**株式会社アクセル転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態**
※本記事は、アクセルの有価証券報告書(第31期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アクセルってどんな会社?
パチンコ・パチスロ機向けLSI開発を主力とし、長年培った技術を活かしたAI事業にも注力しています。
■(1) 会社概要
1996年に高機能LSI製品の開発販売を目的に設立され、パチンコ・パチスロ機市場向けグラフィックスLSIの開発を開始しました。2008年に東京証券取引所市場第二部に上場し、2010年に同第一部へ指定されました。2015年にミドルウェア製品の販売を開始したほか、2019年にはAI事業を担うアイリアを設立し、継続して事業領域を拡大しています。
現在の従業員数は連結で132名、単体で104名です。筆頭株主は同社製品の販売代理店である緑屋電気で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は個人株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 緑屋電気 | 8.99% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.72% |
| 市原澄彦 | 4.60% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役会長兼社長は松浦一教氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松浦一教 | 代表取締役会長兼社長 | 1994年新日本製鐵(現日本製鉄)に入社し、1998年同社に入社。技術グループのマネージャー等を経て、2012年代表取締役社長に就任。2022年より会長を務め、2026年2月より現職。 |
| 客野一樹 | 常務取締役CTO | 2006年同社入社。筑波大学大学院博士課程修了後、技術グループのマネージャー等を経て2018年取締役に就任。子会社の取締役などを歴任し、2024年4月より現職。 |
| 岸本貴臣 | 常務取締役 | 高千穂交易等を経て2006年同社入社。営業グループのマネージャー等を経て2018年に執行役員に就任。2020年にaimRageの代表取締役社長に就任し、2025年6月より現職。 |
| 菊地篤志 | 取締役 | 2002年同社入社。技術グループのマネージャーや執行役員等を歴任し、2019年に執行役員技術グループゼネラルマネージャーに就任。2022年6月より現職。 |
社外取締役は、五十島滋夫(元クラスター会計社長)、三村勝也(三村勝也公認会計士税理士事務所代表)、鈴木眞巨(シブヤテレビジョン社長)、西坂禎一郎(元ルネサスエレクトロニクス事業部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「LSI事業」および「AI事業」を展開しています。
■LSI事業
パチンコ・パチスロ機向けのグラフィックスLSIやメモリモジュールを中心とした製品の開発・販売を行っています。圧倒的な市場シェアと継続的な開発力を活かし、遊技機メーカー向けに高機能・多機能な製品を提供しています。
製品の販売による収益を主な収入源としています。開発と営業戦略に特化したファブレスモデルを採用しており、製造は外部の半導体メーカー等に委託しています。事業の運営は同社および子会社のaimRageが行っています。
■AI事業
自社開発したAIフレームワーク「アイリアSDK」を中核としたAI製品の開発およびソリューションの提供を行っています。また、医療機器や産業用機器などの組み込み機器向けLSI、ゲーム開発向けミドルウェア、ブロックチェーン・セキュリティ製品の開発も展開しています。
製品の販売、ライセンス使用許諾料(ロイヤリティ収入)、および受注制作によるソフトウェア開発料などを主な収益源としています。同社および子会社のアイリアが事業を運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、パチンコ・パチスロ機の市場動向に影響を受けつつ推移しています。数年前まで売上・利益ともに拡大基調にありましたが、直近は部品のリユース進展などの影響で売上が減少傾向にあります。一方で、高付加価値製品への移行が進み、利益率は改善して増益を確保しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 107億円 | 145億円 | 176億円 | 152億円 | 147億円 |
| 経常利益 | 10億円 | 18億円 | 24億円 | 15億円 | 18億円 |
| 利益率(%) | 9.4% | 12.5% | 13.9% | 10.1% | 12.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 9億円 | 12億円 | 16億円 | 8億円 | 11億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少したものの、相対的に利益率の低い製品の販売構成比率が低下したことなどにより売上総利益は増加しています。研究開発費の増加で販売費及び一般管理費は増えましたが、結果として営業利益および営業利益率はともに改善しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 152億円 | 147億円 |
| 売上総利益 | 44億円 | 47億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.8% | 32.1% |
| 営業利益 | 15億円 | 17億円 |
| 営業利益率(%) | 9.6% | 11.4% |
販売費及び一般管理費(合計30億円)のうち、研究開発費が16億円(構成比54%)、給料手当及び賞与が5億円(同16%)、役員報酬が3億円(同8%)を占めており、研究開発への積極的な投資姿勢がうかがえます。
