※本記事は、株式会社NITTANの有価証券報告書(第103期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. NITTANってどんな会社?
小型エンジンバルブを主力とする独立系自動車部品メーカーで、海外売上比率が高くグローバルに事業を展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1948年に日鍛バルブ製造として設立され、1962年に東証二部に上場しました。1978年には米国イートン社と技術・資本提携を行い、その後台湾、インドネシア、タイ、中国、ポーランド、ベトナム、インドなどに製造拠点を設立してグローバル展開を加速させました。2022年にNITTANへ商号変更し、2024年にはNITTAN恵那金属を完全子会社化しています。
2025年3月31日時点で、同社グループは連結従業員2,549名、単体683名の体制です。筆頭株主は技術提携先である米国の製造業イートンコーポレーションで、第2位は韓国の預託決済機関であるKSD-KB(実質保有者は柳成企業株式会社等)、第3位は主要取引銀行の横浜銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| イートンコーポレーション | 17.19% |
| KSD-KB | 4.78% |
| 株式会社横浜銀行 | 4.53% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性2名(社外含む)の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長は李 太 煥氏が務めています。取締役9名のうち4名が社外取締役であり、社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 李 太 煥 | 代表取締役社長先行開発部担当 | 1989年起亜自動車入社。1995年同社入社。営業統括、経営企画部門等の担当を経て2022年6月より現職。 |
| 安 藤 輝 明 | 常務取締役執行役員製造本部、量産開発部、生産技術開発部担当 | 1986年同社入社。技術統括部、海外統括室長、ニッタン・グローバル・テック代表取締役社長等を経て2024年6月より現職。 |
| 鈴 木 隆 司 | 常務取締役事務間接管掌 | 1992年同社入社。営業統括部部長、GMO(グローバルマネジメントオフィサー)、海外統括部門担当等を経て2024年6月より現職。 |
| 栗 原 伸 元 | 取締役執行役員営業統括部、購買部担当兼営業統括部部長兼第2営業部部長 | 1998年日本イートン入社。2008年同社入社。営業統括部各部長を経て2020年6月より現職。 |
| 遠 藤 浩 光 | 取締役執行役員GMO(グローバルマネジメントオフィサー)兼海外統括部、情報システム部担当兼グローバル・コンプライアンス責任者 | 1997年同社入社。海外統括室室長、海外統括部部長等を経て2024年6月より現職。 |
社外取締役は、石垣和男(元熊谷組副社長)、熊平美香(エイテッククマヒラ代表取締役)、増田由美子(消費者の声研究所代表取締役)、徳永健二郎(日本イートン合同会社コントローラー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「小型エンジンバルブ」「舶用部品」「歯車」および「その他」事業を展開しています。
■小型エンジンバルブ
乗用車、二輪車、トラック、バス、汎用製品等に使用される小型エンジンバルブを製造・販売しています。自動車メーカーやエンジンメーカーなどが主な顧客です。
収益は製品の販売代金です。運営は、日本国内では同社が、海外では台湾日鍛工業、PT.フェデラルニッタンインダストリーズ(インドネシア)、ニッタンタイランド(タイ)、U.S.エンジンバルブ(米国)、広州日鍛汽車部件(中国)などの各国連結子会社が行っています。
■舶用部品
船舶用エンジンバルブや汎用製品のエンジンバルブを製造・販売しています。船舶エンジンメーカーなどが主な顧客です。
収益は製品の販売代金です。運営は、日本国内では同社が、韓国においては関連会社のKN-Techが行っています。
■歯車
自動車、トラック、農業機械、建設機械、産業機械等に使用される精密鍛造歯車を製造・販売しています。各種機械メーカーが主な顧客です。
収益は製品の販売代金です。運営は同社が行っています。
■その他
自動車のオートマチックトランスミッション用部品、バルブリフター、工作機械、自動車用電磁式連続カム位相可変機構などを製造・販売しています。また、グループのグローバル展開マネジメントや売店業務、機械加工業なども含みます。
収益は製品の販売代金や業務委託料などです。運営は同社のほか、ニッタン・グローバル・テック(マネジメント)、秦和(売店等)、NITTAN恵那金属(機械加工等)などの子会社や、韓国の関連会社である新和精密などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は347億円から514億円へと拡大傾向にあります。経常利益は2022年3月期以降、黒字を維持していますが、直近では減益となりました。利益率は3%台から5%台の間で推移しており、当期利益は黒字を継続しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 347億円 | 387億円 | 419億円 | 495億円 | 514億円 |
| 経常利益 | 4億円 | 21億円 | 18億円 | 25億円 | 19億円 |
| 利益率(%) | 1.1% | 5.4% | 4.2% | 5.0% | 3.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 6億円 | 4億円 | 6億円 | 6億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は増加しましたが、売上原価および販管費の増加により営業利益は減少しました。売上総利益率はほぼ横ばいですが、営業利益率は低下しており、コスト負担の増加が利益を圧迫している状況が見て取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 495億円 | 514億円 |
