日本電子材料 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本電子材料 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場。主要事業は半導体検査用部品(プローブカード)の開発・製造・販売です。直近の業績は、生成AIやHBM等の先端半導体向け需要の拡大により、売上高238億円(前期比36.5%増)、経常利益46億円(同360.8%増)と大幅な増収増益を達成しています。


※本記事は、日本電子材料株式会社 の有価証券報告書(第66期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本電子材料ってどんな会社?


半導体製造プロセスに不可欠な検査用部品「プローブカード」の大手メーカーで、グローバルに事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1960年に設立され電子管部品の製造を開始、1970年に現在の主力であるプローブカードの製造販売を開始しました。1998年の店頭登録を経て、2004年にジャスダック、2005年に東証二部、2006年に東証一部へ上場。2008年にはMEMS技術を用いたプローブカードを開発しました。2024年には熊本事業所に第4工場を増設しています。

連結従業員数は1,154名、単体では749名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位はMSIP CLIENT SECURITIES、第3位は会長の大久保和正氏です。また、三菱UFJ銀行やSBI証券などの金融機関も大株主に名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社 13.65%
MSIP CLIENT SECURITIES 4.30%
大久保和正 4.04%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長 社長執行役員は坂田輝久氏です。社外取締役比率は約43%です。

氏名 役職 主な経歴
坂田輝久 代表取締役社長社長執行役員 1986年同社入社。製品技術統括部長、営業統括部長、ジェム台湾社代表取締役会長、MEMS統括部長、品質統括担当などを歴任し、2024年6月より現職。
大久保和正 取締役会長 1985年同社入社。ジェムアメリカ社・欧州・台湾等の代表取締役会長、同社代表取締役副社長などを経て、2017年代表取締役社長、2023年代表取締役会長、2024年6月より現職。
宮本佳幸 常務取締役常務執行役員MEMS統括部長MEMS統括担当 日立製作所、ルネサステクノロジ、ルネサスエレクトロニクス等の工場長を経て、ルネサスセミコンダクタマニュファクチュアリング社長を歴任。2020年同社入社、2023年6月より現職。
足立安孝 取締役監査等委員(常勤) 1998年同社入社。管理部門副統括部長、ジェム上海社社長、専務取締役専務執行役員(管理部門統括・コンプライアンス担当)などを経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、宮島渉(弁護士・法律事務所代表)、濱田幸和(税理士・事務所所長)、千葉櫻えりか(元ダウケミカル日本知的財産部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「半導体検査用部品関連事業」および「電子管部品関連事業」を展開しています。

(1) 半導体検査用部品関連事業


半導体の製造工程において、ウエハ上のICチップの電気的特性を検査するために使用される「プローブカード」を提供しています。主力製品には、カンチレバー型や垂直型(Vタイプ)、MEMS技術を用いたMタイプなどがあり、半導体メーカー等が主な顧客です。

収益は、顧客である半導体メーカー等への製品販売から得ています。運営は、日本電子材料をはじめ、ジェムアメリカ社、ジェム香港社、ジェム台湾社、ジェムヨーロッパ社、ジェム上海社、ジェムタイ社、ジェム深セン社といった国内外のグループ会社が担っています。

(2) 電子管部品関連事業


主に陰極やフィラメントといった電子管用部品を提供しています。これらは特定の電子機器などに使用される部品であり、関連するメーカー等が顧客となります。

収益は、製品の販売代金として顧客から得ています。この事業の運営は、主に日本電子材料が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は半導体市場の変動を受けつつも、直近では大きく回復し成長軌道にあります。利益面でも、一時的な落ち込みから回復し、高い利益率水準に戻っています。特に直近では先端半導体向けの需要増が寄与し、親会社株主に帰属する当期純利益も大幅に増加しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 185億円 236億円 208億円 175億円 238億円
経常利益 26億円 51億円 33億円 10億円 46億円
利益率(%) 13.9% 21.6% 16.1% 5.8% 19.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 22億円 32億円 20億円 6億円 35億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、各段階利益が顕著に改善しています。売上総利益率は大きく向上し、営業利益率も高い水準を記録しました。コストコントロールと高付加価値製品の販売増が利益拡大に寄与していることが伺えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 175億円 238億円
売上総利益 52億円 95億円
売上総利益率(%) 30.0% 39.7%
営業利益 9億円 46億円
営業利益率(%) 5.0% 19.2%


