※本記事は、東京ラヂエーター製造株式会社 の有価証券報告書(第121期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
東京ラヂエーター製造転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
1. 東京ラヂエーター製造ってどんな会社?
同社は、トラックや建設機械向けのラジエーター、燃料タンク等の製造販売を主力とする自動車部品メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1938年10月に設立され、1961年10月に東証市場第2部に上場しました。2004年にはカルソニックカンセイ(現マレリ)が親会社となり、2017年にはカルソニックカンセイの親会社変更に伴いCKホールディングス(現マレリホールディングス)が親会社となりました。2022年4月の市場区分見直しにより東証スタンダード市場へ移行した後、2023年2月には自己株式取得によりマレリグループが親会社でなくなりました。
同社グループの従業員数は連結857名、単体506名です。大株主構成は、筆頭株主が元親会社で自動車部品メーカーのマレリ(12.22%)、第2位が主要取引先であるいすゞ自動車(7.16%)、第3位が金属商社の山崎金属産業(5.57%)となっており、事業上の関係が深い企業が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| マレリ | 12.22% |
| いすゞ自動車 | 7.16% |
| 山崎金属産業 | 5.57% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名(監査役含む)の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は木村 裕哲氏が務めています。取締役5名のうち2名が社外取締役で、社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 木村 裕哲 | 代表取締役社長 | 日本ラヂヱーター(現マレリ)入社後、マレリ副社長執行役員を経て2022年同社入社。2024年4月より現職。 |
| 落合 久男 | 取締役会長 | 日本ラヂヱーター(現マレリ)入社後、マレリ常務執行役員等を経て2019年同社社長就任。2024年4月より現職。 |
| 三村 健二 | 取締役 | 1986年同社入社。営業統括部長、営業本部長、常務執行役員等を経て、2024年4月より購買本部長(現任)。 |
社外取締役は、髙村 藤寿(元小松製作所取締役CTO)、堀 比斗志(元オルガノ取締役常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「中国」「アジア」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 日本
ラジエーター、EGRクーラー、オイルクーラーなどの熱交換器製品、および燃料タンク、オイルパン、真空タンクなどの車体部品等を製造・販売しています。主要な顧客はトラックメーカーや建設機械・産業機械メーカーであり、特にいすゞ自動車向けが大きな割合を占めています。
収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。国内における主要な製造・販売拠点は神奈川県藤沢市の本社工場であり、運営は同社が行っています。
■(2) 中国
中国市場において、トラックや建設機械向けの熱交換器等の製造・販売を行っています。現地市場の需要に対応するとともに、海外向けの輸出製品の製造拠点としての役割も担っています。
収益は、製品の販売対価として現地の顧客等から受け取ります。運営は、現地連結子会社である重慶東京散熱器有限公司および無錫塔尓基熱交換器科技有限公司が行っています。
■(3) アジア
インドネシアおよびタイにおいて、自動車および産業・建設機械向けの熱交換器等の製造・販売を行っています。東南アジア地域における日系メーカー等の現地生産に対応しています。
収益は、製品の販売対価として現地の顧客から受け取ります。運営は、現地連結子会社であるPT.TOKYO RADIATOR SELAMAT SEMPURNA(インドネシア)およびTR Asia CO.,LTD.(タイ)が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は第117期の260億円から第121期の341億円へと着実に拡大しています。利益面では、第118期・第119期に原材料価格高騰等の影響で低迷しましたが、第120期以降は価格転嫁や原価低減が進み、経常利益率は5.6%まで回復しています。当期純利益も黒字基調が定着しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 260億円 | 270億円 | 318億円 | 334億円 | 341億円 |
| 経常利益 | 4億円 | 1億円 | 8億円 | 15億円 | 19億円 |
| 利益率(%) | 1.4% | 0.4% | 2.7% | 4.6% | 5.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1億円 | -8億円 | -7億円 | 17億円 | 14億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も増加していますが、売上総利益率は前年並みを維持しています。販売費及び一般管理費は減少しており、営業利益率は4.2%から5.0%へと改善しました。コストコントロールが奏功し、収益性が向上していることが分かります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 334億円 | 341億円 |
| 売上総利益 | 45億円 | 47億円 |
| 売上総利益率(%) | 13.5% | 13.8% |
| 営業利益 | 14億円 | 17億円 |
