※本記事は、株式会社メタルアート の有価証券報告書(第94期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. メタルアートってどんな会社?
自動車や建設機械などに使われる「精密型打鍛造品」を製造・販売する、滋賀県草津市に本社を置くメーカーです。
■(1) 会社概要
1943年に後藤鍛工として設立され、1962年に大阪証券取引所市場第二部に上場しました。1991年に現在のメタルアートへ商号変更し、2013年にはインドネシアに子会社を設立して海外展開を進めました。2022年の市場区分見直しにより東証スタンダード市場へ移行し、2025年4月には国内連結子会社のメタルフォージを吸収合併するなど、グループ再編を進めています。
2025年3月31日時点の連結従業員数は671名(単体459名)です。筆頭株主は同社の主要販売先でもあるダイハツ工業で、発行済株式の35.73%を保有しています。第2位はゴーシュー、第3位は個人の松澤孝一氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ダイハツ工業 | 35.73% |
| ゴーシュー | 4.42% |
| 松澤孝一 | 3.91% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は友岡正明氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 友岡正明 | 代表取締役社長 | 1990年入社。生産管理部長、執行役員、グローバル事業部長等を経て、2019年より現職。 |
| 武田正臣 | 常務取締役 | 1986年ダイハツ工業入社。同社滋賀(竜王)工場第1製造部長、PT.Astra Daihatsu Motor取締役等を経て2021年より現職。 |
| 福本照久 | 取締役 | 1996年入社。製造部長、執行役員、PT.METALART ASTRA INDONESIA代表取締役社長を経て2018年より現職。 |
社外取締役は、竹林満浩(公認会計士、竹林公認会計士事務所代表)、荻野奈緒(弁護士、京都大学大学院法学研究科教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「鍛工品製造販売」事業および「その他」事業を展開しています。
■(1) 自動車部品事業
エンジンやトランスミッション、足回りなどに使用される精密鍛造部品を製造しています。主要な顧客はダイハツ工業やトヨタ自動車などの自動車メーカーです。
収益は、自動車メーカー等への製品販売により得ています。運営は主にメタルアートが行っており、インドネシアでは現地法人のPT.METALART ASTRA INDONESIAが製造・販売を行っています。
■(2) 建設機械部品事業
建設機械のエンジン部品や油圧機器部品などの鍛造品を製造・販売しています。主な顧客は建設機械メーカーです。
収益は、建設機械メーカーへの製品販売代金です。運営はメタルアートが中心となって行っています。
■(3) その他事業
農業機械用部品などの鍛造品製造に加え、新たに開始した農園事業が含まれます。農業機械部品は関連メーカーへ販売しています。
収益は、部品販売代金のほか、農園事業における農産物の販売等から得ています。部品事業はメタルアートが、農園事業は連結子会社のメタルヴィレッジが運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの推移を見ると、売上高は2024年3月期まで増加傾向にありましたが、直近の2025年3月期は微減となりました。経常利益は30億円台で推移していますが、利益率は7%〜9%台の間で変動が見られます。当期純利益は2023年3月期をピークに減少傾向にあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 283億円 | 350億円 | 442億円 | 450億円 | 440億円 |
| 経常利益 | 21億円 | 33億円 | 39億円 | 32億円 | 33億円 |
| 利益率(%) | 7.3% | 9.4% | 8.7% | 7.1% | 7.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 9億円 | 14億円 | 20億円 | 21億円 | 20億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益を見ると、売上高は減少しましたが、売上総利益および営業利益は増加しています。これは原価率の改善などが寄与したと考えられます。営業利益率は6%台後半を維持しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 450億円 | 440億円 |
| 売上総利益 | 53億円 | 54億円 |
| 売上総利益率(%) | 11.8% | 12.3% |
| 営業利益 | 29億円 | 30億円 |
| 営業利益率(%) | 6.5% | 6.8% |
販売費及び一般管理費のうち、運送費及び保管費が8.1億円(構成比34%)、給料手当及び賞与が4.0億円(同17%)を占めています。
■(3) セグメント収益
部門別に見ると、主力の自動車部品は増収となりましたが、建設機械部品や農業機械部品は大幅な減収となりました。その他部品は増加しています。建設機械および農業機械分野での需要減退が影響しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 自動車部品 | 370億円 | 370億円 |
| 建設機械部品 | 72億円 | 51億円 |
| 農業機械部品 | 10億円 | 7億円 |
| その他 | 10億円 | 12億円 |
| 連結(合計) | 450億円 | 440億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
メタルアートは、営業活動で得た資金を大きく伸ばし、事業の成長を支えています。投資活動では、将来の成長に向けた設備投資を積極的に行いました。財務活動では、借入れによる資金調達と、株主への還元や借入金の返済を行っています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 39億円 | 55億円 |
| 投資CF | -36億円 | -40億円 |
| 財務CF | 7億円 | -9億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「①常に新たな価値を生みだしお客様の感動を創造します。②革新的なものづくりを通じて社会の発展に貢献します。③リスクを恐れず挑戦し成長する喜びを共感します。」を経営理念として掲げています。顧客、取引先、株主、従業員の満足を追求し、社会や環境への貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
「2030年グループビジョン」のスローガンとして「ワクワクする会社になろう!」を掲げています。また、「メタルアートウェイ」として、「挑戦」「人間性尊重」「感動と感謝」「持続的成長」の4つからなるグループ共通の価値観を明文化し、代々受け継がれていくべきものとして重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値拡大のため、客観的な経営指標として「売上高経常利益率」および「自己資本比率」の向上を重要視しています。「2030年グループビジョン」を策定し、ダントツものづくりのグローバル企業や新規事業創出を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「2030年グループビジョン」実現に向け、マーケティング、ものづくり、ひとづくり、コトづくりの4つの戦略を推進しています。自動車の電動化に対応するためHEV・BEV部品の開発を進めるほか、産業用ロボット部品などの新分野開拓、AI導入や省人化ライン構築による生産性向上、グローバル人材の育成などに注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「ものづくりはひとづくり」の考えのもと、人材育成センターを設立し、経営理念や行動指針の浸透、階層別教育、グローバル人材の育成に取り組んでいます。多様な人材が活躍できる環境整備を進め、専門知識や技能を持つスペシャリストの育成にも力を入れています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.0歳 | 16.3年 | 5,970,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.0% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 76.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 80.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 69.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、海外業務経験者(16.4%)、障がい者雇用率(2.2%)、研修受講率(97.0%)、育児休業後の復帰率(100%)、社員定着率(97.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 素材・部品等の調達リスク
製品製造に必要な鋼材や部品などを外部から購入していますが、世界市場の需要動向や生産環境の変化により、これらの購入価格が変動する可能性があります。価格高騰が発生した場合、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 自動車・建機市場への依存
売上の90%以上を自動車部品および建設機械部品が占めているため、これらの市場動向に業績が大きく左右されます。特に主要販売先である自動車・建機業界における新興国市場開拓や現地生産化、製品価格の下落などが進むと、売上や利益が変動するリスクがあります。
■(3) 金利変動の影響
運転資金を主に短期借入金、設備投資を長期借入金で調達しているため、金利動向の影響を受けます。今後金利が上昇した場合には、支払利息の増加により業績に影響が出る可能性があります。
■(4) 海外展開に伴うリスク
インドネシアで事業を展開しており、為替レートの変動が業績に影響を与える可能性があります。また、現地の法律・規制の変更、政治・経済状況の急変、テロや戦争などの予測困難な事態が発生した場合、経営成績や財務状況に悪影響を及ぼすリスクがあります。



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