記事タイトル:「東京ラヂエーター製造転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態」
※本記事は、東京ラヂエーター製造株式会社の有価証券報告書(第122期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東京ラヂエーター製造ってどんな会社?
自動車や産業機械向けの熱交換器や車体部品の製造販売を主力事業とする専門メーカーです。
■(1) 会社概要
1938年に設立され、熱交換器の製造を開始しました。1961年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2022年にスタンダード市場へ移行しています。事業のグローバル展開にも注力しており、1999年以降、中国やインドネシア、タイに現地子会社を相次いで設立し、海外での生産体制を強化してきました。
従業員数は連結で816名、単体で492名です。大株主については、筆頭株主が自動車部品メーカーのマレリで、第2位がいすゞ自動車となっています。主要な取引先でもある事業会社が上位株主として名を連ねており、強固な資本提携等の関係性を構築しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| マレリ | 12.11% |
| いすゞ自動車 | 7.09% |
| 山崎金属産業 | 5.51% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は木村裕哲氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 木村裕哲 | 代表取締役社長 | 1986年日本ラヂヱーター(現マレリ)入社。同社常務執行役員等を経て、2024年4月より現職。 |
| 三村健二 | 取締役 | 1986年同社入社。営業統括部長、執行役員営業本部長等を経て、2021年6月より現職。 |
| 吉光真幸 | 取締役 | 1991年いすゞエンジニアリング入社。2018年同社入社。執行役員開発技術本部副本部長等を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、髙村藤寿氏(元小松製作所取締役CTO)、堀比斗志氏(元オルガノ取締役兼常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「中国」「アジア」の報告セグメントで事業を展開しています。
■日本
同社は、自動車および産業・建設機械などの動力源から発生する熱を効果的に処理する熱交換器、燃料タンク、プレス板金製品の製造・販売を主力事業としています。主な販売先はトラックや産業・建設機械のメーカーであり、環境対応自動車分野における冷却システムの開発にも取り組んでいます。
収益は、各メーカーに対する製品の販売代金から得ています。製品の製造および販売は、日本国内では同社が直接担っており、顧客のニーズに合わせた高品質な製品を供給することで強固な事業基盤を構築しています。
■中国
中国市場においても、熱交換器や車体関連部品の製造・販売を展開しています。現地でのトラック市場や建設機械市場に向けた製品供給を担い、多様化する顧客の要望に応じたモノづくりを行っています。
収益は、中国国内の顧客や輸出向け製品の販売代金によって構成されています。事業の運営は、現地連結子会社である重慶東京散熱器および無錫塔尓基熱交換器科技の2社が担当し、現地の市場環境に合わせた生産体制を確立しています。
■アジア
東南アジア地域において、熱交換器を中心とした自動車関連部品の製造・販売を行っています。新興国におけるインフラ開発や経済成長に伴う商用車需要の取り込みを狙いとした事業展開を進めています。
収益は、現地での製品販売等から得ています。事業の運営は、インドネシアの現地子会社およびタイの現地子会社がそれぞれ担当し、アジア地域におけるグローバルな供給ネットワークの一翼を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、回復基調から堅調な成長へと推移しています。2023年3月期までは最終赤字を計上していましたが、原価低減活動や製品ミックスの改善が奏功し、2024年3月期以降は黒字転換を果たしました。直近の2026年3月期にかけては、国内トラック市場での需要拡大が寄与し、売上・利益ともに順調に拡大しており、収益性の向上が顕著に見られます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 270億円 | 318億円 | 334億円 | 341億円 | 354億円 |
| 経常利益 | 1億円 | 8億円 | 15億円 | 19億円 | 25億円 |
| 利益率(%) | 0.4% | 2.7% | 4.6% | 5.6% | 7.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -8億円 | -7億円 | 17億円 | 14億円 | 20億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、増収に伴い各利益段階で改善が進んでいます。生産効率化などの原価低減活動が成果を上げ、売上総利益率が上昇しました。固定費の増加はあったものの、増収効果がこれを吸収し、営業利益率も向上しており、本業の稼ぐ力が着実に高まっていることが伺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 341億円 | 354億円 |
| 売上総利益 | 47億円 | 54億円 |
| 売上総利益率(%) | 13.8% | 15.2% |
| 営業利益 | 17億円 | 24億円 |
