NOK 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

NOK 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する、シール製品や電子部品の大手メーカーです。自動車や電子機器向け部品を主力とし、連結売上高は7669億円(前期比2.2%増)、経常利益は481億円(同19.3%増)と増収増益を達成しました。EV化などの環境変化に対応しつつ、安定した収益基盤を維持しています。


※本記事は、NOK株式会社 の有価証券報告書(第119期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. NOKってどんな会社?


シール製品やフレキシブル基板などの電子部品を製造・販売し、自動車や電子機器産業を支える独立系部品メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1939年に江戸川精機として設立され、1941年設立の日本ベアリング製造(後の日本油止工業)との合併を経て、1951年に日本オイルシール工業となりました。1960年にドイツのフロイデンベルグ社と資本提携を行い、翌1961年に東京証券取引所に上場しました。1969年には電子部品を手掛ける日本メクトロン(現メクテック)を設立し、事業を拡大。1985年に現在のNOKへと社名を変更しました。

現在の連結従業員数は37,958名、単体では3,251名です。筆頭株主はドイツの提携先企業であるフロイデンベルグ・エス・エーで、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。創業以来の技術提携パートナーが筆頭株主であり、安定した協力関係のもとでグローバルな事業展開を行っています。

氏名 持株比率
フロイデンベルグ・エス・エー 26.23%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.89%
日本カストディ銀行(信託口) 5.76%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長執行役員グループCEOは鶴正雄氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
鶴 正雄 代表取締役 社長執行役員グループCEO 2005年入社。執行役員、常務、専務を経て2021年代表取締役社長に就任。2024年6月より現職。メクテックなど主要子会社の会長も兼務。
渡邉 哲 取締役 上席執行役員グループCFO 1980年入社。取締役、財経本部長、常務、専務を経て2023年CFOに就任。2024年6月より現職。
折田 純一 取締役 上席執行役員シーリングソリューションCEO 2001年入社。執行役員、常務、専務を経て2024年6月より現職。無錫NOKフロイデンベルグ取締役会長も兼務。
佐藤 祐樹 取締役 上席執行役員グループCTONOKグループR&Dヘッド 1991年入社。執行役員、技術本部長兼生産技術本部長、常務を経て2024年6月より現職。
渡辺 英樹 取締役(常勤監査等委員) 1983年入社。財経本部財務部長、常勤監査役を経て2024年6月より現職。


社外取締役は、藤岡誠(元通商産業省大臣官房審議官)、島田直樹(ピー・アンド・イー・ディレクションズ代表取締役)、今田素子(メディアジーン代表取締役)、梶谷篤(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「シール事業」「電子部品事業」および「その他事業」を展開しています。

(1) シール事業


自動車のエンジンやトランスミッションなどに使用されるオイルシール、Oリング、防振ゴム、樹脂加工品、ガスケットなどを製造・販売しています。自動車業界をはじめ、建設機械や農業機械などの一般産業機械業界、電子・精密機器業界など幅広い産業に向けて、液体や気体の漏れを防ぎ、振動を制御する機能部品を提供しています。

収益は、国内外の自動車メーカーや機械メーカー等の顧客に対する製品販売代金から得ています。運営は、同社を中心に、タイNOKなどの海外製造・販売子会社、ユニマテック、NOKエラストマーなどの国内関係会社が連携して行っています。また、提携先であるフロイデンベルググループとの合弁会社等を通じても展開しています。

(2) 電子部品事業


スマートフォンやウェアラブル端末、自動車の電装部品などに不可欠なフレキシブルサーキット(FPC)などの電子部品を製造・販売しています。薄く柔軟性がある配線基板としての特性を活かし、電子機器の小型化・軽量化・高機能化に貢献しています。

収益は、電子機器メーカーや自動車部品メーカー等への製品販売から得ています。運営は、主に子会社のメクテックが中心となり、中国、タイ、ベトナムなどのアジア地域や欧州に展開するメクテックグループ各社が製造・販売を担当しています。

(3) その他事業


事務機用ロール製品や特殊潤滑剤などの製造・販売を行っています。事務機用ロールはプリンターやコピー機などのOA機器に使用され、特殊潤滑剤は様々な機械装置の摺動部に使用されています。

