ユニプレス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ユニプレス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場するユニプレスは、自動車の車体プレス部品や精密部品の製造販売をグローバルに展開する企業です。直近の業績は得意先の減産等により減収となった一方、中国における生産体制の再編などの合理化効果により経常利益は増益となりましたが、特別損失の計上により当期純損失となっています。


※本記事は、ユニプレス株式会社の有価証券報告書(第87期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ユニプレスってどんな会社?


自動車の車体プレス部品、精密部品、樹脂部品の製造・販売をグローバルに展開する部品メーカーです。

(1) 会社概要


1936年に設立された大和工業と1945年に設立された山川工業が、1998年に合併して現在のユニプレスが誕生しました。2004年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、翌2005年に市場第一部へ指定替えされています。自動車部品のグローバル展開を推進し、米国やメキシコ、中国などに多数の拠点を設立しています。

現在の従業員数は連結で6,916名、単体で1,759名規模となっています。筆頭株主は事業会社の日本製鉄で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位には同じく事業会社の伊藤忠丸紅鉄鋼が名を連ねており、取引先等との安定的な資本関係が構築されていることが特徴です。

氏名 持株比率
日本製鉄 15.00%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.40%
伊藤忠丸紅鉄鋼 9.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長執行役員は浦西信哉氏が務めており、社外取締役の比率は42.9%となっています。

氏名 役職 主な経歴
浦西信哉 代表取締役社長執行役員 日産自動車にて常務執行役員などを経験し、同社に専務執行役員として入社。副社長執行役員を経て、2020年4月より現職。
森田幸彦 取締役副社長執行役員経営企画部門、海外事業部門、経理部門、原価企画部門担当 日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行後、同社へ入社。経理部長、常務執行役員、専務執行役員などを経て、2022年4月より現職。
山本邦雄 取締役副社長執行役員開発部門、生産技術部門、品質保証部門担当 山川工業(現ユニプレス)に入社し、品質保証部長、常務執行役員、専務執行役員などを歴任。2024年6月より現職。
伊藤成人 取締役(常勤監査等委員) 山川工業(現ユニプレス)に入社し、人事・総務部長、常務執行役員、ユニプレスサービス代表取締役社長などを経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、土居清志(元日本メクトロン代表取締役社長)、葭葉裕子(弁護士)、長谷川園恵(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「米州」「欧州」「アジア」の報告セグメントおよび「その他」の事業を展開しています。

(1) 日本


日本国内の自動車メーカー等に向けて、車体プレス部品、精密部品、樹脂部品の製造・販売を提供しています。

製品の販売による収益を主な収益源としています。国内においては、同社が直接製造販売を行うほか、ユニプレス九州やユニプレス精密、ユニプレスモールドなどの子会社等に製造工程を加工委託し、グループ各社へ材料を供給する形で事業を運営しています。

(2) 米州


米国やメキシコなどの米州地域の自動車メーカー等に向けて、車体プレス部品や精密部品の製造・販売を提供しています。

米州地域での製品販売による収益を主な収益源としています。事業の運営は、統括会社であるユニプレスノースアメリカのもと、ユニプレスアメリカ、ユニプレスメキシコなどの現地子会社が行っており、同社から部品や材料の供給を受けて生産を行っています。

(3) 欧州


英国やフランスなどの欧州地域の自動車メーカー等に向けて、車体プレス部品の製造・販売を提供しています。

欧州地域での製品販売による収益を主な収益源としています。事業の運営は、統括会社であるユニプレスヨーロッパのもと、ユニプレスイギリスやユーエムコーポレーションなどの現地子会社が行っており、各地域での生産体制を構築しています。

(4) アジア


中国、インド、タイ、インドネシアなどのアジア地域の自動車メーカー等に向けて、車体プレス部品や精密部品の製造・販売を提供しています。

アジア地域での製品販売による収益を主な収益源としています。事業の運営は、中国統括会社であるユニプレスのほか、ユニプレス広州、ユニプレスインド、ユニプレスインドネシアなどの多数の現地子会社が行っています。

(5) その他


プレス部品の製造販売に関連する周辺業務として、工場プラントの設計建設、保険代理業務、製品の輸送などのサービスを提供しています。

これらの付帯サービスによる収益を主な収益源としています。工場プラントの設計建設や保険代理業務はユニプレスサービスが、国内における製品等の輸送業務はユニプレス物流などがそれぞれ運営を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、売上高は一時的に増加したものの、直近では減収に転じています。経常利益は黒字化後に増加傾向を示しており、利益率は改善傾向にあります。一方で当期利益については、事業整理損や減損損失等の特別損失計上の影響もあり、黒字と赤字が交錯する不安定な推移となっています。

