※本記事は、株式会社京三製作所の有価証券報告書(第161期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 京三製作所ってどんな会社?
鉄道信号等の交通インフラ設備と、半導体製造装置向け等の電源装置を展開するメーカーです。
■(1) 会社概要
1917年9月、東京電機工業として創立し、医療用電気機器等を製作していましたが、1921年に信号装置の製作販売を開始して事業を転換しました。1926年9月に京三製作所へ商号を変更し、1949年5月に東京証券取引所市場第一部に上場しています。近年は海外子会社の設立や関係会社の再編等を進めています。
現在の従業員数は連結で2,073名、単体で1,399名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は日本生命保険相互会社で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位には従業員持株会が名を連ねています。長期的な安定株主と従業員による保有が上位を占めていることが特徴です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本生命保険相互会社 | 9.86% |
| 日本マスタートラスト信託銀行 信託口 | 9.73% |
| 京三製作従業員持株会 | 5.93% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.2%です。代表取締役社長執行役員は國澤良治氏が務めています。社外取締役は4名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 國澤良治 | 代表取締役社長執行役員 | 1984年4月同社入社。信号事業部第4技術部長、常務執行役員信号事業部長、取締役などを経て、2022年4月より現職。 |
| 藤井達也 | 取締役常務執行役員 | 1987年4月同社入社。人事部長、経営企画部長等を歴任。京三精機代表取締役社長を経て、2025年6月より現職。 |
| 小野寺徹 | 取締役 | 1979年5月同社入社。半導体機器事業部管理部長、総務部長等を歴任。代表取締役を経て、2025年4月より現職。 |
社外取締役は、北村美穂子(阪本・手島・北村法律会計事務所弁護士)、笹宏行(元オリンパス代表取締役・指名・報酬委員会委員長)、永井朝子(BSRジャパン代表取締役)、中野哲也(元味の素執行役常務)です。
2. 事業内容
同社グループは、「信号システム事業」および「パワーエレクトロニクス事業」を展開しています。
■信号システム事業
鉄道信号システムや道路交通管制システムなどのインフラを支える製品の生産および販売を行っています。主な顧客は国内外の鉄道事業者や官公庁、地方自治体であり、交通インフラの安全性と効率性を高める製品やシステムを提供し、社会の安心・安全な移動を支援しています。
収益源は、各顧客に対して提供するシステム機器の販売代金や、設置・保守・点検サービスに対する対価です。運営は主に同社が行っているほか、連結子会社である京三エレコスが電気工事の設計や施工を担うなど、グループ各社が連携して事業を展開しています。
■パワーエレクトロニクス事業
産業機器用電源装置や鉄道信号用電源装置などの生産および販売を手掛けています。半導体製造装置やフラットパネルディスプレイ製造装置向けの電源装置など、高度な電力変換技術が求められる分野において、最先端の技術を活かした製品を各業界のメーカーへ提供しています。
収益源は、顧客企業に対する電源装置等の製品販売代金です。運営は主に同社が行うとともに、国内子会社の京三パワーサプライが電源装置の委託加工を行うほか、海外子会社のKyosan USA Inc.が米国での販売活動を展開するなど、グローバルな事業運営を推進しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一時的な停滞期を経て、2025年3月期から急激な拡大基調に転じ、2期連続で過去最高を更新しています。経常利益は2025年3月期に大きく伸びたものの、2026年3月期は構造改革に伴う費用等により減益となりました。利益率は4〜7%台で推移し、安定した最終利益を確保しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 729億円 | 723億円 | 705億円 | 854億円 | 931億円 |
| 経常利益 | 34億円 | 27億円 | 33億円 | 66億円 | 52億円 |
| 利益率(%) | 4.7% | 3.7% | 4.6% | 7.8% | 5.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 117億円 | 34億円 | 32億円 | 42億円 | 40億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が堅調に増加する一方で、売上総利益は減少傾向にあり、それに伴って営業利益も減少しています。売上総利益率および営業利益率ともに低下しており、増収を確保しながらも原価率の上昇や販売費及び一般管理費の増加が利益を圧迫している状況が窺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 854億円 | 931億円 |
| 売上総利益 | 187億円 | 178億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.9% | 19.1% |
| 営業利益 | 61億円 | 45億円 |
| 営業利益率(%) | 7.2% | 4.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が36億円(構成比27%)、賞与が13億円(同10%)、荷造及び発送費が12億円(同9%)を占めています。売上原価は753億円で、売上高に対する原価率は81%となっています。
■(3) セグメント収益
