※本記事は、近畿車輛株式会社 の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
近畿車輛グループは、鉄道車両関連事業と不動産賃貸事業を展開しています。鉄道車両の製造を主軸とし、子会社が補助業務や海外案件獲得、技術エンジニアリングを担うことで、国内外で事業を広げています。
単体従業員数は989名、連結従業員数は1,163名です。セグメントは鉄道車両関連事業、不動産賃貸事業の2つです。
近畿車輛は、鉄道車両の製造を主に行い、子会社のケーエステクノスに車両製造に関わる補助業務を委託しています。また、不動産賃貸事業も近畿車輛が展開しており、近畿日本鉄道へ鉄道車両や部品を販売しています。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
近畿車輛は、鉄道車両の製造を通じて持続可能な社会の実現に貢献している企業です。同社グループは、公共性の高い事業を展開する中で、サステナビリティを経営の重要な柱と位置付けています。特に「人財(人的資本)」を重視し、従業員が長く安心して働ける環境づくりに力を入れていることがうかがえます。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、平均勤続年数が長く、従業員が安定してキャリアを築いている傾向が見られます。平均年齢も40代半ばであり、経験豊富な人材が多数在籍していることがうかがえる構成です。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 6,052,000円 |
| 平均勤続年数 | 21.3年 |
| 平均年齢 | 45.4歳 |
| 単体従業員数 | 989人 |
| 連結従業員数 | 1,163人 |
| 単体のグループ内比率 | 85.0% |
同社は、確定給付型(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる)と確定拠出型(会社が拠出した資金を従業員が運用する)の両方の退職給付制度を採用しています。同社は確定給付型と確定拠出型、在外連結子会社は確定拠出型の年金制度を設けています。
退職一時金制度もあります。ただし支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。退職給付債務は22.3億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
同社は、要員減少や人材確保の厳しさが増す中で、持続的な成長と安定した事業運営を実現するため、「人材の確保・定着・育成」を重要課題と位置付けています。人材の確保においては、採用活動のエリア拡大や採用形態の拡充に努め、業務の効率化や多能工化を進めています。
人材の定着に向けては、評価制度の透明化や資格・技能に応じた手当の拡充を進めるとともに、メンタルヘルス支援や従業員エンゲージメント調査、職場環境改善に取り組んでいます。人材育成では、計画的な階層別教育や技能・技術教育を充実させ、資格取得支援や自己啓発を促進し、自ら学び挑戦できる人材の育成を目指しています。
従業員の給与その他の給付については、職務内容や役職に応じた適切な報酬水準を設定し、業績や行動を適正に評価し成果に報いる制度を運用しています。経済環境や労働市場の動向を踏まえた定期的な見直しを行うことで、競争力のある処遇を維持し、優秀な人材の確保・定着を図る方針です。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 2.1% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 55.6% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 90.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 93.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 102.7% |
人的資本(人財)
2025年度は65歳定年延長を実施し、健康優良法人認証と従業員の健康指導に取り組んでいます。2026年度は要員定着施策として従業員の健康関連指標を引き続き採用し、エンゲージメントスコアの測定に取り組む方針です。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 喫煙率 | 19.5% |
| 検診における有所見率 | 54.1% |
| 高ストレス者比率 | 16.8% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
近畿車輛は、鉄道車両関連事業と不動産賃貸事業の二つの事業を展開しています。国内外の顧客に対し、鉄道車両の製造・販売を主力としています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、鉄道車両の製造・販売を主軸とし、不動産賃貸事業も展開する企業です。国内外の鉄道会社を主要な顧客としています。顧客との長期契約に基づくプロジェクト型の収益モデルが特徴です。残存履行義務に配分された取引価格が多額に上り、将来にわたる収益認識が見込まれます。
鉄道車両関連事業
同社グループの主力事業であり、JR向け電車、公民鉄向け各種電車、海外向け電車、車両保守部品の製造・販売を行っています。収益は、国内外の鉄道会社への車両販売や部品供給から得ています。西日本旅客鉄道株式会社や近畿日本鉄道株式会社といった特定の顧客への売上集中が見られます。当連結会計年度においては、国内向け車両の増加により売上高が増加しました。
不動産賃貸事業
東大阪商業施設や所沢商業施設を中心とした不動産の賃貸を行っています。収益は、商業施設の賃料収入から得ています。
同社グループは、米国やその他地域(エジプト・アラブ共和国、アラブ首長国連邦など)への売上もあり、海外展開も行っています。
| セグメント | 売上高(2025年3月期) | 売上高(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 鉄道車両関連事業 | 294億円 | 363億円 |
