※本記事は、大同メタル工業株式会社 の有価証券報告書(第117期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大同メタル工業ってどんな会社?
同社は、自動車用エンジン軸受で世界トップシェアを誇る、世界唯一の総合すべり軸受メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1939年に設立され、1961年に名古屋証券取引所市場第二部に上場しました。1997年に同第一部に指定され、2005年には東京証券取引所市場第一部に上場を果たしています。2016年から2017年にかけては、飯野ホールディングやATAキャスティングテクノロジージャパンの株式を取得し、自動車部品事業を拡大しました。
連結従業員数は7,323名、単体では1,394名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は従業員持株会、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 9.64% |
| 大同メタル従業員持株会 | 4.32% |
| 三井住友信託銀行(常任代理人 日本カストディ銀行) | 4.16% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役会長兼CEOは判治誠吾氏です。社外取締役比率は27.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 判治 誠吾 | 代表取締役会長兼CEO | 1965年同社入社。1995年取締役社長、2007年取締役会長を経て、2024年6月より現職。 |
| 古川 智充 | 代表取締役社長兼COO | 1984年同社入社。大同メタルコトールAD社長、エヌデーシー社長、グローバル生産設備管理ユニット長等を経て、2024年6月より現職。 |
| 墓越 繁昌 | 取締役兼常務執行役員人事企画ユニット長兼 犬山事業所長 | 1986年同社入社。第3カンパニープレジデント、ダイナメタル社長等を経て、2024年6月より現職。 |
| 吉田 有宏 | 取締役兼常務執行役員新製品開発ユニット長 | 1986年同社入社。技術ユニット長、設計センターチーフ等を経て、2025年4月より現職。 |
| 伊藤 啓貴 | 取締役兼常務執行役員財務企画ユニット長 | 三井住友信託銀行執行役員等を歴任。2020年同社入社、コンプライアンスユニット長等を経て、2022年4月より現職。 |
社外取締役は、武井敏一(元日本銀行名古屋支店長)、星長清隆(学校法人藤田学園理事長)、白井美由里(慶應義塾大学商学部教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「自動車用エンジン軸受」「自動車用エンジン以外軸受」「非自動車用軸受」「自動車用軸受以外部品」および「その他」事業を展開しています。
■自動車用エンジン軸受
高性能・高品質な乗用車、トラック、レーシングカーなどのエンジンに対応する自動車用エンジン軸受を中心に製造・販売しています。また、二輪エンジン用軸受や、ターボチャージャー・バランサー機構などのエンジン補機用軸受も取り扱っています。
主な収益源は、自動車メーカーや部品メーカー等の顧客からの製品販売代金です。運営は主に大同メタル工業が行っているほか、国内では大同プレーンベアリング、エヌデーシーなどが、海外では大同メタルU.S.A.INC.、大同メタルヨーロッパGmbHなどが担当しています。
■自動車用エンジン以外軸受
トランスミッション、ショックアブソーバー、空調用コンプレッサー、ステアリング、インジェクションポンプなどの自動車部品用軸受を製造・販売しています。エンジン周り以外の領域で使用される製品を提供しています。
収益は、自動車部品メーカー等への製品販売から得ています。運営主体は、国内では大同メタル工業、エヌデーシーなどが、海外では大同メタルメキシコS.A.DE C.V.、大同精密金属(蘇州)有限公司などが行っています。
■非自動車用軸受
船舶用エンジン軸受や建設機械用エンジン軸受のほか、水力・風力発電用、タービン、コンプレッサーなどの産業機械用軸受を製造・販売しています。多種多様な産業分野に向けた製品を展開しています。
収益源は、造船会社、建機メーカー、産業機械メーカー等からの販売収入です。運営は、国内では大同メタル工業や大同インダストリアルベアリングジャパンが、海外では大同インダストリアルベアリングヨーロッパLTD.などが行っています。
■自動車用軸受以外部品
自動車用エンジンやトランスミッション周辺の高精度な曲げパイプ、ノックピン、NC切削品などの精密加工部品や、自動車用アルミダイカスト製品を製造・販売しています。
収益は、自動車関連顧客への部品販売から得ています。運営は、国内では株式会社飯野製作所やATAキャスティングテクノロジージャパンが、海外ではフィリピン飯野 CORPORATIONやATAキャスティングテクノロジーCo.,Ltd.などが行っています。
■その他
電気二重層キャパシタ用電極シート、金属系無潤滑軸受、ロータリーポンプ、集中潤滑装置などの製造・販売を行っています。また、製品の保管・配送管理や不動産賃貸事業も含まれます。
収益源は製品販売や不動産賃貸料などです。運営は、大同メタル工業のほか、物流業務は大同ロジテックが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は直近5期間で増加傾向にあり、特に直近2期は連続で過去最高を更新しています。利益面では、原材料価格の高騰等の影響を受け変動が見られましたが、直近では価格転嫁の進展等により回復基調にあります。当期利益は黒字を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 847億円 | 1,040億円 | 1,155億円 | 1,287億円 | 1,363億円 |
| 経常利益 | 9億円 | 48億円 | 29億円 | 58億円 | 68億円 |
| 利益率(%) | 1.0% | 4.6% | 2.5% | 4.5% | 5.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 17億円 | -2億円 | -23億円 | 13億円 | 37億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加し、売上総利益率も改善しています。営業利益率は前期から上昇しました。販売費及び一般管理費の増加を増収効果と原価低減活動等で吸収し、利益を確保しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,287億円 | 1,363億円 |
