レシップホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

レシップホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード・名証プレミア上場。バス・鉄道向けの運賃箱や表示器などの輸送機器事業と、充電器や電源装置などの産業機器事業を展開しています。直近の業績は、輸送機器事業での新紙幣対応や設備投資需要により大幅な増収となりましたが、為替差損や一時的な費用の計上により経常利益は減益となりました。


※本記事は、レシップホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第73期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. レシップホールディングスってどんな会社?


バス・鉄道用システム機器や産業用電源機器で高シェアを持つニッチトップ企業です。

(1) 会社概要


1953年に小型変圧器とバス用蛍光灯具の製造販売を目的に設立されました。2002年にレシップへ社名変更し、2005年にジャスダック証券取引所へ上場しました。2010年には持株会社体制へ移行し、現社名に変更しています。2022年の市場区分見直しを経て、現在は東証スタンダード市場に上場しています。

連結従業員数は633名、単体従業員数は53名です。筆頭株主は同社従業員で構成されるレシップ社員持株会で、第2位は中小企業の育成・投資を行う名古屋中小企業投資育成です。第3位には取引金融機関である十六銀行が名を連ねており、従業員や安定株主が上位を占める構成となっています。

氏名 持株比率
レシップ社員持株会 6.22%
名古屋中小企業投資育成 5.97%
十六銀行 3.57%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は杉本 眞氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
杉本 眞 代表取締役社長 1975年丸紅入社。1989年同社入社。1993年代表取締役社長就任。2010年より現職。レシップ代表取締役会長などを兼任。
三井 紘子 専務取締役 2017年同社入社。管理本部副本部長、執行役員、取締役を経て2024年6月より現職。レシップビジネス開発センター長を兼任。
長野 晴夫 常務取締役 1978年同社入社。システム製品事業部長、生産本部長などを経て2024年6月より現職。
品川 典弘 常務取締役 2009年同社入社。人事総務部長、執行役員、取締役を経て2024年6月より現職。管理本部長を兼任。
北野 元昭 取締取締役 2011年レシップ入社。営業本部各部長、執行役員を経て2021年6月より現職。レシップ代表取締役社長を兼任。
岩佐 幸治 取締役 2013年レシップ入社。生産本部長、開発本部長などを経て2021年6月より現職。


社外取締役は、木村 静之(弁護士)、山口 美和(元ソロエル代表取締役社長)、四井 清裕(税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「輸送機器事業」、「産業機器事業(エネルギーマネジメントシステム事業)」および「その他」事業を展開しています。

(1) 輸送機器事業


バス・鉄道事業者や自動車メーカー向けに、自動循環式運賃箱、ICカードシステム、行先表示器、車載用照明などを提供しています。特に路線バスやワンマン鉄道車両向けのシステム機器では、運賃収受から運行管理まで一貫したソリューションを提供し、乗務員の業務軽減や運行の効率化を支援しています。

収益は、これらの製品の販売や保守サービス等から得ています。運営は主に連結子会社のレシップが行っており、製品の導入支援や修理業務はレシップエンジニアリングが担当しています。海外市場においては、米国、スウェーデン、シンガポールなどの現地法人が販売や製造を行っています。

(2) 産業機器事業(エネルギーマネジメントシステム事業)


物流現場などで使用されるバッテリー式フォークリフト用の充電器や、通信基地局などで使用される無停電電源装置(UPS)などを提供しています。また、電子機器の製造受託サービス(EMS)として、自動車用電装品などのプリント基板の実装も行っています。

収益は、電源機器の販売や基板実装の受託加工費から得ています。運営は主にレシップおよび連結子会社のレシップ電子が行っています。電源ソリューション市場では、環境意識の高まりによる電動化ニーズに対応し、国内主要フォークリフトメーカーへ製品を納入しています。

