※本記事は、株式会社テセック の有価証券報告書(第58期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. テセックってどんな会社?
テセックは、半導体製造工程に欠かせないテスタとハンドラを主力とする半導体検査装置の専業メーカーです。
■(1) 会社概要
1969年に半導体検査装置の研究開発を目的として設立され、1980年にテセックへ商号変更しました。2000年の株式店頭登録を経て、現在は東証スタンダード市場に上場しています。2008年には横河電機から事業を譲り受け、直近の2025年には嶺光音電機を子会社化し事業基盤の拡充を図っています。
同社グループの従業員数は連結で211名、単体で172名となっています。大株主の状況を見ると、筆頭株主は個人の田中綏子氏であり、第2位には生命保険事業を展開する日本生命保険相互会社、第3位には投資事業などを行うMM Investmentsが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 田中 綏子 | 7.01% |
| 日本生命保険相互会社 | 3.47% |
| MM Investments | 3.38% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は田中賢治氏が務めています。社外取締役は2名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 田中 賢治 | 代表取締役社長 | 1986年同社入社。ハンドラビジネスユニット部長等を経て2016年4月代表取締役社長に就任。2025年6月代表取締役社長技術部門担当より現職。 |
| 宮脇 浩幸 | 取締役 | 1987年同社入社。製造部長などを経て2018年6月取締役に就任。嶺光音電機取締役も兼務し、2020年4月取締役製造部門担当より現職。 |
| 渡邊 弘一 | 取締役 | 1996年同社入社。営業統括部長等を経て2021年6月取締役に就任。嶺光音電機取締役も兼務し、2025年6月取締役営業部門担当より現職。 |
| 戸田 雄介 | 取締役 | 1995年同社入社。経理部長を経て、2024年6月取締役管理・品質保証部門担当より現職。中国子会社董事長、嶺光音電機監査役も兼務。 |
| 尾亦 利夫 | 取締役(監査等委員) | 1985年同社入社。品質保証部長等を経て2014年6月取締役に就任。管理部門等を担当後、2024年6月取締役監査等委員より現職。 |
社外取締役は、南忠良(元新日本証券常務取締役)、舛川博昭(舛川公認会計士事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「半導体検査装置」の単一セグメントで事業を展開しています。
■半導体検査装置事業
同社グループは、半導体の電気的な特性や性能を評価する「テスタ」と、デバイスの搬送から測定データに基づく自動分類・収納を行う「ハンドラ」を主力とする半導体検査装置の開発、製造、販売を手がけています。さらに、装置の保守や部品交換に用いられるパーツ類の提供も行い、世界中の半導体メーカーを顧客としています。
収益は、顧客である半導体メーカー等への検査装置の本体販売や、稼働後の改造用チェンジキットなどのパーツ販売、保守サービスを通じた対価から構成されています。事業の運営はテセックが主体となって製品の開発・製造を行い、米国、マレーシア、中国の海外子会社が現地での販売およびアフターサービスを担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、前半は半導体需要の拡大を背景に増収および高い利益水準を維持していました。しかし、直近の2期間では電気自動車(EV)向け需要の減速による影響などで受注が低迷し、大幅な減収減益となっています。それでも利益率は二桁を確保しており、中長期的には次世代半導体向け投資による市場回復が期待されます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 75億円 | 87億円 | 86億円 | 59億円 | 56億円 |
| 経常利益 | 21億円 | 25億円 | 21億円 | 7億円 | 6億円 |
| 利益率(%) | 27.5% | 28.7% | 24.8% | 11.4% | 10.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 16億円 | 21億円 | 14億円 | 6億円 | 6億円 |
■(2) 損益計算書
需要低迷に伴う売上の減少により、売上総利益および営業利益ともに減少傾向にあります。部材価格高騰の影響は正常化しつつありますが、操業度の低下や固定費負担が重荷となり、利益率全体を押し下げる要因となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 59億円 | 56億円 |
| 売上総利益 | 23億円 | 22億円 |
| 売上総利益率(%) | 38.3% | 38.9% |
| 営業利益 | 4億円 | 3億円 |
| 営業利益率(%) | 7.4% | 5.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び賞与が5億円(構成比25%)、研究開発費が4億円(同19%)を占めています。売上原価の主な内訳としては、経費が12億円(構成比36%)、材料費が11億円(同32%)、労務費が10億円(同32%)となっています。
■(3) セグメント収益
製品別の売上動向を見ると、主力の一つであるハンドラ分野は、AI需要の拡大によるデータセンター関連投資の恩恵を受け、売上が大きく回復しています。一方でテスタ分野は、EV市場の成長鈍化に伴う調整局面が続き、中国や国内市場を中心に需要が低迷したことで大幅な減収となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ハンドラ | 17億円 | 25億円 |
