ティラド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ティラド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ティラドは東京証券取引所プライム市場に上場する、各種熱交換器の製造・販売を主力とする企業です。自動車や建設産業機械用ラジエータなどを幅広く展開しています。直近の業績では、売上高は日本やアジア等での販売増により前年比で増収となり、収益性の改善等により営業利益や経常利益も大幅な増益を達成しています。


※本記事は、ティラドの有価証券報告書(第124期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月5日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ティラドってどんな会社?


自動車や建設産業機械向けの熱交換器製造を主力とし、グローバルに展開する企業です。

(1) 会社概要


1936年に自動車用内燃機関用ラジエータ等の製造販売を目的に創立されました。1961年に東京証券取引所に上場し、その後は米国、中国、欧州、アジアなどに現地法人を設立しグローバル展開を推進してきました。2005年に現在のティラドへと社名を変更し、2018年にはティラドコネクトを設立しています。

現在の従業員数は連結で4,087名、単体で1,525名体制となっています。筆頭株主は同社代表取締役の宮﨑富夫氏が代表を務める陣屋コネクトで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は山崎金属産業となっています。

氏名 持株比率
陣屋コネクト 38.71%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.95%
山崎金属産業 2.35%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役CEO兼COO社長執行役員は宮﨑富夫氏が務めています。取締役5名中3名が社外取締役です。

氏名 役職 主な経歴
宮﨑富夫 代表取締役CEO兼COO社長執行役員 2002年本田技研工業入社。陣屋代表取締役社長、陣屋コネクト設立代表取締役CEO等を経て、2014年同社社外取締役。2022年より現職。
菊山辰也 取締役常務執行役員営業・技術・品質管掌営業本部長技術本部長品質本部長 1986年同社入社。T.RAD North America, Inc.取締役社長、執行役員等を経て、2024年より現職。


社外取締役は、高橋良定(元小松製作所副社長執行役員)、村田隆一(元三菱UFJリース代表取締役会長)、屠錦寧(アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「米国」「欧州」「アジア」「中国」の報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

日本


同社グループは自動車、建設産業機械、空調機器向けの各種熱交換器の製造・販売を日本国内で展開しています。ラジエータやオイルクーラなど、あらゆるパワープラントに対応する熱交換器を生産し、国内の多様なメーカーに供給しています。

収益は、主に自動車メーカー等の顧客に対する製品の販売によって得ています。事業の運営はティラドが主体となって行っており、研究開発の拠点機能も担っています。

米国


米国を中心とした北米市場において、各種熱交換器の製造および販売事業を展開しています。現地での顧客ニーズに対応するため、顧客拠点の近傍に生産拠点を配置し、自動車や建設産業機械向けの製品を安定的に供給しています。

収益は、現地のメーカー等への製品販売から得ています。運営は主にT.RAD North America, Inc.およびTripac International Inc.が行っています。

欧州


欧州市場において、各種熱交換器の製造・販売を展開しています。厳しい環境規制等に対応した製品や、現地自動車メーカー向けの熱交換器の生産に注力し、地産地消の体制を構築して製品を供給しています。

収益は、欧州の顧客企業に対する製品の販売によって得ています。製造は主にチェコのT.RAD Czech s.r.o.が担い、販売サポート等をドイツのT.RAD Sales Europe GmbHが運営しています。

アジア


タイ、インドネシア、ベトナム、インドなど成長が続くアジア市場にて、熱交換器の製造・販売事業を展開しています。自動車や二輪車向けの需要増大に対応し、各国の現地法人を通じて安定的な製品供給と事業拡大を図っています。

収益は、アジア各国のメーカー等に対する製品販売によって得ています。運営はT.RAD (THAILAND) Co., Ltd.やPT.T.RAD INDONESIAなどが各地域で行っています。

中国


中国市場において、自動車や建設産業機械向けの各種熱交換器を製造・販売しています。現地の高いコスト競争力と豊富な人材を活用し、市場ニーズに合わせた製品供給のほか、グループ内の輸出拠点としての機能も担っています。

収益は、現地メーカー等への製品販売から得ています。事業の運営は、東洋熱交換器(中山)有限公司や青島東洋熱交換器有限公司などが主体となって行っています。

その他


報告セグメントに含まれない周辺事業として、貨物自動車の運送業務やソフトウェアの開発・販売サポートなどの付帯サービスを展開しています。グループ全体の業務効率化や物流を支援する役割を担っています。

