※本記事は、株式会社ワッツ の有価証券報告書(第31期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ワッツってどんな会社?
100円ショップ「Watts」等を全国展開する小売企業。テナント出店とローコスト運営に特徴があります。
■(1) 会社概要
1995年に設立され、100円ショップ事業を開始しました。2002年にジャスダックへ上場し、2013年の東証二部、2014年の東証一部指定を経て事業を拡大。2016年には運営体制を再編し、東西の販売子会社を設立しました。2022年のプライム市場移行を経て、2023年にスタンダード市場へ移行しています。
連結従業員数は418名、単体では82名です。筆頭株主は資産管理会社のカシオペアで、第2位は公的投資育成機関の大阪中小企業投資育成、第3位は創業者親族の平岡滿子氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| カシオペア | 15.33% |
| 大阪中小企業投資育成 | 4.90% |
| 平岡 滿子 | 4.55% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名、計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長執行役員は平岡史生氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 平岡 史生 | 代表取締役社長執行役員 | 1998年同社入社。取締役経営企画室長、代表取締役副社長を経て、2003年より現職。 |
| 森 秀人 | 取締役常務執行役員経営企画室長 | 1984年三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。国際業務部大阪室長等を経て2013年同社入社。2024年より現職。 |
| 山野 博幸 | 取締役執行役員事業本部長 | 1995年同社入社。店舗部、商品部を経て、ワッツ東日本販売および西日本販売の代表取締役社長を歴任。2024年より現職。 |
| 角本 昌也 | 取締役執行役員管理本部長 | 1997年オートバックスセブン入社。2008年同社入社。管理部部長、事業戦略部長、商品部長等を歴任。2025年より現職。 |
| 平田 正浩 | 取締役執行役員海外事業部長 | 1988年セイコーエプソン入社。ポッカコーポレーション等を経て2015年同社入社。2024年より現職。 |
| 福光 宏 | 取締役(監査等委員) | 1995年同社入社。経理部長、管理本部長等を歴任。2025年より現職。 |
社外取締役は、酒谷佳弘(公認会計士・税理士)、林堂佳子(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「100円ショップ事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 100円ショップ事業
文具、台所、衛生用品等の日用消耗品を中心とした100円ショップを、「Watts」「Watts with」「meets.」「silk」等のブランドでチェーン展開しています。主にショッピングセンターやスーパーマーケット内のテナントとして出店しています。
一般消費者への商品販売から収益を得ています。運営は主に株式会社ワッツ東日本販売、株式会社ワッツ西日本販売が行っており、メーカーや問屋と協力した各店舗への直送体制や、物流センターを活用した小口配送体制を構築しています。
■(2) その他事業
雑貨店「Buona Vita」、ディスカウントショップ「リアル」、時間をテーマにした雑貨店「Tokino:ne」等を国内で運営するほか、タイやペルーでの海外店舗展開、100円ショップ向け卸売を行っています。
消費者への商品販売や、小売店への卸販売から収益を得ています。運営はワッツ、有限会社リアル、株式会社ニッパン、Watts Peru S.A.C.等のグループ各社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は600億円前後で安定的に推移しており、直近では微増傾向にあります。経常利益率は1〜3%台で推移していますが、当期純利益(親会社所有者帰属)の数値については、開示データの特性上、連結ではなく単体の数値が表示されている可能性がある点に留意が必要です。
| 項目 | 2021年8月期 | 2022年8月期 | 2023年8月期 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 507億円 | 583億円 | 593億円 | 613億円 | 616億円 |
| 経常利益 | 16億円 | 11億円 | 6億円 | 12億円 | 14億円 |
| 利益率(%) | 3.1% | 2.0% | 1.1% | 2.0% | 2.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | 6億円 | 8億円 | 2億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比微増の616億円となりました。売上原価率は約61%で安定しており、売上総利益率は38.8%を確保しています。販売費及び一般管理費のコントロールにより、営業利益は14億円(営業利益率2.3%)と前期から改善しています。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 613億円 | 616億円 |
| 売上総利益 | 236億円 | 239億円 |
| 売上総利益率(%) | 38.5% | 38.8% |
| 営業利益 | 12億円 | 14億円 |
| 営業利益率(%) | 2.0% | 2.3% |
販売費及び一般管理費のうち、賃借料が80億円(構成比35%)、給与手当が76億円(同34%)を占めています。これら固定費の比重が高いコスト構造となっています。
■(3) セグメント収益
100円ショップ直営事業、卸他事業ともに売上高は前期比で微増となりました。主力である100円ショップ直営事業が売上全体の約9割を占めており、安定した収益基盤となっています。
| 区分 | 売上(2024年8月期) | 売上(2025年8月期) |
|---|---|---|
| 100円ショップ直営 | 552億円 | 555億円 |
| 卸他 | 60億円 | 61億円 |
| その他収益 | 1億円 | 1億円 |
| 連結(合計) | 613億円 | 616億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 40億円 | -18億円 |
| 投資CF | -5億円 | -11億円 |
| 財務CF | 2億円 | -4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.3%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「おかげさまの心」を大切にし、株主、顧客、取引先、従業員など関わる全ての人々に役立ち、地域社会に貢献することを使命としています。これらステークホルダーとともに成長していくことを経営の基本方針として掲げています。
■(2) 企業文化
100円という価格へのこだわりを持ちつつ、価格以上の価値を提供することを目指す文化があります。「おかげさま」の精神のもと、多様化するニーズに応えるためのビジネスモデル改善や、新たな収益源の多角化にも積極的に取り組む姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
経営の効率性向上による収益性を追求し、客観的な経営指標として売上高経常利益率と自己資本当期純利益率(ROE)を重視しています。中期的には以下の数値目標の達成を目指しています。
* 売上高経常利益率:5.0%
* ROE:10.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
国内100円ショップ事業の成長確保、新業態の収益性確立、海外事業の再拡大を重点課題としています。具体的には、ブランド店舗の展開、100円以外の価格帯商品の導入、オンラインショップの強化、ECサイトのグループ全体化などを推進します。また、自動発注やセルフレジ導入による省人化でコスト競争力を強化します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を重要な経営資源と位置づけ、深刻な人手不足に対応するため、新卒・中途採用の強化やパート・アルバイトの正社員登用に取り組んでいます。また、グループ規模拡大や業務多角化に対応できる人材育成を目指し、性別・国籍を問わず誰もが活躍できる社内環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年8月期 | 45.8歳 | 14.6年 | 4,958,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.1% |
| 男性育児休業取得率 | -% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 43.7% |
| 男女賃金差異(正規) | 75.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | 92.9% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 出退店施策と不採算店舗の整理
特定の地域に重点を置かず、収益性を基準に出店を行っています。採算条件に合致する物件がない場合は出店数が減少し、業績に影響する可能性があります。また、商業施設の閉鎖等により退店を余儀なくされる場合や、不採算店舗の積極的な整理により店舗数が減少するリスクがあります。
■(2) 従業員の確保と人件費の上昇
店舗運営はパート・アルバイト従業員が中心となっており、指導力のあるスーパーバイザーや従業員の確保が困難な場合、サービス品質の低下を招く恐れがあります。また、求人難による賃金上昇や社会保険の適用拡大等による人件費負担の増加が、収益性を圧迫する可能性があります。
■(3) 為替変動と商品市況の影響
商品は原則円建てで仕入れていますが、メーカー等は海外からの輸入商品を多く扱っているため、為替変動の影響を間接的に受ける可能性があります。また、原材料価格や原油価格の上昇により仕入コストが変動し、利益を圧迫するリスクがあります。



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