※本記事は、株式会社エイチワン の有価証券報告書(第19期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. エイチワンってどんな会社?
ホンダグループを主要顧客に持ち、グローバルに展開する自動車骨格部品の大手メーカーです。
■(1) 会社概要
1939年に平田工業として設立され、1967年に本田技研工業から自動車用フレーム部品を受注し量産を開始しました。2006年に本郷と合併し、現在のエイチワンに商号変更しました。海外展開も積極的に進め、北米、中国、アジア各地に拠点を設立しています。2022年には東証プライム市場へ移行しました。
同グループの従業員数は連結5,449名、単体1,141名です。筆頭株主は主要取引先でもある本田技研工業で21.33%を保有しています。第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は外国証券会社のインタラクティブ・ブローカーズ証券(常任代理人)となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 本田技研工業 | 21.33% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 9.43% |
| INTERACTIVE BROKERS LLC | 4.11% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は13.0%です。代表取締役社長執行役員は真弓世紀氏です。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 真 弓 世 紀 | 代表取締役社長執行役員(兼)事業統括本部 本部長(兼)北米事業本部 本部長 | 1991年ヒラタ入社。経営企画室長、KTH Parts Industries副社長などを経て、2024年4月より社長執行役員、同年6月より現職。 |
| 奥 田 正 道 | 取締役副社長執行役員事業統括本部経営企画担当(兼)中国事業本部 本部長 | 1988年平田プレス工業入社。武漢愛機汽車配件総経理、経営企画室長などを経て、2025年4月より現職。 |
社外取締役は、丸山恵一郎(弁護士・学校法人東京音楽大学理事長)、戸所邦弘(富士倉庫運輸取締役会長)、山田彰子(元総合車両製作所取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「北米」「中国」「アジア」の各報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 日本
主に自動車部品(車体フレーム等)の製造及び販売を行っています。ホンダグループ等の自動車メーカーが主要な顧客です。また、金型や溶接設備の製造販売も行っています。
製品の販売対価として収益を得ています。運営は主にエイチワン(同社)が行っています。
■(2) 北米
アメリカ、カナダ、メキシコにおいて、自動車部品の製造及び販売を行っています。現地の自動車メーカー工場等へ製品を供給しています。
製品売上のほか、関連する技術指導料やロイヤリティ収入を得る場合があります。運営はKTH Parts Industries, Inc.、Kalida Manufacturing, Inc.などの現地連結子会社が行っています。
■(3) 中国
広州、清遠、武漢などの各拠点において、自動車部品の製造及び販売を行っています。中国国内の自動車メーカー合弁会社等が顧客となります。
製品販売による収益が主たる収益源です。運営は広州愛機汽車配件有限公司、武漢愛機汽車配件有限公司などの現地連結子会社が行っています。
■(4) アジア
タイ、インドネシアにおいて、自動車部品の製造及び販売を行っています。同地域の自動車生産拠点に向けて製品を供給しています。なお、インドの子会社は2025年3月に株式を譲渡しました。
製品の販売対価として収益を得ています。運営はH-ONE Parts (Thailand) Co., Ltd.などの現地連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益は2,200億円前後で推移していますが、利益面では変動が見られます。前期(2024年3月期)は大幅な損失を計上しましたが、当期(2025年3月期)は売上収益が微減ながらも、税引前利益および当期利益は黒字に転換し、V字回復を果たしています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1,639億円 | 1,706億円 | 2,255億円 | 2,327億円 | 2,281億円 |
| 税引前利益 | 34億円 | -37億円 | -97億円 | -194億円 | 108億円 |
| 利益率(%) | 2.1% | -2.2% | -4.3% | -8.3% | 4.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 28億円 | -14億円 | -70億円 | -217億円 | 107億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益は前期比で微減となりましたが、売上総利益は大幅に増加し、利益率も改善しました。前期に計上された多額の損失からの反動やコスト削減効果等により、営業利益は黒字転換しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 2,327億円 | 2,281億円 |
| 売上総利益 | 222億円 | 317億円 |
| 売上総利益率(%) | 9.5% | 13.9% |
| 営業利益 | -188億円 | 119億円 |
| 営業利益率(%) | -8.1% | 5.2% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が72億円(構成比41%)、発送費が23億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
北米セグメントが売上・利益ともに最大規模で、全社の牽引役となっています。日本セグメントは黒字転換し、中国セグメントも黒字を回復しました。アジアセグメントは減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 584億円 | 580億円 | -21億円 | 51億円 | 8.9% |
| 北米 | 1,003億円 | 1,153億円 | 5億円 | 37億円 | 3.2% |
| 中国 | 517億円 | 389億円 | -179億円 | 19億円 | 4.8% |
| アジア | 335億円 | 258億円 | 11億円 | 3億円 | 1.1% |