| 営業利益率(%) | 4.2% | 5.0% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が7億円(構成比24%)、発送費が5億円(同16%)を占めています。売上原価については、原材料費や外注加工費などが主要な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
日本セグメントは自動車部品販売が増加し増収増益となりました。中国セグメントは国内需要が弱かったものの輸出が堅調で増収増益です。一方、アジアセグメントはタイ・インドネシアでの商用車販売不調等により減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 257億円 | 264億円 | 8億円 | 11億円 | 4.0% |
| 中国 | 41億円 | 44億円 | 2億円 | 4億円 | 9.4% |
| アジア | 36億円 | 33億円 | 3億円 | 2億円 | 7.3% |
| 連結(合計) | 334億円 | 341億円 | 14億円 | 17億円 | 5.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
東京ラヂエーター製造は、営業活動で獲得した資金が大幅に増加し、事業活動の健全性を示しています。投資活動では、設備投資等に資金を使用しつつも、その支出は抑制されました。財務活動では、株主への配当等を実施しました。これらの活動の結果、同社の現金及び現金同等物は増加しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 13億円 | 23億円 |
| 投資CF | -13億円 | -6億円 |
| 財務CF | -3億円 | -4億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、自動車および産業・建設機械等の熱交換器および車体部品の専門メーカーとして、「人間尊重を基本に、新たな価値を創造し、信頼される企業として地球に優しい社会造りに貢献する」を経営理念および基本方針として掲げています。高性能、高品質な製品の提供を通じて社会貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、経営理念とコーポレートビジョンを実現するための行動指針として「TRS WAY」を掲げています。従業員一人ひとりの意識転換と能力開発を図るとともに、組織全体として風通しの良い、多様な人材が活躍できる明るく前向きな職場風土を築く活動に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、収益性を重視する観点から「売上高営業利益率」を重要な経営指標として位置付けています。2021年5月に公表した中期経営計画「TRS Vision-2025」の達成に向けた活動を推進しており、現中計の目標値として2025年度に売上高営業利益率5%を掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
カーボンニュートラル化等の環境変化に対応するため、QCDD(品質、コスト、納入、開発)体制の確立を急務としています。具体的には、製品競争力の向上、中国・東南アジアでの新規顧客開拓、新エネルギー車(NEV)対応商品の開発、モノづくり力の向上、SDGs・ESGへの取り組み、資本コストを意識した経営を重点課題として挙げています。
* xEV、FCVを含む新エネルギー車(NEV)対応商品の開発
* 既存拠点、商品を活用した中国、東南アジアへの新規顧客開拓
* 環境対応製品を中心とした売上高の拡大
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、大きな環境変化の中で成長を支える人材の育成を最重要テーマとしています。「TRS WAY」の浸透を図りつつ、製造現場の技能力向上やキャリアプランの充実を進めています。また、女性管理職の登用やキャリア採用、再雇用制度の充実などを通じ、多様な人材が活躍できる職場づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.8歳 | 16.8年 | 6,579,933円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.0% |
| 男性育児休業取得率 | 72.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.9% |
| 男女賃金差異(正規) | 81.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 70.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.6%)、有給休暇取得率(64.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の取引先への依存
同社グループの製品は、トラック、産業・建設機械の特定のメーカー数社(特にいすゞ自動車等)への売上が多くを占めています。そのため、主要取引先の販売数量の減少などがあった場合、同社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料価格の変動
製品製造に使用するアルミ、ステンレスなどの非鉄金属等の原材料価格は、市場市況の影響を受けて変動します。価格高騰分を販売価格に十分に転嫁できない場合、同社グループの財政状況および経営成績に影響を与える可能性があります。
■(3) 海外生産に関するリスク
中国、インドネシア、タイに製造子会社を有しており、海外での生産活動を行っています。これらの国々における政治状況、法規制の変更、経済情勢の変化などが生産活動に支障をきたし、事業計画に影響を与える可能性があります。
■(4) 製品の不具合に関するリスク
自動車産業向け品質マネジメントシステムに基づき厳格な品質管理を行っていますが、万一重大なクレームやリコールが発生した場合、多額の対策費用の発生や社会的信用の低下により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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