NITTAN 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

NITTAN 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

NITTANは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、乗用車や二輪車等の小型エンジンバルブ、船舶用エンジンバルブ、精密鍛造歯車の製造販売を展開するメーカーです。直近の業績では、舶用部品の収益改善や為替効果により売上高は横ばいながらも、営業利益や経常利益が大幅な増益を達成し、堅調な推移を見せています。


※本記事は、NITTANの有価証券報告書(第104期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. NITTANってどんな会社?


小型エンジンバルブや精密鍛造歯車など、モビリティの心臓部を支える重要部品をグローバルに展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1948年に旧日本鍛工から分離して日鍛バルブ製造として設立されました。1961年に日鍛バルブへと社名を変更し、1962年に東京証券取引所市場第二部へ上場しました。その後、国内外でエンジンバルブや歯車などの製造体制を拡大し、2022年4月にNITTANへと商号変更するとともに、東証スタンダード市場へ移行しています。2026年6月には韓国の新和精密を連結子会社化し、さらなる事業拡大を進めています。

同社グループは、連結で2,503名、単体で660名の従業員を抱える規模で事業を展開しています。筆頭株主は技術提携先であるイートンコーポレーションで、第2位は柳成企業等を実質保有者とするKSD-KB、第3位は取引銀行である横浜銀行です。

氏名 持株比率
イートンコーポレーション 17.18%
KSD-KB 4.78%
横浜銀行 4.52%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長は李太煥氏が務めています。

氏名 役職 主な経歴
李太煥 代表取締役社長先行開発部担当 1989年起亜自動車入社。1995年同社入社。専務取締役などを経て、2022年より現職。
安藤輝明 常務取締役執行役員製造本部、量産開発部、生産技術開発部担当 1986年同社入社。ニッタン・グローバル・テック代表取締役社長などを経て、2025年より現職。
鈴木隆司 常務取締役事務間接管掌兼営業部担当 1988年東陽コンピューターサービス入社。1992年同社入社。営業統括部門担当などを経て、2026年より現職。
栗原伸元 取締役執行役員人事部、品質保証部、購買部担当 1988年明電舎入社。2008年同社入社。営業統括部部長兼第1・第2営業部部長などを経て、2026年より現職。
遠藤浩光 取締役執行役員GMO兼海外統括部、情報システム部担当兼グローバル・コンプライアンス責任者 1997年同社入社。海外統括室長などを経て、2025年より現職。


社外取締役は、石垣和男(元熊谷組代表取締役副社長)、熊平美香(エイテッククマヒラ代表取締役)、増田由美子(消費者の声研究所代表取締役)、徳永健二郎(日本イートン合同会社ジャパン・カントリー・コントローラー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「小型エンジンバルブ」「舶用部品」「歯車」の3つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

小型エンジンバルブ

乗用車・二輪車・トラック・バス・汎用製品などに使用される小型エンジンバルブを製造販売しています。世界中の自動車メーカーなどのニーズに応えるため、次世代型冷媒封入中空バルブや代替燃料エンジン用バルブの開発にも取り組んでいます。

顧客への製品販売を主な収益源としています。運営は同社を中心に、台湾日鍛工業、米国U.S.エンジンバルブ、インドネシアのPT.フェデラルニッタンインダストリーズなど、アジアや北米、欧州に展開するグローバルな子会社群が行っています。

舶用部品

船舶用・発電機用等の大型・中型エンジンバルブを製造販売しています。造船業界の堅調な需要に応えるとともに、GHGフリー燃料を利用した内燃機関に対応するため、耐摩耗盛金材などの高付加価値製品の開発も進めています。

製品販売から収益を得ています。日本国内における製造と販売を同社が担うほか、韓国における船舶用エンジンバルブの製造販売をKN-Techが担当して運営しています。

歯車

自動車・トラック・農業機械・建設機械・産業機械等に向けた精密鍛造歯車を製造販売しています。素材投入量や使用電力の削減を目指し、ニアネット鍛造や金型長寿命化を見据えた技術開発を行っています。

主に製品販売による収益で構成されています。国内外の顧客に対して、熱間鍛造技術を活かした高強度歯車などの高付加価値製品を提案・販売しており、運営は同社が単独で行っています。

その他

バルブリフターや工作機械、自動車用電磁式連続カム位相可変機構の製造販売を行っているほか、機械加工業や売店業務などを展開しています。産業機械等に向けた性能向上やメンテナンスサイクル延長を狙った製品開発も推進しています。

