※本記事は、内海造船株式会社 の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
内海造船は、船舶の製造・修理を事業の核とし、同社グループは土木建設やホテル経営なども手掛けています。多角的な事業展開を通じて、社会インフラの整備と人々の生活を支えています。
単体従業員数は548名、連結従業員数は600名です。同社グループの事業セグメントは船舶事業とその他事業の2つです。
主な国内グループ会社は、内海エンジニアリングなどです。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
内海造船は、造船という専門性の高い産業において、従業員の長期的なキャリア形成を支援する環境が整っていると考えられます。安定した人材育成と働きやすい環境づくりに注力していることがうかがえます。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、従業員の平均勤続年数が長く、平均年齢も比較的高い傾向にあります。これは、長期にわたってキャリアを築き、専門性を高めていくことが可能な環境であることを示しています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 6,856,000円 |
| 平均勤続年数 | 15.6年 |
| 平均年齢 | 41.6歳 |
| 単体従業員数 | 548人 |
| 連結従業員数 | 600人 |
| 単体のグループ内比率 | 91.3% |
同社グループは、国内の当社および連結子会社を対象に、確定給付型の退職金制度(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる制度)を設けています。退職一時金制度がありますが、支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
なお、退職給付債務は19.3億円、年金資産は14.5億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
同社グループは、「ものづくりがしたい」という意欲を持つ学生を国籍、性別、理系・文系を問わず積極的に採用し、造船技術の伝承と新たな視点の取り入れを重視しています。中途採用においても即戦力や異業種経験者を積極的に受け入れ、多様な知見を企業風土に加えています。
従業員の給与は、技能職、事技職、事務職の採用形態に応じた「賃金規則」に基づき、本給と職能給で構成されています。役職手当や時間外勤務手当、特殊作業手当なども支給されます。人事評価は年2回実施され、昇進・昇格や賞与の査定に反映されるほか、原則として年1回の昇給が行われます。同社は、経験年数に応じて技量向上が見込める職種が多いため、「ジョブ型雇用」よりも技能が成熟した従業員に手厚い待遇となる「職能給」が実態に即していると判断しています。
人材育成においては、県外からの採用者向けに独身寮を整備し、新卒者には指導員を配置して公私にわたる相談体制を整えることで離職率の低下に努めています。入社後2ヶ月間の新規採用者研修でグループ全体の業務理解を深め、配属後も業務関連資格取得やセミナー受講によるスキルアップ機会を提供しています。また、新規採用者には入社後3年間、総務課によるフォローアップ面談を年1回実施しています。1999年からは地方自治体や地域の造船事業者と共同で職業訓練校「因島技術センター」を運営し、全国から研修生を受け入れています。
社内環境整備では、ワーク・ライフ・バランスの充実を目指し、介護休業制度の365日取得可能化、各種休暇・休業制度の拡充、短時間勤務や年次有給休暇の時間単位取得制度などを導入しています。健康保険組合と連携した健康情報提供サービスやウォーキングラリーの開催を通じて、従業員の健康意識向上と取り組みを後押ししています。感染症発生時には、リモート勤務や時差出勤などの対策も講じています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データを示します。連結子会社は法定開示の公表義務対象外です。集計対象期間は2025年4月1日から2026年3月31日です。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合 | 1.6% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 25.0% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(全労働者) | 65.3% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(正規雇用労働者) | 72.1% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(非正規雇用労働者) | 36.1% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
内海造船は、船舶の製造と修理を事業の核とし、土木建設やホテルの経営なども手掛ける企業グループです。同社グループは、多様な事業を通じて収益を上げています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、船舶の製造・修理を主軸に、陸上事業やサービス事業も展開しています。収益は主に新造船の建造や改修船工事から得ており、資機材の調達から生産性向上、コスト削減まで一貫して取り組んでいます。また、特定の顧客への販売が収益の大きな割合を占める傾向が見られます。
船舶事業
内海造船は、船舶の製造・修理を主な事業としています。新造船の建造や改修船工事が収益の源泉となっており、同型船の連続建造や新分野のLNG燃料フェリー、輸送艦などの引き渡しを行っています。運営は内海造船が行い、内海エンジニアリングは研掃材の製造販売や救命筏の修理などを通じて事業を支えています。
その他の事業セグメント
このセグメントには、陸上事業とサービス事業が含まれます。陸上事業では、土木建設や同社設備の建設・補修を手掛けています。サービス事業では、顧客施設の管理・運営の請負、ギフトショップの経営、ホテル・レストランの経営などを行っています。運営は内海エンジニアリングが行っています。
