ヨロズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヨロズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。自動車用サスペンション部品をはじめとする機構部品、車体部品等の製造販売を主力事業とし、日本、米州、アジア等でグローバルに展開しています。2025年3月期の連結業績は、円安効果や米州での増収があったものの、全体的な生産台数減少や減損損失の計上等により減収となり、経常損失および当期純損失を計上しました。


※本記事は、株式会社ヨロズ の有価証券報告書(第80期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヨロズってどんな会社?


自動車の「走る・曲がる・止まる」を支えるサスペンション等の足回り部品を主力とする独立系自動車部品メーカーです。

(1) 会社概要


1948年に自動車整備を行う萬自動車工業として設立され、翌年から日産重工業(現日産自動車)との取引を開始しました。1990年に現社名へ変更し、1995年には東証一部へ上場しています。1980年代後半から米国、メキシコ、タイなどへ積極的に進出し、グローバルな生産体制を構築してきました。2022年の市場区分見直しにより、現在は東証プライム市場に上場しています。

連結従業員数は5,848名、単体では442名が在籍しています。大株主の構成は、筆頭株主が不動産関連企業の株式会社南青山不動産、第2位が資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)、第3位が筆頭株主の共同保有者とされる株式会社エスグラントコーポレーションとなっています。

氏名 持株比率
南青山不動産 8.13%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.25%
エスグラントコーポレーション 4.90%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役会長会長執行役員(CEO)は志藤昭彦氏、代表取締役社長社長執行役員(COO)は平中勉氏が務めています。社外取締役は4名で、取締役全体の約44.4%を占めています。

氏名 役職 主な経歴
志藤 昭彦 代表取締役会長会長執行役員(CEO) 1968年同社入社。生産管理部長等を経て1992年代表取締役専務、1998年代表取締役社長に就任。2008年より代表取締役会長、2015年より会長執行役員を兼務。
平中 勉 代表取締役社長社長執行役員(COO) 1982年日産自動車入社。同社購買管理部長等を経て2012年同社入社。営業・管理機能統括等を歴任し、2021年4月より代表取締役社長・社長執行役員最高執行責任者に就任。
志藤 健 取締役副会長執行役員 2003年同社入社。経営企画室付部長、ヨロズエンジニアリング社長等を経て2016年同社代表取締役社長。2021年より取締役副会長執行役員。長期戦略担当等を務める。
平野 紀夫 取締役専務執行役員(CFO) 1984年同社入社。ヨロズメヒカーナ社社長、経営企画室長等を歴任。2022年より取締役専務執行役員。現在は最高財務責任者および経理機能グループ統括を務める。
三浦 聡 取締役(監査等委員) 1991年同社入社。経営企画室長、調達部長等を歴任。2019年ヨロズタイランド社会長等を経て、2021年6月より現職。


社外取締役は、大下政司(元人事院人材局長)、森谷弘史(元マレリ代表取締役会長)、辻千晶(弁護士)、小川千恵子(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「自動車部品」「金型・設備」および「その他」事業を展開しています。

自動車部品


自動車メーカー等の顧客に対し、サスペンションメンバー、リンク類などの機構部品や、車体部品、機関部品を提供しています。主力製品であるサスペンション部品は、自動車の操縦安定性や乗り心地に関わる重要保安部品です。

製品の製造販売による収益が主な収益源です。日本国内では同社が製造販売するほか、ヨロズ栃木、ヨロズ大分などの連結子会社へ製造を委託し同社を通じて販売しています。海外では、ヨロズオートモーティブテネシー社(米国)、ヨロズメヒカーナ社(メキシコ)、ヨロズタイランド社(タイ)、广州萬宝井汽車部件有限公司(中国)などの現地連結子会社が製造販売を行っています。

金型・設備


自動車部品の生産に必要なプレス金型や溶接設備、組立設備などを製造し、グループ内の生産拠点や外部顧客へ販売しています。これにより、製品開発から生産設備の立ち上げまでを一貫して行う体制を整えています。

金型や設備の販売代金が収益源となります。国内では主に連結子会社のヨロズエンジニアリングが製造し、同社を通じて販売しています。海外向けについてもヨロズエンジニアリングが製造し、各国の海外連結子会社を通じて販売を行っています。また、タイのヨロズエンジニアリングシステムズタイランド社も製造販売を行っています。