| 営業利益率(%) | 5.0% | 6.7% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が7億円(構成比25%)、発送費が4億円(同15%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の業績を見ると、日本は国内トラック市場での需要拡大を背景に増収増益を達成し、全体の成長を牽引しました。一方、中国やアジアでは、市場需要の減少や経済停滞による自動車販売の不調が影響し、売上高が減少しています。ただし、中国では原価低減などの効果により利益面では増益を確保しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 264億円 | 290億円 | 11億円 | 17億円 | 5.8% |
| 中国 | 44億円 | 34億円 | 4億円 | 5億円 | 13.4% |
| アジア | 33億円 | 29億円 | 2億円 | 2億円 | 6.2% |
| 連結(合計) | 341億円 | 354億円 | 17億円 | 24億円 | 6.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 23億円 | 17億円 |
| 投資CF | -6億円 | -20億円 |
| 財務CF | -4億円 | -7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「人間尊重を基本に、新たな価値を創造し、信頼される企業として地球に優しい社会造りに貢献する」という経営理念を掲げています。自動車および産業・建設機械等の動力源から発生する熱を効果的に処理する熱交換器や車体部品の専門メーカーとして、高性能で高品質な製品の提供を通じて社会に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、経営理念とコーポレートビジョンを実現するための行動指針として「TRS WAY」を制定しています。「変わる」「応える」「高める」という3つのキーワードを実践することで、既存事業の競争力強化と環境変化への柔軟な対応を図っています。従業員一人ひとりの意識転換を促し、多様な人材が活躍できる前向きな職場風土の醸成を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2026年4月より開始する新中期経営計画「TRS Vision-2030」を策定し、2030年のあるべき姿として「モノづくり力で業界トップレベル」を掲げています。トラック・建機向け熱交換器ビジネスでの国内シェアNo.1構築を目指し、資本コストを意識した経営を推進しています。
* 売上高500億円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、内燃機関向け需要の安定的な取り込みと、電動化や自動運転の進展に対応した成長領域への投資を両立させる戦略を推進しています。
* 既存事業における競争力強化による収益基盤の安定化
* 成長市場を捉えたグローバル展開の推進
* 乗用車分野およびカーボンニュートラル関連を軸とした新領域への展開
* 多品種・多品番・少量生産に対応したモノづくり力の強化
* DXを軸とした人財・組織基盤の強化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人材を企業価値創造の源泉と位置付け、「定型業務中心の組織から戦略実行・価値創出中心の組織への転換」を基本方針としています。DXの活用による業務変革を進めるとともに、「TRS WAY」を実践できる人材の育成を推進しています。また、多様な人材の確保と活躍推進、ワークライフバランスを重視した就業環境の整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.4歳 | 17.5年 | 7,164,315円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.0% |
| 男性育児休業取得率 | 81.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 83.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 76.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.8%)、有給休暇取得率(66.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の取引先・製品への依存
同社の販売先は、トラックや産業・建設機械などの特定のメーカー数社に大きく依存しています。そのため、景気変動による該当業界の市場低迷や、顧客企業の販売数量減少が発生した場合、同社の財政状況および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 競争条件および価格変動の影響
熱交換器などの製品市場は、性能や品質、コスト面において高度な競争状態にあります。競合メーカーによる新技術の開発で同社の優位性が失われるリスクや、市場の競争激化に伴う販売価格の低下が生じた場合、収益を圧迫する可能性があります。
■(3) 原材料の価格動向
同社が製品製造に使用するアルミニウムやステンレスなどの非鉄金属は、市場の市況により購入価格が変動するリスクがあります。調達コストの上昇分を適切に販売価格へ転嫁できなかった場合、同社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 海外生産の地政学・カントリーリスク
同社は中国、インドネシア、タイに製造子会社を展開しています。これら進出先各国における予期せぬ政治状況の変化、法規制の変更、経済的慣習の違いなどにより生産活動が混乱した場合、グローバルな事業計画に支障をきたすリスクがあります。



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