ジーエス・ユアサ コーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 ジーエス・ユアサ コーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ジーエス・ユアサ コーポレーションは東京証券取引所プライム市場に上場し、自動車用鉛蓄電池、産業電池電源、車載用リチウムイオン電池等の製造販売を展開しています。直近の業績は産業電池電源や車載用リチウムイオン電池の販売増加が寄与し、増収増益を達成しました。堅調な収益基盤と積極的な投資を両立しています。


※本記事は、株式会社 ジーエス・ユアサ コーポレーション の有価証券報告書(第22期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ジーエス・ユアサ コーポレーションってどんな会社?


自動車や産業向けの蓄電池・電源システムをグローバルに展開するエネルギーデバイスメーカーです。

■(1) 会社概要


2004年に日本電池とユアサ コーポレーションが株式移転により設立し、上場しました。2009年に本田技研工業との合弁でブルーエナジーを設立、2016年にパナソニックの鉛蓄電池事業を譲受しGSユアサ エナジーとしました。2023年には本田技研工業との合弁でHonda・GS Yuasa EV Battery R&Dを設立しています。

従業員数は連結で12,562名、単体で18名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は日本カストディ銀行(信託口)、第3位は合弁事業など資本業務提携関係にある事業会社の本田技研工業です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 17.47%
日本カストディ銀行(信託口) 9.69%
本田技研工業 4.89%

■(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.0%です。代表者は取締役社長 CEOの阿部貴志氏です。

氏名 役職 主な経歴
阿部貴志 取締役社長(代表取締役)CEO 1989年日本電池入社。米国子会社社長等を経て、2016年GSユアサ執行役員に就任。同社自動車電池事業部長等を歴任し、2024年より現職。
村尾修 取締役会長 1982年日本電池入社。GSユアサ産業電池生産本部長等を経て、2015年同社取締役社長およびジーエス・ユアサ コーポレーション取締役社長(CEO)に就任。2024年より現職。
澁谷昌弘 取締役副社長(代表取締役) 1984年湯浅電池入社。海外子会社総経理や財務部門を担当後、ジーエス・ユアサ バッテリー取締役社長等を歴任。2023年より現職。
松島弘明 取締役CFO 1989年湯浅電池入社。コーポレート部門で経験を積み、GSユアサ理財部長やアカウンティングサービス取締役社長等を歴任。2022年より現職。


社外取締役は、野々垣好子(元ソニーポーランド代表取締役社長)、日戸興史(元オムロン最高財務責任者)、山口貢(元神戸製鋼所取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「自動車電池国内」「自動車電池海外」「産業電池電源」「車載用リチウムイオン電池」および「その他」の各事業を展開しています。

■自動車電池国内


同社およびジーエス・ユアサ バッテリーなどの子会社を通じて、自動車用・二輪車用鉛蓄電池や関連機器の製造販売を行っています。主に国内の自動車メーカーや補修品市場の顧客に対して、高品質なエネルギーデバイスを提供しています。

収益は、自動車用や二輪車用の鉛蓄電池などの製品販売代金として顧客から受け取ります。事業の運営は、主に親会社の完全子会社であるGSユアサおよびジーエス・ユアサ バッテリー、GSユアサ エナジーが主体となって行っています。

■自動車電池海外


海外市場において、自動車用および二輪車用の鉛蓄電池を製造販売しています。東南アジア、北米、欧州、台湾などの幅広い地域で事業を展開しており、現地の自動車関連需要に対応する製品供給体制を構築しています。

収益は、現地の自動車メーカーや代理店等からの蓄電池の販売代金として得ています。運営は、GSユアサの海外事業部門や、台湾杰士電池工業、Century Yuasa Batteries、Siam GS Batteryなどの各地域の海外連結子会社が行っています。

■産業電池電源


据置用、車両用、電動車用などの各種鉛蓄電池をはじめ、アルカリ蓄電池、整流器、各種電源装置、照明器具などの製造販売を行っています。再生可能エネルギーや電力インフラを支える社会インフラ分野向けに製品を提供しています。

収益は、産業用電池や電源装置の販売代金、および据付工事などの役務提供の対価として顧客から受け取ります。事業の運営は、主にGSユアサの産業電池電源事業部やGSユアサ フィールディングスなどの子会社が行っています。

■車載用リチウムイオン電池


ハイブリッド車(HEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)、バッテリーEV(BEV)などに搭載される車載用リチウムイオン電池の研究開発および製造販売を行っています。電動化が進むモビリティ市場に向けた製品を提供しています。

収益は、自動車メーカー等の顧客から車載用リチウムイオン電池の販売代金として受け取ります。事業の運営は、GSユアサのリチウムイオン電池事業部や、本田技研工業との合弁会社であるブルーエナジーなどが担当しています。

■その他


上記の報告セグメントに含まれない分野として、航空・宇宙・防衛用途などの各種特殊電池、電池製造設備、環境関連機器等の製造販売を行っています。また、深海から宇宙まで様々な環境下で利用される最先端の電池開発も手掛けています。

