※本記事は、大同メタル工業株式会社の有価証券報告書(第118期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年7月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大同メタル工業ってどんな会社?
自動車や船舶向けのすべり軸受を製造・販売する世界的なメーカーです。
■(1) 会社概要
1939年に設立され、自動車用エンジン軸受事業を開始しました。1961年に名古屋証券取引所市場第二部へ上場し、1968年には船舶用エンジン軸受事業へ参入しました。2005年には東京証券取引所市場第一部へ上場を果たしています。近年では2023年にアジアケルメット製作所を吸収合併しています。
現在の従業員数は連結で7,267名、単体で1,374名です。大株主については、筆頭株主が資産管理業務を行う信託銀行で、第2位が大同メタル従業員持株会、第3位が大同メタル友栄会持株会となっており、従業員や取引先を通じた安定的な株式保有が行われています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 7.40% |
| 大同メタル従業員持株会 | 4.34% |
| 大同メタル友栄会持株会 | 4.16% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役会長兼CEOは判治誠吾、代表取締役社長兼COOは古川智充が務めています。社外取締役比率は25%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 判治誠吾 | 代表取締役会長兼CEO | 1965年同社入社。第3事業部副事業部長、取締役社長を経て2007年取締役会長。日本自動車部品工業会本部理事を務める。2024年より現職。 |
| 古川智充 | 代表取締役社長兼COO | 1984年同社入社。大同メタルコトールAD社長、エヌデーシー社長、グローバル生産設備管理ユニット長等を経て、2024年より現職。 |
| 墓越繁昌 | 取締役兼常務執行役員 | 1986年同社入社。第3カンパニープレジデント、ダイナメタル社長を経て、人事企画ユニット長兼犬山事業所長を務める。2021年より現職。 |
| 吉田有宏 | 取締役兼常務執行役員 | 1986年同社入社。経営企画室欧州地域本部ゼネラルマネージャー等を経て、新製品開発ユニット長を務める。2022年より現職。 |
| 伊藤啓貴 | 取締役兼常務執行役員 | 三井住友信託銀行執行役員札幌支店長を経て2020年同社入社。コンプライアンスユニット長を経て、財務企画ユニット長を務める。2024年より現職。 |
| 正田健二 | 取締役兼常務執行役員 | ブリヂストンサイクル派遣執行役員を経て2014年同社入社。大同メタルヨーロッパGmbH社長等を経て、第1カンパニープレジデントを務める。2025年より現職。 |
社外取締役は、星長清隆(元藤田保健衛生大学病院長)、白井美由里(慶應義塾大学商学部教授)、石原真二(石原総合法律事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「パワートレイン事業」「マリン・エネルギー事業」「ライフ事業」「フロンティア事業」および「その他」事業を展開しています。
■パワートレイン事業
高性能、高品質の自動車用(乗用車、トラック、レーシングカー)エンジンに対応する軸受を中心に、二輪エンジン用軸受、エンジン補機用軸受などを製造・販売しています。
収益源はこれらの軸受製品の販売であり、運営は同社および大同プレーンベアリング、エヌデーシー、大同メタル販売などの子会社が国内外で行っています。
■マリン・エネルギー事業
舶用低速エンジン用軸受、舶用・産業用中高速エンジン用軸受、水力・火力・風力などの発電用軸受、コンプレッサー等の産業用軸受を製造・販売しています。
収益源はこれらの産業用軸受の販売であり、運営は同社および大同インダストリアルベアリングジャパン、大同メタル販売などが担当しています。
■ライフ事業
ショックアブソーバー、空調コンプレッサー、ステアリング、トランスミッションなどの自動車部品用軸受を製造・販売しています。
収益源は自動車関連部品用軸受の販売代金であり、運営は同社やエヌデーシー、大同メタル佐賀などが担当しています。
■フロンティア事業
電動化自動車を含む自動車用アルミダイカスト製品、曲げパイプや切削加工品、ノックピンなどの精密金属加工部品を製造・販売しています。
収益源はアルミダイカスト製品等の販売であり、運営は飯野製作所やATAキャスティングテクノロジージャパンなどの子会社が行っています。
■その他事業
電気二重層キャパシタ用電極シート、金属系無潤滑軸受、高粘度液体搬送用ポンプ関連製品、集中潤滑装置などを製造・販売するほか、製品の保管・配送管理や不動産賃貸も行っています。
収益源はこれら製品の販売代金や賃貸収入、配送管理料であり、運営は同社や大同ロジテック、大同メタル販売が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の売上高は増加傾向にあり、1,040億円から1,420億円へと順調に拡大しています。利益面では一時的に赤字となった時期もありましたが、その後回復し、直近では利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,040億円 | 1,155億円 | 1,287億円 | 1,363億円 | 1,420億円 |
| 経常利益 | 48億円 | 29億円 | 58億円 | 68億円 | 74億円 |
| 利益率(%) | 4.6% | 2.5% | 4.5% | 5.0% | 5.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -2億円 | -23億円 | 13億円 | 37億円 | 40億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、それに伴い売上総利益および営業利益も増加しています。利益率も改善を見せており、価格転嫁等の施策が奏功していることが窺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,363億円 | 1,420億円 |