(3) その他


同社グループが保有する不動産の賃貸事業を行っています。

収益は、土地・建物等の不動産を外部顧客に賃貸することで得られる賃貸料収入です。運営は持株会社であるレシップホールディングスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増加傾向にあり、特に直近期では大幅な増収を達成しています。利益面では、経常利益率が高い水準で推移していましたが、直近期では一時的な費用の発生等により純利益率は低下しました。全体としては事業規模の拡大が続いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 156億円 141億円 143億円 227億円 259億円
経常利益 0.4億円 3億円 -2億円 36億円 35億円
利益率(%) 0.2% 2.3% -1.5% 15.7% 13.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 -0.2億円 1億円 -0.6億円 7億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しましたが、営業利益の伸び率は売上高の伸びを下回りました。販売費及び一般管理費の増加が利益を圧迫する要因となっていますが、一定の利益水準は確保しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 227億円 259億円
売上総利益 79億円 86億円
売上総利益率(%) 34.7% 33.3%
営業利益 32億円 35億円
営業利益率(%) 13.9% 13.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が17億円(構成比33%)、その他経費が11億円(同21%)を占めています。売上原価においては、材料費や外注費などが含まれますが、具体的な内訳は開示されていません。

(3) セグメント収益


輸送機器事業は、バス市場での設備投資需要や新紙幣対応により大幅な増収となりました。産業機器事業は、一部事業の譲渡や需要変動の影響を受け減収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
輸送機器事業 181億円 217億円
産業機器事業(エネルギーマネジメントシステム事業) 46億円 42億円
その他 0.4億円 0.4億円
調整額 - -
連結(合計) 227億円 259億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業活動で得た資金で借入金の返済を進めつつ、設備投資は手元資金や営業CFの範囲内で行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 23億円 12億円
投資CF -1億円 -16億円
財務CF -25億円 -5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は26.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「『省エネルギー』・『地球環境対応』・『セキュリティ強化』を通じて、快適な日常を実現するための製品・サービスを社会に提供する」ことを経営理念としています。また、2030年のありたい姿として長期ビジョン「VISION2030」を策定し、持続的で快適な日常の実現を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、社会から求められる企業であり続けるために、ニッチトップ戦略による確かな事業基盤を背景に、変化を恐れず挑戦する姿勢を重視しています。また、新たな価値観として「1value 4stance」を策定し、全社員が主体的に価値観を体現する風土づくりや、提案型組織への変革を進めています。

(3) 経営計画・目標


長期ビジョン「VISION2030」の実現に向けた中期経営計画「RT2026(Reach our Target 2026)」を推進しています。この計画では、育成分野の成長と既存事業の収益性向上により、事業構造の変革を進める期間と位置づけています。

(4) 成長戦略と重点施策


成長の柱として「モノ+コトへの事業構造の変革」「エネルギーマネジメントシステム事業の育成」「海外市場における事業拡大」の3つを掲げています。具体的には、ハードウェアにソフトウェアやサービスを組み合わせた付加価値の高い事業への転換、再生可能エネルギー分野の開拓、北米・ASEANを中心とした海外展開を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を企業の競争力を支える重要資本と位置づけ、採用・育成、人材開発、エンゲージメント向上、働きやすい職場づくりを軸とした戦略を展開しています。新卒・中途採用の多様化に加え、スキルマップを用いた能力開発や社内資格制度によるリスキリングを強化しています。また、人事制度を刷新し、提案型人材の育成と自律的な挑戦を促す仕組みを構築しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 36.3歳 7.5年 5,382,727円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.3%
男性育児休業取得率 -%
男女賃金差異(全労働者) 79.0%
男女賃金差異(正規雇用) 85.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 50.6%


※男性労働者の育児休業取得率は、対象者がいなかったため記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、1on1ミーティングの平均満足度(69.3点)、有給休暇取得率(70.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業内容に関するリスク


主力である輸送機器事業は公共交通事業者が主要顧客であるため、設備投資計画や公共事業投資の動向に業績が左右される可能性があります。大規模災害や感染症等による輸送人員減少が投資抑制につながる場合や、特需の有無により業績が大きく変動するリスクがあります。

(2) 業績の季節変動に関するリスク


国内バス・鉄道業界では第4四半期(1~3月)に設備更新等が集中する傾向があります。そのため、この時期に予定されていた案件の納入が翌期にずれ込んだ場合、業績が変動する可能性があります。

(3) 技術革新及び新規製品開発に関するリスク


MaaSやキャッシュレス、自動運転など、関連業界で技術革新が進む中、これらに対応した新製品・新サービスの開発が遅れた場合や、市場ニーズに合致しなかった場合、業績や成長戦略に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 部材調達に関するリスク


サプライヤーの被災や事故、市場の需給状況等により部材の適時確保が困難になった場合や、価格が高騰した場合には、生産遅延や原価率上昇により業績に影響が出る可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。