項目 83期 84期 85期 86期 87期
売上高 2,545億円 3,044億円 3,351億円 3,300億円 3,219億円
経常利益 -47億円 50億円 126億円 137億円 148億円
利益率(%) -1.9% 1.7% 3.7% 4.1% 4.6%
当期利益(親会社所有者帰属) -58億円 34億円 -27億円 -23億円 1億円

(2) 損益計算書


売上高は減少したものの、売上総利益および営業利益は増加しており、収益性の改善が見られます。売上総利益率は11.9%から12.7%へ、営業利益率は3.7%から4.2%へとそれぞれ向上しており、生産体制の見直しや合理化効果が利益の押し上げに寄与しています。

項目 86期 87期
売上高 3,300億円 3,219億円
売上総利益 394億円 408億円
売上総利益率(%) 11.9% 12.7%
営業利益 122億円 136億円
営業利益率(%) 3.7% 4.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料が71億円(構成比26%)、荷造発送諸費が17億円(同6%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、米州およびアジア地域が増収となった一方で、日本および欧州地域は減収となっています。特に日本では得意先の減産による影響が大きく、米州では為替影響と得意先の増産が寄与しました。

区分 売上(86期) 売上(87期)
日本 1,041億円 902億円
米州 1,314億円 1,362億円
欧州 453億円 445億円
アジア 491億円 511億円
連結(合計) 3,300億円 3,219億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)と言えます。

項目 86期 87期
営業CF 286億円 231億円
投資CF -126億円 -96億円
財務CF -183億円 -136億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-6.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.4%で市場平均をやや下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「プレスを究めて、プレスを越える」を企業理念に掲げています。これは、時代をリードする最先端のプレス技術を量産技術の域まで高め、さらに高い次元での機能や価値の創造に挑戦して新たな製品を生み出すことを意味しています。また、「サステナビリティ経営の実現」を経営理念として定めています。

(2) 企業文化


卓越したプレス技術を通じて環境に優しく安全な社会の実現を目指すとともに、公正で誠実な事業活動によってステークホルダーとの信頼関係を構築する文化を大切にしています。経済的価値と社会的価値の同時創出により、社会と自社グループの持続的な発展を目指す姿勢が根付いています。

(3) 経営計画・目標


「さらなる成長への基盤づくり」を中期経営方針に掲げ、生産体制の再編や工場のスマート化に取り組んでいます。着実に損益分岐点売上高を改善することで、環境の変化に左右されにくい強固な収益体質の実現を目指しています。また、中長期的なCO2排出量削減の実現に向けた取り組みも推進しています。

(4) 成長戦略と重点施策


既存部品の付加価値向上と自動車分野以外への商品開発を進めるため、コア技術の開発を加速させています。また、中長期的な電動化の進展を見据え、パワートレイン部品などの開発にも取り組むとともに、空調機や産業機械などの新分野における販路開拓によるグローバル拡販を強力に推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「心理的安全性の高い学習する組織への変革」を人事戦略として位置付けています。トータルプレスエンジニアリングの本業に貢献する人材と、社会的課題の解決に貢献できる人材の創出を目指しており、従業員一人ひとりが働きがいを感じられる「ウェルビーイング経営」を推進し、企業の価値向上へとつなげています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
87期 45.1歳 21.2年 6,949,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.9%
男性育児休業取得率 88.5%
男女賃金差異(全労働者) 79.2%
男女賃金差異(正規雇用) 77.4%
男女賃金差異(パート・有期) 75.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員エンゲージメントスコア(44.7)、新卒採用女性従業員採用比率(31.6%)、海外拠点経営層の現地化比率(50.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自動車業界の市場環境変化


米国関税政策や中東情勢の緊迫化、中国メーカーの台頭やEV化進展の鈍化など、不透明な事業環境の影響を受ける可能性があります。また、厳しい価格競争による製品価格の引き下げや、想定以上の電動化進展によるトランスミッション部品の需要減退が同社の業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 特定の取引先への販売集中


同社の売上実績の約8割を日産自動車およびその関連会社が占めています。同社グループからの受注獲得に加え、他メーカーとの取引拡大にも注力していますが、日産グループの販売減少や経営戦略・購買方針の変更が行われた場合、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(3) 海外事業展開と地政学的リスク


米州、欧州、アジアなど世界各国で事業を展開しているため、各国の政治や経済の不安定化、保護貿易諸規制の発動、為替の大幅な変動などのリスクを内包しています。為替予約やグローバルな法務基盤の構築等で対応していますが、想定を超える社会的混乱が生じた場合、業績に影響する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。