※本記事は、大豊工業株式会社の有価証券報告書(第120期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大豊工業ってどんな会社?
自動車向けすべり軸受などの部品や関連設備を提供するグローバルメーカーです。
■(1) 会社概要
大豊工業は1939年に愛知県で設立され、1944年に現在の社名へ変更しました。1946年よりトヨタ自動車からの依頼で青銅鋳物ブシュの加工を開始し、1961年には米国企業と技術導入契約を締結しました。1999年の名古屋証券取引所上場を経て、2001年に東証・名証一部へ上場しています。その後も米国、インドネシア、ハンガリー等での海外生産拠点の拡充や、M&Aを通じたガスケット事業への参入など、グローバルに事業を拡大してきました。
現在の同社グループは、連結従業員数4089名、単体1885名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は事業上の関係が深いトヨタ自動車で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は豊田自動織機となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| トヨタ自動車 | 34.09% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 16.31% |
| 豊田自動織機 | 5.03% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は新美俊生氏が務めており、取締役9名中、社外取締役の比率は22.2%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 新美俊生 | 代表取締役社長 | 1984年トヨタ自動車入社。同社広瀬工場長等を経て2021年トヨタモーターノースアメリカ執行副社長。2023年より現職。 |
| 粟津滋喜 | 代表取締役副社長 | 1986年同社入社。2009年同社経営企画部部長、2012年米国子会社社長を経て2023年代表取締役、2024年より現職。 |
| 加納知広 | 代表取締役 | 1987年トヨタ自動車入社。同社エンジン設計部主査等を歴任。2017年同社執行役員を経て、2023年より現職。 |
社外取締役は、佐藤邦夫(元日興コーディアル証券専務執行役員)、岩井善郎(福井大学名誉教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「自動車部品関連事業」「自動車製造用設備関連事業」および「その他」の事業を展開しています。
■(1) 自動車部品関連事業
本事業では、メタル・ブシュ等の軸受製品をはじめ、システム製品、ダイカスト製品、ガスケット製品などの各種自動車部品を国内外の自動車メーカー向けに提供しています。また、ハイブリッド車や電気自動車などの電動化に対応した部品開発も推進し、コンプレッサー用特殊軸受やインバーターケースなども手掛けています。
収益はこれらの製品の販売代金から得ています。事業の運営は、大豊工業のほか、日本ガスケット、米国、インドネシア、ハンガリー、韓国、中国、タイなどの各海外現地法人が担っており、グローバルな生産・販売体制を構築しています。
■(2) 自動車製造用設備関連事業
本事業では、自動車製造ラインで使用される搬送装置、溶接機、精密金型、および設備部品等の製造・販売を行っています。画像検査を用いたAI画像検査への移行や、工程の無人化、協働ロボットの導入などの新技術の開発にも取り組んでおり、生産現場の効率化に貢献しています。
収益は、設備や金型の販売などから得ています。運営は主に、大豊工業の連結子会社である大豊精機およびティーイーティーが行っており、大豊工業への設備部品の供給や加工の受託なども担っています。
■(3) その他
報告セグメントに含まれない事業として、営繕および福利厚生事業などを展開しています。
収益は、これらのサービス提供に伴う手数料などから得ており、主に連結子会社のタイホウライフサービスが運営を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の業績を見ると、売上高は988億円から1194億円へと着実に成長を続けています。一方、利益面では変動があり、直近2期は当期損失を計上するなど収益性の改善が課題となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 988億円 | 1052億円 | 1120億円 | 1128億円 | 1194億円 |
| 経常利益 | 17億円 | 12億円 | 32億円 | 9億円 | 30億円 |
| 利益率(%) | 1.7% | 1.2% | 2.9% | 0.8% | 2.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -5億円 | 14億円 | 8億円 | -34億円 | -60億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加傾向にあり、売上総利益も前年から拡大しています。しかし、特別損失として多額の減損損失を計上したことなどにより、最終的な損益は悪化しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1128億円 | 1194億円 |
| 売上総利益 | 158億円 | 177億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.0% | 14.8% |
| 営業利益 | 6億円 | 26億円 |
| 営業利益率(%) | 0.5% | 2.2% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が28億円(構成比18%)、給料が14億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力である自動車部品関連事業が全体の約9割を占めて増収を牽引しました。自動車製造用設備関連事業も設備需要の増加により堅調な推移を見せています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 自動車部品関連事業 | 1002億円 | 1061億円 |
| 自動車製造用設備関連事業 | 125億円 | 131億円 |
| その他 | 2億円 | 2億円 |
| 連結(合計) | 1128億円 | 1194億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業で生み出した資金を借入金の返済に充てつつ、手元資金の範囲内で設備投資などを行っている健全な状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 62億円 | 85億円 |
| 投資CF | -102億円 | -58億円 |
| 財務CF | 21億円 | -21億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-9.4%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.7%で、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は社是として「私たちは時流に先んじ、合理主義に基づき優れた製品をもって顧客の信頼に応える - 信頼の大豊 –」を掲げています。また、使命として「大豊グループはトライボロジー(摩擦・摩耗・潤滑技術)を基盤とした製品とエンジニアリングをもって社会に貢献する」ことを宣言し、社会課題の解決を目指しています。
■(2) 企業文化
2030年に向けて、大事にする価値観の基盤に「『人』を大事にする会社であり続ける事」を据えています。「誰かが喜ぶために」主体的に考え行動できる人材づくりや、会社の永続と従業員の幸せのバランスが取れた会社を目指すなど、個人の成長と組織の活性化をともに尊重する風土を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は事業の成長性と収益性を重視し、売上高および営業利益を重要な客観的指標として設定しています。
・連結売上高目標:1170億円
・連結営業利益目標:23億円
■(4) 成長戦略と重点施策
既存事業では、開発プロセス改革やDX推進による生産性向上を図り、高付加価値なパワートレイン部品事業へのシフトを進めます。同時に、電池部品・設備・パワー半導体冷却器や「水」のサーキュラーエコノミーに着眼した新たなソリューションの提案など、新領域・新事業の創出に注力し、グループの技術を結集した成長を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「『人』を大事にする会社」を基盤に掲げ、実践型リーダーシップ教育の導入や若手主体のプロジェクト推進を通じて、挑戦を後押しする環境づくりに注力しています。また、従業員一人ひとりがワークライフバランスを考え、能力を最大限発揮できる人事制度の構築や、心身の健康維持増進に向けた健康経営も推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.4歳 | 16.7年 | 6,697,966円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.8% |
| 男性育児休業取得率 | 73.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 89.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 73.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 74.8% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の得意先への販売依存
同社グループの製品販売はトヨタ自動車への依存度が最も高く、当期の総販売額に占める割合は27.2%に達しています。顧客の販売動向や調達方針の変更、サプライチェーンの供給不足等が、業績や財政状態に直接的な悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 為替相場の変動
同社グループの事業には世界各地での生産・販売が含まれ、現地通貨建ての項目は円換算されます。米ドルを中心とする為替相場の変動は、製品の価格競争力や円換算後の価値に影響を与え、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 資材価格の高騰と品不足
製品の製造に使用する原材料や部品は複数の供給元から調達していますが、市況の変化による資材価格の高騰や深刻な品不足が発生した場合、製造原価の上昇を招き、同社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。



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