フェローテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フェローテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スタンダード市場に上場する半導体等装置関連事業、電子デバイス事業、車載関連事業を展開する企業です。直近の業績は、売上高が前期比で増収となる一方、営業利益は減益となりました。半導体製造装置向け部品やマテリアル製品、サーモモジュールなどを主力とし、グローバルに事業を展開しています。


※本記事は、株式会社フェローテックホールディングスの有価証券報告書(第45期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フェローテックホールディングスってどんな会社?


半導体製造装置向け真空シールやマテリアル製品、電子デバイス等の開発・製造・販売を行うグローバル企業です。

(1) 会社概要


1980年に日本フェローフルイディクスとして設立し、真空シール等の販売を開始しました。1996年に株式を店頭登録し、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しました。2017年には持株会社体制へ移行し、現商号へ変更しました。2022年の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行し、近年ではマレーシアに製造子会社を設立するなど拠点を拡大しています。

同社グループは連結従業員数15,983名、単体88名の体制です。筆頭株主はGOLDMAN SACHS INTERNATIONALであり、第2位はSTATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505103です。海外の金融機関や信託銀行が上位株主に名を連ねています。

氏名 持株比率
GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL 4.95%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505103 2.66%
BNP PARIBAS SINGAPORE/2S/JASDEC/UOB KAY HIAN PRIVATE LIMITED 2.56%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長執行役員グループCEOは賀賢漢氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
賀  賢漢 代表取締役社長執行役員グループCEO 1993年同社入社。杭州大和熱磁電子有限公司董事長などを経て、2020年7月より現職。フェローテックマテリアルテクノロジーズ社長も兼務。
山村  丈 代表取締役副社長管理統括、欧米・アジア事業担当執行役員 1996年同社入社。電子デバイス事業部TE部長、フェローテックマテリアルテクノロジーズ社長などを経て、2023年10月より現職。
並木 美代子 取締役事業管理・総務担当執行役員 1996年同社入社。執行役員管理統括室長兼事業管理部長などを経て、2022年6月より現職。
大石 純一郎 取締役東洋刄物社長執行役員 1988年日本電気入社。日東紡績を経て2016年同社入社。製造本部長などを歴任し、2024年1月より現職。
武田 明 取締役財務経理・経営管理担当執行役員 1989年三菱UFJ銀行入行。2019年同社入社。執行役員財務経理統括室長兼財務部長を経て、2023年6月より現職。
佐藤 昭広 取締役経営戦略・社長特命事項担当執行役員 1992年東海銀行入行。証券会社等を経て2015年同社入社。執行役員経営企画室長などを経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、岡田達雄(日本運動療育協会代表理事)、坂本明彦(元OLED Material Solutions社長)、磯巧(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「半導体等装置関連事業」「電子デバイス事業」「車載関連事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 半導体等装置関連事業


真空シール、石英製品、セラミックス製品、CVD-SiC製品、シリコンパーツ、石英坩堝などの開発・製造・販売および装置部品洗浄サービスを行っています。主な顧客は半導体製造装置メーカーやデバイスメーカー、FPDメーカーです。

製品販売やサービス提供による対価を収益としています。運営は主にフェローテックマテリアルテクノロジーズ、杭州大和熱磁電子有限公司、浙江先導精密機械有限公司、Ferrotec (USA) Corporationなどが行っています。

(2) 電子デバイス事業


磁性流体、サーモモジュール、パワー半導体用基板、センサの開発・製造・販売を行っています。主な用途は家電製品、通信機器、産業機器、医療機器など多岐にわたります。

製品販売による対価を収益としています。運営は主にフェローテックマテリアルテクノロジーズ、Ferrotec (USA) Corporation、上海申和投資有限公司、江蘇富楽華半導体科技股份有限公司などが行っています。

(3) 車載関連事業


自動車向けのサーモモジュール、パワー半導体用基板、センサの開発・製造・販売を行っています。電気自動車(EV)やハイブリッド車などの普及に伴い需要が拡大している分野です。

製品販売による対価を収益としています。運営は主にフェローテックマテリアルテクノロジーズ、杭州大和熱磁電子有限公司、江蘇富楽華半導体科技股份有限公司、大泉製作所などが行っています。

(4) その他


ソーブレード、工作機械、太陽電池用シリコン製品などの開発・製造・販売を行っています。

製品販売による対価を収益としています。運営は主に上海申和投資有限公司、上海漢虹精密機械有限公司、安徽富楽徳長江半導体材料股份有限公司などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。利益面では、経常利益や当期利益が増減を繰り返しており、特に直近の利益率は低下傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 913億円 1,338億円 2,108億円 2,224億円 2,744億円
経常利益 82億円 260億円 424億円 265億円 256億円
利益率(%) 9.0% 19.4% 20.1% 11.9% 9.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 49億円 32億円 63億円 67億円 169億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上原価率の上昇等により売上総利益の伸びは売上高の伸びを下回っています。営業利益率は低下しており、収益性の改善が課題となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,224億円 2,744億円
売上総利益 699億円 734億円
売上総利益率(%) 31.4% 26.7%
営業利益 249億円 241億円
営業利益率(%) 11.2% 8.8%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が123億円(構成比25%)、給与手当が114億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益


