日本プラスト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本プラスト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本プラストはスタンダード市場に上場する自動車部品メーカーです。主にステアリングホイールやエアバッグ、樹脂部品の製造販売をグローバルに展開しています。直近の業績は、得意先の減産等により減収となったものの、製品保証引当金戻入額等の計上により経常利益および当期純利益は大幅な増益を達成しています。


※本記事は、日本プラスト株式会社の有価証券報告書(第88期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本プラストってどんな会社?


ステアリングホイールやエアバッグなど自動車の安全・樹脂部品を製造するグローバルメーカーです。

(1) 会社概要


1948年に設立され、日産自動車へ合成樹脂部品の納入を開始しました。1968年には本田技研工業と取引を開始し、事業基盤を拡大しました。1984年の米国拠点設立を皮切りに、中国や東南アジアにも海外子会社を設立し、グローバル展開を加速させています。2004年にジャスダック市場に株式を上場しました。

同社グループは連結で5,588名、単体で974名の従業員を擁しています。筆頭株主は中小企業の育成を支援する東京中小企業投資育成で、第2位は創業家とみられる個人の広瀬信氏、第3位は安全部品等の取引先でもあるダイセルです。

氏名 持株比率
東京中小企業投資育成 7.42%
広瀬信 6.74%
ダイセル 5.19%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は時田孝志氏が務めており、社外取締役の比率は30.0%となっています。

氏名 役職 主な経歴
時田孝志 代表取締役社長 1990年同社入社。安全開発部長、開発本部長などを経て、2024年より現職。
渡辺和洋 常務取締役管理本部長 1984年同社入社。業務監査室長、中国事業統括などを経て、2022年より現職。
豊田剛志 常務取締役北米事業統括兼ニートン・オート・プロダクツ取締役社長 1987年同社入社。経営企画室長、管理本部長などを経て、2023年より現職。
上野正揮 取締役開発本部長兼原価管理部長 1991年同社入社。富士工場長、生産本部長などを経て、2026年より現職。


社外取締役は、長谷川淳治氏(元KDDI執行役員常務)、林高史氏(グラーティアコンサルティンググループ林公認会計士事務所代表パートナー)、佐藤りか氏(佐藤&パートナーズ法律事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「北米」「中国」「東南アジア」および「その他」事業を展開しています。

(1) 日本


安全部品(ステアリングホイール、エアバッグ等)および樹脂部品(内装・外装樹脂製品)の製造販売を展開しています。
自動車メーカー等から製品の販売代金を受け取る収益モデルです。運営は主に日本プラストおよびエヌピーサービス等が担っています。

(2) 北米


米国およびメキシコにおいて、安全部品や樹脂部品の製造販売を行っています。
現地自動車メーカー等に製品を納入し収益を得ています。運営はニートン・オート・プロダクツやニホンプラストメヒカーナ等が担っています。

(3) 中国


中国市場向けに、安全部品と樹脂部品の製造販売を展開しています。
自動車メーカー等への製品販売が主な収益源です。運営は中山富拉司特工業有限公司や武漢富拉司特汽車零部件有限公司が行っています。

(4) 東南アジア


インドネシア、タイ、ベトナム等において、安全部品および樹脂部品の製造販売を行っています。
現地の自動車関連企業に製品を供給し収益を確保しています。運営はニホンプラストインドネシアやニホンプラストタイランド等が担っています。

(5) その他


自動車部品以外の領域として、ゲーム機用ハンドル等の製造販売を行っています。
顧客への製品販売や輸送等のサービス提供により収益を得ています。運営は日本プラストや日本プラスト運輸等が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は860億円から1,200億円規模で推移しています。利益面では、直近2期間において経常黒字を継続して確保しており、当期利益も順調に拡大するなど収益性の改善が進んでいます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 865億円 1,034億円 1,243億円 1,206億円 1,149億円
経常利益 -3億円 -7億円 29億円 20億円 25億円
利益率(%) -0.3% -0.7% 2.4% 1.7% 2.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -62億円 -20億円 19億円 36億円 46億円

(2) 損益計算書


前期間と当期間を比較すると、当期は減収となったものの、営業利益は安定した水準を維持しています。売上総利益率は約10%で推移しており、堅実な事業運営がうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,206億円 1,149億円
売上総利益 123億円 113億円
売上総利益率(%) 10.2% 9.8%
営業利益 28億円 26億円
営業利益率(%) 2.3% 2.3%


販売費及び一般管理費(87億円)のうち、役員報酬及び給料手当が25億円(構成比29%)、荷造運搬費が17億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の北米セグメントが増収増益を確保した一方、日本および東南アジアセグメントは得意先の減産などの影響により減収減益となりました。中国セグメントも市場環境の変化を受けて減収となり、営業赤字を計上しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
日本 460億円 433億円 17億円 14億円 3.2%
北米 564億円 570億円 5億円 6億円 1.1%
中国 138億円 110億円 -8億円 -2億円 -1.8%
東南アジア 43億円 36億円 13億円 9億円 25.0%
連結(合計) 1,206億円 1,149億円 28億円 27億円 2.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う「積極型」の状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 62億円 20億円
投資CF -36億円 -43億円
財務CF -10億円 8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.9%であり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「常に誇り得る商品を作り 顧客に奉仕し 社会に寄与する」を経営理念として掲げています。また、企業パーパスとして「プラスチックテクノロジーで安全・快適な未来をつくる」を定め、環境配慮や新規事業領域への挑戦を通じて持続可能な社会の発展に貢献することを使命としています。

(2) 企業文化


「常に明るく若々しい社風を作り 企業の繁栄 生活の向上をはかる」という価値観のもと、従業員一人ひとりが高いモチベーションを持てる環境づくりを重視しています。従業員のウェルビーイングを強化し、多様な人材が自ら成長して能力を発揮できる組織風土の構築を推進しています。

(3) 経営計画・目標


長期ビジョンとして、創業100周年を迎える2048年に「すべてのステークホルダーから信頼・期待され、選ばれるオンリーワン企業へ」というありたき姿を掲げています。また、直近の単年度経営目標として以下を設定しています。

* 営業利益率 1.8%
* CO2排出量削減
* 廃材排出量削減

(4) 成長戦略と重点施策


自動化技術やCASE時代に対応する次世代商品の開発を推進し、社内外のリソースを活用した技術革新を目指しています。製造ラインの自動化やDXの活用による労働生産性の向上、業務プロセスの刷新による合理化を進め、より効率的に収益を確保できる強靭な企業体質の構築に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「優れた人財を育成し、技術革新・プロセスの刷新により、明るい未来を切りひらく」を基本方針としています。デジタルツールの積極活用で業務プロセスを刷新し、従業員がより付加価値の高い業務に注力できる体制を構築することで、業績向上と従業員への還元が連動する「価値創造の好循環」を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.5歳 15.4年 5,996,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.4%
男性育児休業取得率 40.0%
男女賃金差異(全労働者) 67.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 73.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 65.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給取得率(72.1%)、定年後再雇用率(91.3%)、障がい者雇用比率(3.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の産業や得意先への依存


各地域の経済情勢等に伴う自動車需要の変動や、主要取引先である日産自動車および同社グループへの高い販売割合が、同社の業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競争の激化と製品の品質


グローバルな自動車部品業界での競争が激化する中、優位な品質競争力や価格競争力が維持できない場合や、万一製品の欠陥による市場回収措置等が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 海外事業進出と為替・金利変動リスク


北米や中国など海外生産比率が高まる中、各国の法規制の変更、政治情勢の変化、米国の通商政策による追加関税の発生、ならびに為替・金利の大幅な変動が業績に影響を与えるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。