※本記事は、極東開発工業株式会社 の有価証券報告書(第90期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 極東開発工業ってどんな会社?
特装車事業を主力とし、環境・パーキング事業も展開する「特装車の総合メーカー」です。
■(1) 会社概要
1955年に前身となる極東開発機械工業が設立され、1971年に現在の商号となりました。1995年には東京証券取引所および大阪証券取引所の市場第一部に指定されています。2007年に日本トレクスを完全子会社化し、トレーラ・バン事業を強化しました。2024年にはオーストラリアのSTG Global Holdings Pty Ltdを子会社化し、海外展開を加速させています。
連結従業員数は3,481名、単体では1,180名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は取引先持株会の極東開発共栄会、第3位は株式会社三井住友銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.19% |
| 極東開発共栄会 | 4.22% |
| 三井住友銀行 | 4.17% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表者は代表取締役社長の布原達也氏です。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 布原 達也 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1982年入社。技術本部長、生産本部長、特装事業部長などを歴任し、2020年6月より現職。 |
| 則光 健男 | 代表取締役専務専務執行役員管理本部長 | 1982年入社。海外事業部長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 堀本 昇 | 取締役常務執行役員環境事業部長 | 1988年入社。環境事業部建設部長、同事業部営業本部長などを経て、2019年4月より環境事業部長。2022年4月より常務執行役員。 |
| 木津 輝幸 | 取締役常務執行役員特装事業部長 | 1992年入社。三木工場長、横浜工場長、生産本部長などを歴任し、2022年6月より現職。 |
| 市村 哲也 | 取締役執行役員管理本部財務部長 | 2003年入社。2019年4月より管理本部財務部長。2024年6月より現職。 |
社外取締役は、寺川博之(元阪神電気鉄道専務取締役)、金子啓子(元松下電器産業情報セキュリティ本部長)、友廣隆宣(神戸海都法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「特装車事業」、「環境事業」、「パーキング事業」を展開しています。
■(1) 特装車事業
建設系車両(ダンプトラック、コンクリートポンプ車)、物流・省力関連車両(トレーラ、ウイング、バン、テールゲートリフタ、タンクローリ等)、環境関連車両(ごみ収集車等)の製造・販売を行っています。トラックメーカーやディーラー、レンタル会社、自治体などが主な顧客です。多品種少量生産を特徴とし、顧客のカスタムオーダーに対応しています。
収益は、製品の販売代金や修理・部品販売等のアフターサービス収入によります。運営は、極東開発工業、日本トレクス、北陸重機工業などが製造・販売を行い、海外では中国、インドネシア、インド、オーストラリアの現地法人が事業を展開しています。また、エフ・イ・オートなどが中古車販売やアフターサービスを行っています。
■(2) 環境事業
粗大ごみ処理施設、リサイクルセンター、ごみ固形燃料化(RDF)施設、バイオガスプラント等の各種リサイクル施設の建設や、破砕機、選別装置などのリサイクル設備の製造・販売を行っています。地方自治体や清掃組合などが主な顧客です。
収益は、施設の建設請負代金や設備の販売代金に加え、施設の運転受託およびメンテナンス・サービス等のストックビジネスから得ています。運営は、主に極東開発工業が行い、サービス業務や運転・管理業務の一部を極東サービスエンジニアリングなどが担当しています。
■(3) パーキング事業
マンション向け立体駐車装置の製造、据付、販売、メンテナンスならびにコインパーキングの運営、不動産賃貸、メガソーラー発電所の運営を行っています。立体駐車装置の販売先は、マンションデベロッパー、建設会社、管理組合などです。
収益は、立体駐車装置の販売・メンテナンス料、コインパーキングの利用料、不動産賃貸料、売電収入などです。運営は、主に極東開発パーキングが行い、不動産賃貸やメガソーラー運営は極東開発工業が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、特に直近の2025年3月期は過去最高の売上規模となっています。利益面では、2023年3月期に利益率が低下しましたが、その後回復し、増益基調に戻っています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,172億円 | 1,169億円 | 1,131億円 | 1,280億円 | 1,404億円 |
| 経常利益 | 93億円 | 76億円 | 12億円 | 56億円 | 69億円 |
| 利益率(%) | 7.9% | 6.5% | 1.0% | 4.4% | 4.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 68億円 | 143億円 | 36億円 | 35億円 | 58億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も増加しています。営業利益率は前年から改善しており、本業の収益性が向上しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,280億円 | 1,404億円 |
| 売上総利益 | 207億円 | 248億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.2% | 17.6% |
