NOK 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

NOK 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するNOKは、自動車や一般産業機械向けのシール製品、および電子部品等の製造・販売を主力事業として展開しています。直近の業績では、電子部品事業の自動車向け販売成長の減速や為替影響等により減収となったものの、価格改定や原価低減活動が寄与し増益を達成しました。


※本記事は、NOKの有価証券報告書(第120期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. NOKってどんな会社?


同社は、シール製品や電子部品の製造・販売を主力とし、国内外の自動車や電子機器産業を支える企業です。

(1) 会社概要


1939年に設立され、1960年にドイツのフロイデンベルグ社と資本提携を結びました。1961年に東京証券取引所へ上場し、1985年に現在のNOKへ社名変更しています。1969年にはメクテックを設立して電子部品事業へ参入するなど、国内外で事業基盤を拡大してきました。

現在は連結で36,655名、単体で3,153名の従業員を擁するグローバル企業です。筆頭株主は資本提携先であるドイツの事業会社フロイデンベルグ・エス・エーで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は不動産賃貸業などを行う正和地所となっています。

氏名 持株比率
フロイデンベルグ・エス・エー 27.01%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.25%
正和地所 5.45%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役 社長執行役員グループCEOは鶴正雄氏が務めています。

氏名 役職 主な経歴
鶴正雄 代表取締役 社長執行役員グループCEO 2005年同社入社。事業推進本部長や専務取締役等を経て、2024年より現職。メクテック等関連会社の会長も兼務。
武田睦史 取締役 上席執行役員グループCFO アステラス製薬やオリンパスでCFO等の要職を歴任し、2025年に同社入社。同年より現職。
渡邉哲 取締役 上席執行役員特命担当 1980年同社入社。財経本部長や専務取締役、CFOなどを経て、2025年より現職。
折田純一 取締役 上席執行役員シーリングソリューションCEO 2001年同社入社。事業推進本部長や専務取締役などを経て、2024年より現職。
佐藤祐樹 取締役 上席執行役員グループCTO NOKグループR&Dヘッド 1991年同社入社。技術本部長兼生産技術本部長などを経て、2024年より現職。


社外取締役は、藤岡誠(元アラブ首長国連邦大使・指名・報酬諮問委員会委員長)、島田直樹(ピー・アンド・イー・ディレクションズ代表取締役)、今田素子(インフォバーン取締役)、梶谷篤(信州大学社会基盤研究所特任教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「シール事業」「電子部品事業」および「その他事業」を展開しています。

シール事業


国内外の自動車メーカーや一般産業機械メーカー向けに、オイルシール、Oリング、防振ゴムなどのシール製品を製造・販売しています。電気自動車等の新領域向け製品開発や、非日系自動車メーカーへの拡販を通じた販売拡大を進めています。

顧客に対する製品の販売を主な収益源としています。事業の運営は同社のほか、タイNOKやイーグル工業など多数の国内外のグループ会社が連携して行っています。

電子部品事業


国内外の電子・精密機器メーカーや自動車メーカー向けに、フレキシブルプリント基板(FPC)などの電子部品を製造・販売しています。スマートフォン向けに加え、成長領域である車載バッテリー向けFPCの展開に注力しています。

顧客に対する電子部品の販売対価を主な収益源としています。事業の運営は、主にメクテックおよびその国内外の子会社(メクテックマニュファクチャリングCorp.各社など)が担っています。

その他事業


自動車や半導体、次世代エネルギー分野などで用いられる特殊潤滑剤の製造・販売を展開しています。なお、事務機器用ロール製品事業については当期間中に事業譲渡を完了しています。

製品の販売による収益を主な収入源としています。特殊潤滑剤の事業運営は、主にNOKクリューバーが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は成長傾向にありましたが、直近は為替影響等により減少に転じています。一方、経常利益は価格改定や原価低減活動により改善を見せ、利益率も直近では6%台後半まで回復し、当期純利益とともに堅調な推移を示しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 6,825億円 7,100億円 7,505億円 7,669億円 7,384億円
経常利益 462億円 266億円 403億円 481億円 498億円
利益率(%) 6.8% 3.7% 5.4% 6.3% 6.7%
当期純利益 224億円 91億円 397億円 416億円 440億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益を比較すると、売上高の減少に伴い、売上総利益および営業利益も減益となりました。売上総利益率は約18%で推移していますが、固定費の増加などが影響し営業利益率は小幅に低下しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 7,669億円 7,384億円
売上総利益 1,361億円 1,313億円
売上総利益率(%) 17.7% 17.8%
営業利益 373億円 330億円
営業利益率(%) 4.9% 4.5%


