が10.2億円(構成比37%)、給料が7.2億円(同26%)を占めています。売上原価においては、材料費や外注費などが含まれますが、研究開発型の企業として販管費の比重が高い構造です。

(3) セグメント収益


当期はビデオ関連機器が北米市場等での販売好調により大幅な増収となりました。一方、電波関連機器は大型受注の減少により減収となっています。

区分 売上(2023年3月期) 売上(2024年3月期)
ビデオ関連機器 32.6億円 41.2億円
電波関連機器 6.6億円 2.9億円
その他 1.4億円 1.3億円
連結(合計) 40.6億円 45.4億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2023年3月期 2024年3月期
営業CF -4.3億円 1.4億円
投資CF -1.0億円 -0.7億円
財務CF -0.8億円 -8.8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.7%で市場平均(スタンダード市場 7.2%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.1%で市場平均(同製造業 57.5%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「計測を通じ、豊かな社会づくりに貢献する」を経営理念として掲げています。エレクトロニクスの技術革新に挑戦し、独自の計測技術を確立して計測領域におけるリーディングカンパニーを目指すとともに、ハードウェアにこだわらないソリューションビジネスの展開を志向しています。

(2) 企業文化


同社グループは、地域や属性の違いを建設的に受容し、「日本」の枠に束縛されない企業行動を実践することを経営ビジョンとしています。多様な視点を取り入れ、ダイバーシティ&インクルージョンを浸透させることで、公正・公平かつ柔軟な発想で新しいことに取り組む文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は資本コストを意識した経営を課題とし、ROEの改善と資本コストの低減を通じて企業価値向上を目指しています。具体的な数値目標については現在策定中としていますが、ビデオ関連機器市場において、子会社とのシナジーを発揮し、世界シェア60%以上を獲得することを目標として掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「海外市場のシェアアップ」と「製品分野の多角化」を重点施策としています。海外では4K・8KやIP等の先端技術需要に対応し売上拡大を図ります。また、動画配信ビジネスの拡大を受け、ローコストでの高品質動画制作ソリューションの収益化や、自動運転支援ソリューション等の新規分野へも参入します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材確保と流出防止を最重要課題とし、国籍・性別等を問わない多様な人材を活用する方針です。社員の自発的なキャリアアップを支援する制度を整備するとともに、リモートワークやフレックスタイム導入などワークライフバランスを重視した環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2024年3月期 45.5歳 17.8年 6,582,667円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(71%)、女性管理職比率(5%)、男性育児休暇取得率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況と市場縮小リスク


同社は放送市場向け計測器を主力としていますが、動画配信へのシフトにより放送関連市場は漸減傾向にあります。これに対し、電波計測器やカメラテストシステムなど製品の幅を広げリスク分散を図るとともに、動画制作の自動化ソリューション等の新規事業を展開しています。

(2) ウクライナ・中東問題の影響


ロシア・ウクライナ間および中東における紛争の長期化により、世界経済の停滞や為替変動、部材確保や物流への支障が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。リスクに備え、技術研究費以外の販売管理費を圧縮し、利益確保に努めています。

(3) 生産体制(ファブレス)のリスク


同社は生産を外部委託するファブレス形態をとっています。製品固有のノウハウは自社管理しており代替生産は可能と考えていますが、委託先の経営悪化等により生産が困難となり、代替先の確保や移管に時間を要した場合、業績に影響が出る可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。