ティラド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ティラド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ティラドは東証プライムに上場し、各種熱交換器の製造・販売を主力とする独立系メーカーです。2025年3月期は、自動車用熱交換器の販売増や米国事業の収益改善等により、売上高は1,592億円、経常利益は81億円、当期純利益は43億円となり、増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社ティラド の有価証券報告書(第123期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ティラドってどんな会社?


各種熱交換器の製造・販売を行う独立系メーカーです。自動車や建設機械向け製品をグローバルに展開しています。

(1) 会社概要


同社は1936年に東洋ラヂヱーター製作所として創立し、1961年に東証二部へ上場しました。1969年には東証一部へ指定替えとなり、2005年に現在の株式会社ティラドへ商号変更しています。その後、海外拠点の拡充を進め、2022年の市場区分見直しに伴い東証プライム市場へ移行しました。

2025年3月31日現在の連結従業員数は4,270名、単体では1,531名です。筆頭株主は同社代表取締役が取締役オーナーを務めるソフトウェア開発会社で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は取引先持株会となっています。

氏名 持株比率
陣屋コネクト 34.62%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.05%
ティラド取引先持株会 3.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役CEO兼COO社長執行役員は宮﨑富夫氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
宮﨑 富夫 代表取締役CEO兼COO社長執行役員 本田技研工業等を経て、2009年陣屋入社。2014年同社社外取締役、2018年代表取締役COO社長執行役員。2022年より現職。
菊山 辰也 取締役常務執行役員営業・技術管掌営業本部長 技術本部長 1986年同社入社。米国現地法人社長、常務執行役員営業管掌営業本部長等を経て、2024年より現職。


社外取締役は、高橋良定(元小松製作所副社長)、村田隆一(元三菱UFJリース会長)、屠錦寧(アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「米国」「欧州」「アジア」「中国」および「その他」事業を展開しています。

**(1) 日本**
自動車用および建設産業機械用の熱交換器等を製造・販売しています。主な顧客は国内の自動車メーカーや建機メーカーです。
製品販売による代金を顧客から受け取る収益モデルです。運営は主に同社が行っています。

**(2) 米国**
自動車用および建設産業機械用の熱交換器等を製造・販売しています。北米市場の顧客ニーズに対応しています。
製品販売による代金を顧客から受け取る収益モデルです。運営はT.RAD North America, Inc.やTripac International Inc.が行っています。

**(3) 欧州**
自動車用等の熱交換器を製造・販売しています。チェコやドイツを拠点に欧州市場へ製品を供給しています。
製品販売による代金を顧客から受け取る収益モデルです。運営はT.RAD Czech s.r.o.やT.RAD Sales Europe GmbHが行っています。

**(4) アジア**
自動車用等の熱交換器を製造・販売しています。タイ、インドネシア、ベトナム、インドなどで事業を展開しています。
製品販売による代金を顧客から受け取る収益モデルです。運営はT.RAD (THAILAND) Co., Ltd.など各国の現地法人が行っています。

**(5) 中国**
建設産業機械用および自動車用の熱交換器等を製造・販売しています。中国国内の需要に対応しています。
製品販売による代金を顧客から受け取る収益モデルです。運営は東洋熱交換器(中山)有限公司など各国の現地法人が行っています。

**(6) その他**
報告セグメントに含まれない事業として、製品の輸送やソフトウェア開発等を行っています。
運送サービス料やソフトウェア開発費等を顧客から受け取る収益モデルです。運営はティラドロジスティクスやティラドコネクトが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの5期間を見ると、売上高は1,130億円から1,592億円へと増加傾向にあります。利益面では変動が見られ、2021年3月期と2023年3月期には最終赤字を計上しましたが、直近の2025年3月期には経常利益81億円、当期純利益43億円となり、収益性が大きく回復・向上しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,130億円 1,336億円 1,494億円 1,587億円 1,592億円
経常利益 15億円 60億円 21億円 53億円 81億円
利益率(%) 1.4% 4.5% 1.4% 3.4% 5.1%
当期利益(親会社所有者帰属) -7億円 39億円 -17億円 15億円 43億円

(2) 損益計算書


2024年3月期と2025年3月期を比較すると、売上高は横ばいながら、売上原価の改善等により売上総利益が増加しました。これに伴い営業利益率も2.7%から4.6%へと改善しており、本業の収益性が高まっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,587億円 1,592億円
売上総利益 149億円 201億円
売上総利益率(%) 9.4% 12.6%
営業利益 44億円 73億円
営業利益率(%) 2.7% 4.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が26億円(構成比20%)、荷造及び発送費が18億円(同14%)を占めています。売上原価は売上高に対して87%を占めています。