販売費及び一般管理費(984億円)のうち、給料及び手当が321億円(構成比33%)、運賃が142億円(同14%)、研究開発費が103億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


シール事業は、中国等での自動車向け販売増や為替効果、価格改定が寄与し増収増益を達成しました。一方、電子部品事業は車載バッテリー向けの成長鈍化やスマートフォン向けの停滞により減収減益となっています。その他事業も減収減益でした。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
シール事業 3,627億円 3,674億円 262億円 279億円 7.6%
電子部品事業 3,710億円 3,451億円 89億円 40億円 1.1%
その他事業 332億円 259億円 21億円 11億円 4.4%
調整額 -24億円 -27億円 -0億円 0億円 -
連結(合計) 7,669億円 7,384億円 373億円 330億円 4.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で得た資金で設備投資等の積極的な投資を行いながら、借入金の返済や株主還元を自己資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 916億円 682億円
投資CF -432億円 -103億円
財務CF -482億円 -471億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「可能性を技術で『カタチ』に」というパーパスを社会における存在意義として掲げています。積み重ねた基礎研究に基づく製品開発と高品質での大量・安定生産を強みとし、「Essential Core Manufacturing(社会に不可欠な中心領域を担うモノづくり)」によって豊かな社会の根幹となる「安全」と「快適」を支えることを使命としています。

(2) 企業文化


社員の信条や行動指針として「Challenge(挑戦)」「Commitment(達成)」「Communication(対話)」「Collaboration(協働)」の4つのバリューを掲げています。これらをグループ全体の共通の価値観とし、常に変革を推進しながら、ステークホルダーに誇りを感じてもらえる持続可能な企業を目指す文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


創業90周年にあたる2031年を最終年度とする長期的な目標を掲げ、事業成長による収益力の向上と資本効率の向上を重視しています。段階的に目標を達成する計画としており、中期経営計画では以下の数値目標を掲げています。

* 売上高:1兆円
* 営業利益率:8%以上

(4) 成長戦略と重点施策


2029年3月期を最終年度とする新しい中期経営計画では、「躊躇せずやり切る」「高い目標に挑戦し続ける」を基本方針としています。グローバルオペレーティングモデルの最適化や収益向上策の完遂、非連続成長のための事業創生を重点施策として推進します。2026年にはイーグル工業との経営統合を予定し、複合的なシーリング・ソリューションの提供による成長を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な企業価値向上に向け、「多様な人財を活かす基盤の構築」を掲げています。グローバル視点での適所適財を実現するため、各国人事と連携した体制構築や社内公募制度を展開しています。また、役割や成果に応じた評価制度への刷新や、自律的なキャリア形成を支援する研修プログラムの拡充を通じ、従業員のエンゲージメント向上に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.3歳 19.3年 8,475,417円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 3.2%
男性労働者の育児休業取得率 53.6%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 77.4%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 79.4%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 63.0%


また、同社は「人的資本に関する取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、リーダーや専門職へのキャリアを志向する女性の割合(21%)、エンゲージメントスコア(67)、女性管理職候補者数(59名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 主要顧客の業績依存と提携関係の変動リスク


国内外の自動車や建機、電子機器メーカーなどの主要顧客に対する売上比率が高く、これら顧客の業績動向が同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、フロイデンベルグ社などとの資本・技術提携関係に変化が生じた場合も事業に影響を与える恐れがあります。

(2) 次世代自動車の普及や需要変化リスク


主力製品であるオイルシール等は主にエンジン向けであり、電気自動車等の普及が将来の業績に影響を与える可能性があります。また、新興国での現地メーカー台頭に伴う競争激化や価格下落も、収益性を低下させる要因となるリスクがあります。

(3) 為替相場および原材料価格の変動リスク


海外売上高比率が約7割を占めており、為替相場の変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。さらに、鋼板や合成ゴム、銅箔などの主要原材料価格の変動が即座に製品価格へ転嫁できない場合、利益を圧迫するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。