名古屋電機工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

名古屋電機工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

名古屋電機工業は東証スタンダード・名証メイン市場に上場する、道路情報システムの大手メーカーです。ITS(高度道路交通システム)関連の情報装置製造・販売を主力事業としています。直近の業績は、売上高173億円と前期比で微減となったものの、営業利益は28億円で増益を確保しました。


※本記事は、名古屋電機工業株式会社 の有価証券報告書(第68期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 名古屋電機工業ってどんな会社?


道路情報板システムなどのITS(高度道路交通システム)関連製品を主力とする情報装置メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1958年に名古屋電機商事として設立され、翌1959年に現社名へ変更し制御機器製造を開始しました。1966年には日本初の遠隔操作による電光情報盤を開発し、現在の主力事業の基礎を築いています。2000年に名証二部に上場し、2018年にはインフォメックス松本を完全子会社化しました。2024年3月には東証スタンダード市場への上場を果たしています。

現在の従業員数は連結425名、単体399名です。株主構成については、筆頭株主は有限会社名電興産で、第2位は名古屋電機工業社員持株会です。第3位には個人株主が名を連ねており、創業家や従業員が主要な持分を有していることが特徴です。

氏名 持株比率
有限会社名電興産 9.20%
名古屋電機工業社員持株会 7.11%
服部哲二 6.90%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役執行役員社長は服部高明氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
服部 高明 代表取締役執行役員社長 2000年同社入社。ITS情報装置カンパニー長などを経て、2017年より現職。
本多 正俊 取締役常務執行役員経営戦略本部長兼経営戦略室長 1993年同社入社。情報装置事業本部営業本部長などを経て、2025年6月より現職。
川浦 久幸 取締役常務執行役員社会インフラ事業本部長兼開発推進室長 1986年同社入社。ITS情報装置事業本部長などを経て、2025年6月より現職。
河本 芳一 取締役執行役員社会インフラ事業本部生産業務革新担当サステナビリティ推進担当 1986年同社入社。生産本部長などを経て、2025年6月より現職。
鬼頭 達史 取締役執行役員経営管理本部長 1986年同社入社。営業本部副本部長、人事部長などを経て、2025年6月より現職。
三山 明秀 取締役執行役員社会インフラ事業本部営業本部長 1996年同社入社。インフォメックス松本社長などを経て、2025年6月より現職。
石川 敏光 取締役(常勤監査等委員) 1989年同社入社。経理部長、経営管理本部総務法務部長などを経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、竹林一(元オムロンソフトウェア社長)、佐藤友子(佐藤会計事務所所長)、髙木道久(栄パーク総合法律事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報装置事業」および「その他」事業を展開しています。

情報装置事業


ITS(高度道路交通システム)の開発分野に関わる道路交通関連システム製品を提供しています。主な製品には、LED式道路情報システム、トンネル防災システム、移動情報車・車載標識、散光式警光灯、気象・防災監視システムなどがあり、道路管理者向けの情報収集・処理・提供システムが大半を占めます。

収益は主に、国土交通省、高速道路会社、地方公共団体などの道路管理者から、製品の製造・販売、据付工事、保守管理、レンタルなどの対価として受け取ります。運営は主に名古屋電機工業が行っており、子会社のインフォメックス松本がGPSソーラー式信号機やLED標示機等の製造・販売および保守を担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は2021年3月期の216億円をピークに、その後は170億円台から180億円台で推移しています。2025年3月期の売上高は173億円でした。利益面では、経常利益が20億円台で安定的に推移しており、2025年3月期は28億円となりました。当期利益も15億円から32億円の範囲で黒字を維持しており、利益率は13%から20%台と高い水準を保っています。

項目 2025年3月期 2024年3月期 2023年3月期 2022年3月期 2021年3月期
売上高 173億円 176億円 180億円 174億円 216億円
経常利益 28億円 24億円 24億円 27億円 45億円
利益率(%) 16.1% 13.4% 13.5% 15.4% 20.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 22億円 16億円 15億円 20億円 32億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少しましたが、売上総利益は54億円から59億円へと増加し、売上総利益率は30.6%から34.2%へ改善しました。営業利益も23億円から28億円へ増加し、営業利益率は13.3%から15.9%へ上昇しています。減収ながらも採算性の向上が見られ、収益力が高まっていることがわかります。