| セグメント | 売上高(2025年3月期) | 売上高(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 船舶事業 | 441億円 | 465億円 |
| その他の事業セグメント | 5.4億円 | 5.2億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの業績は、直近5年間で売上高、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益ともに変動が見られますが、全体としては成長傾向にあります。特に当期は、売上高が前期から増加し、経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益は前期から大きく伸びています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 330億円 | 376億円 | 464億円 | 446億円 | 470億円 |
| 経常利益 | 4.2億円 | 6.4億円 | 30.9億円 | 11.8億円 | 30.0億円 |
| 経常利益率 | 1.3% | 1.7% | 6.7% | 2.6% | 6.4% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 1.4億円 | 7.4億円 | 22.6億円 | 10.2億円 | 23.0億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 84.49 | 435.07 | 1,333.94 | 600.56 | 1,356.60 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたりの売上高は、前期から当期にかけて増加しています。また、従業員1人あたりの営業利益も前期から大きく向上しており、組織全体の生産性が高まっている傾向を示しています。これらの指標の改善は、同社グループの収益体質の強化と効率的な事業運営への取り組みが反映されていると考えられます。
| 指標 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 73.7百万円 | 78.4百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 2.3百万円 | 5.1百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
内海造船グループは、財務基盤の強化とキャッシュフローの改善を進めています。本業で安定した資金を生み出し、将来に向けた投資も行える財務状況を示しています。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
内海造船グループの財務基盤は、自己資本比率とROE(自己資本利益率)の推移から確認できます。自己資本比率は前期から改善し、当期は28.7%となっています。これはプライム市場上場製造業の平均46.8%と比較すると低い水準ですが、前期の25.6%からは上昇しています。
ROE(自己資本利益率)は当期18.9%と、前期の9.9%から大きく改善しました。プライム市場平均の9.4%を上回る水準となっています。手元資金を示す現金及び預金は、前期の47.0億円から当期は108億円に増加しており、資金の厚みが増している状況です。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 109億円 | 135億円 |
| 自己資本比率 | 25.6% | 28.7% |
| ROE(自己資本利益率) | 9.9% | 18.9% |
| 現金及び預金 | 47.0億円 | 108億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
内海造船グループのキャッシュフローは、当連結会計年度において大きく改善しました。本業の稼ぎを示す営業活動によるキャッシュフローは、前期に53.8億円の使用となっていましたが、当期は124.6億円の獲得となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益の計上、売上債権及び契約資産の減少、契約負債の増加、消費税等の支払額又は還付額の増加によるものです。
投資活動によるキャッシュフローは、前期の12.0億円の使用から当期は32.5億円の使用に増加しています。これは有価証券の取得による支出や固定資産の取得による支出が主な要因です。財務活動によるキャッシュフローは、前期の34.4億円の使用から当期は31.2億円の使用に減少しており、短期借入金の純減額や長期借入金の返済による支出が主な要因となっています。
これらの結果、事業活動と投資活動を合わせたフリーキャッシュフローは、前期の△65.8億円から当期は92.1億円の獲得に転じました。本業で得た資金が投資を上回り、自由に使える資金が増加している状況です。これは、同社グループが安定した事業運営を継続し、将来に向けた投資も行える財務的な余力があることを示しています。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | △53.8億円 | 124.6億円 |
| 投資CF | △12.0億円 | △32.5億円 |
| 財務CF | △34.4億円 | △31.2億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | △65.8億円 | 92.1億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループの主力事業である新造船事業において、製造コストに占める資機材価格の割合が高く、市況変動が財政状態と経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、世界経済の動向に伴う貨物の荷動量や船舶の需給関係による受注価格の変動も、財政状態と経営成績に影響を与える可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループでは、必要な人員が確保できない場合に生産性が悪化するなど、財政状態と経営成績に影響を及ぼす可能性があると認識しています。新卒採用活動の強化や中途採用、従業員からの紹介による採用制度の導入、外国人材の積極的な活用などにより、安定的な人員確保に努めている状況です。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