| 調整額 | -111億円 | -99億円 | -10億円 | -1億円 | - |
| 連結(合計) | 2,327億円 | 2,281億円 | -188億円 | 119億円 | 5.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
エイチワンは、営業活動で得た資金を元手に、設備投資を進めながらも、財務活動で資金調達と返済のバランスを取っています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金や利息の支払いなどがあったものの、前期比で収入が増加し、プラスとなりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、子会社株式の売却収入があった一方で、設備投資による支出が大きくなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入れによる収入と返済、短期借入金の減少などがあり、前期から支出に転じました。これらの結果、当期はフリー・キャッシュ・フローがプラスとなり、手元資金は増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 195億円 | 211億円 |
| 投資CF | -133億円 | -131億円 |
| 財務CF | 13億円 | -73億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「世界に貢献する企業に向かって『尊重 信頼 挑戦』そこから生まれる夢の実現」を経営理念に掲げています。多様な文化や価値観を持つ国際社会と協調しながら社会ニーズに応え、先進的な加工技術への挑戦と技術の蓄積によって、期待を超える魅力あふれる製品を素早く提供し、世界中から信頼される企業となることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、2030年を最終年とする長期ビジョンにおいて、コーポレートスローガンとして「Exceed expectations(期待を超える)」を掲げています。また、コア・コンピタンスとして「テクノロジー(お客様のニーズを具現化するものづくり技術)」と「ホスピタリティ(お客様のニーズをお客様と一緒になって実現する)」を定義し、これに全員の「Think Value」を加えて新たな価値を生み出すことを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2024年度を初年度とする中期経営計画「Change 2027」(2024年4月~2027年3月)を推進しています。最終年度である2027年3月期の経営指標として、以下の数値を目標としています。
* 営業利益:160億円
* 投下資本利益率(ROIC):7%以上
* 売上収益:2,400億円
* 親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE):10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画「Change 2027」において、「ビジネスポートフォリオと事業構造の転換・組み換え」を経営方針としています。重点施策として、収益力の強化(適正価格設定、原価低減)、主力得意先向け売上の確保と拡販、新技術及び新商品の開発推進(EV/FCV関連製品等)、サステナビリティの強化(脱炭素、ダイバーシティ推進)などに取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、「尊重、信頼、挑戦」の経営理念に基づき、人材を価値創造の資本と位置づけています。社会課題解決の視点で自ら考え行動し、新たな価値を生み出す多様な人材の採用・育成を進めています。性別・年齢・出身国等に関わらず能力開発ができるよう、OJTや各種研修、社内外交流を促進するとともに、管理職のマネジメント力向上や多様な働き方の導入、健康経営などを通じて、個々人が活き活きと働ける環境整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.9歳 | 22.3年 | 7,066,011円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含めています。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.0% |
| 男性育児休業取得率 | 93.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 82.8% |
| 男女賃金差異(正規) | 78.5% |
| 男女賃金差異(非正規) | 82.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(90%以上)、男性育児休業取得率(90%以上)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 依存度の高い販売先
同社グループの最大の販売先は本田技研工業およびそのグループ会社であり、連結売上収益の約90%を占めています。今後、同グループからの受注量が低下した場合には、売上収益の減少を通じて同社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、同社は同グループからの受注獲得に努めると同時に、他の自動車メーカーとの取引拡大にも注力しています。
■(2) 市場、顧客ニーズに基づく新技術の開発
自動車業界は電動化やCASE等の変革期にあり、技術ニーズが多様化しています。同社の既存製品や製造技術に代わる新素材・新技術が市場に受け入れられた場合、シェア低下のリスクがあります。同社は中期経営計画で「技術・開発への資源シフト」を掲げ、高性能な自動車フレームや製造技術の研究開発に資源を投入し、新たな価値創造を図っています。
■(3) 製品の品質
同社製品に重要な不具合があり、重大な事故やリコール等の責任を問われた場合、多額の対策費用発生や評価低下による受注減少のリスクがあります。同社は国際的な品質管理基準に基づいた体制を構築し、品質維持・向上に努めるとともに、生産物賠償責任保険等でリスクに備えています。
■(4) 気候変動・環境規制への対応
各国の環境規制強化やステークホルダーからの脱炭素要請に適切に対応できない場合、社会評価の低下等による機会損失のリスクがあります。同社は2050年度カーボンニュートラル実現を目指し、生産時のCO2排出量削減や、環境負荷の少ない鋼板への切り替え検討、リサイクル技術の活用などを進めています。



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