■(3) セグメント収益
主力のLSI事業は、パチンコ・パチスロ機の年間新台販売台数が前年を下回ったこと等により減収となりました。一方で、注力するAI事業は、ハードウェア開発の知見を活かしたAIコンピューティング領域でのソリューション提供が進展し、大幅な増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| LSI事業 | 148億円 | 138億円 |
| AI事業 | 4億円 | 9億円 |
| 連結(合計) | 152億円 | 147億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
当期のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなる「健全型」です。営業利益による手元資金で、研究開発用機材の取得等に伴う投資や、配当金の支払い・自己株式の取得等の財務活動を賄っている優良な状態を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -16億円 | 2億円 |
| 投資CF | -8億円 | -5億円 |
| 財務CF | -9億円 | -7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.3%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も84.3%で市場平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「洗練された製品・サービスの創造を通じ、世の中の革新に貢献しよう」というミッションを掲げています。また、ビジョンとして「先端テクノロジー企業として、グローバルに活躍することを目指そう」と定めており、研究開発型企業として技術力を武器に社会的課題の解決と持続的な成長を実現することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、企業理念の中で「顧客の満足を第一としよう」「プロフェッショナルとして挑戦することを楽しもう」「多様性を尊重し、仲間と、より大きな事を為そう」「スピードを上げよう」という4つのバリューを定めています。フラットな組織体制のもと、専門人材が高い裁量と当事者意識を持って主体的に業務に取り組む文化が醸成されています。
■(3) 経営計画・目標
同社は企業価値向上を意識した経営を推進しており、中長期的に資本コストを上回る収益性の確保を重要な課題と認識しています。具体的な経営指標として、以下の目標を掲げています。
* ROE(自己資本利益率)10%の達成
■(4) 成長戦略と重点施策
主力のパチンコ・パチスロ機市場では、次世代製品の継続開発やポートフォリオ拡充による市場シェア向上を図ります。同時に、事業の多角化による新たな収益機会の獲得を重要課題と位置づけ、ハードウェア開発の知見を最大限に活用できる「AIコンピューティング領域」へ注力し、早期の事業確立と規模拡大を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人」を最重要資産と位置づけ、従業員エンゲージメントの向上を経営の重要課題としています。専門性の高いエンジニアによる技術力を企業価値の源泉とし、エンジニアの90%以上に専門業務型裁量労働制を適用しています。自律的な研鑽を促進し、リモートワークと出社を組み合わせたハイブリッドワークにより生産性の向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 48.7歳 | 13.3年 | 10,480,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 65.4% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 79.4% |
※同社は現在、女性の管理職が不在のため女性管理職比率は表示されていません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) パチンコ・パチスロ機市場への依存
同社の売上高の大半はパチンコ・パチスロ機市場向け製品が占めており、同市場の動向が業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。過度な射幸性を抑制する目的での法的規制や自主規制の実施、また部品のリユース(再利用)の進展により市場規模が縮小した場合、収益機会が減少するリスクがあります。
■(2) 製品製造の外部委託に関するリスク
同社はファブレスモデルを採用しており、製品の製造を外部企業に委託しています。地政学リスク等による原材料価格の高騰や、世界的なメモリ需要の拡大に伴う製造コストの上昇が懸念されます。また、委託先において十分な生産枠が確保できない場合、製品の安定供給に支障を来すおそれがあります。
■(3) 新規事業の早期確立にかかる遅延
中長期的な成長の牽引役としてAI事業や組み込み機器向け製品等の新規領域への進出を図っていますが、これら新市場の規模が想定より小規模にとどまる場合や、事業化の進展が遅れた場合、投下した研究開発資金を回収できず業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 研究開発要員の確保と技術革新
AI領域やアルゴリズム、グラフィックスLSI等の設計に携わる優秀な技術者は希少であり、計画通りに人材を採用できない、または社外へ流出した場合、開発競争力に影響を及ぼすリスクがあります。また、技術革新のスピードが速く、顧客ニーズの変化に迅速に対応できない場合、製品の競争力が著しく低下するおそれがあります。



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