AKIBAホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

AKIBAホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

AKIBAホールディングスは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、メモリやPC関連デバイスの製造販売、通信建設テック事業、HPC事業を展開しています。生成AI向けの需要拡大やPC市場の底堅い需要を取り込み、当期は大幅な増収増益を達成しました。積極的なM&Aや新規領域への展開で継続的な成長を目指す企業です。


※本記事は、株式会社AKIBAホールディングスの有価証券報告書(第44期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. AKIBAホールディングスってどんな会社?


同社グループは、メモリ・PC関連デバイス事業、通信インフラ工事、HPC分野など多彩なIT関連事業を展開しています。

(1) 会社概要


1983年にアドテックとして設立され、1993年よりPC用増設メモリモジュールの製造販売を開始しました。2004年にジャスダックに上場し、2015年に純粋持株会社へ移行して現在の社名に変更しました。同年にバディネット、2017年にHPCテックなどを買収し、現在の3つの報告セグメント体制を構築しています。

従業員数は連結で279名、単体で25名です。筆頭株主は創業者の髙島勇二氏で、第2位は役員の堀礼一郎氏、第3位はクベーラ・ホールディングスとなっています。

氏名 持株比率
髙島 勇二 26.13%
堀 礼一郎 3.79%
クベーラ・ホールディングス 2.92%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は白鳥俊昭氏が務めており、社外取締役の比率は41.7%となっています。

氏名 役職 主な経歴
白鳥 俊昭 代表取締役社長経営戦略本部長 2008年MCJ入社。経営企画室長等を経て、2022年クロス・マーケティンググループ入社。2024年同社取締役経営戦略本部長に就任し、2026年より現職。
堀 礼一郎 取締役会長 2012年バディネットを設立し代表取締役に就任。2016年同社取締役に就き、2022年代表取締役副社長、2023年代表取締役社長を経て、2026年より現職。
五十嵐 英 取締役CFO管理本部長 エルメスジャポンなどを経て、2008年MCJ入社。人事部長などを歴任。2012年に同社取締役に就任し、2013年より現職。
冨山 理布 取締役管理本部副本部長 武富士やギガプライズなどを経て、2017年に同社入社しグループ監査室長に就任。2018年に取締役管理本部副本部長となり、グループ各社の役員も兼務。


社外取締役は、丸山一郎(弁護士)、黒部得善(社会保険労務士)、後藤田翔(税理士)、中川英之(公認会計士)、浦勝則(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「メモリ・PC関連デバイス・IoT事業」「通信建設テック事業」「HPC事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) メモリ・PC関連デバイス・IoT事業


産業用・工業用および一般向けのPC・サーバ用メモリ製品の製造販売や、PC周辺機器・パーツの国内外からの調達・卸売を行っています。また、IoTデバイスの設計開発などのIoTソリューションや、電子回路の開発・設計・製造も手掛けています。

顧客へ製品を出荷し、対価を得る物品販売が主な収益源です。当期は生成AI向けの需要拡大やPC市場の底堅い需要を取り込み、単価上昇の恩恵を受けました。事業の運営はアドテックが行っています。

(2) 通信建設テック事業


通信キャリアの携帯基地局関連工事を中心とした通信建設事業や、再生可能エネルギー関連工事、通信土木工事業を展開しています。あわせて、全国3拠点からなるコンタクトセンター事業やBPO事業、通信コンサルティング事業なども手掛けています。

インフラ工事の完了やサービス提供に対して顧客から対価を受け取ります。また、工期の長い取引は進捗度に応じて収益を計上します。運営は主にバディネットやブランチテクノが行っています。

(3) HPC事業


科学技術計算やAI開発などに用いられるHPC(High Performance Computing)分野向けのコンピュータを製造・販売しています。大学や官公庁の研究機関、民間企業などが主な顧客となります。

製品の納品時に支配が顧客に移転したとして収益を計上します。GPU市場の急拡大を背景に、大型案件を多数獲得して売上を伸ばしています。運営はHPCテックが行っています。

(4) その他の事業


報告セグメントに含まれない事業として、ペット同伴宿泊施設「鬼怒川 絆」の運営を行う旅館事業や、収益物件の売買・仲介などを行う不動産事業を展開しています。

宿泊客からの利用料や不動産取引による対価が主な収益源です。運営はダイヤモンドペッツ&リゾートなどが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の売上高は安定して推移していましたが、当期は生成AI向け投資の加速やPC需要の拡大を受けて飛躍的に増加しました。経常利益も部材調達コストの上昇を価格転嫁などで吸収し、過去最高水準となる大幅な増益を達成しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 162億円 150億円 158億円 183億円 268億円
経常利益 7.1億円 10.3億円 8.4億円 6.6億円 13.7億円
利益率(%) 4.4% 6.9% 5.3% 3.6% 5.1%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.9億円 0.6億円 0.9億円 1.1億円 8.8億円

