京三製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

京三製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する、鉄道信号や交通管制システムを手掛けるメーカーです。信号システム事業とパワーエレクトロニクス事業を展開しています。当期は、海外向け信号設備や半導体製造装置用電源の需要回復等により受注・売上が伸長し、大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社京三製作所 の有価証券報告書(第160期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 京三製作所ってどんな会社?


鉄道信号システムや道路交通管制システム、各種電源装置を製造・販売する、社会インフラを支える企業です。

(1) 会社概要


1917年に東京電機工業として創立し、1921年に信号装置の製作を開始しました。1926年に現社名へ変更し、1949年には東京証券取引所へ上場しています。2022年の市場区分見直しにより、現在はプライム市場に上場しています。創業以来、鉄道や道路交通の安全を支える製品を提供し続けています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は2,075名、単体では1,396名です。筆頭株主は生命保険会社で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は取引先持株会である京三みづほ会となっています。主要な鉄道事業者や銀行も大株主として名を連ねており、安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本生命保険相互会社 9.70%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社 信託口 9.38%
京三みづほ会 8.23%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長執行役員は國澤良治氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
國 澤 良 治 代表取締役社長執行役員内部監査室、R&Dセンター担当 1984年入社。信号事業部第4技術部長、常務執行役員信号事業部長、京三システム代表取締役社長等を経て、2022年4月より代表取締役社長執行役員。
小野寺  徹 取締役 1979年入社。人事部長、専務執行役員、代表取締役等を経て、2025年4月より取締役。


社外取締役は、墨谷裕史(元TBK代表取締役社長)、北村美穂子(弁護士)、笹宏行(元オリンパス代表取締役社長執行役員)、永井朝子(BSRジャパン代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「信号システム事業」および「パワーエレクトロニクス事業」を展開しています。

(1) 信号システム事業


鉄道の安全・安定輸送を支える鉄道信号システム(ATC、電子連動装置、ホームドア等)や、円滑な道路交通を実現する道路交通管制システム(交通信号灯器、管制システム等)の生産・販売を行っています。主な顧客は国内外の鉄道事業者や官公庁(警察庁・都道府県警)などです。

収益は、製品の納入や工事の施工に対する対価として、顧客から受領します。また、保守サービスによる収益もあります。運営は主に京三製作所が行い、連結子会社の京三エレコスが電気工事設計・施工を、京三精機などが機器の製造・加工を分担しています。

(2) パワーエレクトロニクス事業


半導体やFPD(フラットパネルディスプレイ)の製造装置用電源装置、通信インフラや鉄道信号用の電源装置などの生産・販売を行っています。産業機器用電源装置は、デジタル社会の発展に不可欠な半導体デバイスの製造プロセスを支える重要な役割を担っています。

収益は、電源装置等の製品販売により顧客から対価を得ています。半導体・FPD製造装置メーカーなどが主な顧客です。運営は主に京三製作所が行い、京三パワーサプライなどの子会社が製造・加工等で連携しています。海外においては、Kyosan USA Inc.などが販売を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は回復基調にあり、当期は大幅な増収となりました。利益面でも、売上の増加に伴い経常利益、当期利益ともに大きく伸長しています。利益率も改善傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 622億円 729億円 723億円 705億円 854億円
経常利益 17億円 34億円 27億円 33億円 66億円
利益率(%) 2.7% 4.7% 3.7% 4.6% 7.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -83億円 117億円 34億円 32億円 42億円

(2) 損益計算書


当期は前期と比較して売上高が増加し、売上総利益率も改善しました。営業利益は倍増以上となり、高い伸びを示しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 705億円 854億円
売上総利益 143億円 187億円
売上総利益率(%) 20.3% 21.9%
営業利益 25億円 61億円
営業利益率(%) 3.5% 7.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が35億円(構成比27%)、賞与が13億円(同10%)、荷造及び発送費が12億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


信号システム事業、パワーエレクトロニクス事業ともに増収増益となりました。特に信号システム事業は売上の大部分を占め、利益貢献も大きくなっています。パワーエレクトロニクス事業は前期の損失から黒字転換しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
信号システム事業 604億円 711億円 74億円 97億円 13.7%
パワーエレクトロニクス事業 102億円 142億円 -3億円 12億円 8.4%
その他 - - - - -
調整額 - - -46億円 -48億円 -
連結(合計) 705億円 854億円 25億円 61億円 7.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金で借入金の返済を行い、投資は手元資金の範囲内で実施している健全型です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -59億円 37億円
投資CF 17億円 -3億円
財務CF 74億円 -45億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.4%で市場平均とほぼ同じ水準である一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は41.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「新しい価値を創造し、人々の安全・安心・快適な暮らしと社会の持続的発展に貢献します」という企業理念を掲げています。また、企業ビジョンとして「めざす企業像『信頼度ナンバーワンKYOSAN』」を掲げ、顧客価値と企業価値の最大化を追求しています。

(2) 企業文化


同社は行動規範として「Be professional:プロフェッショナルとしての矜持」を定めています。また、「安全・安心」「社会への貢献」といった価値観を大切にし、高い専門性とスキルを発揮して進化し続けることを重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は2025年4月からスタートした新中期経営計画「KYOSAN Next Step 2028」を策定し、2028年3月期を最終年度とする目標を掲げています。
* ROIC:6.0%以上(2028年3月末)
* 重大な法令違反件数:0件

(4) 成長戦略と重点施策


新中期経営計画では、「脱炭素社会貢献」「革新的な製品開発」「経営基盤・ガバナンスの強化」「人的資本の充実」の4つのマテリアリティに紐づく「12の基本戦略」に取り組んでいます。製品の省エネ化やDXを活用した新製品・サービスの創出、グローバルサプライチェーンの強化、人的資本の確保・育成などを推進し、持続的成長を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、多様なバックグラウンドを持つ人財の採用と育成を通じて、グローバル展開やイノベーション創出を目指しています。人財育成方針として、属性に関わらず多様な人財を採用し、体系的な教育プログラムを整備することで能力向上を推進しています。また、エンゲージメント向上やDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の推進により、能力を最大限発揮できる環境づくりに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.1歳 17.0年 8,087,253円


※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.1%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 68.9%
男女賃金差異(正規) 73.7%
男女賃金差異(非正規) 51.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒社員女性採用率(14.0%)、年次有給休暇取得率(76.5%)、障がい者雇用率(2.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 信号システム業界の需要動向等による影響


主力の鉄道信号システム等は、製品納期や工事完了が顧客の年度予算の関係で期末に集中し、売上が下半期に偏る傾向があります。また、顧客の設備投資計画や更新時期により、年度ごとの経営成績に変動が生じる可能性があります。

(2) 半導体、FPD業界の需要動向等による影響


パワーエレクトロニクス事業の主力である半導体・FPD製造装置用電源装置は、各業界の需給サイクルや技術革新の影響を受けやすく、市場動向によっては経営成績に大きな変動が生じる可能性があります。

(3) 当社製品の特性に起因する影響


交通インフラを支える公共性の高い製品を扱っており、品質管理には万全を期していますが、予期せぬ製品不具合が発生する可能性があります。その場合、対策費用や社会的信用の低下により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 海外事業展開に関するリスク


海外8カ所に拠点を有しグローバル展開を進めていますが、各国・地域の政治・経済情勢、法規制、為替変動などのカントリーリスクが存在します。これらが顕在化した場合、事業活動や業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。