内海造船 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

内海造船 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する内海造船は、各種船舶の製造や修理を中核事業として展開しています。直近の連結業績は、売上高が前期比で増加したことに加え、営業利益や経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益も大幅に増加しており、見事な増収増益を達成しました。生産性の向上策が業績拡大に貢献しています。


※本記事は、内海造船株式会社の有価証券報告書(第101期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 内海造船ってどんな会社?


船舶の製造や修理を主力事業とし、土木建設やホテル経営なども手掛ける企業です。

(1) 会社概要


1944年に瀬戸田造船として設立され、1972年に田熊造船を吸収合併して現社名に変更しました。1974年に上場を果たし、その後、内海エンジニアリングなどの子会社を設立しています。2004年にはニチゾウアイエムシーを譲受し翌年に吸収合併するなど、船舶関連事業の体制強化と業容拡大を推進してきました。

現在、同社グループの従業員数は連結で600名、単体で548名です。筆頭株主はその他の関係会社であり鋼材等の主要仕入先でもあるカナデビアで、第2位は主要取引金融機関である広島銀行、第3位はSBI証券となっています。事業会社や金融機関を中心とした安定的な株主構成を維持しています。

氏名 持株比率
カナデビア 39.37%
広島銀行 4.98%
SBI証券 3.08%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長の寺尾弘志氏が経営を牽引しています。社外取締役の割合については後述します。

氏名 役職 主な経歴
寺尾弘志 代表取締役社長 1983年日立造船入社。ジャパンマリンユナイテッド等を経て、2018年同社執行役員に就任。取締役、新造船事業本部長兼瀬戸田工場長などを歴任し、2024年より現職。
岡野修覚 取締役修繕船事業部長 1980年日立造船入社。ユニバーサル造船、ジャパンマリンユナイテッド等を経て、2020年同社執行役員に就任。修繕船事業部長を務め、2021年より現職。
柳瀬純一 取締役営業本部長 1981年日立造船入社。ユニバーサル造船、ジャパンマリンユナイテッド常務執行役員などを経て、2023年同社執行役員および取締役に就任し、現職。
岡野行孝 取締役新造船事業本部長 兼知財管理室担当役員 兼知財管理室長 1990年同社入社。設計本部船殻設計部長などを経て、2021年執行役員および取締役に就任。2024年より新造船事業本部長兼知財管理室長などを務める。


社外取締役は、宮崎寛(カナデビア顧問)、若野晃一(元ユニバーサル造船取締役専務執行役員)、亀﨑一彦(元ジャパンマリンユナイテッド常勤監査役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「船舶事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 船舶事業


船舶事業では、各種船舶の製造および修理を行っています。主にパナマックスサイズの中型船から小型フェリーまでの新造船のほか、RORO船といった多様な船種の建造、および既存船舶の改造や修繕工事を国内外の海運業者や防衛装備庁などに提供しています。

収益は、船舶の建造代金や修繕工事の請負代金として顧客から受け取ることで成り立っています。当事業の運営は主に親会社である同社が主体となって担っており、関連する研掃材の製造販売や救命筏の修理などを子会社の内海エンジニアリングが担当しています。

(2) その他


その他事業は、土木建設設備の補修や新設を担う陸上事業と、ホテルやレストランなどの経営を行うサービス事業で構成されています。工場設備の維持管理をはじめ、地域の顧客や一般消費者に向けた宿泊施設や飲食サービスの提供を行っています。

収益源は、土木建設の請負工事代金や、ホテル・レストランにおける宿泊・飲食代、ギフトショップでの販売代金など多岐にわたります。これらの事業運営は、すべて子会社である内海エンジニアリングが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5年間で増加基調にあり、特に直近の期では470億円に達しています。経常利益も資機材価格や為替変動の影響を受けつつ、直近期には30億円台まで回復し、利益率も改善傾向を示しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 330億円 376億円 464億円 446億円 470億円
経常利益 4億円 6億円 31億円 12億円 30億円
利益率(%) 1.3% 1.7% 6.7% 2.6% 6.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 1億円 7億円 23億円 10億円 23億円