| 不動産賃貸事業 | 8.2億円 | 8.5億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの売上高は、直近の連結会計年度において増加傾向を示しています。一方で、営業利益および経常利益は前期から減少しており、営業利益は損失に転じています。親会社株主に帰属する当期純利益は大幅な増益となりましたが、これは政策保有株式の売却による特別利益が主な要因となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 393億円 | 359億円 | 432億円 | 303億円 | 371億円 |
| 経常利益 | 21.8億円 | 12.8億円 | 50.1億円 | 3.4億円 | 1.9億円 |
| 経常利益率 | 5.5% | 3.6% | 11.6% | 1.1% | 0.5% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 27.6億円 | 11.8億円 | 43.7億円 | 5.6億円 | 15.7億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 401.92 | 171.97 | 635.61 | 81.48 | 228.32 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたり売上高は、前期と比較して増加しています。一方で、従業員1人あたり営業利益は前期から減少しており、当連結会計年度では損失を計上しています。これは、売上高の増加が見られるものの、本業における収益性が課題となっている状況を示しています。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 24.7百万円 | 31.9百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 0.2百万円 | △0.2百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
財務の安定性の観点から、同社グループの現在地を示します。
同社グループは、本業で資金を創出し、投資活動も行いつつ、資金の余剰を確保している状況がうかがえます。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの財務基盤は、自己資本比率とROE(自己資本利益率)、そして手元資金の状況から確認できます。
自己資本比率は企業の安定性を示す重要な指標であり、当期は前期から減少しているものの、プライム市場の製造業平均を上回る水準を維持しています。
ROEは株主資本をどれだけ効率的に使って利益を出したかを示す指標であり、当期は前期から改善していますが、プライム市場平均を下回っています。
手元資金の厚みは、不況時や予期せぬ事態への耐性を示すものとなります。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 336億円 | 360億円 |
| 自己資本比率 | 57.1% | 49.3% |
| ROE(自己資本利益率) | 1.7% | 4.5% |
| 現金及び預金 | 63.5億円 | 169億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
営業活動によるキャッシュ・フローは、当期は収入となり、前期の支出から大きく増加しました。
これは主に契約負債の増加によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出があり、引き続き支出となっていますが、その額は前期から減少しています。
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の返済による支出が増加し、支出となりました。
これらの結果、フリーキャッシュ・フローは当期に収入となり、前期の支出から改善しています。
同社グループは本業で資金を創出し、投資活動も行いつつ、資金の余剰を確保している状況がうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | △48.6億円 | 156.3億円 |
| 投資CF | △5.8億円 | △5.6億円 |
| 財務CF | △14百万円 | △43.4億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | △54.3億円 | 150.7億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは鉄道車両関連事業の売上高が連結売上高の大宗を占める実質的な鉄道車両専業メーカーであり、新製車両の需要の動向に左右されやすい事業構成となっています。経済情勢等の影響により受注競争が激化した場合や厳しい条件での受注となった場合、業績に影響を及ぼすリスクがあります。
また、外貨建て取引の比率が半分近くになる場合があり、為替の動向によっては同社グループの業績に影響を及ぼすリスクがあります。
③ 人材・組織に関するリスク
鉄道車両の製造は多品種少量生産であり、多くの熟練社員がほぼ手作業で製品を組み立てています。これらの技術力は一朝一夕に伝承されるものではなく、教育・訓練を充実させて技術伝承に努めています。
少子高齢化と団塊の世代の退職が進むなか、将来を支える優秀な若年層の人材確保が年々難しくなっており、人材が確保できない場合は、同社グループの業績に影響を及ぼすリスクがあります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
近畿車輛は、鉄道車両製造を通じて豊かな人間環境の実現に貢献することを企業理念とし、持続可能な社会の実現を目指す企業です。サステナビリティを経営の重要課題と位置づけ、環境と人財を重視した企業活動を展開しています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループは、「我々は、常に誠意と熱意を持って、優れた技術と創造力を発揮し、豊かで快適な人間環境の実現に貢献します。」を企業理念として掲げています。創業以来、人と物の移動手段の近代化のために鉄道車両製造に携わってきました。
また、「サステナビリティ」理念を制定し、同社グループの社会的責任とその姿勢を明確にしています。環境に優しく多様な人にとって快適な鉄道車両の供給を通じて、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、「サステナビリティ」理念と「サステナビリティ」活動方針を制定し、これに基づいた企業活動を展開しています。サステナビリティ活動を進めるためにサステナビリティ委員会を設置し、代表取締役社長を委員長とした経営会議メンバーが委員として任にあたる体制を構築しています。
