※本記事は、日本プラスト株式会社 の有価証券報告書(第87期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本プラストってどんな会社?
自動車の安全・快適に関わるステアリングホイールやエアバッグ、内装・外装樹脂部品を主力とする独立系自動車部品メーカーです。
■(1) 会社概要
1948年に日本プラスト工芸として創業し、同年10月に現社名へ変更しました。日産自動車との取引開始を皮切りに、本田技研工業とも取引を開始し事業を拡大しました。1984年の米国進出を機にグローバル展開を加速させ、中国、東南アジアにも拠点を設立しました。2017年に東証一部へ指定され、2022年の市場区分見直しにより東証スタンダード市場へ移行しました。
現在の従業員数は連結5,736名、単体981名です。筆頭株主は中小企業の育成を目的とする東京中小企業投資育成で、第2位は創業家出身の広瀬信氏、第3位はエアバッグインフレータ等で取引関係にある化学メーカーのダイセルです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 東京中小企業投資育成 | 7.36% |
| 広瀬 信 | 6.69% |
| ダイセル | 5.15% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は時田孝志氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 時 田 孝 志 | 代表取締役社長 | 1990年同社入社。安全開発部長、開発本部長などを歴任し、2024年6月より現職。 |
| 渡 辺 和 洋 | 常務取締役管理本部長 | 1984年同社入社。経営企画室付部長、業務監査室長、中国事業統括などを経て2022年4月より現職。 |
| 豊 田 剛 志 | 常務取締役北米事業統括兼ニートン・オート・プロダクツ取締役社長 | 1987年同社入社。経営企画室長、経営企画本部長などを経て2023年6月より現職。 |
| 上 野 正 揮 | 取締役開発本部長 | 1991年同社入社。富士工場長、生産本部長などを経て2024年6月より現職。 |
社外取締役は、長谷川淳治(元KDDI執行役員常務)、林高史(公認会計士・税理士)、佐藤りか(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「北米」「中国」「東南アジア」の各報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。
■日本・北米・中国・東南アジア(自動車部品事業)
各地域において、ステアリングホイールやエアバッグモジュール等の安全部品、および空調部品、コンソール、外装樹脂製品等の樹脂部品を製造・販売しています。主要な顧客は日産自動車グループや本田技研工業グループなどの自動車メーカーです。
収益は、自動車メーカーへの製品販売による対価として得ています。日本国内の運営は同社が行い、海外ではニートン・オート・プロダクツ(米国)、ニホンプラストメヒカーナ(メキシコ)、中山富拉司特工業(中国)、ニホンプラストタイランド(タイ)などの現地連結子会社が製造・販売を行っています。
■その他
自動車部品以外の製品として、ゲーム機用ハンドル等の製造販売を行っています。また、同社の事務処理に関するサービス業務や製品の輸送サービス業務も含まれます。
収益は、製品販売やサービス提供の対価として得ています。運営は同社のほか、エヌピーサービスや持分法適用関連会社の日本プラスト運輸が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの業績推移です。売上高は増加傾向にありましたが当期は減少しました。利益面では赤字の期もありましたが、直近2期は黒字を確保しています。ただし、当期の純利益は大幅に減少しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 831億円 | 865億円 | 1,034億円 | 1,243億円 | 1,206億円 |
| 経常利益 | 17億円 | -3億円 | -7億円 | 29億円 | 20億円 |
| 利益率(%) | 2.0% | -0.3% | -0.7% | 2.4% | 1.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -9億円 | -62億円 | -20億円 | 19億円 | 36億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較します。売上高、売上総利益ともに減少しており、営業利益も微減となりました。原材料価格等の高騰に対する価格転嫁や諸経費抑制を進めたものの、得意先の減産影響などが響きました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,243億円 | 1,206億円 |
| 売上総利益 | 125億円 | 123億円 |
| 売上総利益率(%) | 10.0% | 10.2% |
| 営業利益 | 28億円 | 28億円 |
| 営業利益率(%) | 2.3% | 2.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が26億円(構成比27%)、荷造運搬費が18億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの状況を分析します。日本では価格転嫁や経費抑制が進みましたが、北米や中国では得意先の減産影響を受け減収傾向となりました。特に中国市場では日系メーカーの販売苦戦の影響が出ています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 478億円 | 460億円 |
| 北米 | 563億円 | 564億円 |
| 中国 | 159億円 | 138億円 |
| 東南アジア | 42億円 | 43億円 |
| 連結(合計) | 1,243億円 | 1,206億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 115億円 | 62億円 |
| 投資CF | -27億円 | -36億円 |
| 財務CF | -84億円 | -10億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は41.3%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「常に誇り得る商品を作り 顧客に奉仕し 社会に寄与する」を経営理念としています。また、創業以来のプラスチック加工技術を基盤に、リサイクル技術や新規事業への挑戦を通じて、「プラスチックテクノロジーで安全・快適な未来をつくる」という企業パーパスを定めています。
■(2) 企業文化
同社は、「常に明るく若々しい社風を作り 企業の繁栄 生活の向上をはかる」という理念のもと、全てのステークホルダーから信頼・期待され、選ばれる「オンリーワン企業」となることを目指しています。独自の強みで顧客にとって替えの効かない存在となり、魅力ある企業風土を醸成することを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2024年3月期からの第6次中期経営計画において、効率化推進と成長投資を通じた経営基盤の強化を掲げています。具体的な経営目標として、以下の数値を設定しています。
* 収益:営業利益率3%
* 品質:ゼロディフェクトのやり切り
* SDGs:CO2排出量および廃材排出量の削減
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は経営目標達成のため、「Build-Up」をスローガンに掲げ、品質保証体制の強化、技術開発力の強化、収益体質の強化に取り組んでいます。特に、CASE対応製品の開発や製造ラインの自動化・省人化を推進しています。
* 品質保証体制・体質の強化:制度厳格化と人に頼らない品質保証
* 技術開発力の強化:自動化技術、次世代商品開発、新事業推進
* 収益体質の強化:生産ロス削減、原価企画強化、有利子負債削減
* 人的資本の強化:従業員エンゲージメントの向上
* 社会的責任の追求:SDGs課題への取り組みと2030年の事業化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、持続的成長のために女性、外国人、障がい者、中途採用者など多様な人材の採用・起用を推進しています。また、従業員が高い意欲を持って働けるよう、従業員エンゲージメントの強化に取り組み、多様なキャリアパスや働き方を実現できる環境構築を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.3歳 | 15.3年 | 5,409,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.7% |
| 男性育児休業取得率 | 53.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.2% |
| 男女賃金差異(正規) | 73.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 63.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給取得率(70.0%)、定年後再雇用率(82.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の産業・得意先への依存
同社グループの売上高において、日産自動車グループ向けが67.2%、本田技研工業グループ向けが27.9%と高い割合を占めています。これら主要顧客の販売減少や購買方針の変更があった場合、同社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 競争の激化
自動車部品業界ではグローバル競争が激化しており、品質・価格競争力の維持や魅力ある商品開発ができない場合、将来の成長が阻害される可能性があります。次世代商品開発や生産効率化に取り組んでいますが、競争優位性を保てない場合、経営成績に影響を与える可能性があります。
■(3) 原材料市況の変動
製品に使用する鋼材、樹脂原料、マグネシウム地金等の原材料価格は、世界的な需給バランスや経済情勢により変動します。価格高騰分を販売価格に転嫁できない場合や、コストダウンで吸収できない場合、同社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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