※本記事は、株式会社エフ・シー・シー の有価証券報告書(第95期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. エフ・シー・シーってどんな会社?
エフ・シー・シーは、二輪車・四輪車用のクラッチ製品を主力とする部品メーカーです。ホンダグループとの関係が深く、グローバルに事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1939年に静岡県浜松市で不二ライト工業所として設立され、クラッチ板等の製造を開始しました。1984年に現商号のエフ・シー・シーに変更。その後、米国、タイ、フィリピン、中国、インドなどへ海外展開を加速させました。2003年に東京証券取引所市場第二部に上場し、2004年には同市場第一部へ指定替えとなりました。
2025年3月31日現在、連結従業員数は7,799名、単体では1,027名です。筆頭株主は同社の主要顧客でもある本田技研工業で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。本田技研工業とは製品販売や原材料購入等の取引関係にあります。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 本田技研工業 | 22.47% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.65% |
| ワイ・エー | 5.28% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は斎藤善敬氏です。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 斎藤 善敬 | 代表取締役社長 | 2009年同社入社。北米事業統括、二輪事業統括、購買統括などを経て、2020年6月より現職。 |
| 鈴木 一人 | 専務取締役 | 1984年同社入社。二輪事業統括、アセアン事業統括などを歴任。現在は経営全般補佐兼開発統括兼リスクマネジメントオフィサーを務める。 |
| 向山 敦浩 | 常務取締役 | 1984年同社入社。四輪生産統括、生産技術統括などを経て、2021年6月より四輪事業統括として現職。 |
| 中谷 賢史 | 常務取締役 | 1986年同社入社。北米事業統括、購買統括などを歴任。現在は二輪事業統括兼中国地域統括等を務める。 |
| 坪井 彰 | 取締役 | 1994年同社入社。四輪研究開発統括、中国事業副統括、品質統括などを経て、2024年6月より常勤監査等委員として現職。 |
社外取締役は、腰塚國博(元コニカミノルタ上級技術顧問)、小林和徳(元ヤマハミュージックジャパン社長)、杉山一統(弁護士)、山本真由美(公認会計士)、河島多恵(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「二輪事業」「四輪事業」および「非モビリティ事業」を展開しています。
■(1) 二輪事業
主にオートバイ、スクーター、ATV(バギー)等のクラッチおよびEV/CASE領域の製品を製造販売しています。主要顧客は二輪車メーカーであり、グローバルに製品を供給しています。
収益は主に二輪車メーカー等の顧客への製品販売から得ています。運営は、エフ・シー・シー、九州エフ・シー・シー等の国内拠点のほか、FCC(THAILAND)CO.,LTD.、FCC CLUTCH INDIA PRIVATE LIMITED、PT. FCC INDONESIA等の海外子会社が行っています。
■(2) 四輪事業
主にマニュアル車、オートマチック車等のクラッチおよびEV/CASE領域の製品を製造販売しています。自動車メーカーを主要顧客とし、高品質な駆動系部品を提供しています。
収益は主に自動車メーカー等の顧客への製品販売から得ています。運営は、エフ・シー・シー、FCC(INDIANA),LLC、FCC(Adams),LLC、FCC AUTOMOTIVE PARTS DE MEXICO,S.A.DE C.V.、佛山富士離合器有限公司等の国内外のグループ会社が行っています。
■(3) 非モビリティ事業
主に環境・エネルギー分野等の製品の製造販売およびサービスの提供を行っています。モビリティ以外の領域での新規事業開発を推進しています。
収益は製品の販売およびサービスの提供から得ています。運営は主にエフ・シー・シー、九州エフ・シー・シー、FCC(PHILIPPINES)CORP.が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益は継続的に増加傾向にあります。利益面では、税引前利益および当期利益ともに回復基調にあり、特に直近の2025年3月期は増収増益を達成し、当期利益率も向上しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1,462億円 | 1,710億円 | 2,189億円 | 2,403億円 | 2,566億円 |
| 税引前利益 | 83億円 | 119億円 | 136億円 | 192億円 | 201億円 |
| 利益率(%) | 5.7% | 7.0% | 6.2% | 8.0% | 7.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 45億円 | 86億円 | 96億円 | 122億円 | 159億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、売上収益の増加に伴い売上総利益も増加しています。営業利益も増加しており、本業の収益性が維持・向上されていることがわかります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 2,403億円 | 2,566億円 |
| 売上総利益 | 421億円 | 493億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.5% | 19.2% |
| 営業利益 | 151億円 | 173億円 |