内海造船は、顧客第一の経営姿勢を堅持し、時代の変化を先取りしながら、社会と地域に貢献する信頼性の高い企業集団を目指しています。中堅造船所として培った技術力を核に、多種多様な船舶の建造・修理を通じて、競争力のある企業体質を確立しています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
内海造船グループは、「技術と誠意で社会に役立つ価値を創造し豊かな未来に貢献する」という企業理念を掲げています。顧客第一の経営姿勢を堅持し、時代の変化を先取りしながら、競争力のある強固な企業体質を確立することを目指しています。株主の期待に応えるとともに、社会と地域に貢献する信頼性の高い企業集団となることをビジョンとしています。中堅造船所として高く評価される技術力を核に、多種多様な船舶の建造と修理を通じて、顧客の信用を高め、業績向上に努めています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
内海造船グループは、顧客第一の経営姿勢を堅持し、社会と地域に貢献する信頼性の高い企業集団を目指すことを価値観としています。受注一貫体制の充実によるコスト競争力の強化とリスク管理の徹底を重視し、スピーディーかつ柔軟な対応で顧客満足度向上に努めています。また、内部統制及びコンプライアンス(法令順守)体制の強化を掲げ、健全な経営を推進しています。ものづくりへの情熱を持つ人材を国籍、性別、理系・文系問わず積極的に採用し、多様な知見を取り入れることを大切にしています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
内海造船グループは、今後の重点テーマとして、環境規制や顧客ニーズに対応する多種多様な船種船型の開発・営業・製造(プロダクトミックス)を推進しています。内部統制及びコンプライアンス(法令順守)体制の強化にも取り組んでいます。また、戦略的な人材採用による若手技術者・技能者の確保と教育の実施を掲げています。省エネ・環境保護活動の推進、働き方改革の推進、安全かつ魅力的な職場環境の構築も重要な課題としています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
内海造船は監査役制度を採用しており、取締役会が業務執行の決定と監督を担っています。社外取締役が経営監視機能を強化する体制となっています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
内海造船の筆頭株主は事業会社であるカナデビアです。同社は内海造船の持分法適用関連会社であり、資本構成において特定の事業会社が大きな影響力を持つ構造となっています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| カナデビア | 39.37% |
| 広島銀行 | 4.98% |
| SBI証券 | 3.08% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は11名(男性11名・女性0名)で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は寺尾弘志氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 寺尾 弘志 | 代表取締役社長 | 1983年4月日立造船(現カナデビア)入社。ユニバーサル造船、ジャパン マリンユナイテッドを経て同社へ。新造船事業本部長などを歴任し、2024年6月より現職。 |
| 岡野 修覚 | 取締役 修繕船事業部長 | 1980年4月日立造船(現カナデビア)入社。ユニバーサル造船、ジャパン マリンユナイテッドを経て同社へ。修繕船事業部長などを歴任し、2020年6月より現職。 |
| 柳瀬 純一 | 取締役 営業本部長 | 1981年4月日立造船(現カナデビア)入社。ユニバーサル造船、ジャパン マリンユナイテッドを経て同社へ。営業本部長などを歴任し、2023年6月より現職。 |
| 岡野 行孝 | 取締役 新造船事業本部長 兼 知財管理室担当役員 兼 知財管理室長 | 1990年11月同社入社。新造船事業本部設計本部で要職を歴任。2021年6月より取締役、2024年6月より新造船事業本部長、2024年8月より現職。 |
社外取締役は、宮崎寛氏(カナデビア顧問)、若野晃一氏(元ユニバーサル造船取締役専務執行役員)、亀﨑一彦氏(元ジャパン マリンユナイテッド常務執行役員)です。
同社は監査役会設置会社です。社外取締役は取締役会に出席し、経営全般にわたる発言を通じて客観的・中立的な監視機能を果たしています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
内海造船の取締役の報酬は、固定報酬としての基本報酬により構成されています。業務執行取締役および監督機能を担う社外取締役ともに、基本報酬のみが支払われる体系となっています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 5名 | 96百万円 | 19.2百万円 |
| 監査役(社外除く) | 2名 | 23百万円 | 11.5百万円 |
| 社外役員 | 5名 | 11百万円 | 2.2百万円 |
なお、取締役の支給人員は、無報酬の社外取締役1名を除いています。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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