信号システム事業は、鉄道・道路分野での積極的な設備投資を背景に豊富な受注残を売上に結びつけ、大幅な増収増益を達成しました。一方、パワーエレクトロニクス事業は、主力製品の需要低迷や棚卸資産の廃棄損および評価損の計上により減収となり、営業損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 信号システム事業 | 711億円 | 798億円 | 97億円 | 120億円 | 15.0% |
| パワーエレクトロニクス事業 | 142億円 | 133億円 | 12億円 | -23億円 | -17.5% |
| 連結(合計) | 854億円 | 931億円 | 61億円 | 45億円 | 4.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスであり「健全型」です。営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 37億円 | 34億円 |
| 投資CF | -3億円 | -5億円 |
| 財務CF | -45億円 | -42億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.4%で市場平均と同水準にある一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.7%で市場平均をわずかに下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「新しい価値を創造し、人々の安全・安心・快適な暮らしと社会の持続的発展に貢献します。」を企業理念として掲げています。この理念のもと、目指す企業像である「信頼度ナンバーワンKYOSAN」の実現に向けて、社会課題の解決を通じた企業価値の向上と持続可能な社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、企業ビジョンを実現するための行動規範として「Be professional:プロフェッショナルとしての矜持」を柱に据えています。具体的には、「たゆまぬ成長」「安全と品質の追求」「組織力の発揮」「人権の尊重」「誠実な企業活動」「社会への貢献」を掲げ、全社員が高い専門性とスキルを発揮し、常に進化し続ける文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2028年3月期を最終年度とする中期経営計画「KYOSAN Next Step 2028」を策定し、企業価値の継続的な向上を目指しています。また、マテリアリティ(経営重要課題)の解決に向けた取り組みの中で、以下のような具体的な数値目標を掲げて経営を推進しています。
* 2030年にCO2排出量を2013年度比で46%以上削減
* 売上高研究開発費率を7.0%以上に維持
* 2028年3月末までにROIC(投下資本利益率)を6.0%以上とする
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、持続的成長の実現に向けて、パワーエレクトロニクス事業の構造改革とキャッシュフローの改善を重要課題と位置付けています。信号システム事業では、海外市場での受注拡大に加え、自動運転や無線式列車制御システムといった高付加価値製品の展開を推進します。パワーエレクトロニクス事業では、生産管理プロセスの効率化と新規製品の投入により、市場シェアの拡大と収益力の回復を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社の人材戦略は、中期経営計画の目標達成に向けた「人的資本の確保とその最大発揮」を軸としています。特に、イノベーション創出をリードする人財やグローバルな成長を牽引できる経営人財の獲得・育成に重点投資を行っています。また、多様なバックグラウンドを持つ人財を採用し、従業員エンゲージメントの継続的な向上を図ることで、一人ひとりが能力を最大限発揮できる環境整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.5歳 | 17.0年 | 9,286,320円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.9% |
| 男性育児休業取得率 | 77.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 76.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 47.1% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒社員女性採用率(20.0%)、年次有給休暇取得率(77.0%)、障がい者雇用率(2.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
(1) 鉄道・道路分野の設備投資抑制リスク
主力の信号システム事業は、国内外の鉄道事業者や官公庁の設備投資動向に大きく依存しています。少子高齢化や働き方改革に伴う鉄道利用者の減少などにより、鉄道事業者の収益が伸び悩み、信号システムに対する設備投資が抑制された場合、同社の売上や利益にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。
(2) 半導体・FPD業界の需要サイクル変動
パワーエレクトロニクス事業が主力とする半導体およびフラットパネルディスプレイ(FPD)製造装置向け電源装置は、顧客業界の短期・中長期的な需給サイクルの変動や激しい技術革新の影響を強く受けます。市場のニーズに即した革新的な製品の開発や投入に遅れが生じた場合、販売機会を喪失するリスクがあります。
(3) 海外拠点のカントリーリスクと事業継続
同社グループは海外に複数の拠点を有し、事業のグローバル展開を推進していますが、各国の政治・経済情勢や法規制、商慣習の違いなど特有のカントリーリスクを抱えています。地域紛争の発生や国際情勢の不安定化によるサプライチェーンの混乱が生じた場合、事業活動の停滞や業績への悪影響が生じるおそれがあります。



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