| 売上総利益 | 66億円 | 66億円 |
| 売上総利益率(%) | 13.4% | 12.9% |
| 営業利益 | 20億円 | 15億円 |
| 営業利益率(%) | 4.1% | 2.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給与が14億円(構成比28%)、運賃が4億円(同8%)を占めています。売上原価の内訳データはありませんが、製造業であるため材料費や労務費が主要な構成要素と考えられます。
■(3) セグメント収益
セグメント別に見ると、主力の小型エンジンバルブは売上・利益ともに増加し、好調を維持しています。一方、舶用部品、歯車、その他の各セグメントは営業損失を計上しており、主力事業が全体の利益を支える構造となっています。特に舶用部品は損失幅が拡大しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 小型エンジンバルブ | 417億円 | 446億円 | 18億円 | 24億円 | 5.3% |
| 舶用部品 | 36億円 | 38億円 | -2億円 | -5億円 | -11.9% |
| 歯車 | 25億円 | 23億円 | -1億円 | -2億円 | -9.5% |
| その他 | 17億円 | 7億円 | 3億円 | -2億円 | -32.2% |
| 調整額 | -億円 | -億円 | 2億円 | -1億円 | -% |
| 連結(合計) | 495億円 | 514億円 | 20億円 | 15億円 | 2.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、円滑な事業活動に必要な流動性及び財務健全性の確保を資金調達の基本方針としております。
営業活動では、主に非資金取引である減価償却費の計上により資金が増加しました。
投資活動では、有形及び無形固定資産の取得、並びに子会社株式の取得により資金が減少しました。
財務活動では、主に非支配株主への配当金の支払により資金が減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 70億円 | 43億円 |
| 投資CF | -33億円 | -38億円 |
| 財務CF | -19億円 | -9億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「環境との共生」「品質優先」「人間性尊重」を基本理念としています。具体的には、「環境との共生のもと企業の発展を通じて社会に貢献する」「品質優先に徹し、顧客の信頼に応える」「人間性を尊重し、夢と活力のある職場を創造する」の3項目を経営理念として掲げています。
■(2) 企業文化
コーポレートスローガンとして「CHALLENGE・CREATION・SPEED(挑戦・創造・スピード)」を掲げています。このスローガンのもと、既存の技術力と新商品開発力を駆使し、時代のニーズを先取りした高品質な製品・技術やアイディアを提供し続けることを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
中長期経営ビジョン「NITTAN Challenge 10 (NC10)」において、2030年の目標達成を目指しています。
* 売上高:1,000億円以上
* 営業利益額:100億円以上
* 売上高営業利益率:10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
NC10達成に向け、既存の内燃機関領域(VISIONⅠ)では燃費向上等の付加価値製品を開発し、EV領域(VISIONⅡ)では脱炭素に対応した新規事業に挑戦しています。2025年度からのグローバル中期経営方針では、「基盤強化」「永続的発展」「企業風土改革」を柱とし、事業再編や収益力強化、新規事業化、DX推進などに取り組みます。また、M&Aによる技術統合やシナジー創出も進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「従業員の成長こそ企業の成長」との考えに基づき、コーポレートスローガンを体現する「誠実」な人材の育成を進めています。多様な人材の活躍推進、マルチスキル人材や専門人材の育成、中核人材・後継者の育成、自律的なキャリア形成支援を戦略として掲げ、教育や職場環境の整備に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.5歳 | 19.9年 | 6,600,563円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.1% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 56.0% |
| 男女賃金差異(正規) | 75.7% |
| 男女賃金差異(非正規) | 68.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇平均取得率(92.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場環境変化と革新技術の出現
世界的な市場環境の変化、特に地政学・経済・政治情勢の変動がリスクとなります。また、自動車の電動化(EV化)の進展により、主力製品である内燃機関部品の市場が縮小する可能性があります。同社は情報収集に基づく対応や、電動化領域(VISIONⅡ)を含む新規事業への挑戦でこれに対処しています。
■(2) 海外拠点のガバナンスとIT化
海外に多数の拠点を有するため、言語や人員の問題からガバナンスが不十分となり、不正や決算誤謬が発生するリスクがあります。また、製造現場や間接部門におけるIT化の遅延は、競争力低下や経営判断の障害となる可能性があります。これらに対し、監査の実施やシステム更新等で対応を進めています。
■(3) 製品競争力と品質問題
競合他社に対する品質・価格・納期等の競争力低下や、リコール・品質不良による損害発生、取引停止のリスクがあります。また、原材料や部品の調達難による生産への悪影響も懸念されます。同社はコスト削減、品質マネジメントシステムの徹底、サプライチェーン管理等によりリスク低減を図っています。



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