レシップホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

レシップホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場及び名古屋証券取引所プレミア市場に上場するレシップホールディングスは、バスや鉄道向けの運賃収受システムなどの輸送機器や、産業機器の製造販売を主要事業として展開しています。直近の業績は、輸送機器事業での新紙幣関連需要の落ち着きなどを背景に、減収減益のトレンドとなっています。


※本記事は、レシップホールディングス株式会社の有価証券報告書(第74期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. レシップホールディングスってどんな会社?


バス・鉄道用ワンマン機器や産業用電源機器の製造販売を主力事業とする輸送・産業機器メーカーです。

(1) 会社概要


1953年3月に小型変圧器とバス用蛍光灯具の製造・販売を目的に三陽電機製作所を設立しました。1965年に産業用インバータ電源を開発して産業機器事業を開始し、1970年にバス用運賃箱を開発しました。2002年にレシップへ社名変更し、2010年には持株会社体制への移行に伴い現在の社名に変更しています。

現在の従業員数は連結で721名、単体で46名体制です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は名古屋中小企業投資育成で、第2位には同社の従業員持株会であるレシップ社員持株会が名を連ねており、第3位は取引金融機関である十六銀行となっています。

氏名 持株比率
名古屋中小企業投資育成 5.93%
レシップ社員持株会 5.64%
十六銀行 3.55%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は杉本眞氏が務めており、社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
杉本眞 代表取締役社長 1975年丸紅入社、1989年同社入社。取締役副社長などを経て1993年に代表取締役社長に就任。海外の現地法人役員やグループ会社の代表取締役などを歴任し、2010年より現職。
三井紘子 専務取締役 2017年同社管理本部長付部長に就任。管理本部副本部長や執行役員、グループ会社のコミュニティ事業開発本部長などを歴任し、2021年取締役に就任。常務取締役を経て2024年より現職。
長野晴夫 常務取締役 1978年同社入社。執行役員や生産本部長などを経て2008年取締役に就任。グループ各社の代表取締役社長や海外法人の代表取締役社長を歴任し、2024年より現職。
品川典弘 常務取締役 2009年同社総務部副部長に就任。人事総務部長や管理本部長などを経て2013年執行役員に就任。グループ会社の代表取締役などを歴任し、2019年取締役に就任して2024年より現職。
北野元昭 取締役 2011年グループ会社の営業本部新規事業開発部長に就任。営業本部長などを歴任し、2019年同社執行役員に就任。2021年同社取締役に就任し、2025年グループ会社社長に就任して現職。
岩佐幸治 取締役 2013年グループ会社の生産本部機器設計部長に就任。生産本部長や開発部長などを経て2015年同社執行役員に就任。グループ会社の取締役や開発本部長などを経て2021年より現職。


社外取締役は、木村静之(木村法律事務所所長)、山口美和(AmireLink代表取締役)、四井清裕(四井清裕税理士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「輸送機器事業」、「産業機器事業(エネルギーマネジメントシステム事業)」および「その他」事業を展開しています。

(1) 輸送機器事業


バス・鉄道・自動車市場向けに、自動運賃収受システムや各種表示機器、運行管理システム、車載用照明機器などを提供しています。バスやワンマン運行の鉄道車両に向けた運賃箱やICカードシステムといった機器を通じて、乗務員の業務負担軽減や乗客の利便性向上を支援しています。

主に公共交通事業者へのシステム機器や照明灯具の販売、及び納入後の保守・修理業務等から収益を得ています。運営は主にレシップが製品の製造・販売を担い、レシップエンジニアリングが製品の導入支援や修理業務を行っています。また、海外市場向けには複数の現地法人が販売を担っています。

(2) 産業機器事業(エネルギーマネジメントシステム事業)


電源ソリューション市場向けに、バッテリー式フォークリフト用の充電器や無停電電源装置などを展開しているほか、自動車用電装品などのプリント基板の実装を中心とするEMS事業を展開しています。環境意識の高まりに応じた製品の提供を行っています。

フォークリフトメーカーへの充電器販売や、ケーブルテレビや通信機器基地局への無停電電源装置の納入、自動車部品メーカーからの基板実装の受託製造などによって収益をあげています。運営は主にレシップ電子が製造・販売を行い、一部の製品はレシップが製造・販売を担っています。

(3) その他事業


同社グループが保有する土地や建物などの不動産を外部顧客やグループ会社に賃貸する事業を展開しています。また、映像や情報を表示する広告媒体であるデジタルサイネージの運営管理などの事業も行っています。

