ジーエス・ユアサ コーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 ジーエス・ユアサ コーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。主要事業は自動車用・産業用電池および電源装置の製造販売です。第21期連結業績は、自動車電池および産業電池電源の販売増加や価格是正効果により、売上高は前期比3.1%増の5,803億円、営業利益は同20.3%増の500億円と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社 ジーエス・ユアサ コーポレーション の有価証券報告書(第21期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

ジーエス・ユアサ コーポレーション転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

1. ジーエス・ユアサ コーポレーションってどんな会社?

電池・電源装置のリーディングカンパニーです。自動車用鉛蓄電池で高いシェアを誇るほか、産業用電源やリチウムイオン電池なども展開しています。

(1) 会社概要

2004年に日本電池とユアサ コーポレーションが統合し設立されました。2007年に三菱商事等とリチウムエナジー ジャパンを、2009年に本田技研工業とブルーエナジーを設立し車載用リチウムイオン電池事業を拡大しました。2016年にパナソニックの鉛蓄電池事業を譲受し、2023年にはホンダとEV用電池開発の新合弁会社を設立しています。

連結従業員数は12,478名、単体は18名です。筆頭株主は資産管理を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第2位は日本カストディ銀行(信託口)です。第3位の本田技研工業とは、HEV・BEV用リチウムイオン電池の開発・製造において合弁事業を行うなど、戦略的なパートナーシップ関係にあります。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 16.99%
日本カストディ銀行(信託口) 8.31%
本田技研工業 4.89%

(2) 経営陣

同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表者は取締役社長(代表取締役)CEOの阿部貴志氏です。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
阿部 貴志 取締役社長(代表取締役)CEO 1989年日本電池入社。GSユアサ執行役員、産業電池電源事業部副事業部長、自動車電池事業部事業部長などを経て、2024年6月より現職。
村尾 修 取締役会長 1982年日本電池入社。GSユアサ産業電池生産本部長、取締役社長CEOを経て、2024年6月より現職。
澁谷 昌弘 取締役副社長(代表取締役) 1984年湯浅電池入社。財務統括部担当部長、GSユアサ取締役、専務取締役などを経て、2023年6月より現職。
松島 弘明 取締役CFO 1989年湯浅電池入社。コーポレート室長、GSユアサ取締役などを経て、2022年6月より現職。


社外取締役は、松永隆善(元積水化学工業取締役)、野々垣好子(元ソニー人事本部グローバルダイバーシティダイレクター)、日戸興史(元オムロン取締役CFO)です。

2. 事業内容

同社グループは、「自動車電池国内」「自動車電池海外」「産業電池電源」「車載用リチウムイオン電池」および「その他」事業を展開しています。

(1) 自動車電池国内

自動車用・二輪車用鉛蓄電池等の製造・販売を行っています。補修用市場や新車用市場の顧客に対し、製品を提供しています。

収益は、製品の販売対価として得ています。運営は主に株式会社GSユアサが行っており、販売は株式会社GSユアサ エナジーなどの子会社も担っています。

(2) 自動車電池海外

海外市場において、自動車用・二輪車用鉛蓄電池の製造・販売を行っています。東南アジア、欧州、北米、中国、オーストラリアなどで事業展開しています。

収益は、現地顧客への製品販売から得ています。運営は、Siam GS Battery Co., Ltd.(タイ)、GS Yuasa Battery Europe Ltd.(英国)などの海外現地法人が担っています。

(3) 産業電池電源

バックアップ電源(据置用鉛蓄電池等)や電源装置、照明器具などの製造・販売を行っています。通信インフラ、データセンター、ビル設備などの顧客に提供しています。

収益は、製品販売および設置工事・保守サービスから得ています。運営は主に株式会社GSユアサが行い、保守サービスは株式会社GSユアサ フィールディングス等が担当しています。

(4) 車載用リチウムイオン電池

ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)向けのリチウムイオン電池の製造・販売を行っています。

収益は、自動車メーカーへの製品販売から得ています。運営は株式会社GSユアサ、および本田技研工業との合弁会社である株式会社ブルーエナジー、ハンガリーの子会社などが行っています。

(5) その他

特殊電池(航空宇宙・防衛用等)や環境関連機器等の製造・販売を行っています。

収益は、製品販売から得ています。運営は株式会社ジーエス・ユアサ テクノロジーなどが担っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は毎期増加傾向にあり、事業規模が拡大しています。利益面では、2023年3月期までは経常利益が横ばい傾向でしたが、2024年3月期に大きく伸長し、当期も増益を維持しています。当期純利益も2024年3月期に大幅に増加し、高い水準を保っています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,865億円 4,321億円 5,177億円 5,629億円 5,803億円
経常利益 273億円 247億円 242億円 440億円 463億円
利益率(%) 7.1% 5.7% 4.7% 7.8% 8.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 115億円 85億円 139億円 321億円 304億円

