内海造船 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

内海造船 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。船舶の製造・修理を中核事業とし、貨物船やフェリー等の建造および修繕を行う。直近決算では、新造船の引渡隻数減少や資機材価格高騰の影響等により、減収減益となった。


※本記事は、内海造船株式会社 の有価証券報告書(第100期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 内海造船ってどんな会社?


船舶の建造と修理を事業の核とし、フェリーや貨物船などの多様な船舶を手掛ける造船メーカーです。

(1) 会社概要


1944年に瀬戸田造船として設立され、1974年に大阪証券取引所および広島証券取引所へ上場しました。その後、2005年にニチゾウアイエムシー、2006年にテスビックを吸収合併し事業を拡大させています。2022年の東京証券取引所の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しました。

連結従業員数は606名、単体従業員数は555名です。筆頭株主は事業会社のカナデビアで、第2位は証券会社のSBI証券、第3位は地方銀行の広島銀行です。

氏名 持株比率
カナデビア 39.37%
SBI証券 6.00%
広島銀行 4.97%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は寺尾弘志氏です。社外取締役比率は27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
寺尾 弘志 代表取締役社長 ジャパン マリンユナイテッド商船事業部有明事業所品質保証部長、同社常務執行役員などを経て、2024年6月より現職。
岡野 修覚 取締役修繕船事業部長 ジャパン マリンユナイテッド艦船事業部因島工場長、同社執行役員修繕船事業部長付などを経て、2020年6月より現職。
柳瀬 純一 取締役営業本部長 ジャパン マリンユナイテッド常務執行役員営業本部長、同社執行役員営業本部長などを経て、2023年6月より現職。
岡野 行孝 取締役新造船事業本部長 兼設計本部長 兼 詳細設計部長 新造船事業本部設計本部総合統括部長兼船殻設計部長、同社執行役員新造船事業本部副事業本部長などを経て、2021年6月より現職。


社外取締役は、宮崎寛(カナデビア常務執行役員)、若野晃一(元日立造船取締役専務執行役員)、亀﨑一彦(元ユニバーサル造船常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「船舶事業」および「その他」事業を展開しています。

船舶事業


一般貨物船、自動車運搬船などの外航船や、フェリー、RORO船などの内航船の製造および修理を行っています。また、研掃材の製造販売や救命筏の修理なども手掛けています。

収益は、船主などの顧客から受け取る新造船の建造代金や船舶の修繕料、製品の販売代金から成り立っています。運営は主に同社が行い、一部の製造販売や修理などは子会社の内海エンジニアリングが行っています。

その他


土木建設工事、同社設備の新設・補修、顧客施設の管理・運営請負、ギフトショップの経営、同社所有建物を使用したホテル・レストランの経営などを行っています。

収益は、顧客からの工事代金、施設管理運営料、商品の販売代金、ホテル・レストランの利用料などから成り立っています。運営は主に子会社の内海エンジニアリングが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2023年3月期にかけて売上高は増加傾向にありましたが、2024年3月期に大きく伸長した後、2025年3月期は減収となりました。利益面では、2021年3月期は赤字でしたが、翌期以降黒字転換し、2024年3月期に大幅な増益を記録しました。直近の2025年3月期は利益率が低下し、減益となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 311億円 330億円 376億円 464億円 446億円
経常利益 -9億円 4億円 6億円 31億円 12億円
利益率(%) -2.8% 1.3% 1.7% 6.7% 2.6%
当期利益(親会社所有者帰属) -10億円 1億円 7億円 23億円 10億円

(2) 損益計算書


前期と比較して売上高が減少し、売上総利益および営業利益も大きく減少しました。売上総利益率は前期の9.4%から5.9%へ、営業利益率は6.9%から3.2%へと低下しており、収益性が悪化しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 464億円 446億円
売上総利益 44億円 26億円
売上総利益率(%) 9.4% 5.9%
営業利益 32億円 14億円
営業利益率(%) 6.9% 3.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3億円(構成比25%)、役員報酬が2億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の船舶事業は、新造船の売上隻数減少や船種構成の違いにより減収となり、資機材価格や人件費の高騰、修繕船の反動減等により大幅な減益となりました。その他事業は増収となり、前期の損失から黒字転換しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
船舶事業 459億円 441億円 42億円 25億円 5.6%
その他 11億円 11億円 -0億円 0億円 1.4%
調整額 -6億円 -6億円 0億円 0億円 -
連結(合計) 464億円 446億円 32億円 14億円 3.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 67億円 -54億円
投資CF -8億円 -12億円
財務CF -5億円 -34億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は25.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


顧客第一の経営姿勢を堅持しながら時代の変化を先取りし、競争力のある強固な企業体質を確立して株主の期待に応えるとともに、社会と地域に貢献する信頼性の高い企業集団を目指しています。

(2) 企業文化


「技術と誠意で社会に役立つ価値を創造し豊かな未来に貢献する」という理念のもと、すべてのステークホルダーの声を重視する文化があります。優秀なベテランの有効活用による技術・技能の伝承や、職業訓練校を通じた若手技術者の育成に注力するとともに、事業活動を通じて環境保全や省エネルギーに取り組む姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期の業績予想達成を念頭に、全社一丸となって生産性の向上や固定費の削減等に努め、収益力の向上を目指して経営を行っています。

* 売上高455億円
* 営業利益7億円

(4) 成長戦略と重点施策


新造船事業では多様な船種のプロダクトミックス推進や、受注一貫体制の充実によるコスト競争力の強化、2工場への設備投資による業容拡大を図ります。また、ゼロエミッション船などの新分野開発や生産にも注力し、以下の課題に取り組みます。

* エコシップ等の顧客ニーズに対応する多種多様な船種船型の開発・営業・製造の推進
* 戦略的な資材費対策と固定費の削減
* 受注一貫体制の充実とリスク管理の徹底

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


ものづくり志向の学生を積極的に採用し、中途採用では即戦力や異業種経験者を取り入れて多様性を確保する方針です。育成面では、新卒者への指導員配置やフォローアップ面談、職業訓練校での研修を実施しています。また、独身寮の整備や介護休業制度の充実、短時間勤務制度など、ワーク・ライフ・バランスに配慮した環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.5歳 15.7年 5,868,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 1.7%
男性労働者の育児休業取得率 25.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 60.1%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 65.5%
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) 45.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 資機材価格の市況変動


新造船事業は受注から引渡しまで長期間を要し、製造コストに占める資機材の割合が高いため、価格変動の影響を大きく受けます。鋼材や機材の価格上昇に対し、仕様の見直しや歩留まり向上、海外調達などの対策を行っています。

(2) 市況及び競合等の影響


世界経済の動向による貨物荷動量や船舶需給、受注価格の変動が業績に影響します。新燃料船への移行期における船主の様子見やコスト上昇による発注控えに対し、プロダクトミックスや修繕船事業との連携、新規顧客開拓によりリスク低減を図っています。

(3) 人員の確保におけるリスク


必要な人員が確保できない場合、生産性が悪化する可能性があります。新卒・中途採用の強化やリファラル採用の導入、独身寮の整備や指導員配置による定着率向上、技能実習制度や特定技能制度による外国人材の活用を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。