(3) セグメント収益


2025年3月期は、日本セグメントにおいて自動車用製品の好調や売価改善により増収増益となりました。米国セグメントは収益性が改善し赤字幅が縮小しています。一方、中国セグメントは建設機械用の需要はあるものの、自動車用の減少により減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 758億円 802億円 15億円 27億円 3.4%
米国 422億円 446億円 -23億円 -6億円 -1.3%
欧州 59億円 49億円 1億円 0億円 0.9%
アジア 218億円 241億円 35億円 43億円 17.6%
中国 221億円 171億円 16億円 7億円 3.8%
その他 24億円 25億円 1億円 1億円 2.8%
調整額 -115億円 -141億円 -1億円 2億円 -
連結(合計) 1,587億円 1,592億円 44億円 73億円 4.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFで得た資金を借入返済や投資に充てており、財務の健全性を維持している状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 170億円 76億円
投資CF -71億円 -65億円
財務CF -6億円 -69億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は企業理念として「会社の永続的発展と顧客、株主、従業員、取引先、地域社会の幸福を追求する」を掲げています。また、サステナビリティ経営においては、「持続可能な社会への貢献」と「長期持続的な成長」の両立を目指し、既存事業におけるCO₂削減や地球温暖化防止、人権侵害等の社会的課題に取り組むことで、SDGsへの貢献に寄与することを使命としています。

(2) 企業文化


同社は「人を大切にする企業」であることを基本戦略の一つとしています。「安全衛生は、全ての活動において最優先」という基本理念のもと、労働災害の発生防止と安心して働ける職場づくりを推進しています。また、年齢や性別等による差別のない「公平の原則」を人事理念に掲げ、多様な人材が能力を最大限に発揮できる環境づくりと、互いに個性を認め合う風土を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は2030年度の長期目標に向けた経営戦略を推進しており、年次ごとに経営目標数値を策定する方針をとっています。2030年度の長期目標として以下の数値を掲げています。

* 売上高:2,000億円
* ROE:15%
* PBR:1倍

(4) 成長戦略と重点施策


同社は長期目標達成に向け、「GXを実現する企業」「顧客に喜ばれ、選ばれ続ける企業」「新事業への取り組み」「安定した収益性を実現する企業」「ステークホルダーから信頼される企業」になるための取り組みを推進しています。具体的には、環境対応車の普及に合わせた電動化製品の開発や、生産性向上による収益基盤の強化などに注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人を大切にする企業」を掲げ、社員の健康と安全な生産活動によるゼロ災害の追求、働き方改革と職場環境の改善、ものづくりを通した人財育成に取り組んでいます。特に、階層別・職能別教育体系の再構築やEラーニングの活用により、自発的な学びを支援しています。また、従業員エンゲージメント向上を重視し、「働く株主」の推進として株式給付信託制度の拡充を行うなど、企業価値向上と従業員の豊かさを連動させる仕組みづくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.3歳 18.0年 6,365,346円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.1%
男性育児休業取得率 96.4%
男女賃金差異(全労働者) 79.5%
男女賃金差異(正規) 85.2%
男女賃金差異(非正規) 64.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、事務技術職の採用者に占める女性比率(40.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 海外事業展開に伴うリスク


同社グループは米国、欧州、アジア、中国等に事業を展開しており、関税制度や法規制の変更、政治的不安定要因、テロ・戦争、為替相場の変動等のリスクがあります。これらのリスクが顕在化した場合、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 経済状況の変動リスク


同社製品の需要は主要市場である日本、米国、欧州、アジア、中国の経済状況の影響を受けます。特に建設産業機械用熱交換器は好不況の影響を受けやすく、販売数量が大幅に減少した場合、生産設備や人員を維持するコストが負担となり、業績に大きな影響を与える可能性があります。

(3) OEM製品への依存


同社グループの販売はOEM製品への依存度が大きく、主要顧客である自動車メーカーや建設産業機械メーカーの業績不振、価格引き下げ要求、調達方針の変更等が業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。また、独自の判断だけで事業撤退等の戦略を決定することが困難な側面があります。

(4) 原材料価格の上昇


主要原材料であるアルミや銅などの非鉄金属の価格は市況や為替相場の影響を受け変動します。購入価格の上昇分を販売価格に転嫁できない場合や、転嫁にタイムラグが生じる場合、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、エネルギーコスト等の上昇もリスク要因となります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。