日本車輌製造 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本車輌製造 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本車輌製造は、東証プライムおよび名証プレミアに上場する鉄道車両の老舗メーカーです。JR東海の連結子会社として、鉄道車両のほか、建設機械や輸送用機器、鉄構、エンジニアリング事業を展開しています。2025年3月期の連結業績は、売上高963億円、経常利益73億円となり、前期比で増収増益を達成しました。


※本記事は、日本車輌製造株式会社 の有価証券報告書(第196期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本車輌製造ってどんな会社?


鉄道車両製造のパイオニアとして1896年に創業し、現在はJR東海グループの中核企業として多様なインフラ製品を展開する重工業メーカーです。

(1) 会社概要


1896年に名古屋で設立され、1920年代には機関車工場を併設して総合車両メーカーとなりました。1949年に株式を上場し、1959年には建設機械の製作を開始するなど事業を多角化しています。2008年に東海旅客鉄道と資本業務提携を結び、同社の連結子会社となりました。2012年には米国工場の操業を開始しましたが、2018年に同工場を閉鎖しています。

2025年3月31日時点の従業員数は連結で2,211名、単体で2,104名です。株主構成については、筆頭株主は親会社である東海旅客鉄道(JR東海)であり、第2位、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
東海旅客鉄道 50.95%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.34%
日本カストディ銀行(信託口) 2.35%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は田中 守氏が務めています。取締役7名のうち3名が社外取締役であり、社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
田中 守 代表取締役取締役社長 1982年日本国有鉄道入社。東海旅客鉄道代表取締役副社長などを経て、2023年6月より現職。
深谷 道一 代表取締役専務取締役総合企画本部長コンプライアンス担当 1982年日熊工機入社。同社機電本部長、建設機械本部長などを経て、2025年6月より現職。
阿彦 雄一 常務取締役鉄道車両本部長 1992年東海旅客鉄道入社。同社安全対策部次長、日本車輌製造執行役員を経て、2025年6月より現職。
冨田 庸公 常務取締役建設機械本部長 1989年入社。機電本部鳴海製作所長、執行役員建設機械本部副本部長などを経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、新美篤志(元トヨタ自動車代表取締役副社長)、加藤倫子(弁護士・元名古屋大学大学院教授)、西畑彰(元三井造船取締役常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「鉄道車両事業」「建設機械事業」「輸送用機器・鉄構事業」「エンジニアリング事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 鉄道車両事業

新幹線電車、特急型車両、通勤型車両、気動車、ハイブリッド車などの製造・販売を行っています。また、部品の製造や役務提供に加え、米国においては既存顧客に対するサービス業務などを展開しています。

主な収益源は、鉄道事業者への車両販売代金や部品販売、サービス提供による対価です。運営は主に日本車輌製造が行い、部品製造等は子会社の日車エンジニアリングが担当しています。

(2) 建設機械事業

杭打機、全回転チュービング装置、アースドリル、障害撤去機などの建設機械の製造・販売を行っています。都市部の再開発やインフラ整備などの建設需要に対応する製品群を提供しています。

主な収益源は、建設会社やレンタル会社等への機械本体および部品の販売代金、修理・サービス料です。運営は日本車輌製造が行い、販売・修理の一部を子会社の重車輛工業および関連会社の日泰サービスが担っています。

(3) 輸送用機器・鉄構事業

タンクローリ、大型陸上車両(キャリヤ)、無人搬送装置などの輸送用機器のほか、道路橋や鉄道橋などの新設および補修・保全を行っています。輸送インフラと社会インフラの両面を支える事業です。

