※本記事は、ユニプレス株式会社 の有価証券報告書(第86期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ユニプレスってどんな会社?
自動車の車体骨格部品などを主力とするプレス加工メーカーです。日産自動車との取引が多く、グローバルに事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1998年4月、山川工業と大和工業が合併し、現在のユニプレスが発足しました。合併と同時にユニプレス九州を子会社化し、国内生産体制を強化しました。その後、米国、中国、インドなどに拠点を設立し、グローバル展開を加速させました。2004年に東証二部、2005年に東証一部へ上場を果たしました。近年では2024年に技術研究所を吸収合併しています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は7,581名、単体では1,837名体制です。筆頭株主は、主要な材料供給元であり業務提携関係にある日本製鉄です。第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は日本製鉄グループの商社である伊藤忠丸紅鉄鋼となっており、鉄鋼業界との強い結びつきが見られます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本製鉄 | 15.10% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.90% |
| 伊藤忠丸紅鉄鋼 | 9.80% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名、計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長執行役員は浦西信哉氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 浦西 信哉 | 代表取締役社長執行役員 | 日産自動車に入社し、常務執行役員などを歴任。2016年に同社に入社し、専務執行役員、副社長執行役員を経て、2020年4月より現職。 |
| 森田 幸彦 | 取締役副社長執行役員経営企画部門、海外事業部門、経理部門、原価企画部門担当 | 日本興業銀行(現みずほ銀行)出身。みずほフィナンシャルグループ監査役室長を経て、2007年に同社入社。経営企画部長、経理部長などを歴任し、2022年4月より現職。 |
| 山本 邦雄 | 取締役副社長執行役員開発部門、生産技術部門、品質保証部門担当 | 1985年に山川工業(現ユニプレス)入社。品質保証部長、常務執行役員、専務執行役員などを経て、2024年6月より現職。 |
| 佐久間 一史 | 取締役副社長執行役員工機・生産部門、UPS推進室、アジア地域担当 | 1983年に大和工業(現ユニプレス)入社。生産管理部長、常務執行役員、専務執行役員などを経て、2025年6月より現職。 |
| 伊藤 成人 | 取締役(常勤監査等委員) | 1982年に山川工業(現ユニプレス)入社。人事・総務部長、常務執行役員、ユニプレスサービス社長などを経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、土居清志(元NOK代表取締役社長)、葭葉裕子(弁護士)、長谷川園恵(公認会計士・税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「米州」「欧州」「アジア」の4つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。
**(1) 車体プレス部品事業**
自動車の車体骨格部品などを製造・販売しています。主要な顧客は日産自動車などの自動車メーカーです。高張力鋼板(ハイテン材)を用いた軽量かつ高強度の部品製造を得意としています。
この事業の収益源は、自動車メーカー等の顧客に対する部品の販売代金です。国内ではユニプレス、ユニプレス九州などが製造を担当し、海外ではユニプレスアメリカ、ユニプレス広州などの現地子会社が製造・販売を行っています。
**(2) 精密部品事業**
オートマチックトランスミッション用部品などの精密プレス加工部品を製造・販売しています。高い精度が求められる部品加工技術を強みとしています。
収益源は、自動車メーカーや部品メーカーへの製品販売です。国内ではユニプレス精密が製造を受託し、海外ではユニプレスメキシコやユニプレス精密広州などが製造・販売を担っています。
**(3) 樹脂部品事業**
自動車用の樹脂プレス部品を製造・販売しています。金属部品と樹脂部品の技術融合により、自動車の軽量化ニーズに対応しています。
収益源は、顧客への樹脂部品の販売です。国内においては、ユニプレスモールドが製造工程の一部または全部を受託し、同社より材料の供給を受けて生産を行っています。
**(4) その他事業**
工場プラントの設計建設、保険代理業務、製品輸送などを行っています。
収益源は、プラント設計施工料、保険手数料、運送料などです。運営は主にユニプレスサービスがプラント関連や保険代理業務を、ユニプレス物流が輸送業務を担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2,300億円台から3,300億円台へと拡大傾向にありますが、直近は微減となりました。利益面では、2022年3月期までは経常赤字でしたが、その後黒字化し回復基調にあります。しかし、当期(2025年3月期)は事業整理損や減損損失などの特別損失を計上したため、最終損益は大幅な赤字となりました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,345億円 | 2,545億円 | 3,044億円 | 3,351億円 | 3,300億円 |
| 経常利益 | -92億円 | -47億円 | 50億円 | 126億円 | 137億円 |
| 利益率(%) | -3.9% | -1.9% | 1.7% | 3.7% | 4.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -176億円 | -80億円 | 34億円 | 53億円 | -211億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少しましたが、原価低減等の効果により売上総利益率は改善し、営業利益も増加しました。一方で、販売費及び一般管理費は微減にとどまっています。特別損失として中国拠点等の事業再構築に伴う巨額の損失を計上したため、最終的な当期損益は赤字となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3,351億円 | 3,300億円 |