この体制により、サステナビリティへの取り組みを経営レベルで推進しています。委員会での議論は経営会議メンバー間で共有され、全社を通じた速やかな情報共有と迅速な意思決定を実現しています。同社グループは、サステナビリティ行動指針に基づき、製品、環境、人財(人的資本)の3分野で取り組みを進めることを重視しています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、短期的には原材料不足や物価上昇、製造原価上昇が懸念される経営環境にあると認識しています。中長期的には、省エネルギー化やCO2削減に向けた鉄道分野へのGX対応要請、旅客サービス向上を背景とした国内外での車両新造需要に対応していく方針です。
DXや製造設備改良によるものづくりの変革で生産性を高め、製造における再生可能エネルギー電力の使用などにより持続可能な企業活動を推進しています。人財面では、少子化に伴う人材確保の難しさを踏まえ、採用、働き甲斐、能力向上の3つを課題としています。多様な人財がやりがいと誇りを持って働けるよう、人事施策、社員教育、職場環境の整備を行い、要員減の状態でも事業を持続可能にする体制の実現を目指しています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
近畿車輛は、公正で透明性の高いコーポレート・ガバナンスの確立に努めています。取締役会と監査役会が相互に経営を監視し、社外役員が客観的な視点から助言・監督を行う体制を構築しています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
近畿車輛の株主構成を見ると、筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(近畿日本鉄道退職給付信託口)であり、実質的な議決権は近畿日本鉄道が保有しています。また、近鉄グループホールディングスも上位株主として名を連ねており、近鉄グループが同社の主要な株主として経営を支えていることがうかがえます。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(近畿日本鉄道退職給付信託口) | 30.30% |
| 近鉄グループホールディングス | 14.11% |
| ECM MF(常任代理人 立花証券) | 8.45% |
| JEFFERIES LLC-SPEC CUST AC FBO CUSTOMER(常任代理人 シティバンク、エヌ・エイ 東京支店) | 6.92% |
| 西日本旅客鉄道 | 5.02% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は13名(男性12名・女性1名)で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長は吉川富雄氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 吉川 富雄 | 代表取締役社長 | 1981年4月近畿日本鉄道株式会社(現近鉄グループホールディングス株式会社)入社。同社鉄道事業本部技術局車両部長などを歴任。2007年11月同社理事車両設計部部長。2012年6月同社取締役、2014年6月同社監査役(常勤)。2023年6月より現職。 |
| 青木 裕孝 | 取締役専務執行役員車両統括資材部担任 | 1982年4月同社入社。2011年7月同社資材部長、2013年7月同社理事営業本部副本部長兼海外事業室長。2015年6月同社取締役、2019年7月同社取締役常務執行役員。2024年6月より現職。 |
| 田畑 果津志 | 取締役常務執行役員製作所担任 | 1984年4月近畿日本鉄道株式会社(現近鉄グループホールディングス株式会社)入社。1999年11月同社車両事業管理室次長。2012年7月同社車両エンジニアリング部部長。2019年6月同社取締役。2023年6月より現職。 |
| 杉森 尚志 | 取締役常務執行役員事業企画室・海外事業室担任 | 1993年4月西日本旅客鉄道株式会社入社。2013年6月同社新幹線管理本部博多総合車両所助役。2018年6月株式会社ジェイアール西日本新幹線テクノス取締役経営企画部長。2023年6月より現職。 |
| 岡島 成吉 | 取締役常務執行役員経営管理室・総務部・人事部・品質保証部担任 | 1990年4月同社入社。2015年7月同社営業企画部長、2016年7月同社事業企画室部長。2019年7月同社執行役員事業企画室長。2024年6月より現職。 |
| 岡崎 尚毅 | 取締役常務執行役員経理部担任 | 1989年4月近畿日本鉄道株式会社(現近鉄グループホールディングス株式会社)入社。近鉄ケーブルネットワーク株式会社総務部長などを歴任。2025年6月より現職。 |
社外取締役は、野崎篤彦氏(フィンテック グローバル取締役監査等委員)、小森悟氏(京都大学名誉教授)、大津谷正和氏(元住友電設常務取締役)です。
同社は監査役会設置会社であり、取締役会は取締役相互の経営監視に加え、独立社外取締役が客観的かつ中立的な立場から助言・監督を行う体制となっています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
近畿車輛の役員報酬は、固定報酬と業務執行取締役向けの業績連動報酬で構成されています。業績連動報酬は単体経常利益を主な指標とし、連結経常利益や配当実績も考慮されます。非業務執行取締役の報酬は、職務の独立性を考慮し業績連動を伴わない固定報酬となっています。監査役の報酬は、株主総会で承認された限度額の範囲内で監査役の協議により決定されます。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 7名 | 1.5億円 | 21.0百万円 |
| 社外取締役 | 3名 | 14百万円 | 4.7百万円 |
| 社外監査役 | 5名 | 33百万円 | 6.6百万円 |
なお、人数は事業年度中に報酬の支給対象となった人数であり、期末日現在の取締役は9名(うち社外取締役3名)、社外監査役は4名です。社外取締役、監査役、社外監査役の報酬等に業績連動報酬制度はありません。
個人別報酬が開示されている役員は存在しません。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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