半導体等装置関連事業が売上の過半を占め、全セグメントで売上高が増加しています。特に半導体等装置関連事業と車載関連事業の成長が顕著です。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
半導体等装置関連事業 1,301億円 1,652億円
電子デバイス事業 417億円 505億円
車載関連事業 259億円 305億円
その他事業 248億円 282億円
連結(合計) 2,224億円 2,744億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFで得た資金に加え、財務CFによる調達を行い、投資活動に資金を投じる「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 287億円 261億円
投資CF -924億円 -396億円
財務CF 604億円 190億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.1%で市場平均とほぼ同じ水準である一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.4%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「顧客に満足を」「地球にやさしさを」「社会に夢と活力を」を企業理念として掲げています。エレクトロニクス産業に限らず、ものづくりにおける要素技術を拡充し、高品質の製品を国際競争力のある価格で世界に送り出すグローバル企業を目指しています。また、ステークホルダーにとって「成長する楽しみが持てる企業」であり続けることに努めています。

(2) 企業文化


「品質理念」を掲げ、品質を第一に考えて顧客満足の向上を追求する文化があります。生産の自動化、デジタル化、標準化を進め、世界での市場シェアを高めることを重視しています。また、環境保全活動とグループガバナンスを積極的に推進し、安定的な収益体質の企業集団を形成することを基本方針としています。

(3) 経営計画・目標


3か年を対象期間とした「中期経営計画」をローリングプランとして毎年公表しています。事業成長の追求、生産効率・競争力の強化、人材強化・企業文化の醸成、財務強化を基本方針としています。

* 2026年3月期売上高:2,850億円
* 2026年3月期営業利益:280億円
* 2026年3月期親会社株主に帰属する当期純利益:160億円
* ROE:15%
* ROIC:8%
* 自己資本比率:40%

(4) 成長戦略と重点施策


「顧客に満足を」を念頭に、既存製品の拡充とともに新たな製品事業の育成を遂行する方針です。半導体関連および電気自動車を中心とする自動車関連の事業成長を追求し、業界上位ポジションの事業を拡大させます。また、中国の量産拠点強化に加え、マレーシア、日本での量産拠点の設置と立ち上げにより、早期の収益貢献を図ります。

* 半導体分野:マテリアル製品(石英・セラミックス等)の製造ライン増設、新素材開発、洗浄サービス拡充。
* 受託製造分野:真空技術と精密金属加工を組合せた受託製造の拡充。
* パワー半導体分野:絶縁放熱回路基板の増産、各種用途向け基板新製品等の製造拠点づくり。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


優秀な人材の採用・登用、次世代人材育成、評価・処遇、安心して働くことができる社内環境整備を戦略としています。年齢・性別・国籍などにとらわれず人物本位の採用を行い、大学等との連携やブランディング強化を進めます。また、成果とプロセスに焦点を当てた人事制度により社員の成長を後押しし、育児・介護休業制度の促進や柔軟な働き方の導入など、働きやすい環境づくりに取り組みます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 48.4歳 11.8年 8,466,000円


※平均年間給与は、税込支払給与額であり、基準外賃金及び賞与を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.1%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 83.7%
男女賃金差異(正規雇用) 83.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 90.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用者の女性比率(22.2%)、新卒・中途採用者の3年後定着率(77.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) エレクトロニクス産業の需給動向


主力製品である真空シールや石英製品等は、半導体やFPD製造装置用部品として使用されるため、エレクトロニクス産業の需給や設備投資動向の影響を受けます。シリコンサイクル等の景気循環や技術革新、各国の産業政策により需要が変動し、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 中国における事業展開


製品の大半を中国の子会社で製造しており、中国における法規制の変更、米中摩擦による関税引き上げや貿易規制強化等の政治的・経済的リスクが存在します。これらが顕在化した場合、財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 為替相場の変動


多通貨の外貨建て製品販売や原材料購入を行っているため、為替相場の変動が財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。特に対米ドルレートの変動による影響が予想されます。

(4) 自動車産業の影響


サーモモジュールやパワー半導体用基板等は自動車向けに販売されており、自動車の新車販売台数の影響を受けます。サプライチェーンの寸断やEV化への移行など、自動車産業の構造変革への対応が遅れた場合、販売が減少する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。