主な収益源は、物流事業者や製鉄所等への車両販売代金、および官公庁や鉄道事業者等からの橋梁工事請負代金です。運営は日本車輌製造が中心となって行っています。

(4) エンジニアリング事業

鉄道事業者向けの検修設備等の機械設備、穀物乾燥調製貯蔵施設などの営農プラント、製紙関連設備の製造・販売を行っています。

主な収益源は、鉄道事業者、農業協同組合(JA)、製紙メーカー等への設備販売および設置工事代金です。運営は日本車輌製造が行っています。

(5) その他

厚生業務の請負など、上記セグメントに含まれない附帯事業を行っています。

主な収益源は、厚生業務等のサービス提供に対する対価です。運営は子会社の日車ビジネスアソシエイツが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は900億円台後半から800億円台後半の間で推移し、直近の2025年3月期は963億円まで回復しています。経常利益は変動がありながらも黒字を維持しており、2025年3月期は73億円で利益率7.6%と収益性が向上しています。当期純利益も2025年3月期は64億円となり、堅調な推移を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 994億円 940億円 980億円 881億円 963億円
経常利益 93億円 63億円 45億円 63億円 73億円
利益率(%) 9.4% 6.7% 4.6% 7.2% 7.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 84億円 57億円 30億円 52億円 62億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は881億円から963億円へ約9.4%増加しました。これに伴い売上総利益も141億円から147億円へ増加しています。売上総利益率は約15%台で推移しています。営業利益は61億円から69億円へ増加し、営業利益率も6.9%から7.2%へと改善しており、増収効果が利益に結びついています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 881億円 963億円
売上総利益 141億円 147億円
売上総利益率(%) 16.0% 15.2%
営業利益 61億円 69億円
営業利益率(%) 6.9% 7.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料賞与手当が31億円(構成比39%)、研究開発費が4億円(同5%)を占めています。

(3) セグメント収益


鉄道車両事業は、JR東海やJR西日本向けの新幹線電車などの売上が増加し増収となりましたが、製品構成の変化により減益となりました。建設機械事業は国内向け大型杭打機等の売上が好調で増収増益でした。輸送用機器・鉄構事業は増収に加え、個別案件の利益改善により大幅な増益を達成しました。一方、エンジニアリング事業は鉄道事業者向け機械設備の減少等により減収となり、損失計上となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
鉄道車両事業 406億円 447億円 28億円 27億円 6.1%
建設機械事業 212億円 228億円 38億円 43億円 18.7%
輸送用機器・鉄構事業 184億円 222億円 10億円 18億円 8.1%
エンジニアリング事業 77億円 65億円 -3億円 -8億円 -12.7%
その他 1億円 1億円 1億円 2億円 330.8%
調整額 -8億円 -6億円 -13億円 -12億円 -
連結(合計) 881億円 963億円 61億円 69億円 7.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

日本車輌製造は、鉄道車両事業、建設機械事業、輸送用機器・鉄構事業の売上高増加により、堅調な事業活動を展開しています。営業活動によるキャッシュ・フローは、売掛金・契約資産の回収が進んだことや利益の増加により、資金が増加しました。一方、投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産への投資が増加したため、資金が減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済が減少したことで、資金の減少幅は縮小しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -25億円 14億円
投資CF -14億円 -17億円
財務CF -40億円 -36億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「インフラストラクチャー創造企業」として、健全経営のもと、最高品質のものづくりを通じて社会基盤の充実と発展に幅広く貢献していくことを企業理念としています。

(2) 企業文化


「お客様の満足」「会社の発展」「規範の遵守」に価値を置き、社員一人ひとりの行動指針として「責任感」「コミュニケーション」「人材育成」「自己変革」「挑戦」の5つを掲げて事業を運営しています。また、「ものづくりは人づくり」を信念とし、人材育成や健康経営にも積極的に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「日車変革2030」において、2030年のありたい姿として「現場に安全と信頼をスマートに提供し、お客様の課題を解決するビジネスパートナーになる」という長期ビジョンを掲げています。

* 連結売上高経常利益率5%の安定的確保

(4) 成長戦略と重点施策


「日車変革2030」の達成に向け、「収益力の徹底強化」「成長のための事業基盤改革」「ビジネスモデル変革の実現」を3本柱として推進しています。具体的には、鉄道車両における次世代ブランド「N-QUALIS」による差別化や、建設機械の電動化・自動化、大型陸上車両の自動運転システム「N-SEMAC」の開発などに注力しています。また、生産プロセスの改善によるコスト低減や、既存技術を活かした保守・保全事業の拡大にも取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「最高品質のものづくり」を実現するためには優秀な人材の確保と育成が不可欠であるとし、「ものづくりは人づくり」を信念に掲げています。若手から管理職までの階層別研修や技能研修を実施するほか、2022年には「日本車両グループ安全安心・健康宣言」を策定し、従業員のウェルビーイング実現に向けた健康経営を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.6歳 15.4年 6,706,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 62.5%
男女賃金差異(全労働者) 72.6%
男女賃金差異(正規) 76.0%
男女賃金差異(非正規) 68.3%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 受注契約に関するリスク

請負金額の大きい重要な受注案件については、事前にリスク審査を行っていますが、受注後の原材料高騰や設計変更などが想定を超えて発生した場合、事業採算が悪化し、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料及び部品調達のリスク

受注から納入まで時間を要する個別受注案件が多いため、需給環境の変化を受けやすい特性があります。原材料や部品の急激な価格変動を販売価格に転嫁できない場合や、大幅な納期遅延が発生した場合には、業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

(3) 気候変動による自然災害リスク

気候変動に起因する自然災害が激甚化し、同社グループや取引先ベンダーの生産・販売施設が損傷などの被害を受けた場合、事業活動に支障をきたし、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。