製品・サービスの提供から収益を得ています。同社のほか、韓国の新和精密、台湾の台湾日鍛工業、中国の恵那金属(昆山)などがバルブリフターや工作機械の製造販売等を行っており、NITTAN恵那金属や秦和なども運営を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は安定して成長を続け、当期は517億円に達しています。利益面では一時的な増減があるものの、当期は経常利益が44億円、当期利益が21億円となり、利益率も大きく改善して大幅な増益を記録しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 387億円 419億円 495億円 514億円 517億円
経常利益 21億円 18億円 25億円 19億円 44億円
利益率(%) 5.4% 4.2% 5.0% 3.7% 8.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 11億円 6億円 10億円 13億円 21億円

(2) 損益計算書


売上高は前年と同水準を維持していますが、売上総利益が大きく伸び、利益率も向上しています。営業利益も前年の15億円から40億円へと急増しており、収益性の改善が顕著に表れています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 514億円 517億円
売上総利益 66億円 91億円
売上総利益率(%) 12.9% 17.7%
営業利益 15億円 40億円
営業利益率(%) 2.9% 7.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与が14億円(構成比27%)、運賃が3億円(同7%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の小型エンジンバルブ事業は北米や中国等での受注減により減収となりました。一方、舶用部品事業は造船業の堅調な需要や火災影響からの回復により増収となり、その他事業も子会社化などの影響で大幅な増収を記録しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
小型エンジンバルブ 446億円 415億円
舶用部品 38億円 50億円
歯車 23億円 18億円
その他 7億円 33億円
連結(合計) 514億円 517億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスであるため「健全型」に該当します。営業利益で借入返済を進めつつ、投資も手元資金で賄う優良な状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 43億円 78億円
投資CF -38億円 -29億円
財務CF -9億円 -26億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.4%でスタンダード市場の平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.3%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「環境との共生のもと企業の発展を通じて社会に貢献する」「品質優先に徹し、顧客の信頼に応える」「人間性を尊重し、夢と活力のある職場を創造する」の3項目を経営理念として掲げています。また、パーパスとして「多様な技術を駆使し、脱炭素化社会の実現に貢献する」ことを打ち出しています。

(2) 企業文化


コーポレートスローガンとして「CHALLENGE・CREATION・SPEED(挑戦・創造・スピード)」を掲げています。人間性を尊重し、夢と活力のある職場を創造するという理念のもと、挑戦する姿勢を称え合い、革新的でスピード感のある開発風土の醸成に努めています。

(3) 経営計画・目標


中長期経営ビジョン「NITTAN Challenge 10(NC10)」において、以下の数値を目標として掲げて経営を行っています。

・売上高1,000億円以上
・営業利益額100億円以上
・売上高営業利益率10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


既存の内燃機関部品(ICE領域)における付加価値の向上を図るとともに、電動化(xEV領域)や異業種領域への挑戦を本格化させて新規事業化を進めています。また、インド拠点での生産体制強化や戦略的M&Aを活用し、投資規律と収益性を意識した成長戦略を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「基盤強化」「永続的発展」「企業風土改革」を三本柱とし、多様な人材の活躍推進、マルチスキル人材や専門人材の育成、中核人材・後継者の計画的な育成に取り組んでいます。従業員が自律的にキャリアを考え挑戦できる制度の整備を進めるとともに、健康経営や安全な職場環境作りも推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.8歳 20.0年 6,726,921円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.1%
男性育児休業取得率 83.3%
男女賃金差異(全労働者) 59.4%
男女賃金差異(正規雇用) 78.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 70.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇平均取得率(95.2%)、女性管理職の人数(1名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自動車業界の環境変化と技術革新

環境規制の強化や電動化の進展に伴う内燃機関の市場縮小、あるいは革新的な技術・製品の出現により、既存の製品競争力を失い業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 海外拠点のガバナンスと為替変動

グローバルに事業展開しているため、言語や人員配置の問題によるガバナンス不足で不正や決算の誤謬が発生する可能性があります。また為替変動による影響も受けます。

(3) 特定取引先への依存と供給の不安定化

特定の取引先に材料や部品の調達を依存している場合があり、取引先の信用不安や撤退時に調達が困難となることで、生産や業績に悪影響を及ぼすおそれがあります。

(4) 人材不足と情報セキュリティ

各種の優秀な人材の確保が容易ではなく、必要な人材が不足するリスクがあります。また、サイバー攻撃やシステムトラブルによる情報漏洩や事業停止のリスクも存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。