※本記事は、株式会社メタルアートの有価証券報告書(第95期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. メタルアートってどんな会社?
自動車や建設機械向けの精密型打鍛造品の製造販売を主力とし、高い技術力で業界を支える企業です。
■(1) 会社概要
1943年に後藤鍛工作として設立され、1962年に上場を果たしました。1991年に現在のメタルアートに商号変更し、2013年にはインドネシアに現地法人を設立して海外展開を強化しています。近年もモータコア工場の新設や、子会社を通じた農園施設の開業、吸収合併によるグループ再編など、事業基盤の強化と多角化を推進しています。
同社グループの従業員数は連結で668名、単体で545名です。筆頭株主は事業会社であり主要顧客でもあるダイハツ工業で、第2位も事業会社のゴーシューとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ダイハツ工業 | 36.22% |
| ゴーシュー | 4.48% |
| INTERACTIVE BROKERS LLC | 4.07% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は友岡正明が務めています。社外取締役は2名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 友岡正明 | 代表取締役社長 | 1990年同社入社。生産管理部長、グローバル事業部長、インドネシア現地法人取締役社長等を経て2019年より現職。 |
| 戸村一弥 | 常務取締役 | 1988年ダイハツ工業入社。同社生産調達本部統括部長等を経て2025年同社取締役、2026年より現職。 |
| 福本照久 | 取締役 | 1996年同社入社。製造部長、インドネシア現地法人代表取締役社長等を経て2018年より現職。 |
社外取締役は、荻野奈緒(京都大学大学院法学研究科教授)、大石悠人(監査法人ユナイテッドマネージングパートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「鍛工品製造販売」などの事業を展開しています。
■(1) 自動車部品
自動車のエンジンやトランスミッション向けを中心とした精密型打鍛造品を製造・販売しています。顧客はダイハツ工業やトヨタ自動車などの自動車メーカーが中心です。電動化の進展を見据え、HEVやBEVに対応するモータ関連部品の開発や生産体制の構築にも注力しています。
収益源は、自動車メーカーや部品メーカーへの製品販売による対価です。運営はメタルアートと同社のインドネシア現地法人が行っています。
■(2) 建設機械部品・農業機械部品等
建設機械や農業機械向け、さらには産業用ロボット向けの鍛造部品を製造・販売しています。需要の拡大が見込まれる産業用ロボット部品については、一貫体制のもとで少ロットでも効率的に生産可能な工程開発を進めています。
収益源は、各機械メーカー等への製品販売による対価です。運営は主にメタルアートが行っています。また、子会社のメタルヴィレッジでは観光農園施設などを通じた農産物の製造販売を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、一時的な落ち込みがあったものの、全般的に売上高・利益ともに拡大傾向にあります。特に直近の2026年3月期は、資源価格高騰の価格転嫁や原価低減の効果もあり、過去5年間で最も高い利益水準を記録しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 350億円 | 442億円 | 450億円 | 440億円 | 453億円 |
| 経常利益 | 33億円 | 39億円 | 32億円 | 33億円 | 42億円 |
| 利益率(%) | 9.4% | 8.7% | 7.1% | 7.4% | 9.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 14億円 | 20億円 | 9億円 | 10億円 | 58億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に加え、売上総利益率および営業利益率がともに大きく改善しています。徹底した原価低減と価格転嫁の推進が、収益性の向上に直結していることが読み取れます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 440億円 | 453億円 |
| 売上総利益 | 54億円 | 65億円 |
| 売上総利益率(%) | 12.3% | 14.3% |
| 営業利益 | 30億円 | 39億円 |
| 営業利益率(%) | 6.8% | 8.6% |
販売費及び一般管理費のうち、運送費及び保管費が9億円(構成比35%)、給料手当及び賞与が4億円(同16%)を占めています。
■(3) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 55億円 | 49億円 |
| 投資CF | -40億円 | -30億円 |
| 財務CF | -9億円 | -11億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.3%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「常に新たな価値を生みだしお客様の感動を創造します。革新的なものづくりを通じて社会の発展に貢献します。リスクを恐れず挑戦し成長する喜びを共感します。」を経営理念として掲げています。お客様、取引先、株主、従業員がともに満足を得られる経営を行い、社会・環境に貢献することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は「挑戦」「人間性尊重」「感動と感謝」「持続的成長」の4つからなる「メタルアートウェイ」をグループ共通の価値観として明文化しています。これを従業員に浸透させるため、社長自らが語りべとなり、半年間かけて全従業員に向けた教育活動を毎年実施するなど、理念の共有を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
「原点回帰と変革」を基本に、「2030年グループビジョン」を策定し、スローガンとして「ワクワクする会社になろう!」を掲げています。持続的な成長と中長期的な企業価値を拡大するために、売上高経常利益率ならびに自己資本比率を向上させることを客観的な指標として重視しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
ビジョン実現のため、マーケティング、ものづくり、ひとづくり、コトづくりの4戦略を展開しています。自動車の電動化に伴う需要縮小を見据え、HEV・BEV向け部品や産業用ロボット部品等の新規事業創出を進めています。また、AI技術を活用した自動検査の導入やロボット等による省人化ラインの構築など、DXとデジタル技術の融合を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「ものづくりはひとづくり」という考えに基づき、人財育成センターを設立し、全従業員に対する教育を進めています。メタルアートウェイの浸透や、ランク・役割に応じた専門知識・マネジメントスキルの階層別教育を実施するほか、海外子会社での業務や社外との人的交流を通じて、グローバルに活躍できるタフ&マルチな人財の育成に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.7歳 | 17.1年 | 6,147,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.8% |
| 男性育児休業取得率 | 62.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 77.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | 70.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.0%)、海外業務経験者(12.4%)、育児休業後の復帰率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 素材・部品等仕入価格の変動
同社グループは製品を製造するための鋼材や部品等を購入しています。これら素材等の世界市場における需要の動向や生産の環境変化などにより、購入価格が変動した場合には、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 自動車・建設機械等の受注変動
同社グループの売上は、自動車部品及び建設機械部品が大部分を占めており、これら業界の国内外の販売状況に影響を受けます。新興国市場への需要開拓や現地生産化、製品の低価格化に伴う価格下落や受注減少が生じた場合、売上高および利益が大きく変動するリスクがあります。
■(3) 海外活動におけるカントリーリスク等
インドネシア等での海外事業展開において、法律・規制の大きな変化や政治・経済状況の急激な変化、テロ等の社会的混乱など予測し難い事態が発生した場合、また通商政策による世界経済の後退などが生じた場合、同社グループの経営成績や財務状況等に影響を与える可能性があります。



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