※本記事は、名古屋電機工業株式会社の有価証券報告書(第69期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 名古屋電機工業ってどんな会社?
LED式情報システムなど、道路交通安全を守る社会インフラ事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1958年に名古屋電機商事として設立され、1959年に制御機器の製造を開始し現在の名古屋電機工業へと改称しました。1966年には日本初の遠隔操作による電光情報盤を開発して情報装置事業の基盤を築きました。その後、2000年に名古屋証券取引所市場第二部に上場し、2024年に東京証券取引所スタンダード市場への上場を果たしています。
現在の従業員数は連結で409名、単体で385名です。筆頭株主は有限会社名電興産で、第2位は服部哲二氏、第3位は名古屋電機工業社員持株会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社名電興産 | 8.87% |
| 服部哲二 | 6.65% |
| 名古屋電機工業社員持株会 | 6.11% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役執行役員社長は服部高明氏です。社外取締役比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 服部高明 | 代表取締役執行役員社長 | 2000年4月同社入社。ITS情報装置カンパニー長などを歴任。2017年4月代表取締役社長。2025年6月より現職。 |
| 本多正俊 | 取締役常務執行役員経営戦略本部長 | 1993年5月同社入社。情報装置事業本部営業本部長などを経て、2025年4月経営戦略本部長。2026年4月より現職。 |
| 川浦久幸 | 取締役常務執行役員社会インフラ事業本部長兼社会インフラ事業本部技術本部長 | 1986年4月同社入社。設計部長などを経て、2021年7月ITS情報装置事業本部長。2026年4月より現職。 |
| 河本芳一 | 取締役執行役員社会インフラ事業本部生産業務革新担当サステナビリティ推進担当 | 1986年4月同社入社。技術本部長、生産本部長などを経て、2024年4月サステナビリティ推進担当。2025年6月より現職。 |
| 鬼頭達史 | 取締役執行役員経営管理本部長 | 1986年4月同社入社。人事部長などを経て、2023年4月経営管理本部長。2025年6月より現職。 |
| 三山明秀 | 取締役執行役員社会インフラ事業本部営業本部長 | 1996年4月同社入社。インフォメックス松本代表取締役社長などを経て、2024年4月ITS情報装置事業本部営業本部長。2025年6月より現職。 |
| 石川敏光 | 取締役(常勤監査等委員) | 1989年4月同社入社。経理部長、経営管理本部総務法務部長などを経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、竹林一(元オムロンソフトウェア社長)、佐藤友子(佐藤会計事務所代表)、髙木道久(栄パーク総合法律事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「社会インフラ事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■社会インフラ事業
ITS(高度道路交通システム)の開発分野に関わる、道路交通に関連した「情報収集」から「情報処理」および「情報提供」までを行うシステム製品を大半としています。LED式情報システムやトンネル防災システム、気象・防災監視システムなどを提供し、主に国土交通省や高速道路会社などの官公庁・道路管理者を顧客としています。
収益モデルは、これらシステム製品の販売や据付工事、保守管理によるものです。事業の運営は主に名古屋電機工業が行っており、子会社のインフォメックス松本がGPSソーラー式信号機やLED標示機等の製造・販売および保守管理を担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は170億円台から180億円台で安定して推移しています。経常利益率も10%から16%台をキープしており、社会インフラの維持更新需要などを背景に堅調な収益性を維持していることが伺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 174億円 | 180億円 | 176億円 | 173億円 | 173億円 |
| 経常利益 | 27億円 | 24億円 | 24億円 | 28億円 | 18億円 |
| 利益率(%) | 15.4% | 13.5% | 13.4% | 16.1% | 10.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 20億円 | 16億円 | 17億円 | 22億円 | 15億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は横ばいで推移していますが、売上総利益率および営業利益率が低下しています。これは工期延期の影響による原価見積もりの上昇や、物価高騰による資材コストの上昇が利益を圧迫したことによるものです。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 173億円 | 173億円 |
| 売上総利益 | 59億円 | 50億円 |
| 売上総利益率(%) | 34.2% | 28.8% |
| 営業利益 | 28億円 | 17億円 |
| 営業利益率(%) | 15.9% | 10.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が10億円(構成比30%)、研究開発費が8億円(同25%)を占めています。また、当期製造費用の内訳としては、材料費が42億円(構成比36%)、外注加工費が36億円(同30%)、労務費が27億円(同23%)となっています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントであるため、社会インフラ事業の業績がそのまま連結業績に反映されます。当期は新システムの提案による新規受注の獲得を継続し、売上は前期と同水準を確保しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 社会インフラ事業 | 173億円 | 173億円 |
| 連結(合計) | 173億円 | 173億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の営業活動で安定したキャッシュを生み出しており、その資金を設備投資や還元・借入返済に充てている健全型の状態です。手元資金も増加し、余裕のある資金繰りとなっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4億円 | 39億円 |
| 投資CF | -6億円 | -3億円 |
| 財務CF | -4億円 | -5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は82.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「安全・快適で豊かな社会の実現のために、つねにNEW WAYを探求し、新たな価値を提供します。社員の雇用とその家族の生活の安定と向上、新たな需要の創出、社会への還元のために、正々堂々と事業を行い、適正な利益を追求します」という理念を掲げています。
■(2) 企業文化
「安全、安心、快適さに貢献する信頼の社会システムの提供」や「長期的な視野での企業価値向上を図る企業文化」を重視しています。また、組織の硬直化を防ぐ企業文化の醸成や、若手が力を発揮しイノベーションを生み出す土壌づくりに取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は、持続的な成長を目指し、業容を拡大するための経営目標として以下の数値を設定し、収益管理とコストダウンの徹底を図っています。
* 売上高220億円
* 営業利益率10%以上
* 新システム販売比率10%以上
* ROE10%以上
* 配当性向30%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「情報板メーカーから道路交通安全を守る総合設備企業へ」と変容し、ソリューション創出型企業への進化を目指しています。具体的には、インフラ大規模修繕ニーズに応える「省力化・安全化」、自然災害に対応する「防災・減災」、持続可能なインフラ整備の「DX・GX」、そして「新たなモビリティの対応」の4つのソリューション分野を探求し、他社との連携を深めて新たな需要を創出する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「情報板メーカーから道路交通安全を守る総合設備企業へ」の変容を支えるため、多様な専門性を有する人材が価値創造の源泉であると位置づけています。成長領域への対応に必要な専門人材の確保・育成、IT投資や業務改善による生産性向上、女性活躍と多様な働き方の包摂などの職場環境整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.1歳 | 16.7年 | 6,568,569円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.9% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 63.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 64.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(78.0%)、リモートワーク利用率(40.1%)、人間ドック受診率(48.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 公共事業の入札制度への対応
同社グループの事業は官公庁が事業主となる公共事業への依存度が高く、販売は入札に応募し落札することが前提条件となっています。入札手続きにおける書類の不備など何らかの不手際があった場合は、営業停止や指名停止の処分が科せられることがあり、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 類似製品の競合による価格下落
同社グループは社会インフラ事業のパイオニアとして独自技術を確保・維持し、特許等も保有していますが、今後、類似製品の競合による競争の激化や入札制度に予期せぬ変更が生じ、入札価格が著しく下落した場合には、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 官公庁の道路整備計画への高い依存度
エンドユーザーの大半が国土交通省や各高速道路会社などの道路管理者であるため、政府の道路整備方針の転換や整備期間の延期、財政政策など、コントロール出来ない外部環境の変化が業績に影響を与える可能性があります。新規市場の開拓等で依存度低減に取り組んでいますが、想定通り進まない場合は影響が生じます。



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