| 売上総利益 | 338億円 | 358億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.8% | 25.2% |
| 営業利益 | 71億円 | 84億円 |
| 営業利益率(%) | 5.2% | 5.9% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が26億円、給料及び手当が24億円、運賃が15億円を占めています。また、販売費及び一般管理費全体におけるおおよその割合は、販売費が35%、一般管理費が65%となっています。
■(3) セグメント収益
主要セグメントであるパワートレイン事業を中心に、各事業で売上高が堅調に推移しています。特にマリン・エネルギー事業やライフ事業での増収が全体を牽引しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| パワートレイン事業 | 721億円 | 745億円 |
| マリン・エネルギー事業 | 179億円 | 198億円 |
| ライフ事業 | 210億円 | 229億円 |
| フロンティア事業 | 235億円 | 229億円 |
| その他 | 18億円 | 19億円 |
| 連結(合計) | 1,363億円 | 1,420億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.7%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も39.2%で市場平均を下回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 109億円 | 137億円 |
| 投資CF | -84億円 | -78億円 |
| 財務CF | -24億円 | -48億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「企業理念」「行動憲章」「行動基準」「行動指針」「環境基本方針」を掲げ、事業活動を通じて社会に貢献することを目指しています。また、パーパスとして「あらゆる動きを支えて 豊かな暮らしに貢献する」を定め、技術立社としてトライボロジー(摩擦・摩耗・潤滑技術)をコアに世界No.1の企業であり続けることを使命としています。
■(2) 企業文化
「Daido Spirit(高い志、改善・改革する意欲、挑戦する心)」を根底に、多様な人材が自律的に能力やスキルを高め、自由闊達な議論を通じて創造性を発揮できる文化を重視しています。イノベーションを生み出す組織づくりを推進し、会社と社員が共に成長できる環境を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
2025年度から2030年度までの新中期経営計画「Bridge to Daido 2030」をスタートさせています。
・売上高:1,500億円
・営業利益:120億円
・ROE:8%
・ROE:9%
■(4) 成長戦略と重点施策
目標達成に向けた事業戦略として、以下の4つの柱を推進しています。低採算事業の見直しや設備投資管理の改革を進めるとともに、エンジン周り以外への拡販やサステナビリティ経営を強化します。
・利益体質強化のための構造改革
・コア事業の磨き上げ
・ネクストコア事業・セミコア事業の強化
・非財務資本重視の経営の推進
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「Daido Spirit」のもと、「主体性・挑戦」を体現する人材の育成、「変化に強い組織」への転換、およびそれを支える「仕組み」の構築を戦略の柱としています。人材育成や働き方改革、人事体制の整備を通じて、適材適所の配置と多様な人材が活躍できる環境づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.4歳 | 16.9年 | 6,712,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.8% |
| 男性育児休業取得率 | 90.9% |
| 男女の賃金の差異(全労働者) | 69.2% |
| 男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 73.4% |
| 男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 67.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性及び外国人採用率(27.5%)、残業時間(158.6時間)、食堂利用率(54.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) グローバル事業展開に伴うリスク
同社グループは世界各地で事業を展開しており、政治・経済情勢の変動、地政学的リスク、各国の政策動向や関税引き上げ等が業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、ガバナンス体制の強化やサプライチェーンの見直しを図り、リスク回避に努めています。
■(2) 原材料の需給環境の不安定化
軸受の主材料である鋼材や非鉄などの原材料価格が、需給環境の変化や輸出規制により高騰・不安定化するリスクがあります。材料の使用量削減や調達先の分散化、顧客への価格転嫁を継続的に実施し、影響の軽減を図っています。
■(3) サイバー攻撃やシステム障害
ハッカーやウイルスによるサイバー攻撃等により、業務活動の停止や機密情報の流出が発生するリスクがあります。データセンターの利用や常時監視体制の構築、CSIRTの設置による情報管理体制の強化と従業員教育を徹底し、安全管理対策を講じています。



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