| 営業利益 | 48億円 | 67億円 |
| 営業利益率(%) | 3.8% | 4.7% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が78億円(構成比43%)、製品保証引当金繰入額が5億円(同3%)を占めています。
■(3) セグメント収益
特装車事業は国内外での受注が好調で、製品価格改定や生産性向上により増収増益となりました。環境事業はプラント建設やストックビジネスが堅調で増収増益でした。パーキング等事業もストックビジネスやコインパーキングの稼働向上により増収増益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 特装車事業 | 1,071億円 | 1,187億円 | 25億円 | 47億円 | 3.9% |
| 環境事業 | 138億円 | 142億円 | 26億円 | 28億円 | 19.5% |
| パーキング等事業 | 71億円 | 82億円 | 8億円 | 8億円 | 10.3% |
| 調整額 | △6億円 | △6億円 | △11億円 | △16億円 | - |
| 連結(合計) | 1,280億円 | 1,404億円 | 48億円 | 67億円 | 4.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で得た資金と借入金を活用して、投資活動を積極的に行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | △18億円 | 52億円 |
| 投資CF | △95億円 | △155億円 |
| 財務CF | △15億円 | 112億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「技術と信用を重んじ 一致協力して企業の生々発展に努力し広く社会に奉仕する」ことを経営理念としています。企業としての社会的役割、責任を自覚した経営を行い、公正で健全な企業活動を通じて、安全で高性能・高品質な製品とサービスを提供して、社会への貢献と企業価値の拡大を図ることを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は「和協」の精神を掲げ、従業員一人ひとりの持つ個性や能力を貴重な「資本」として捉え、その価値を最大化できる経営を目指しています。サステナビリティを事業戦略の中核に組み入れ、ステークホルダーから寄せられる社会課題を背景にした様々なニーズと期待に応える「サステナビリティ経営」を実践しています。
■(3) 経営計画・目標
2030年度を見据えた長期経営ビジョン実現に向けた第2ステップとして、中期経営計画(2025年4月~2028年3月)を策定しています。最終年度である2027年度の数値目標として以下を掲げています。
* 売上高:1,900億円
* 営業利益率:8%
* ROE:8%
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画では、「サステナブル社会の実現・発展に貢献し業界をリードするグローバルな総合インフラメーカー」を目指し、5つの基本方針を定めています。高付加価値製品・サービスによる価値創造、生産性向上と利益体質強化、海外事業の成長加速、サステナビリティ経営の推進、企業価値向上を実現する資本政策の推進に取り組みます。
* 戦略投資:3ヵ年累計で成長投資に300億円、新規M&A投資に100億円
* 株主還元:3ヵ年累計で総額150億円以上、DOE(株主資本配当率)4%以上の安定的な利益還元
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、従業員の個性や能力を資本として捉え、その価値を最大化することを目指しています。自律型人材の育成と、多様性を受け入れる環境づくりを推進しており、「ダイバーシティの推進」「従業員エンゲージメントの向上」「人権(ハラスメントの根絶・心理的安全性の向上)」をマテリアリティとして掲げています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.0歳 | 16.4年 | 6,802,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.8% |
| 男性育児休業取得率 | 35.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 67.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 67.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(11.1%)、3年間の新規採用者の定着率(90.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 人材確保
少子高齢化や人口減少による人材不足が、品質やサービスの低下を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は採用や育成を強化し、多様な働き方を推進することで人材確保に努めています。
■(2) 特定の取引先への依存
特装車事業はトラックメーカー等への販売、環境事業は自治体向けプラント建設等を主力としています。そのため、特装車の需要動向や地方自治体の公共投資動向が業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 特有の法的規制
特装車事業は道路交通法等の関連法規、環境事業は建設業法等の規制を受けます。法規制の変更による駆け込み需要や反動減、あるいは許認可の状況等が、業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 原材料価格の変動
生産に必要な鋼材や部品等の多くを外部から調達しており、これらの価格が変動した場合、業績に影響を与える可能性があります。



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