(2) 損益計算書

直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しており、利益率も改善傾向にあります。販管費も増加していますが、売上総利益の伸びが上回っており、営業利益は前期比で増加し、営業利益率も向上しています。収益性が高まっていることが確認できます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5,629億円 5,803億円
売上総利益 1,262億円 1,395億円
売上総利益率(%) 22.4% 24.0%
営業利益 416億円 500億円
営業利益率(%) 7.4% 8.6%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与及び賞与が281億円(構成比31%)、荷造運送費が129億円(同14%)、研究開発費が77億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益

自動車電池事業は国内外ともに増収増益となり、特に国内は価格是正効果等により大幅な増益となりました。産業電池電源も増収増益で、利益率の改善が見られます。一方、車載用リチウムイオン電池は販売数量減や原材料価格下落に伴う販売価格低下等により減収減益となり、その他事業も減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
自動車電池国内 940億円 1,019億円 81億円 107億円 10.5%
自動車電池海外 2,529億円 2,601億円 151億円 187億円 7.2%
産業電池電源 1,097億円 1,131億円 132億円 179億円 15.8%
車載用リチウムイオン電池 848億円 828億円 26億円 14億円 1.7%
その他 215億円 224億円 32億円 21億円 9.5%
連結(合計) 5,629億円 5,803億円 416億円 500億円 8.6%


※セグメント利益はのれん等償却前営業利益、連結合計は営業利益です。

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ジーエス・ユアサ コーポレーションのキャッシュ・フロー状況についてご説明します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権や棚卸資産の増加、仕入債務の減少があったものの、税金等調整前当期純利益や減価償却費の計上等によりプラスとなりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、貸付金の回収による収入があった一方で、有形固定資産の取得による支出等によりマイナスとなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いがあったものの、借入金や社債の発行による収入等によりプラスとなりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 632億円 393億円
投資CF -462億円 -588億円
財務CF 35億円 142億円

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「革新と成長」を通じ、人と社会と地球環境に貢献することを企業理念としています。電池で培った先進のエネルギー技術で世界中の人々に快適さと安心を届けるとともに、サステナビリティ課題の解決に貢献し、社会と共に永続的に成長することを目指しています。

(2) 企業文化

公正で健全な経営を遂行し、持続的な成長を支える強固な事業基盤を保持することを重視しています。また、多様なステークホルダーと対話し理解を得ながら信頼関係を構築する姿勢や、コンプライアンスの徹底、品質重視の基本姿勢に基づいた事業運営を行う文化があります。

(3) 経営計画・目標

2035年に向けた長期ビジョン「Vision2035」の実現に向け、2023年度から2025年度までの「第六次中期経営計画」を推進しています。2025年5月に目標数値をアップデートしています。
* 売上高:6,000億円
* 営業利益:520億円(のれん等償却前)
* ROE:9.5%
* ROIC:13.0%

(4) 成長戦略と重点施策

事業構造変革に向け、BEV用電池開発、既存事業の収益力強化、DX・新規事業の3点を重点施策としています。特に、ホンダとの合弁会社を活用した高容量・高出力なBEV用リチウムイオン電池の開発や生産体制の整備を進めるほか、既存の自動車電池事業では収益性の改善、産業電池電源事業では社会インフラビジネスの拡大を図っています。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

企業理念である「革新と成長」を体現する「自律型人材」の育成を掲げています。DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の推進と経営戦略との連動を人事戦略の柱とし、年齢や経験に関わらず活躍できる適所適材の配置や、次世代リーダーの早期育成、多様な研修体系の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 51.4歳 26.5年 10,744,638円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.6%
男性育児休業取得率 71.3%
男女賃金差異(全労働者) 74.5%
男女賃金差異(正規) 72.9%
男女賃金差異(非正規) 84.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.64%)、年次有給休暇取得率(85.8%)、労働者に占める女性の割合(15.6%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料の市況変動

主要製品である鉛蓄電池の原材料には鉛が使用されており、鉛相場の変動が製品価格へ直ちに反映できない場合、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、生産体制の全体最適化やコストダウン、最適な供給体制の構築により対応しています。

(2) 価格競争の激化

各市場において国内外の競合他社との激しい競争に晒されており、低価格製品の参入等により価格決定が困難な状況にあります。市場シェアや収益性の維持が困難になった場合、業績に悪影響を与える可能性があります。これに対し、コスト削減や営業力強化の施策を推進しています。

(3) 為替レート及び金利の変動

日本、アジア、北米、欧州などでグローバルに事業展開しているため、各国の通貨価値変動が円換算後の業績や製造・調達コストに影響を与える可能性があります。また、金利上昇による資金調達コストの増加リスクもあります。これに対し、通貨ヘッジ取引の活用や有利子負債の適切な管理を行っています。

(4) 国際的活動及び海外進出

海外での生産・販売活動には、予期しない法規制の変更、地政学リスク、人材確保の難しさ、インフラの未整備などのリスクが内在しています。特にテロや戦争による社会的混乱は業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、本部と各拠点間のコミュニケーション強化により、迅速な対応体制を構築しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。