収益は、事務機器メーカーや機械メーカー等への製品販売から得ています。運営は、同社のほか、ロール製品を扱うシンジーテック、特殊潤滑剤を扱うNOKクリューバー、超精密金型等を扱うエストーなどが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあります。特に2022年3月期以降は売上高6,000億円台後半から7,000億円台で推移し、当期は7,600億円を超えました。利益面では変動が見られますが、当期は経常利益、当期純利益ともに安定した水準を確保しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5,964億円 6,825億円 7,100億円 7,505億円 7,669億円
経常利益 183億円 462億円 266億円 403億円 481億円
利益率(%) 3.1% 6.8% 3.7% 5.4% 6.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 67億円 224億円 91億円 397億円 416億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益率も改善しています。これに伴い営業利益および営業利益率は大きく向上しました。コストコントロールや売価への転嫁などが奏功し、収益性が高まっていることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 7,505億円 7,669億円
売上総利益 1,159億円 1,361億円
売上総利益率(%) 15.4% 17.7%
営業利益 229億円 373億円
営業利益率(%) 3.1% 4.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が313億円(構成比31.7%)、運賃が142億円(同14.4%)を占めています。

(3) セグメント収益


シール事業は売上が横ばいながら利益は増加しました。電子部品事業は売上増に加え、前期の赤字から黒字転換を果たし、大幅な増益となりました。その他事業も増収増益となり、全セグメントで利益体質が改善しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
シール事業 3,626億円 3,627億円 233億円 262億円 7.2%
電子部品事業 3,598億円 3,710億円 -10億円 89億円 2.4%
その他事業 281億円 332億円 6億円 21億円 6.4%
調整額 -22億円 -24億円 -0億円 -0億円 -
連結(合計) 7,505億円 7,669億円 229億円 373億円 4.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

NOKは、営業活動により資金を創出し、投資活動や財務活動に充当しています。営業活動によるキャッシュ・フローは、事業活動を通じて得られた利益により増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資の増加により資金を使用しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や配当金の支払により資金を使用しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 892億円 916億円
投資CF -297億円 -432億円
財務CF -340億円 -482億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、社会における存在意義である「パーパス」と、社員の信条や行動指針となる「バリュー」を掲げています。積み重ねた基礎研究と製品開発、高品質な大量・安定生産を強みとし、豊かな社会の根幹となる「安全」と「快適」を支えることで、ステークホルダーに利益をもたらすだけでなく、誇りを感じてもらえる企業としてグローバルな成長を目指しています。

(2) 企業文化


「Essential Core Manufacturing ― 社会に不可欠な中心領域を担うモノづくり」を掲げ、常に変革を推進しながら持続可能な企業となることを目指しています。パーパスと4つのバリューをグループ全体の共通の価値観とし、技術と品質へのこだわりを持ちながら、社会課題に対して真摯に向き合う姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2031年の創業90周年に向け、「売上高1兆円、営業利益率8%以上」を長期目標としています。直近では2026年3月期を最終年度とする中期経営計画において、以下の数値目標を掲げています。

* 売上高営業利益率:6.8%
* ROA:4.6%
* ROE:8.0%
* ROIC:6.5%

(4) 成長戦略と重点施策


「変革基盤の構築」を基本方針とし、新たな成長ドライバーの創出やグローバルな事業運営体制の整備に取り組んでいます。電動自動車(EV)向け製品やグリーンエネルギー関連の開発・拡販を進めるほか、適正価格での受注徹底や資本政策の実行により経営資源の最適化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「多様な人財を活かす基盤の構築」を重点項目とし、新人事制度の導入や人材育成への投資、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)への取り組みを推進しています。一人ひとりが主体性を持ち、貢献と処遇が連動する環境を整えるとともに、キャリアチャレンジ制度などを通じて自律的なキャリア形成を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.7歳 18.8年 8,040,085円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.4%
男性育児休業取得率 45.3%
男女賃金差異(全労働者) 77.3%
男女賃金差異(正規雇用) 80.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 65.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、リーダーや専門職へのキャリアを志向する女性の割合(24%)、エンゲージメントスコア(67)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 顧客の業績への依存


シール製品や電子機器部品事業において、国内外の主要な自動車メーカーや電子機器メーカー等への売上が大きな割合を占めています。そのため、これら主要顧客の業績悪化や予期しない契約変更などが発生した場合、同社グループの業績や財務状況に影響が及ぶ可能性があります。

(2) 他企業との提携関係


事業展開において他社と様々な提携を行っていますが、特にドイツのフロイデンベルグ社とは1960年以来の資本・技術提携関係にあり、同社は筆頭株主でもあります。この提携関係は安定的と認識されていますが、相手先の事情や戦略変更により関係に変化が生じた場合、事業に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 需要動向の変化(EV化等の影響)


主力製品であるオイルシール等は内燃機関(エンジン)向けが多く、燃料電池自動車や電気自動車の普及に伴い需要構造が変化する可能性があります。新製品開発を進めていますが、こうした市場環境の変化や、新興国メーカー台頭による競争激化・価格下落が、将来の業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。