| 売上総利益 | 384億円 | 394億円 |
| 売上総利益率(%) | 11.4% | 11.9% |
| 営業利益 | 109億円 | 122億円 |
| 営業利益率(%) | 3.3% | 3.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が70億円(構成比26%)、荷造発送諸費が20億円(同7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
地域別の売上高を見ると、日本とアジアで減収となった一方、米州では増収となりました。日本では顧客の減産影響を受け、アジアでも同様の影響がありました。米州は為替効果もあり売上が伸長しました。欧州は微減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 1,137億円 | 1,041億円 |
| 米州 | 1,169億円 | 1,314億円 |
| 欧州 | 461億円 | 453億円 |
| アジア | 583億円 | 491億円 |
| 連結(合計) | 3,351億円 | 3,300億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で得た資金で借入金の返済を進めつつ、投資活動も行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 287億円 | 286億円 |
| 投資CF | -124億円 | -126億円 |
| 財務CF | -185億円 | -183億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-14.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.8%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「プレスを究めて、プレスを越える」を企業理念としています。これは、プレスの最先端技術を量産技術の域まで高めつつ、さらに高い次元での機能・価値創造に挑戦し続けることを意味します。また、「サステナビリティ経営の実現」を経営理念とし、経済的価値と社会的価値の同時創出による持続的な発展を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「解決型ビジネス風土」と「付加価値提案力」を強みとしています。顧客の要望に応えるだけでなく、車体、精密、樹脂の各事業の特性を掛け合わせ、提案型のビジネスを展開しています。また、「モノづくりの心をひとつに」をスローガンに掲げ、従業員一人ひとりを尊重し、安全と健康を第一義とする文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は「さらなる成長への基盤づくり」を中期経営方針として掲げています。具体的な数値目標としては、以下のKPIの達成を目指しています。
* 連結経常利益:120億円(2025年3月期目標に対し実績137億円)
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営方針実現のため、「電動化への対応加速」「業界トップレベルの収益力実現」「サステナビリティ経営の推進」を重要課題としています。特に電動化対応では、車体の軽量化・高強度化技術(超ハイテン材、ホットスタンプ等)の開発や、バッテリーケース等のEV向け新製品の開拓を推進しています。また、工場のスマート化による生産性向上にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「学習し、成長し続ける組織・人財づくり」を人事戦略としています。高度な専門技術を持つ人材や経営マネジメント人材の育成、技能伝承を重視し、グローバル人材育成制度や独自のトレーニングセンター(GMTC)を活用しています。また、「Well-being経営」を推進し、多様な人材が活躍できる環境整備や、心理的安全性の高い職場づくりに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.5歳 | 20.7年 | 6,766,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.7% |
| 男性育児休業取得率 | 70.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 76.1% |
| 男女賃金差異(正規) | 75.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | 77.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員エンゲージメントスコア(42.8)、新卒採用(大卒以上)女性従業員採用比率(33.3%)、海外拠点経営層の現地化比率(48.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 同社グループの事業環境
世界各国で事業を展開しており、経済後退や税制変更による自動車販売の低下が業績に悪影響を及ぼす可能性があります。気候変動対応コストの増加や、激しい価格競争による収益性の低下リスクもあります。また、自動車の電動化に伴うトランスミッション需要の減退が進んだ場合、精密部品事業の売上減少につながる可能性があります。
■(2) 特定の取引先への集中
同社グループの販売実績の約8割は日産グループ向けであり、特定の取引先に依存しています。他の自動車メーカーとの取引拡大にも注力していますが、日産グループの販売減少や購買方針の変更があった場合、同社の業績に大きな影響を与える可能性があります。
■(3) 製品の欠陥・品質
グローバルな品質保証体制を構築していますが、製品の欠陥によるリコールや製造物賠償責任が発生するリスクがあります。大規模なリコール等は多額のコスト発生につながり、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 海外事業展開
米州、欧州、アジアなど世界各国で事業を行っており、政治・経済の不安定化、法規制の変更、為替変動、テロ・戦争等のカントリーリスクを抱えています。これらのリスクが顕在化した際、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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