※本記事は、日本電子材料株式会社の有価証券報告書(第67期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本電子材料ってどんな会社?
日本電子材料は、半導体の製造工程に欠かせない検査用部品「プローブカード」の開発・製造を主力とする企業です。
■(1) 会社概要
同社は1960年に設立され、当初はブラウン管用部品などを製造していましたが、1970年に米国企業との技術提携を機にプローブカードの製造販売を開始しました。1987年には米国に子会社を設立して海外展開を本格化し、2008年にはMEMS技術を用いた次世代型プローブカードの開発に成功しています。
現在の従業員数は連結で1,234名、単体で842名体制となっています。筆頭株主および第2位の株主は資産管理業務を行う信託銀行であり、第3位には創業家関連とみられる個人の大久保和正氏が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 11.61% |
| 日本カストディ銀行 | 5.57% |
| 大久保和正 | 3.49% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は坂田輝久氏です。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 坂田輝久 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1986年同社入社。技術統括部長、製品技術統括部長などを歴任。2023年6月より社長に就任し、2024年6月より現職。 |
| 宮本佳幸 | 専務取締役専務執行役員MEMS統括部長MEMS統括担当 | 日立製作所やルネサステクノロジの工場長などを経て2020年同社入社。2025年6月より現職。 |
| 龍圭一 | 取締役上席執行役員製品技術統括部長製品技術統括担当 | 東芝(現キオクシア)を経て2021年同社入社。欧米等の海外子会社代表を兼務し、2025年6月より現職。 |
| 足立安孝 | 取締役監査等委員(常勤) | 1998年同社入社。管理部門統括部長やジェム上海社社長などを歴任し、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、宮島渉(法律事務所代表弁護士)、濱田幸和(税理士事務所所長)、千葉櫻えりか(元ダウケミカル日本知的財産部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「半導体検査用部品関連事業」および「電子管部品関連事業」を展開しています。
■半導体検査用部品関連事業
半導体の製造工程において、ウエハ上のICチップが正常に動作するかを検査するために使用される「プローブカード」を開発・製造しています。半導体回路の微細化や高速化に対応するアドバンストプローブカードなどが主力製品です。
主な顧客は国内外の大手半導体メーカーです。収益はこれらの顧客への製品販売から得ており、事業の運営は日本電子材料のほか、米国、台湾、中国、ヨーロッパなどに展開する海外子会社がグローバルに連携して行っています。
■電子管部品関連事業
ブラウン管や蛍光表示管などの電子管に用いられる、陰極(カソード)やフィラメントなどの各種部品を提供しています。
これら製品の販売によって収益を得ており、同事業の運営は日本電子材料が外注委託生産を活用する形で行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、半導体市場の市況変動の影響を受けて2024年3月期に一時的な減益となりましたが、その後はAIやデータセンター向けの半導体需要拡大を背景に急回復しています。2026年3月期には売上高・利益ともに過去最高水準を記録しました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 236億円 | 208億円 | 175億円 | 238億円 | 294億円 |
| 経常利益 | 51億円 | 33億円 | 10億円 | 46億円 | 72億円 |
| 利益率(%) | 21.6% | 16.1% | 5.8% | 19.5% | 24.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 38億円 | 26億円 | 6億円 | 35億円 | 55億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益率および営業利益率がともに大きく向上しています。需要拡大に対応した国内工場の高い稼働率が利益率の改善に大きく寄与し、収益基盤が一段と強固になっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 238億円 | 294億円 |
| 売上総利益 | 95億円 | 129億円 |
| 売上総利益率(%) | 39.7% | 43.9% |
| 営業利益 | 46億円 | 72億円 |
| 営業利益率(%) | 19.2% | 24.5% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が17億円(構成比30%)、給料及び手当が14億円(同24%)を占めています。また、売上原価は165億円で、売上高全体の約56%を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の半導体検査用部品関連事業では、国内外における先端半導体向けのメモリー用プローブカードの拡販が大きく進み、既存工場の生産能力向上も寄与して大幅な増収増益となりました。電子管部品関連事業は安定的に推移しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 半導体検査用部品関連事業 | 236億円 | 291億円 | 60億円 | 91億円 | 31.4% |
| 電子管部品関連事業 | 2.3億円 | 2.2億円 | 0.1億円 | 0.1億円 | 3.6% |
| 連結(合計) | 238億円 | 294億円 | 46億円 | 72億円 | 24.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 18億円 | 58億円 |
| 投資CF | -36億円 | -37億円 |
| 財務CF | -5億円 | 127億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も76.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「人類に幸福をもたらす技術の開発と製品化により社会に貢献する」という経営理念を掲げています。社会の発展に寄与する確かな技術と製品を提供し続けることで、企業価値の向上と社会貢献の両立を目指しています。
■(2) 企業文化
経営理念を具体化するため、「透明性のある企業活動」「新たな価値の提供」「グローバルな事業展開」「利害関係者の尊重」「地球環境の保護」という5つの経営方針を定めています。多様なステークホルダーを尊重しつつ、常に新たな価値創造に挑戦する文化を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
半導体市場の拡大を見据え、「市場以上の成長」を目指す2024年度〜2026年度の中期経営計画を推進しています。安定的な収益力を示す指標として、以下の目標を掲げています。
* 連結経常利益率 10%以上
* 株主資本利益率(ROE) 10%以上
* 2026年度目標:連結売上高 330億円
* 2026年度目標:連結経常利益 73億円
■(4) 成長戦略と重点施策
需要拡大が見込まれるMEMS技術を用いたMタイププローブカードの生産体制強化や、次世代半導体向け製品の開発を加速させます。また、アジアを中心とした海外販売の強化、DXや人的資本への投資に加え、2028年の竣工を目指す新工場(兵庫県尼崎市)の建設など、積極的な先行投資を行っていきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「個々の強みを活かし、互いを尊重しながらグローバルな視点で成長を描く人材」を求める人材像としています。職種や役割に応じた多様なキャリアパスを実現する新人事制度を導入し、成果の正当な評価、安定的な報酬体系による安心な就労環境の整備、次世代人材の育成を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.7歳 | 12.6年 | 6,417,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 66.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 81.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 68.2% |
※女性管理職比率については、有報に実績値の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有休取得率(79.8%)、採用した労働者に占める女性労働者の割合(19.8%)、国内労働者の女性割合(19.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 半導体市場の市況変動
同社の売上の大半を占めるプローブカードは、半導体の回路ごとに設計・製造される消耗品です。そのため、世界的な景気後退や米国の通商政策などの影響により、半導体市場全体の需要や市況が変動した場合、同社の経営成績に直接的な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 次世代製品・技術の開発遅延
半導体回路のさらなる微細化や高速化に対応するため、MEMS技術を用いたプローブの性能向上や次世代半導体向け製品の開発を積極的に推進しています。しかし、新製品や技術の開発に予期せぬ遅れが生じた場合、製品競争力が低下し、業績に悪影響を与えるリスクがあります。
■(3) 特定の大手半導体メーカーへの売上依存
半導体メーカーの再編や寡占化が進む中、同社の売上高においても特定の大手顧客が占める比率が高まっています。これら特定顧客における設備投資の動向や生産計画の急な変更があった場合、同社の財政状態や業績に大きな影響を与える可能性があります。



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