保有する不動産の賃貸料収入などから収益を得ています。運営は主にレシップホールディングスが不動産賃貸を担っており、デジタルサイネージの運営管理については非連結子会社のレシップデジタルサイネージが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、前半は新型コロナウイルスの影響等により売上が伸び悩んでいましたが、後半にかけて新紙幣関連需要の取り込みや大型案件の計上などにより大きく売上を伸ばしました。ただし直近では需要が一巡したことなどで減収減益となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 141億円 143億円 227億円 259億円 239億円
経常利益 3億円 -2億円 36億円 35億円 15億円
利益率(%) 2.3% -1.5% 15.7% 13.4% 6.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.2億円 1.4億円 -0.6億円 6.9億円 6.9億円

(2) 損益計算書


売上高が減少したことに加え、将来を見据えた戦略的案件の受注に伴う引当金の計上などにより原価率が上昇し、売上総利益率は低下しています。これに伴い営業利益も減少する結果となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 259億円 239億円
売上総利益 86億円 64億円
売上総利益率(%) 33.3% 26.8%
営業利益 35億円 13億円
営業利益率(%) 13.6% 5.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が18億円(構成比35%)、事務委託費が5億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である輸送機器事業は、米国向けの大型案件が寄与したものの、国内での新紙幣対応に関する特需が一巡したことにより減収となりました。また、産業機器事業についてもフォークリフト用充電器などの販売減少により減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
輸送機器事業 217億円 200億円
産業機器事業(エネルギーマネジメントシステム事業) 42億円 38億円
その他 0.4億円 0.4億円
連結(合計) 259億円 239億円


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型のキャッシュ・フローとなっています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.6%で市場平均を下回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 12億円 36億円
投資CF -16億円 -3億円
財務CF -5億円 -10億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「『省エネルギー』・『地球環境対応』・『セキュリティ強化』を通じて、快適な日常を実現するための製品・サービスを社会に提供する」を経営理念に掲げています。社会課題の解決を通じて持続可能で快適な日常の実現を目指し、すべてのステークホルダーの利益を尊重した経営を最重要課題として認識しています。

(2) 企業文化


お客様や株主、従業員、取引先、地域社会などのステークホルダーとの適切な協働を重んじ、ステークホルダー尊重の企業文化・風土の醸成に取り組んでいます。法令遵守に関する行動憲章を定め、企業倫理を徹底する誠実で公正な事業活動の推進を重視した組織運営を行っています。

(3) 経営計画・目標


長期ビジョン「VISION2030」の実現に向け、2021年度から2030年度までを3つのフェーズに分けた中期経営計画を策定しています。2024年度からスタートした「RT2026」では、育成分野の成長と既存事業の収益性向上によって事業構造の変革を確実に進めることを期間中の目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


持続的な成長に向けて3つの戦略を掲げています。ハードウェア中心からソフトウェアやサービスを組み合わせた「モノ+コト」への事業構造の変革、再生可能エネルギー領域などを開拓する「エネルギーマネジメントシステム事業の育成」、そして北米やASEANを中心とする「海外市場における事業拡大」に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を企業の競争力を維持し持続的な成長を支えるための重要な資本と位置づけ、人への投資を経営の最優先課題として取り組んでいます。中期経営計画とリンクした人材戦略を展開し、多様な知見を持つ中途採用の積極推進、社内資格制度を活用したスキルアップ支援、そして社員のエンゲージメント向上施策などに注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 35.5歳 6.7年 4,941,468円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 22.2%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 79.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 88.1%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 46.8%


※男性労働者の育児休業取得率について、対象者がいない場合は「-」と記載しています。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(77.0%)、新卒入社者の3年以内離職率(14.3%)、離職率(6.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 設備投資計画への依存リスク


主要販売先であるバス事業者や鉄道事業者の設備投資計画や、国・地方公共団体からの補助金動向に売上が大きく影響を受けます。大規模災害や感染症等による輸送人員減少によって設備投資が抑制された場合や、特需の有無によって業績が変動する可能性があります。

(2) 業績の季節変動リスク


主力である輸送機器事業の国内市場においては、顧客の設備機器の代替やダイヤ改正等の変更が毎年第4四半期(1〜3月)に集中する傾向があります。そのため、納入が何らかの理由で翌期にずれ込んだ場合などに業績が変動する可能性があります。

(3) 新技術の台頭と開発の遅延リスク


自動運転やキャッシュレス化、MaaSなど、業界における新技術やサービスの台頭が事業環境に変化をもたらしています。市場ニーズの変化をいち早く掴み開発に努めていますが、新製品や新サービスの市場導入に遅れが生じた場合、将来的な事業成長に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。