MCJ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

MCJ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場。パソコン本体や周辺機器の製造・販売を行う「パソコン関連事業」と、ネットカフェ等を運営する「総合エンターテインメント事業」を展開しています。2025年3月期は、パソコン需要の回復や高付加価値製品の販売好調により増収増益となり、過去最高益を更新しました。


※本記事は、株式会社MCJ の有価証券報告書(第27期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. MCJってどんな会社?


マウスコンピューター等を傘下に持つ持株会社です。BTOパソコンの製造販売を主力とし、ネットカフェ運営なども手掛けています。

(1) 会社概要


1998年に設立され、2004年に東京証券取引所マザーズへ上場しました。2006年には持株会社体制へ移行し、事業会社としてマウスコンピューターを設立しています。その後、積極的なM&Aにより事業を拡大し、2012年にはユニットコムがグッドウィルを吸収合併、2013年にはaprecioを子会社化しました。2022年の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しています。

連結従業員数は2,251名、単体では68名です。筆頭株主は創業者の髙島勇二氏で、第2位、第3位は資産管理業務を行う信託銀行の信託口となっており、創業者が安定的に株式を保有しつつ、機関投資家も参加する株主構成となっています。

氏名 持株比率
髙島 勇二 33.04%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 4.99%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 3.64%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役会長最高経営責任者(CEO)は髙島勇二氏です。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
髙 島 勇 二 代表取締役会長最高経営責任者 1993年有限会社高島屋衣類店入社。1998年有限会社エムシージェイ(現同社)代表取締役社長。2006年代表取締役会長、2017年より代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)。
安 井 元 康 代表取締役社長最高執行責任者 2002年同社入社。経営企画室執行役員、経営共創基盤プリンシパル等を経て、2017年同社取締役社長兼最高執行責任者(COO)。2021年より現職。
浅 貝 武 司 取締役コーポレート本部長 1990年株式会社協和銀行入行。2001年同社取締役、2006年代表取締役社長を経て、2008年より取締役兼コーポレート本部長。マウスコンピューター取締役等を兼任。
石 戸 謙 二 取締役最高財務責任者 1991年株式会社三菱銀行入行。株式会社アライヴコミュニティ取締役等を経て、2007年同社入社。2008年より取締役兼最高財務責任者(CFO)。


社外取締役は、浦勝則(弁護士)、ギディオン・フランクリン(Gideon Franklin Limited CEO)、宮谷正一(MMグループホールディングス社長)、山口畝美(U・アカデミー代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「パソコン関連事業」および「総合エンターテインメント事業」を展開しています。

パソコン関連事業


パソコン本体の製造・販売、パソコンパーツの卸売・販売、およびモニタの開発・販売等を行っています。一般ユーザー向けからクリエイター、ゲーマー向けまで幅広いラインナップのBTO(受注生産)パソコンや、液晶ディスプレイ「iiyama」ブランド製品などを提供しています。

収益は、製品の販売代金や修理・サポートサービスの対価として顧客から得ています。運営は、株式会社マウスコンピューター、株式会社ユニットコム、テックウインド株式会社、iiyama Benelux B.V.およびその子会社などが担っています。国内でのBTOパソコン販売に加え、欧州におけるモニタ販売や東南アジアでの事業も展開しています。

総合エンターテインメント事業


「aprecio」ブランドでの複合カフェ店舗運営や、「MIRA fitness」ブランドでの24時間フィットネスクラブの運営等を行っています。複合カフェではコミック、インターネット、カラオケ等の時間消費型サービスを提供し、フィットネスではトレーニング環境を提供しています。

主な収益源は、店舗利用者からの施設利用料や会費です。運営は、株式会社aprecioおよび株式会社MIDが行っています。ネットカフェ事業の収益安定化を図るとともに、成長分野である24時間フィットネス事業の展開に注力しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は概ね増加傾向にあり、特に当期は過去最高を記録しました。利益面でも、経常利益率が7%から9%台で推移しており、安定した収益性を維持しています。当期はパソコン市場の回復等を背景に増益となり、親会社株主に帰属する当期純利益も増加しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,742億円 1,912億円 1,911億円 1,875億円 2,072億円
経常利益 155億円 137億円 139億円 171億円 200億円
利益率(%) 8.9% 7.2% 7.3% 9.1% 9.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 100億円 93億円 96億円 122億円 141億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益率も改善しています。営業利益率は前期の9.2%から9.4%へと上昇しており、収益性が向上しています。販売費及び一般管理費の増加を売上総利益の増加が上回り、営業増益を達成しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,875億円 2,072億円
売上総利益 465億円 517億円
売上総利益率(%) 24.8% 24.9%
営業利益 172億円 194億円
営業利益率(%) 9.2% 9.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が75億円(構成比23%)、広告宣伝費が42億円(同13%)を占めています。売上原価においては、商品及び製品の仕入高などが主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