販売費及び一般管理費のうち、その他が20億円(構成比41%)、研究開発費が15億円(同32%)を占めています。

(3) セグメント収益


半導体検査用部品関連事業が全社売上の大半を占めており、同事業の好調が全社業績を牽引しました。一方、電子管部品関連事業は売上規模が小さく、横ばいで推移しています。調整額は全社費用等によるものです。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
半導体検査用部品関連事業 172億円 236億円 20億円 60億円 25.6%
電子管部品関連事業 2億円 2億円 0.1億円 0.1億円 4.4%
調整額 - - -11億円 -15億円 -
連結(合計) 175億円 238億円 9億円 46億円 19.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の儲けを示す営業CFはプラス、将来への投資を示す投資CFはマイナス、借入返済等を示す財務CFはマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 23億円 18億円
投資CF -22億円 -36億円
財務CF 9億円 -5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人類に幸福をもたらす技術の開発と製品化により社会に貢献する」という経営理念を掲げています。この理念のもと、企業価値の向上と社会への貢献に取り組むことを基本方針としています。

(2) 企業文化


経営理念を具現化するため、5つの経営方針を定めています。「透明性のある企業活動」「新たな価値の提供」「グローバルな事業展開」「利害関係者の尊重」「地球環境の保護」を重視し、これらを実践することで持続可能な社会の実現と企業価値の向上に努める文化があります。

(3) 経営計画・目標


2024年度から2026年度までの中期経営計画を策定し、拡大する半導体市場以上の成長を目指しています。安定的な収益力の指標として連結経常利益率10%以上、ROE10%以上を目標として掲げています。

* 連結経常利益率:10%以上
* 株主資本利益率(ROE):10%以上
* 2026年度連結売上高:300億円
* 2026年度連結経常利益:50億円

(4) 成長戦略と重点施策


中長期的な成長に向けて、Mタイププローブカードの性能向上や納期短縮による競争力強化、および次世代半導体向け製品の開発加速を進めます。また、海外拠点のネットワークを活かした販売活動の充実や、技術革新による付加価値向上を図り、生産キャパシティの強化やDX投資、人的投資も積極的に推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様な人材が活躍できる組織づくりを目指し、性別や国籍等を問わない採用と育成を推進しています。社員一人ひとりの能力発揮のため、教育研修の充実や人事制度の見直しを行い、人的資本への投資を積極的に実施しています。また、ワークライフバランスに配慮した就業環境の提供にも努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.2歳 11.8年 5,973,000円


※平均年間給与は、基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 108.3%
男女賃金差異(全労働者) 76.1%
男女賃金差異(正規雇用) 79.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 64.0%


※女性管理職比率については、HTML原文に数値の記載がないため「-」としています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性比率(20.3%)、有休取得率(85.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 半導体市場の動向に関するリスク


同社グループの主力製品であるプローブカードは、半導体の生産量や設備投資動向に大きく影響を受けます。世界的な景気後退や米国の通商政策、金融資本市場の変動などが半導体市場に悪影響を及ぼした場合、業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

(2) 新製品の開発等に関するリスク


半導体の微細化や高速化に対応するため、MEMS技術を用いたプローブや基板、組立技術などの開発を推進しています。しかし、技術革新のスピードが速い業界において、新製品や技術開発に遅れが生じた場合、競争力を失い業績に影響を与える可能性があります。

(3) 特定顧客への販売に関するリスク


半導体業界の再編・寡占化に伴い、同社の売上高における特定顧客への依存度が高まっています。これら特定顧客の設備投資動向や生産計画の変更、あるいはシェア変動などが生じた場合、同社グループの経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(4) 製品価格の変動に関するリスク


半導体メーカーからのコスト削減要請は強く、プローブカードに対しても継続的な価格引き下げ圧力が存在します。技術革新や原価低減活動で対抗していますが、価格競争がさらに激化し販売価格が下落した場合、収益性に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。