項目 2025年3月期 2024年3月期
売上高 173億円 176億円
売上総利益 59億円 54億円
売上総利益率(%) 34.2% 30.6%
営業利益 28億円 23億円
営業利益率(%) 15.9% 13.3%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が10億円(構成比30%)、給料及び賞与が9億円(同28%)を占めています。売上原価については、材料費や労務費、外注加工費などが含まれます。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、主力である情報装置事業の売上高は、工事保安機材の買換え需要減少などの影響を受け、前期比で微減となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
情報装置事業 176億円 173億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

名古屋電機工業は、事業運営に必要な資金の流動性と源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

営業活動によるキャッシュ・フローは、売上減少があったものの、収益性の高い案件の推移やコストダウンにより、親会社株主に帰属する当期純利益が増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、生産設備更新や情報処理のための無形固定資産投資等に充てられました。財務活動によるキャッシュ・フローは、主に内部資金を活用して事業活動の維持拡大に必要な資金を調達しています。

項目 2025年3月期 2024年3月期
営業CF 4.3億円 14.1億円
投資CF -5.6億円 -2.1億円
財務CF -4.1億円 -4.1億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「安全・快適で豊かな社会の実現のために、つねにNEW WAYを探求し、新たな価値を提供します。」という理念を掲げています。社員の雇用とその家族の生活の安定と向上、新たな需要の創出、社会への還元のために、正々堂々と事業を行い、適正な利益を追求することを目指しています。

(2) 企業文化


情報板メーカーから道路交通安全を守る総合設備企業への変容を目指し、ソリューション創出型企業への進化を志向しています。社会課題の解決に貢献するため、他社との連携やオープンイノベーションを活性化させる風土があります。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、持続的な成長を目指し、以下の経営指標を設定して取り組んでいます。

* 売上高:220億円
* 営業利益率:10%以上
* 新システム販売比率:10%以上
* ROE:10%以上
* 配当性向:30%以上
* PBR:1倍以上

(4) 成長戦略と重点施策


「ソリューション創出型企業」への進化を目指し、以下の3つのソリューション分野の具現化に注力しています。また、自動運転社会に対応したソリューションを探求するため、他社との連携やオープンイノベーションを推進しています。

* 省力化・安全化ソリューション:インフラ大規模修繕の現場ニーズに対応した新システムの開発
* 防災・減災ソリューション:IoTセンサーなどを活用し、必要な情報をタイムリーに提供するシステムの開発
* DX・GXソリューション:機器の再利用や環境負荷低減など、持続可能なインフラ整備を推進

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、情報板メーカーから総合設備企業への変容を目指し、女性活躍と多様な働き方の包摂を重要テーマとしています。キャリア形成や就業環境の改善、働き方改革、健康経営の実践に注力し、イノベーションを生み出す土壌づくりとして、従業員が自由なアイデアを出しやすい場を提供することに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.3歳 16.9年 6,397,636円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.5%
男性育児休業取得率 90.0%
男女賃金差異(全労働者) 63.7%
男女賃金差異(正規) 64.3%
男女賃金差異(非正規) 65.2%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得日数(率)(71.9%)、リモートワーク利用率(52.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 入札制度への依存


主力である情報装置事業のエンドユーザーは道路管理者(国土交通省、高速道路会社等)が中心であり、公共事業への依存度が高くなっています。販売は入札による落札が前提となるため、入札手続きの不備等で指名停止等の処分を受けた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 受注競争の激化


情報装置事業のパイオニアとして独自技術を有していますが、類似製品の競合による競争激化や入札制度の予期せぬ変更により入札価格が著しく下落した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 売上時期の偏り


情報装置事業は官需が中心のため、工事物件の完工が予算執行期間の年度後半に集中する傾向があります。そのため、売上高は下半期、特に第4四半期に集中する傾向があり、季節的な変動要因となっています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。