フェローテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フェローテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フェローテックは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、半導体やFPD製造装置に使用される真空シールなどの半導体等装置関連事業、電子デバイス事業、車載関連事業を展開しています。直近の業績では、旺盛な生成AI投資を背景とした部品需要の増加により増収及び営業増益を達成し、堅調に推移しています。


※本記事は、株式会社フェローテックの有価証券報告書(第46期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フェローテックってどんな会社?


半導体・FPD製造装置用部品や電子デバイスの開発・製造・販売を行うグローバル企業です。

(1) 会社概要


1980年に日本フェローフルイディクスとして設立され、コンピュータシールや真空シールの輸入販売を開始しました。1992年の中国での子会社設立を皮切りにグローバル生産体制を構築し、1995年にフェローテックへ商号変更しています。2004年にジャスダックに上場しました。その後、積極的なM&Aや新規事業立ち上げを進め、2025年7月に純粋持株会社から事業会社へ移行しています。

同社グループの従業員数は連結で16,858名、単体で519名です。筆頭株主はMSIP CLIENT SECURITIESで、第2位は資産管理業務等を行うUBS AG LONDON A/C IPB SEGREGATED CLIENT ACCOUNT、第3位はJPモルガン証券となっており、外資系金融機関等が多く名を連ねています。

氏名 持株比率
MSIP CLIENT SECURITIES 6.60%
UBS AG LONDON A/C IPB SEGREGATED CLIENT ACCOUNT 4.43%
JPモルガン証券 4.42%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長執行役員グループCEOは賀賢漢氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
賀賢漢 代表取締役社長執行役員グループCEO 1993年同社入社。中国子会社の董事長等を経て、2020年7月より現職。
山村丈 代表取締役副社長管理統括、欧米・アジア事業担当執行役員 1996年同社入社。電子デバイス事業部長等を経て、2011年4月より現職。
並木美代子 取締役事業管理・総務担当執行役員 1996年同社入社。経営管理部長等を経て、2025年4月より現職。
武田明 取締役財務経理・経営管理担当執行役員 三菱UFJ銀行を経て2019年同社入社。財務経理統括室長等を経て、2023年6月より現職。
佐藤昭広 取締役経営戦略・社長特命事項担当執行役員 金融機関等を経て2015年同社入社。社長室長等を経て、2023年6月より現職。
藤本健太郎 取締役人事・法務・情報システム担当執行役員 証券会社や法律事務所等を経て2020年同社入社。コーポレート統括室長等を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、磯巧(元カナミックネットワーク管理部部長)、勝田裕子(元日本アイ・ビー・エムチーフ・プライバシー・オフィサー)、永守知博(エルステッドインターナショナル代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「半導体等装置関連事業」「電子デバイス事業」「車載関連事業」および「その他」事業を展開しています。

半導体等装置関連事業


半導体やFPD製造装置等に使用される真空シール、石英製品、セラミックス製品、CVD-SiC製品、シリコンパーツ、石英坩堝の開発・製造・販売、および装置部品洗浄サービスを提供しています。主な顧客は国内外の半導体製造装置メーカーやデバイスメーカーです。

収益は、これらの部品の販売代金や洗浄サービスの提供対価として受け取ります。事業の運営は、同社および杭州大和熱磁電子有限公司、Ferrotec (USA) Corporation、Ferrotec Manufacturing Malaysia Sdn. Bhd.などの国内外のグループ子会社が主体となって行っています。

電子デバイス事業


温調機器等に使用されるサーモモジュール、パワー半導体用基板、磁性流体、センサの開発・製造・販売を行っています。主な顧客は、通信機器、医療・バイオ、家電などの幅広いエレクトロニクス産業のメーカーです。

収益は、顧客への製品販売による代金として得ています。運営は、同社および大泉製作所、上海申和投資有限公司、江蘇富楽華半導体科技股份有限公司などのグループ子会社が共同で行っています。

車載関連事業


電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車向けのパワー半導体用基板、温調シート等に用いられるサーモモジュール、各種温度検知を行うセンサの開発・製造・販売を行っています。自動車産業のメーカーが主な顧客です。

収益は、自動車部品メーカー等に対する製品販売の対価として受け取ります。事業の運営は、同社をはじめ、大泉製作所やFerrotec Power Semiconductor Malaysia Sdn.Bhd.などのグループ各社が担っています。

