アクセル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アクセル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場のファブレス半導体メーカーです。パチンコ・パチスロ機向けグラフィックスLSIの開発販売を主力とし、AIやブロックチェーン等の新規事業も展開しています。直近決算では、主力市場における販売数量の減少等が響き、売上高は152億円(前期比13.2%減)、経常利益は15億円(同37.0%減)と減収減益となりました。


※本記事は、株式会社アクセルの有価証券報告書(第30期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アクセルってどんな会社?


パチンコ・パチスロ機向けグラフィックスLSIの開発販売を主力とするファブレス半導体メーカーです。AIやブロックチェーンなどの先端技術を活用した新規事業も展開しています。

(1) 会社概要


1996年2月、高機能LSI製品の開発、販売を目的として設立され、同年4月にパチンコ・パチスロ機向けグラフィックスLSIを開発しました。2002年に株式を店頭登録し、2008年には東京証券取引所市場第二部へ上場しました。2019年5月には、AIやブロックチェーン等の新規事業を行う子会社axを設立しています。

連結従業員数は132名、単体従業員数は103名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は同社製品の販売代理店である事業会社です。第3位は個人株主となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 11.08%
緑屋電気 8.83%
市原 澄彦 4.52%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は斉藤昭宏氏です。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
松浦 一教 取締役会長(代表取締役) 新日本製鐵(現日本製鉄)を経て1998年入社。技術グループGM等を歴任し、2012年社長就任。2022年より現職。
斉藤 昭宏 取締役社長(代表取締役) 新日本製鐵(現日本製鉄)を経て2002年入社。営業グループGM、副社長等を経て2022年より現職。
客野 一樹 常務取締役CTO技術グループアルゴリズムチーム管掌 2006年入社。工学博士。新規事業推進担当等を経て2025年より現職。ax代表取締役社長を兼務。
岸本 貴臣 取締役営業グループゼネラルマネージャー メガチップス等を経て2006年入社。営業グループGM、執行役員等を経て2022年より現職。
菊地 篤志 取締役技術グループゼネラルマネージャー 2002年入社。LSIチームリーダー、執行役員等を経て2022年より現職。


社外取締役は、五十島滋夫(五十島公認会計士・税理士事務所代表)、三村勝也(三村勝也公認会計士税理士事務所所長)、鈴木眞巨(シブヤテレビジョン代表取締役社長)、西坂禎一郎(元ルネサスエレクトロニクス事業部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「LSI開発販売関連」および「新規事業関連」の2つの報告セグメントを展開しています。

(1) LSI開発販売関連


パチンコ・パチスロ機に向けた製品開発を行っています。具体的には、グラフィックスLSIやメモリモジュールを中心とした製品の開発および販売を手掛けています。

収益は主に、パチンコ・パチスロ機メーカー等の顧客に対する製品の販売代金から得ています。運営は主にアクセルおよびaimRageが行っています。

(2) 新規事業関連


組み込み機器向けのグラフィックスLSIに加え、AIやブロックチェーン等の先進技術を活用した製品開発やソリューションの提供を行っています。具体的には、ミドルウェア製品、AIフレームワーク、ブロックチェーン開発支援サービス等を展開しています。

収益は、製品の販売代金、ライセンス使用許諾料、開発支援サービス料などから得ています。運営は主にアクセルおよびaxが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は150億円から170億円規模で推移してきましたが、直近の2025年3月期は減収となりました。経常利益率は10%前後を維持していますが、直近では売上の減少に伴い利益額も縮小し、利益率は10.1%まで低下しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 90億円 107億円 145億円 176億円 152億円
経常利益 7億円 10億円 18億円 24億円 15億円
利益率(%) 7.8% 9.4% 12.5% 13.9% 10.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 9億円 12億円 16億円 8億円

(2) 損益計算書


前期から当期にかけて、売上高の減少に伴い売上総利益が縮小しました。売上総利益率は31.9%から28.8%へと低下しています。これに伴い営業利益も減少し、営業利益率は13.8%から9.6%へと低下しました。全体として収益性が低下傾向にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 176億円 152億円
売上総利益 56億円 44億円
売上総利益率(%) 31.9% 28.8%
営業利益 24億円 15億円
営業利益率(%) 13.8% 9.6%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が15億円(構成比53%)、給料手当及び賞与が5億円(同17%)を占めています。売上原価は売上高に対して71%を占めています。

(3) セグメント収益


主力のLSI開発販売関連事業では、パチンコ・パチスロ機向けグラフィックスLSIの販売個数減少などにより減収減益となりました。新規事業関連は、AI領域での売上を中心に展開しましたが、全体として減収となり、赤字幅が拡大しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
LSI開発販売関連 169億円 148億円 37億円 26億円 17.6%
新規事業関連 6億円 4億円 -4億円 -5億円 -
その他・調整額 - - -9億円 -7億円 -
連結(合計) 176億円 152億円 24億円 15億円 9.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 7億円 -16億円
投資CF -8億円 -8億円
財務CF -8億円 -9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は85.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「洗練された製品・サービスの創造を通じ、世の中の革新に貢献しよう」というMissionと、「先端テクノロジー企業として、グローバルに活躍することを目指そう」というVisionを企業理念として掲げています。法令遵守はもとより、社会的存在であることを常に意識した活動を推進しています。

(2) 企業文化


同社はValuesとして、「顧客の満足を第一としよう」「プロフェッショナルとして挑戦することを楽しもう」「多様性を尊重し、仲間と、より大きな事を為そう」「スピードを上げよう」を掲げています。これらの価値観を共有し、社会的倫理観をもって事業活動を行うことで、企業価値の向上と持続可能な成長を目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、企業価値向上を意識した経営を推進しており、中長期的に資本コストを上回る収益性を確保することを重視しています。具体的には、以下の数値目標を経営上の重要な指標として位置付けています。

* ROE(自己資本利益率)10%の達成

(4) 成長戦略と重点施策


主力市場であるパチンコ・パチスロ機市場での安定収益確保と、AIやブロックチェーン等の先進技術を活用した新規事業の早期確立を重点施策としています。LSI製品の多様化や開発支援環境の整備を進めるとともに、新規事業領域では戦略的な提携やM&Aも視野に入れ、事業規模の拡大を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材」をかけがえのない経営資源と位置付け、従業員エンゲージメントの向上を重要課題としています。多様性を尊重し、従業員がやりがいや成長実感を得られる環境整備に努めています。チーム内コミュニケーションの質や思考力の向上につながる教育研修を実施するほか、在宅勤務制度などの働き方に関する制度整備も推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 47.7歳 12.4年 10,257,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は女性の職業生活における活躍の推進に関する法律および育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) パチンコ・パチスロ機市場への依存


同社グループの売上高の約95%がパチンコ・パチスロ機市場向け製品で占められています。同市場の規模が縮小した場合や、法的規制・自主規制により遊技機の販売動向に大きな影響が出た場合、同社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定製品への依存


グラフィックスLSI及びメモリモジュール製品の売上高が連結売上高の約82%を占めています。競合他社が同社製品を凌ぐ製品で参入した場合や価格競争が激化した場合には、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(3) 製品リユースの影響


パチンコ・パチスロ機の構成部材のリユース(再利用)が進展しており、市場需要に影響を与えています。次世代製品への移行が進まずリユース比率が大幅に高まった場合、同社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(4) 製造委託リスク


ファブレスメーカーとして製品製造を外部企業に委託しています。製造委託先において生産枠が確保できない場合や、製造委託契約が終了した場合、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、長期調達契約における合意数量と実際の需要が乖離した場合もリスクとなります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。