| 売上総利益 | 313億円 | 338億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.3% | 24.8% |
| 営業利益 | 61億円 | 71億円 |
| 営業利益率(%) | 4.7% | 5.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が66億円(構成比25%)、運賃が38億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで前期比増収となりました。特に自動車用軸受以外部品や非自動車用軸受が好調でした。利益面でも自動車用エンジン以外軸受や非自動車用軸受が増益に寄与しましたが、自動車用軸受以外部品は損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 自動車用エンジン軸受 | 695億円 | 721億円 | 91億円 | 93億円 | 12.9% |
| 自動車用エンジン以外軸受 | 198億円 | 210億円 | 28億円 | 31億円 | 14.9% |
| 非自動車用軸受 | 166億円 | 179億円 | 32億円 | 37億円 | 20.7% |
| 自動車用軸受以外部品 | 213億円 | 235億円 | -17億円 | -14億円 | -5.8% |
| その他 | 15億円 | 18億円 | 4億円 | 4億円 | 23.0% |
| 調整額 | - | - | -77億円 | -81億円 | - |
| 連結(合計) | 1,287億円 | 1,363億円 | 61億円 | 71億円 | 5.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
大同メタル工業は、有利子負債の圧縮を視野に入れ、バランスの取れた財務運営を目指しています。
営業活動では、主に棚卸資産の増加による支出があったものの、減価償却費の獲得などにより資金を得ました。投資活動では、有形固定資産の取得に資金を使用しました。財務活動では、非支配株主への配当金の支払いなどにより資金を使用しましたが、長期借入金の収入増加などもありました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 167億円 | 109億円 |
| 投資CF | -83億円 | -84億円 |
| 財務CF | -25億円 | -24億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「企業理念」「行動憲章」等を掲げ、事業活動を通して社会に貢献することを目指しています。技術立社として、トライボロジー(摩擦・摩耗・潤滑技術)をコアにテクノロジーリーダーとして技術を磨き、社会的責任を果たすことを方針としています。また、「あらゆる動きを支えて 豊かな暮らしに貢献する」をパーパスとしています。
■(2) 企業文化
同社は「Daido Spirit(高い志、改善・改革する意欲、挑戦する心)」を根底に置いています。これを基盤として、従業員が自らの能力やスキルを高めながら、社内で自由闊達な議論を行い、創造性を発揮してイノベーションを生み出す人材の育成と、活力ある組織づくりを重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
2025年度から2030年度までの新中期経営計画「Bridge to Daido 2030」をスタートさせています。2050年を展望し、世界唯一の総合すべり軸受メーカーとして世界No.1であり続けることを目指しています。
* 2027年度:売上高1,500億円、営業利益120億円、営業利益率8%以上、ROE8%以上
* 2030年度:営業利益率10%以上、ROE9%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
新中期経営計画では、「利益体質強化のための構造改革」「コア事業の磨き上げ」「ネクストコア事業・セミコア事業の強化」「非財務資本重視の経営の推進」の4つを柱としています。エンジン周り以外の軸受事業のウェイト引き上げや、アルミダイカスト事業の黒字化、風車ビジネス等の新規開拓を進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「Daido Spirit」を根底に、多様な人材が能力を高め、自由闊達な議論を行い、イノベーションを起こす人材育成と職場環境の構築を基本方針としています。新中期経営計画では、「人事体制整備」「働き方改革」「人材育成・採用活動強化」を軸に、主体性・挑戦、変化に強い組織、それを支える仕組みの3要素を推進します。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.3歳 | 17.0年 | 6,420,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.5% |
| 男性育児休業取得率 | 61.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.8% |
| 男女賃金差異(正規) | 72.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 81.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社内研修の受講者満足度(94点)、定着率(97.4%)、女性+外国人採用率(25%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) グローバル事業展開に伴うリスク
北米、アジア、欧州など世界各地で事業を展開しており、各地域の政治・経済情勢の変動、輸出規制、関税政策、各種規制の変更、労使関係などが業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、関係会社の管理体制強化や内部統制の運用、人権デュー・ディリジェンスの実施などで対応しています。
■(2) 原材料の需給環境の不安定化リスク
軸受の主材料である鋼材・非鉄金属などの価格が需給環境の変化により不安定に推移することで、業績に影響を与える可能性があります。材料の使用量削減、原則二社発注化の推進、調達先との連携強化による安定的調達、顧客との価格改定交渉などを継続的に実施しています。
■(3) サイバー攻撃・システム障害リスク
サイバー攻撃等による業務停止や情報流出が発生した場合、社会的信用の失墜等により業績に影響を及ぼす可能性があります。社外データセンターの利用、常時監視体制、情報インシデント対応規程に基づく管理体制の構築、CSIRTの設置および日本シーサート協議会への加盟等により対策を強化しています。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。