その他


報告セグメントに含まれない事業として、ソーブレード、工作機械、太陽電池用シリコン製品などの開発・製造・販売を行っています。各分野の製造メーカーが主な顧客です。

収益は、製品の販売代金として受け取ります。運営は、上海漢虹精密機械有限公司などのグループ子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が持続的な成長を遂げており、拡大基調にあります。経常利益と当期利益については、投資フェーズや市況の影響を受けつつも、高水準で安定して利益を創出しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,338億円 2,108億円 2,224億円 2,744億円 2,889億円
経常利益 260億円 424億円 265億円 256億円 261億円
利益率(%) 19.4% 20.1% 11.9% 9.3% 9.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 32億円 63億円 67億円 169億円 141億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益が順調に拡大しています。利益率も安定して推移しており、本業における着実な収益力を維持しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,744億円 2,889億円
売上総利益 734億円 813億円
売上総利益率(%) 26.7% 28.1%
営業利益 241億円 276億円
営業利益率(%) 8.8% 9.5%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が124億円(構成比23.1%)、給与手当が123億円(同22.9%)を占めています。

(3) セグメント収益


半導体等装置関連事業および電子デバイス事業が増収増益を牽引しました。半導体製造装置向けの需要回復や、生成AIサーバー向けのサーモモジュール販売の増加が大きく寄与しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
半導体等装置関連事業 1,652億円 1,851億円 123億円 160億円 8.7%
電子デバイス事業 505億円 576億円 83億円 105億円 18.2%
車載関連事業 305億円 292億円 36億円 27億円 9.2%
その他 282億円 170億円 8億円 -3億円 -1.8%
調整額 -億円 -億円 -9億円 -13億円 -%
連結(合計) 2,744億円 2,889億円 241億円 276億円 9.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 261億円 293億円
投資CF -396億円 -669億円
財務CF 190億円 388億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も37.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「顧客に満足を」「地球にやさしさを」「社会に夢と活力を」を企業理念に掲げています。エレクトロニクス産業に限らず、ものづくりにおける要素技術を拡充し、高品質の製品を国際競争力のある価格で世界に送り出すグローバル企業を目指し、社会貢献を果たしながら成長する楽しみが持てる企業となることを使命としています。

(2) 企業文化


同社グループは企業文化を企業の礎と捉え、「顧客を尊敬、従業員を尊敬し、勤勉と信用を尊重し、着実に行動し、革新を追求する」を活動指針として掲げています。環境保全活動とグループガバナンスを積極的に推進するとともに、マネジメントを現地化することで、迅速な意思決定と地域の特性にあわせたビジネスと組織運営を行う文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


3か年を対象期間とした「中期経営計画」をローリングプランとして策定し、事業成長の追求、生産効率・競争力の強化、人材強化・企業文化の醸成、財務強化を基本方針として掲げています。中長期の経営目標として以下の数値を設定しています。

* ROE:15%
* ROIC:8%
* 自己資本比率:40%

(4) 成長戦略と重点施策


半導体関連分野および電気自動車を中心とする自動車関連分野での事業成長を追求し、業界上位ポジションの拡大を目指しています。また、中国の量産拠点をさらに強化しつつ、顧客の地域戦略に合わせてマレーシアや日本での量産拠点を設置・稼働させることで、早期の収益貢献を図る方針です。あわせて、デジタル化や自動化等を通じた「ものづくり力」の強化を進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、人材重視を重要な経営戦略と位置付け、「高度専門人材の確保・育成」「グローバル人材の活用・拠点間マネジメント強化」「企業文化の浸透による人財基盤強化」を重点テーマとしています。人物本位の採用・登用、次世代人材の育成、成果とプロセスに基づく評価・処遇、および安全・健康で働きやすい職場環境の整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.4歳 10.4年 6,705,000円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.1%
男性育児休業取得率 70.0%
男女賃金差異(全労働者) 90.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 92.6%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 77.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用者の女性比率(14.8%)、新卒・中途採用者の3年後定着率(80.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) エレクトロニクス産業の設備投資サイクルへの依存


同社の半導体等装置関連事業の製品は、液晶製造装置や半導体製造装置用の部品として販売されるため、エレクトロニクス産業における設備投資動向の影響を強く受けます。半導体市場のシリコンサイクルによる需要変動や、各国の産業保護・振興政策の動向により、業績が変動するリスクがあります。

(2) 自動車産業の構造変革とEV市場動向の影響


電子デバイス事業や車載関連事業で取り扱うサーモモジュールやパワー半導体用基板は、自動車温調シートやEVに搭載されるため、新車販売台数やEV化の進展に影響を受けます。次世代の主流となるEV化への対応の遅れや、市場の成長鈍化が生じた場合、販売が減少し業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 中国をはじめとする海外生産拠点における地政学リスク


同社の製品の多くは中国子会社等で製造されています。中国における法令、税制、環境規制の変更や、米中摩擦に起因する関税引き上げ・貿易規制強化といった政治的・経済的リスクが存在します。これらが顕在化した場合や、取引先が中国外の生産品を選好する動きが強まった場合、事業活動に大きな影響を及ぼす恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。