※本記事は、大豊工業株式会社 の有価証券報告書(第119期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大豊工業ってどんな会社?
トライボロジー(摩擦・摩耗・潤滑技術)をコア技術とし、自動車用軸受やアルミダイカスト製品、金型設備などを製造・販売する独立系部品メーカーです。
■(1) 会社概要
1939年に前身となる西尾精機が設立され、1944年に大豊工業へ商号変更しました。1946年よりトヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)との取引を開始し、青銅鋳物ブシュの加工などを手掛けました。その後、アルミダイカスト工場の新設や米国企業との技術提携を経て事業を拡大し、2001年には東証・名証の一部(現スタンダード・プレミア)へ上場しました。近年は北米、アジア、欧州などに現地法人を設立し、グローバルな生産体制を構築しています。
同社グループの連結従業員数は4,090名、単体では1,896名です。大株主の構成は、筆頭株主が主要取引先でもあるトヨタ自動車(34.22%)となっており、次いで資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(8.05%)、トヨタグループの豊田自動織機(5.04%)と続きます。トヨタグループとの資本・取引関係が強い点が特徴です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| トヨタ自動車 | 34.22% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.05% |
| 豊田自動織機 | 5.04% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は新美俊生氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 新美 俊生 | 代表取締役社長 | 1984年トヨタ自動車入社。生技管理領域長、広瀬工場長、本社・広瀬・衣浦工場長などを歴任。トヨタモーターノースアメリカ執行副社長を経て、2023年6月より現職。 |
| 粟津 滋喜 | 代表取締役副社長 | 1986年同社入社。経営企画部部長、タイホウコーポレーションオブアメリカ社長、執行役員などを歴任。2024年6月より現職。 |
| 加納 知広 | 代表取締役 | 1987年トヨタ自動車入社。エンジン設計部主査、TNGA企画部主査、コーポレート戦略部グループ長などを経て、2017年同社理事に就任。2023年6月より現職。 |
社外取締役は、佐藤邦夫(元SMBC日興証券専務取締役)、岩井善郎(元福井大学理事・副学長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「自動車部品関連事業」、「自動車製造用設備関連事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 自動車部品関連事業
自動車エンジンなどに使用されるメタル・ブシュ等の軸受製品、システム製品、ダイカスト製品、ガスケット製品などを製造・販売しています。主力の軸受製品は摩擦を低減させる重要保安部品であり、高い技術力が求められます。主要顧客はトヨタ自動車をはじめとする国内外の自動車メーカーです。
収益は、自動車メーカーや部品メーカーへの製品販売代金から得ています。運営は、国内では同社、大豊精機、日本ガスケットなどが担当し、海外では米国、インドネシア、ハンガリー、韓国、中国、タイなどの現地法人が製造・販売を行っています。
■(2) 自動車製造用設備関連事業
自動車の製造工程で使用される搬送装置、溶接機、金型、設備部品などの製造・販売を行っています。自動車メーカーの生産ライン構築に必要な設備を提供しており、自動化や効率化に貢献しています。
収益は、自動車メーカー等への設備および金型の販売代金から得ています。運営は、主に連結子会社の大豊精機およびティーイーティーが行っています。同社もこれらの子会社から生産設備等を購入しています。
■(3) その他
福利厚生事業や営繕業務などを行っています。
収益は、グループ会社や従業員へのサービス提供に対する対価から得ています。運営は、連結子会社のタイホウライフサービスが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は自動車生産の回復や設備事業の好調により増加傾向にありますが、利益面では原材料価格の高騰や構造改革費用の計上などが影響し、当期は大幅な減益となりました。特に当期は、減損損失の計上や繰延税金資産の取り崩しにより、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 929億円 | 988億円 | 1,052億円 | 1,120億円 | 1,128億円 |
| 経常利益 | 8億円 | 17億円 | 12億円 | 32億円 | 9億円 |
| 利益率(%) | 0.8% | 1.7% | 1.2% | 2.9% | 0.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -2億円 | -5億円 | 14億円 | 8億円 | -34億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微増となりましたが、売上原価の増加により売上総利益および利益率は低下しました。営業利益も大幅に減少し、利益率は1%を切る水準となっています。これは原材料高や固定費の増加などが収益を圧迫したためです。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,120億円 | 1,128億円 |
| 売上総利益 | 171億円 | 158億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.3% | 14.0% |
| 営業利益 | 25億円 | 6億円 |
| 営業利益率(%) | 2.2% | 0.5% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が39億円(構成比25%)、従業員給料が34億円(同22%)を占めています。売上原価は970億円で、売上高に対する構成比は86%です。