(2) 損益計算書


当期は売上高が前期比46.6%増と大きく伸長しました。売上総利益率は低下したものの、増収効果により売上総利益の絶対額は増加しています。販管費の増加を吸収し、営業利益も大幅に改善しました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 183億円 268億円
売上総利益 39億円 47億円
売上総利益率(%) 21.2% 17.5%
営業利益 7.2億円 12.9億円
営業利益率(%) 3.9% 4.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が12.5億円(構成比37%)、賞与引当金繰入額が2.9億円(同8%)を占めています。売上原価は商品や製品の仕入が大半を占め、当期は需要増加に伴う商材確保が進みました。

(3) セグメント収益


主力のメモリ・PC関連デバイス・IoT事業が、生成AI向けの需要拡大による価格高騰や大口案件の獲得で売上高を大きく牽引し、黒字転換しました。通信建設テック事業やHPC事業も増収増益となり、全セグメントで好調な推移を見せています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
メモリ・PC関連デバイス・IoT事業 74.5億円 136.4億円 0.0億円 3.2億円 2.4%
通信建設テック事業 70.4億円 77.9億円 3.3億円 4.0億円 5.1%
HPC事業 35.1億円 40.9億円 3.1億円 4.1億円 10.1%
その他 2.8億円 12.7億円 0.1億円 1.4億円 11.2%
調整額 -億円 -億円 0.7億円 0.2億円 -%
連結(合計) 182.7億円 267.8億円 7.2億円 12.9億円 4.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期は営業CFがマイナス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、借入等によって資金調達を行い、将来の成長に向けた投資を継続している状況です。
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・製品等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -3.7億円 -0.3億円
投資CF -1.1億円 -0.5億円
財務CF 17.0億円 6.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は22.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は24.9%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「持続可能な未来社会をITで実現する」ことをミッションとして掲げています。IoT化が進むIT社会において時代の変遷に対応し、市場や顧客のニーズに応えながら新しい事業領域への進出も視野に入れ、グループ内のシナジーを追求して企業価値を向上させ、社会の発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


事業を通じた社会貢献と法令の遵守にとどまらず、企業倫理に則った公正かつ適切な事業運営を通じて、地球環境や人類の持続可能な発展に寄与するという価値観を重視しています。ESGを考慮した経営活動を推進し、多様な人材が能力を発揮できる環境整備にも取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


より高い成長性を確保する観点から「売上高」「営業利益」「経常利益」を重要な指標として位置づけ、営業基盤の拡大による継続的な企業価値の拡大を目指しています。手元資金を活用したM&A等の投資にも積極的に取り組み、事業規模のさらなる拡大を図ります。

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業においては、成長分野であるIoT、HPC、通信建設テック事業等にリソースを集中して収益力を向上させます。また、有望な新規事業分野への進出やM&Aなどを通じて新たな収益の柱を構築します。一方で、部材価格の高騰や為替変動リスクなどに対応するため、営業と購買の連携を強化して機動的に対応していく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


様々な人材が多様な働き方で能力を発揮できるよう、勤務環境の整備に努める方針を掲げています。社員がワークライフバランスを実現しやすいように、テレワークや時短勤務ができる環境を整備するほか、女性管理職の比率を向上させるための取り組みも進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.0歳 3.8年 6,238,222円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 19.3%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規) -
男女賃金差異(非正規) -


※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には一部の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 為替変動による影響


メモリ製品等の取り扱いにおいて、一部を海外から調達しているため、為替相場の変動が仕入価格などに影響を及ぼします。為替予約などでリスク軽減を図っていますが、急激な為替変動は同社グループの業績に影響を与える可能性があります。

(2) 原材料の市況変動の影響


主力製品である半導体メモリの価格は需給等により循環的に変動します。また、世界的な半導体不足などで部材調達が困難になる場合があり、こうした市況価格の変動や長納期化が事業の収益性に影響を及ぼす恐れがあります。

(3) 通信業界の動向


通信キャリアや関連企業を主な顧客とする通信建設テック事業では、通信業界の市場環境の変化や、5G・電波対策工事といった設備投資の増減、さらには関連する法的規制の動向が、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。