パソコン関連事業は、国内でのBTOパソコン販売の好調や欧州・東南アジア事業の貢献により、売上が増加しました。総合エンターテインメント事業も、ネットカフェの黒字定着やフィットネス事業の好調により増収となりました。両セグメントともに売上を伸ばしており、特に主力のパソコン関連事業が全体の成長を牽引しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
パソコン関連事業 1,817億円 2,008億円
総合エンターテインメント事業 58億円 64億円
その他 - -
調整額 - -
連結(合計) 1,875億円 2,072億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、運転資金需要に対しては内部資金または金融機関からの借入等により資金調達しています。

当連結会計年度は、営業活動による資金獲得が増加したものの、法人税等の支払い等により、現金及び現金同等物は減少しました。営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や仕入債務の増加等により大幅に増加しました。投資活動では、定期預金の純増等により資金使用額が増加しました。財務活動では、配当金の支払い等により資金使用額が増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 82億円 176億円
投資CF -62億円 -248億円
財務CF -1億円 -81億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「21世紀を代表する製品サービスを創り、人々の生活を豊かにし、よりよい社会の構築に貢献する会社になる」ことを目指す企業の姿としています。製品・サービスの創造による企業価値の向上と、事業活動を通じた社会益の追求の両立を図っています。

(2) 企業文化


同社は4つの価値観を掲げています。「Get The Ideal ~お客様の理想を形に~」として顧客価値を創造し、「社会との共生」を通じてステークホルダーとともに成長することを目指します。また、「正しく真っすぐな道を歩む」という高い倫理観と、「あくなきチャレンジ精神」によるベンチャースピリットを重視しています。

(3) 経営計画・目標


2028年3月期を最終年度とする3か年の中期経営計画において、営業利益率、ROIC、ROE、配当性向、総還元性向、DOEの6つを重要指標と位置づけています。最終年度には、既存事業の成長のみで以下の数値を目標としています。

* 売上高:2,369億円
* 営業利益:210億円

(4) 成長戦略と重点施策


既存ビジネスの拡大に加え、「取扱うハードウェアの多様化」と「ハードウェアに関連する各種サービス事業への進出」の2軸での成長を目指します。M&Aの再開による成長加速、バランスシートの戦略的活用を掲げ、既存事業の収益基盤安定化と将来成長基盤への投資を推進します。

* 製品・顧客軸の強化および既存バリューチェーンの強化
* サービス面やコンテンツ領域の強化(ソリューション事業含む)
* グローバルな視点でのM&Aやアライアンス戦略の展開

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


変化する事業環境に対応できる柔軟な人材の育成と確保を至上命題としています。グローバル人材の確保・育成や、多様な人材が活躍できる環境整備、社員教育制度の強化を進めています。また、女性管理職比率の向上など、ダイバーシティ推進にも注力し、従業員の「理想を形に」を実現する人事制度の構築を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 38.9歳 5.5年 6,631,516円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 27.3%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 64.1%
男女賃金差異(正規雇用) 62.9%
男女賃金差異(非正規雇用) -


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、定着率(84.6%)、有給休暇取得率(70.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料調達とサプライチェーン


製造事業において、原材料や部品の価格高騰、供給不足が発生した場合、原価上昇や製品出荷遅延のリスクがあります。また、販売見込みの錯誤等による未消化在庫の発生は棚卸資産評価損につながり、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替変動の影響


海外からの調達において、急激な為替変動が発生した場合、為替予約等のヘッジを行っていても契約金額と時価の乖離により評価損が発生し、業績に影響を与える可能性があります。円安・円高のいずれの局面でもリスク要因となります。

(3) 技術革新と市場環境の変化


デジタル関連の技術革新は急速であり、AI技術の発展等によりユーザーの行動やニーズが急変する可能性があります。既存製品の価値低下や革新的な代替技術の登場に対し、適切に対応できない場合、競争力が低下し業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。