| 営業利益率(%) | 6.3% | 6.8% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が77億円(構成比24%)、製品保証引当金繰入額が70億円(同22%)を占めています。売上原価については、詳細な内訳データはありません。
■(3) セグメント収益
二輪事業はインドやインドネシアでの販売増や円安効果により大幅な増収増益となりました。四輪事業は円安効果で増収となりましたが、製品保証引当金繰入額の計上などにより微減益となりました。非モビリティ事業は増収したものの、営業損失が継続しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 二輪事業 | 1,069億円 | 1,204億円 | 95億円 | 121億円 | 10.0% |
| 四輪事業 | 1,333億円 | 1,361億円 | 83億円 | 81億円 | 6.0% |
| 非モビリティ事業 | 0.2億円 | 0.9億円 | -27億円 | -29億円 | -3,037.2% |
| 連結(合計) | 2,403億円 | 2,566億円 | 151億円 | 173億円 | 6.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業で得た資金で投資を行い、借入返済や株主還元も進めている「健全型」です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 354億円 | 279億円 |
| 投資CF | -74億円 | -258億円 |
| 財務CF | -48億円 | -146億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.6%で市場平均(9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.0%で市場平均(46.8%)を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「独創的なアイデアと技術でお客様に喜ばれる製品・サービスを供給することで社会へ貢献する」ことを企業理念の基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社グループは、役職員の行動指針として、「安全と環境に配慮した企業活動を行う」「独創性を生かして積極的に活動する」「常に自己研鑽に励み、改革・改善を行う」「スピーディーかつタイムリーに行動する」「人の和を大切にし、明るい職場をつくる」ことを掲げています。
■(3) 経営計画・目標
同社は「第二の創業 新しいFCCへ」を事業方針とする第12次中期経営計画(2023年度~2025年度)を推進しています。事業構造の転換と経営基盤の強化を進め、持続的な企業価値の向上を目指しています。基幹クラッチ事業の収益力向上により、主要指標は1年前倒しで目標値を達成しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
二輪事業ではインドを中心としたグローバルサウスでの市場成長への追従と、積層モータコア等の電動基幹部品の量産・開発を推進します。四輪事業ではHEV需要への対応と、モータコアや熱マネジメント領域での新規受注獲得を進めます。非モビリティ事業では、半導体業界向け製品やLiB用導電助剤等の事業拡大を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「新しいFCC」を実現する人材を育成し、イノベーションを生み出す基盤を作るため、「エンゲージメント向上」「多様性の推進」「人材育成・能力開発」の3つを柱としています。従業員持株会向けインセンティブ制度の導入や、ライフイベントとキャリア形成の両立支援、事業変化に対応できる柔軟な学びの場の提供などを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.0歳 | 19.3年 | 7,384,107円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.9% |
| 男性育児休業取得率 | 68.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.0% |
| 男女賃金差異(正規) | 79.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 68.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全従業員に占める女性の割合(11.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) クラッチ製品に特化した事業展開について
同社グループの事業は現在、基幹事業であるクラッチ製品に特化しています。今後、電動化の進展等によりクラッチ製品が不要となる可能性があります。これに対し、基幹事業の進化に加え、電動化製品やエネルギーソリューション等の新事業開発を積極的に進めています。
■(2) 特定の産業や取引先への依存について
売上収益の多くを自動車・二輪車産業に依存しており、特にホンダグループへの売上収益割合は約37%を占めています。そのため、同グループの事業戦略等の影響を受ける可能性があります。これに対し、拡販による新規顧客の獲得に注力し、積極的な顧客提案を進めています。
■(3) 海外展開について
日本、米国、アジアを中心にグローバル展開しており、各国の政治・経済動向、為替変動、法規制変更、災害等の影響を受ける可能性があります。これに対し、現地情報の収集やグループ間相互補完体制の活用により、カントリーリスクの低減を図っています。
■(4) 災害や地震等による影響
国内主要施設が静岡県西部地域に集中しているため、将来想定される東海地震・東南海地震が発生した場合、生産設備への甚大な影響により生産能力が著しく低下する可能性があります。これに対し、リスク対応マニュアルの整備やサプライチェーンを含めたBCPの構築等を行っています。



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