収益は、製品の輸送やシステム提供等のサービス対価として得ています。運営は、ティラドロジスティクスやティラドコネクトが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実な拡大傾向が続いており、直近の期では1,623億円に達しています。利益面では一時期落ち込みによる赤字を計上したものの、その後は収益性の改善が進み、経常利益および当期利益ともに大幅な増益を達成し、利益率も向上しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,336億円 1,494億円 1,587億円 1,592億円 1,623億円
経常利益 60億円 21億円 53億円 81億円 124億円
利益率(%) 4.5% 1.4% 3.4% 5.1% 7.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 39億円 -17億円 15億円 57億円 95億円

(2) 損益計算書


売上高は前年比で増加し、売上総利益も拡大しています。これに伴い売上総利益率が向上したことに加え、販売費及び一般管理費が減少した結果、営業利益および営業利益率が大幅に改善し、本業での稼ぐ力が強まっていることが確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,592億円 1,623億円
売上総利益 201億円 231億円
売上総利益率(%) 12.6% 14.2%
営業利益 73億円 112億円
営業利益率(%) 4.6% 6.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が28億円(構成比24%)、荷造及び発送費が19億円(同16%)、福利厚生費が18億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本やアジア、欧州セグメントでは、自動車用や建設産業機械用の受注増加により売上が伸長しています。一方、米国では建設産業機械用の受注減少などが影響し微減となり、中国でも自動車用等の受注減少により売上が縮小しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
日本 719億円 747億円
米国 445億円 439億円
欧州 49億円 57億円
アジア 221億円 243億円
中国 155億円 133億円
その他 3億円 3億円
連結(合計) 1,592億円 1,623億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 76億円 126億円
投資CF -65億円 -72億円
財務CF -69億円 -59億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.2%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も53.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「すぐれた熱エネルギー変換技術とサービスの提供により、地球環境にやさしい持続可能な社会の実現に貢献する。会社の永続的発展と顧客、株主、従業員、取引先、地域社会の幸福を追求する。」と掲げています。また、「ステークホルダーに信頼される企業」となることを目指し、企業価値を高めつつ、永続的な発展を図ることを経営目標としています。

(2) 企業文化


同社はコンプライアンスの遵守を具現化するため、「T.RAD行動規範」を制定し、全従業員の日々の活動規範として周知・定着を図っています。また、「人を大切にする企業」を重視し、安全・安心して働ける職場環境の実現や、多様な人材が活躍できる職場づくりなど、一人ひとりの個性や価値観を尊重する文化を育んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は、事業環境の急速な変化に柔軟に対応するため、毎年目標値を見直すローリング型の中期経営計画を策定しています。2030年度の業績目標として以下を掲げ、資本効率性の高い経営を推進しています。

* 売上高:2,000億円
* ROE:20.0%

(4) 成長戦略と重点施策


同社はあらゆるパワープラントに対応するマルチパスウェイ戦略の下、幅広い製品を展開し、世界5極体制による地産地消を推進しています。既存領域のビジネス強化に加え、データセンターや宇宙関連などの周辺領域への進出も検討しています。また、カーボンニュートラルなどのGX(グリーントランスフォーメーション)や全社的なDX化に注力し、成長投資と株主還元を両立させながら継続的な企業価値の向上を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人を大切にする企業」を基本戦略の一つと位置づけ、従業員の健康と安全な生産活動によるゼロ災害の追求、働き方改革と職場環境の改善に取り組んでいます。ものづくりを通した人材育成や海外子会社の現地マネジメント人材育成を進めるとともに、従業員エンゲージメントを高めるため、自発的な学びを支援するEラーニングの導入やキャリア申告制度などを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.4歳 18.0年 6,785,945円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.2%
男性育児休業取得率 70.7%
男女賃金差異(全労働者) 79.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 84.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 61.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、事務技術職の採用者に占める女性比率(32.4%)、CO2排出量削減目標(27%減)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) グローバル展開におけるリスク


同社グループは海外事業展開を積極的に進めていますが、関税制度などの予測不能な法規制変更、政治的不安、為替相場の変動などが生じた場合、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) OEM製品への依存と経済状況


製品の販売はOEMへの依存度が高く、取引先である自動車・建設産業機械メーカー等の業績不振や調達方針の変更が業績に影響する可能性があります。また、主要市場の経済状況悪化に伴う需要減少のリスクもあります。

(3) 気候変動による移行および物理リスク


脱炭素社会への移行に伴う燃費・排ガス規制や電動化の拡大に対し、製品が適切に対応できない場合、売上が減少する懸念があります。また、異常気象の深刻化により生産活動やサプライチェーンが分断されるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

ティラドの転職研究 2026年3月期決算に見るキャリア機会

ティラドの2026年3月期決算は、営業利益が前年比53.8%増と大幅な増益を達成。米国事業の7期ぶり黒字化や、新中期経営計画による過去最高水準の株主還元など、攻めの姿勢が鮮明です。「なぜ今ティラドなのか?」「転職希望者がどの拠点で、どんな役割を担えるのか」を整理します。