その他


上記事業に含まれない事業として、グループ会社への人材派遣や保険代理業などを行っています。

連結子会社のヨロズサービスが、国内各生産拠点への人材派遣サービスや損害保険の代理店業務等を提供し、対価を得ています。また、ヨロズアメリカ社は米国の持株会社としての機能を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2024年3月期まで増加傾向にありましたが、2025年3月期は微減となりました。利益面では、2024年3月期に経常利益が増加したものの、2025年3月期は経常損失および当期純損失へと赤字転落しています。特に最終損益は、2021年3月期と2025年3月期に多額の損失を計上しており、変動が大きい傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,189億円 1,273億円 1,606億円 1,815億円 1,784億円
経常利益 14億円 23億円 30億円 45億円 -21億円
利益率(%) 1.2% 1.8% 1.9% 2.5% -1.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -62億円 9億円 14億円 20億円 -117億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高はわずかに減少しました。売上原価率は約90%前後で推移しており、製造コストの比率が高い構造です。2025年3月期は営業利益が大きく減少し、営業利益率は大幅に低下しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,815億円 1,784億円
売上総利益 190億円 168億円
売上総利益率(%) 10.5% 9.4%
営業利益 45億円 3億円
営業利益率(%) 2.5% 0.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が52億円(構成比32%)、荷造・運搬費が27億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントの状況を見ると、米州セグメントは増収となりましたが、日本とアジアセグメントは減収となりました。利益面では、日本とアジアは黒字を確保したものの前年比で減益となり、米州セグメントは赤字が拡大しました。全体として、海外拠点での収益性改善が課題となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 553億円 527億円 62億円 23億円 4.4%
米州 774億円 868億円 -13億円 -26億円 -3.0%
アジア 488億円 389億円 15億円 1億円 0.2%
連結(合計) 1,815億円 1,784億円 45億円 3億円 0.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ヨロズ社のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失や棚卸資産の増減、減損損失の計上などにより、前年度と比較して収入が減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出の減少があったものの、定期預金の預入による支出の増加などにより、資金は減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れやセール・アンド・リースバックによる収入が増加した一方で、短期借入金の増減額などにより、前年度と比較して収入が増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 125億円 47億円
投資CF -119億円 -118億円
財務CF -17億円 68億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「高い倫理観と遵法精神により、公正で透明な企業活動を推進すること」を経営の基本としています。良き企業市民として社会的責任を果たし、すべてのステークホルダーからの信頼を得て企業価値を高めることを基本方針とし、コーポレートガバナンスの充実・強化に努めています。

(2) 企業文化


同社グループは「ヨロズグループ行動憲章及び社員行動規範」に基づき、法令、定款および業務分掌に則って職務を執行することを重視しています。また、ヨロズパーソンとして、高い倫理観のもと自ら課題を認識し、問題解決と学びを実践し続ける社員の育成を目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、新中期経営計画「Yorozu Sustainability Plan 2026(YSP2026)」を策定し、事業基盤と経営基盤の強化を通じて企業価値の向上を目指しています。2025年度は「収益のV字回復」を最優先としつつ、その先の成長に向けた「将来への布石」の検討も加速させる方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、電動化時代を支える存在となるため、ESG経営のE(環境)を武器としたものづくりを推進しています。具体的には、新技術・新工法の創出と拡販、収益目標の達成、資本効率向上による事業基盤の強化を図ります。また、逆風の事業環境に対応するため、「Success 25V」と銘打った合理化活動を全社一丸となって推進し、損益分岐点の改善を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、経営戦略に沿った適材適所の人財配置と、「タレントマネジメントシステム」を活用した人的資本の価値向上を推進しています。教育においては、組織に価値をもたらす「ヨロズパーソン」の育成を目的とし、一般教育やグローバル対応力の向上、専門教育などを実施しています。また、誰もが働きがいを持ち続けられる職場環境の整備にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.4歳 12.5年 6,417,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.5%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 70.1%
男女賃金差異(正規) 70.7%
男女賃金差異(非正規) 36.7%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 財政状態および経営成績の変動リスク


同社グループの連結売上高に占める海外売上高の割合は約7割と高く、為替変動が連結業績に大きな影響を及ぼします。また、主力製品である自動車部品の原材料(自動車用鋼板)は国際市況の影響を強く受け、市況が高止まりしている状況においてはコスト増加のリスクがあります。

(2) 特定取引先への依存と販売動向


同社グループは自動車部品等の製造・販売を主たる事業としており、取引の継続性は比較的安定しています。しかし、業績は主要な得意先である自動車メーカーの販売動向や生産調整の影響を受ける可能性があります。

(3) 国際情勢の変動による影響


同社グループは海外売上高比率が高く、今後もグローバル展開を進める方針です。そのため、進出国における法規制や税制の変更、経済情勢の急変、テロや戦争、その他の社会的混乱などの要因により、事業遂行に支障が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。