(2) 損益計算書


売上高が前期比で順調に増加したことに加え、採算性の向上により売上総利益および営業利益が大きく伸びています。生産性の向上と諸経費の削減効果が利益率の大幅な改善に寄与しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 446億円 470億円
売上総利益 26億円 44億円
売上総利益率(%) 5.9% 9.3%
営業利益 14億円 31億円
営業利益率(%) 3.2% 6.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.4億円(構成比26%)、業務委託費が1.6億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である船舶事業は、新造船の売上対象隻数の増加や改造船工事の完工などにより増収となり、利益面でも大幅な増益を達成しました。その他事業も堅調に推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
船舶事業 441億円 465億円 25億円 43億円 9.2%
その他 5億円 5億円 0.2億円 0.2億円 4.4%
連結(合計) 446億円 470億円 14億円 31億円 6.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業の利益で借入金の返済や設備投資を賄えている健全な状態を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -54億円 125億円
投資CF -12億円 -33億円
財務CF -34億円 -31億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は28.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「技術と誠意で社会に役立つ価値を創造し豊かな未来に貢献する」という企業理念のもと、顧客第一の経営姿勢を堅持しながら時代の変化を先取りし、競争力のある強固な企業体質を確立して株主の期待に応えるとともに、社会と地域に貢献する信頼性の高い企業集団を目指しています。

(2) 企業文化


中堅造船所として国の内外から高く評価される技術力をベースに、積極的な経営を推進する文化を持っています。多種多様な船舶の建造および修理を核とし、安全かつ魅力的な職場環境の構築やコンプライアンス体制の強化を重視するなど、持続可能な社会への貢献と企業価値の向上を両立させる姿勢が根付いています。

(3) 経営計画・目標


2027年3月期連結業績予想において、以下の数値目標の達成を念頭に置いています。全社一丸となってさらなる生産性の向上や固定費の削減等に努め、収益力の向上を目指しています。

* 売上高:460億円
* 営業利益:16億円

(4) 成長戦略と重点施策


環境規制や顧客ニーズに対応するプロダクトミックスの推進や、受注一貫体制によるコスト競争力の強化を図ります。豊富な建造実績を持つ中小型フェリーなどの代替需要を積極的に獲得しつつ、政府補助金を活用した設備投資による建造能力の拡大や、GHG排出量削減に寄与する高付加価値船の開発を進めていきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


ものづくりに意欲のある学生を国籍や性別、文理を問わず積極的に採用し、新たな視点を組織に取り入れる方針です。即戦力となる中途採用やリファラル採用も推進しています。育成面では新卒者への指導員配置や資格取得支援を行い、独身寮の整備や多様な休暇制度の拡充など、ワークライフバランスの充実を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.6歳 15.6年 6,856,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.6%
男性育児休業取得率 25.0%
男女賃金差異(全労働者) 65.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 72.1%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 36.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 資機材価格の市況変動

船舶の製造コストに占める資機材価格の割合が高いため、鋼材価格や塗料などの急激な価格高騰は収益を圧迫するリスクがあります。同社は仕様の見直しや機材のロット発注、海外調達を実施することでリスクの低減に努めています。

(2) 市況及び競合等の影響

世界経済の動向に伴う貨物の荷動量や船舶の需給関係による受注価格の変動が、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、多様な船種を建造するプロダクトミックスの推進や新規顧客の開拓によりリスクの分散を図っています。

(3) 人員の確保におけるリスク

造船事業において必要な人材を安定的に確保できない場合、生産性の悪化を招く恐れがあります。同社は新卒や中途の積極的な採用活動をはじめ、指導員の配置や独身寮の整備による離職率低下を図るとともに、外国人材の活用を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。