■(3) セグメント収益
自動車部品関連事業は主力製品の生産増があったものの、一部製品の減産により売上は微減となり、利益も減少しました。一方、自動車製造用設備関連事業は試作や設備案件の増加により二桁の増収となり、利益も増加しました。全体としては設備事業が部品事業の落ち込みを補う形となりましたが、全社費用の負担もあり連結利益は低水準にとどまりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 自動車部品関連事業 | 1,008億円 | 1,002億円 | 69億円 | 48億円 | 4.7% |
| 自動車製造用設備関連事業 | 110億円 | 125億円 | 11億円 | 13億円 | 10.2% |
| その他 | 2億円 | 2億円 | 0億円 | -0億円 | -14.1% |
| 調整額 | -億円 | -億円 | -54億円 | -54億円 | - |
| 連結(合計) | 1,120億円 | 1,128億円 | 25億円 | 6億円 | 0.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-6.1%で市場平均を下回っていますが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.1%で市場平均(スタンダード市場製造業平均57.5%)とほぼ同等の水準を維持しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 107億円 | 62億円 |
| 投資CF | -62億円 | -102億円 |
| 財務CF | -10億円 | 21億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「私たちは時流に先んじ、合理主義に基づき優れた製品をもって顧客の信頼に応える - 信頼の大豊 -」を社是としています。また、「大豊グループはトライボロジーを基盤とした製品とエンジニアリングをもって社会に貢献する」を使命とし、2030年に向けて「常に社会のニーズを把握して、技術(材料・工法)を極めて、新たな商品を生み出す集団」を目指す姿として掲げています。
■(2) 企業文化
同社は2030年に向けて大事にする価値観として、「「人」を大事にする会社であり続ける事」を基盤に置いています。事業戦略を推進するのは「人」であり、会社にとって最も大切な資本であるという考えのもと、積極的な人への投資や、若手主体のプロジェクト推進、働きやすい環境づくり、エンゲージメント向上に取り組む姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、事業の成長性と収益性を重視し、売上高および営業利益を経営上の重要な目標として位置付けています。持続的な成長に向け、構造改革と徹底的なロス低減による収益性向上を図るとともに、グループシーズの結集とリソーセスシフトにより、コア技術を生かした新たなソリューションの提供を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
既存のパワートレイン部品事業においては、開発プロセス改革やDX推進による生産性向上を図り、高付加価値事業へのシフトとグローバル資産の有効活用を推進します。また、企業価値最大化に向けて、これまでの技術を結集し、電動化への貢献や社会課題解決のための新領域・新事業創出に取り組みます。
* 電池部品・設備・パワー半導体冷却器の開発推進
* 「水」のサーキュラーエコノミーに着眼した新ソリューションの提案
* アジャイル開発拠点「篠原BASE」でのオープンでフラットな組織体制構築
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人」を大事にする会社であり続けることを基盤とし、「誰かが喜ぶために」主体的に考動できる人材づくりと、「会社の永続」と「従業員の幸せ」のバランスが取れた会社を目指しています。上司との面談を「業務管理」から「キャリア形成」へ変更し、若手社員向けの海外トレーニー制度や、現場でのスキル伝承のための「スキルアップ制度」などを通じて、自律的なキャリア形成と成長を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.6歳 | 16.1年 | 6,560,281円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.8% |
| 男性育児休業取得率 | 56.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 70.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 91.0% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の得意先への販売依存
同社グループの売上高の27.9%はトヨタ自動車向けが占めており、依存度が高い状態にあります。そのため、同社の販売動向や調達方針の変更、予期せぬ契約打ち切りなどが生じた場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、欧米や中国、アジア等の海外自動車メーカーへの拡販を進め、リスク低減を図っています。
■(2) 為替レートの変動
グローバルに事業展開しているため、各地域の現地通貨建て項目は円換算時に為替レートの影響を受けます。一般に円高は悪影響を、円安は好影響をもたらします。現地生産化の促進や資材の現地調達拡大、生産コスト低減により収益安定化を図っていますが、為替変動が経営成績に重要な影響を与える可能性があります。
■(3) 資材価格の変動
製品製造に必要な原材料や部品を複数から調達していますが、市況変化による価格高騰や品不足が発生した場合、製造原価が上昇し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。安定的な取引を前提とした基本契約を締結していますが、外部環境による変動リスクが存在します。



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