収益は、特殊用途向けの電池や関連機器等の販売代金として顧客から受け取ります。事業の運営は、主にGSユアサやジーエス・ユアサ テクノロジーなどの子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

■(1) 業績推移


売上高は直近5期間を通じて継続して増加しており、6,090億円まで拡大しています。経常利益も直近2期で大幅な増益となっており、利益率も5.7%から9.6%へと改善し、安定した成長基盤を確立しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 4,321億円 5,177億円 5,629億円 5,803億円 6,090億円
経常利益 247億円 242億円 440億円 463億円 582億円
利益率(%) 5.7% 4.7% 7.8% 8.0% 9.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 59億円 60億円 58億円 87億円 98億円

■(2) 損益計算書


売上高、売上総利益ともに前期から増加しており、増収を達成しています。営業利益率も8.6%から9.9%へと上昇し、収益性の向上が確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 5,803億円 6,090億円
売上総利益 1,395億円 1,550億円
売上総利益率(%) 24.0% 25.5%
営業利益 500億円 602億円
営業利益率(%) 8.6% 9.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与及び賞与が298億円(構成比31%)、荷造運送費が139億円(同15%)を占めています。売上原価は4,539億円で、製造コストが売上の大きな割合を占めています。

■(3) セグメント収益


主力の自動車電池海外事業が成長を牽引するとともに、車載用リチウムイオン電池事業が大幅な増収を達成し、全体の収益拡大に寄与しています。自動車電池国内や産業電池電源も堅調に推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
自動車電池国内 1,080億円 1,080億円
自動車電池海外 2,645億円 2,645億円
自動車電池計 3,725億円 3,725億円
産業電池電源 1,241億円 1,241億円
車載用リチウムイオン電池 899億円 899億円
その他 225億円 225億円
連結(合計) 6,090億円 6,090億円

■(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業を示す健全型です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 393億円 495億円
投資CF -588億円 -449億円
財務CF 142億円 -318億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.3%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.3%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

■(1) 経営理念


同社グループは、社員と企業の「革新と成長」を通じ、人と社会と地球環境に貢献することを企業理念として掲げています。電池で培った先進のエネルギー技術により、世界中の顧客へ快適さと安心を届けることを使命とし、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指しています。サステナビリティ課題の解決にも貢献し、社会と共に永続的に成長していく姿勢を明確にしています。

■(2) 企業文化


公正で健全な経営を遂行し、持続的な成長を支える強固な事業基盤を保持することを基本方針としています。また、多様なステークホルダーと対話し、理解を得ながら信頼関係を構築していく姿勢を大切にしています。品質重視の基本方針を堅持しながらも、変化に柔軟に対応できるよう人材育成やDXを推進し、新たな価値創造に挑戦する風土の醸成に取り組んでいます。

■(3) 経営計画・目標


同社グループは、2026年5月に策定した「第七次中期経営計画」のもと、2035年に向けた長期ビジョン「Vision2035」の実現に向けた取り組みを進めています。モビリティと社会インフラの2軸の事業基盤構築を推進し、以下のような具体的な財務目標を掲げています。

* 売上高7,200億円
* 営業利益650億円

■(4) 成長戦略と重点施策


既存事業である自動車電池事業を高付加価値化し、安定した収益基盤として維持しながら、再生可能エネルギーや電力インフラを支える産業電池電源分野へ積極的に投資する戦略を描いています。さらに、新たな事業機会の獲得に向けて、新規事業開発プログラム「Bizチャレ-Next Core-」を展開し、蓄電所ビジネスへの参画など、事業領域の拡張や事業構造の再整理を通じた成長を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

■(1) 人材戦略・方針


「全員活躍」を人的資本のありたい姿に掲げ、性別や年齢、経験を問わず誰もが強みを発揮できる環境整備に注力しています。ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DE&I)を人事戦略の大きな柱として位置づけ、ジョブ型人事制度の導入や社内公募制によるキャリア自律支援、次世代リーダーやDX人材の育成など、社員一人ひとりの個性と能力を尊重した持続的な成長支援を行っています。

■(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 52.1歳 26.4年 10,910,113円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

■(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.0%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全労働者) 73.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 71.6%
男女賃金差異(有期労働者) 81.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(87.3%)、障がい者雇用率(2.97%)、定期健康診断受診率(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

■(1) 原材料の市況変動


主要製品である鉛蓄電池は、主要原材料として鉛を使用しています。鉛相場が変動した場合、直ちに製品価格に反映することが難しいため、原材料価格の高騰が同社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

■(2) グローバル市場での価格競争激化


各事業を展開する市場において激しい競争にさらされています。国内の同業他社に加え、低コストで製品を供給する海外企業との競争が激化しており、有利な価格決定や市場シェアの維持が困難になることで収益性が低下するリスクがあります。

■(3) BEV用電池開発および市場変動


バッテリーEV(BEV)用リチウムイオン電池の量産体制を目標としていますが、BEVの市場拡大の鈍化など前提となる市場環境に変化が生じています。開発の遅れや競合状況、市場動向の不確実性が、将来的な収益計画や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。