| テスタ | 30億円 | 20億円 |
| パーツ等 | 12億円 | 10億円 |
| 連結(合計) | 59億円 | 56億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 18億円 | 15億円 |
| 投資CF | -9億円 | -14億円 |
| 財務CF | -5億円 | -11億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は89.3%で市場平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「テセックは優れた半導体検査装置を世界中に供給することで社会へ貢献します」をはじめとする3つの経営理念を掲げています。単なる製造業にとどまらず、ソリューションを提供する「創造業」のトップランナーを目指すとともに、豊かな発想と強い意志を持つ社員を大切にしながら、持続的な企業価値の向上と社会への貢献を追求しています。
■(2) 企業文化
同社の企業文化は、「Enjoy」という独自の社是に象徴されています。仕事はもちろんのこと、遊び、生活、人生など「物事すべて楽しみましょう」というポジティブな価値観を大切にしています。また行動規範として、顧客第一の誠実な対応や常に新しいことへ挑戦する姿勢、自らの職務に対する誇りと自信を持つことを求め、信頼と尊敬を集める人材の育成を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、シクリカルな市場環境下でも中長期的な成長を目指すべく、中期経営計画「Enjoy2.1」を策定し、持続的な企業価値の向上に取り組んでいます。経営の客観的な指標として売上高、営業利益、資本効率の観点からROEを重視しており、最終年度となる2028年度には以下の数値目標の達成を目指しています。
* 売上高:90億円
* 営業利益:19億円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は今後の成長戦略として、生産工程の標準化やデジタル化を通じた事業基盤の強化を進めています。テスタ分野ではバリュー志向型ビジネスへの転換とパートナー企業との連携による技術・コスト優位の確立を図り、海外市場への展開を加速させます。ハンドラ分野では、既存顧客との取引維持に加え、次世代ハンドラの市場投入による競争力強化やテスタ事業とのシナジー創出に注力する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、高度な専門技術を持つ人材の確保と育成を持続的成長の要と位置付けています。役割やキャリアステージに応じた実践的なOJT教育を通じた多能工化の推進や、外国人材の採用拡大、女性のキャリア形成支援に注力しています。また、柔軟な働き方の導入や株式報酬制度を通じた非金銭的報酬の充実を図り、働きがいのある環境づくりと従業員エンゲージメントの向上に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.1歳 | 18.0年 | 6,581,617円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.6% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※男女賃金差異については、同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率の2028年3月期目標(5%)、女性管理職候補者比率(18%)、女性管理職候補者比率の2028年3月期目標(20%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 半導体市場の変動と設備投資動向
同社グループが製造・販売する半導体検査装置の需要は、半導体市況の変動や半導体メーカーの設備投資動向に大きく影響を受けます。市場環境の変化に対応するためのコスト構造の改善を進めていますが、半導体市場は予測不能な要素が多く、市場変動の増大が同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定の世界的半導体メーカーへの取引依存
同社グループは、世界的な大手半導体メーカーを主要な顧客として事業を展開しています。特定の顧客との結びつきが強い反面、顧客側の事業戦略の変更や設備投資の縮小などにより、主要顧客との取引規模が大きく変動した場合には、同社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 海外売上高比率の高さに伴う為替・地政学リスク
同社グループの売上高に占める海外比率は7割を超えており、海外販売が収益の柱となっています。そのため、為替相場の変動によって製品の価格競争力が低下するリスクや、国際的な政治・経済の不安定化、経済制裁等により輸出取引に支障が生じるリスクが存在します。また、海外における知的財産権の保護が不十分な場合の影響も懸念されます。
■(4) 新興国企業等との激しい技術・価格競争
半導体検査装置業界は、国際的な大企業から専門特化した小規模企業まで多様な競合が存在します。特にコスト構造に優位性を持つ中国などの新興国企業の台頭により、競争環境は常に変化しています。顧客からの厳しい値下げ要求や開発スピードの競争に後れを取った場合、製品価格の引き下げを余儀なくされ、収益性が低下する恐れがあります。



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